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悪役放棄、更に自由人へ(仮)  作者: 平泉彼方
第一章 逸般人な悪役令嬢、好き勝手過ごす
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66 戦場がグロいのは仕方の無い事(但し、一部例外は有る)

 読者の皆様大変御待たせ致しました。また訂正箇所のご指摘本当に有難うございます。返事と訂正は、後日行います。


 さて、今回はグロ注意報が発令されております……正直原稿作成時に打っている私が気分悪くなる様な表現もでて来ております。一応おおざっぱに後書きへ粗筋書きますので、苦手な方はそちらを御覧頂ければと御思います。それでは本編をどぞ!



………………(ヴィンセント)………………



「……全体、止まれ。」



 号令が掛かると同時に公爵領の軍隊の様に規律よく全員が止まった。


 そして、その前を今回の遠征の隊長の様な事をしている我が愛しの婚約者が出て来る。


 その姿は以前に磨きがかかり、この様な場所(戦場)にも関わらず神々しさを感じる。


 そして彼女の凛とした美声(ソプラノ)が堂々と響き渡った。



「これより我々は、感染区域へと突入する。


 戦闘班はスリーマンセルで行動せよ。単独行動は禁止だ。守らなければ命の保証はしない。最悪切り捨てるので御覚悟を。」



 ゴクリ、と唾を飲み込む音が聞こえる……かく言う私のその1人なのだが。


 そして、小鬼達を見ると少し不満そうな顔をしている者達が居た。私は心配でルーナと目線を遭わせるが、彼女は安心させる様に頷くとそのまま続けた。



「そして、その理由に関してこれから説明しようと思う。


 実は先程移動している時に病原体の検査結果が出たのだが、感染力がとても強く醜悪な症状を示す事が明中になった。しかしまだ研究と上ではあるので、詳しい事は遠征後に発表される。


 その対策として今回遮断の精霊に協力要請する事となった。だが、遮断の精霊達の数は元々少ない上、現在外せない別件で動いてもらっているのでここに居るのは数名のみ。


 少人数でこの大多数、それも動き回る連中に向けて常に強力な結界を長時間張るのは不可能なので、集団に対して数名付ける事で賄う事となった。


 故に、救護班は集団行動を心がけ、見学班は結界から出ない様に1ヶ所に集まってもらっている事になる。


 そしてそれを破れば………感染して死ぬ事になるだろう。


 戦場で私は君達全員を守っている事は出来ない…今回の目的は病原体の殲滅と生き残った住民の回収と治療だ。そして今回の病原体は被害者に戦闘させる特性が有る事は皆既に聞いているだろう。


 故に、私は戦闘をメインに行う事になっている。


 だから、言わせて欲しい……………自分の命はなるべく自分で守ってくれ。


 そして、出来れば死ぬな!


 死にさえしなければ、命さえちゃんとあれば、四肢が無くなろうが内蔵が抉られていようが私が責任を持ってきちんと治すと誓おう!!


 以上。では諸君、戦場で互いに健闘を祈る。」


『オオオオオオオ!!!!!』



 スピーチが終わると、小鬼達は士気をあげる様に大声で雄叫びを上げた。


 目前、3m先に広がるのは人気の無い街。


 一体あそこで何が起こっているのだろうか……ろくでもないと言う事だけは直感で分かるが。


 私は不安と初陣に意気込みを胸に、戦場へと一歩踏み出した。



………………………………………



 街に一歩踏み入れるとまだまだ素人の私にでさえ分かってしまった……………囲まれている事に。


 いや、これは“誘い込まれた”と言うべきなのだろうか?



 一見すると、見事な程無人で静かな田舎町………まるで先程まで生活していたのに住民達だけが急に蒸発してしまったかの様に見えたのだ。



 だが、霊山に来てからの訓練でウォルター師匠に教わった“索敵”の術を使うとよく分かるのだ……………相当な数の敵?が物陰に隠れている事が。


 ただ1つだけ奇妙な事が有るとすれば、敵の様子が何と言うか………生気がないのだ。


 まるで死人が徘徊して言うと言うべきだろうか……


 後、我々に対して明確な“敵意”や“殺意”を一切抱いていない事もふ事前極まりない。


 何故隠れる必要が有るのかも不明だ。


 今も私達が街に踏み入れた瞬間を感じ取ったのか、のろのろと動き出した。



“まるでゴーレムだな。”



 ゴーレムとは魔術式を組んで作る魔導武器と一種であり、決まった動き、それも単純な指令しか受け付ける事が出来ない特徴が有る。だが、その分指令された事には忠実に動くのだ。


 例えば………“人の足音の方向に移動して攻撃”と入れれば、忠実に音の方向へと向いて攻撃を放つ。


 それこそ自身が壊れるか、対象物の反応が無くなるかしない限り。



 そして、街の中腹部を歩いているときだった………“ソレ”は物陰から本格的に出て来た。



—土色の生気を感じない肌


—眼球が腐り落ちたのか、空虚な闇となった眼窩


—歩行と同時に前身から不快な音と共に垂れ出る腐食した液体



 プーンと音がすると思ったら肉蠅が集っており、肉体は破裂寸前だとしても可笑しくない程腫れ上がっていた。


 その様子はまるで、何日も野晒しにされた“遺体”そのもの…大人から子供まで、様々な遺体が動いている。



 ………そう言えば、あの時“見た”遺体は動いてない無かったがこの様な状態だったな…


 思い出すのは幼少期の事………



 夕方まで共の遊んでいた者達が、翌日もの言わぬ遺体として裏庭に埋められていた事。


 所々白骨化し出した骨が覗き、顔や身体には蛆が蠢き、そして糞尿垂れ流しで内蔵までもが飛び出していた。目からは芋虫の様な蟲が飛び出し、顔も原型を留めていなかった。


 辛うじてその子供の髪の色が独特だった事でその人物だと特定で来たのだった。


 信じられなかった、いや、信じたくはなかった……つい先程まで話したりしていた者が、あの様な姿となる事が。


 数日間私が夜中うなされた事は言うまでも無い。


 だが、あの頃何度もその様な光景に遭遇して何時の日か“慣れ”てしまった………庭にあの様な遺体が大量に放置されている事にも。


 そして、そこから蠅や他の蟲が犇めき互いを押し潰さんとする勢いで這い出て来る光景も。


 思う事は只1つ………何時、あの場所に自分が埋葬されるかと言う事。


 毎晩私の見た悪夢は、自分があの這う蟲の群に飲み込まれていく様子だった……それも直に慣れてしまったが。


 それでもその頃の体験は私へ少なからず影響を与えていた様だ……



 動く遺体………特に子供、3・4歳程の遺体が動く様子を見て、私はいつの間にか固まっていた。



“動こけ!ちゃんと指令を聞け!!”



 まるで金縛りにでもあったかの如く、私の身体は地面に縫い付けられたまま………



「危ない!!」



 その声に、咄嗟に身体が動いた…訓練によるほぼ反射的な行動だった。


 だがそれに救われたのは事実………背後に迫って来ていた遺体を間一髪で避けた……非常に危ない状況だった。



 首筋に這う蟲の様な不快な感触、背側からのやけに酷い悪寒、そしてびっしりと掻いた脂汗が顔面を伝う感覚………それらによって、私が今生き残った事を実感させられる。



「まったく……これだから素人を連れて来る事へ俺は反対だったんだよ…ったく。」



 先程声を掛けてくれた相手が直ぐ側に来ていた……ルーナ殿の使役している龍…名は確か『ジャンクリ』だったか?



「済まない……ぼんやりしていた。」


「はっ、流石今まで散々守られて来た“裏”をしらない素人だな…そんな舐めた事していたら、戦場で呆気なく死ぬぞ?」



 以前散々嫉妬していた相手だが、こうしてルーナ殿抜きに話すのは恐らく初めてではなかろうか?


 しかしこうしてみると………確かに私より彼に軍配が上がる理由がよく分かる気がした………彼女の好みにまさに一致した様な容姿をしているからな。


 何故か、今は一切嫉妬心が湧かない……それどころか”頼もしさ”を感じた。



「……それで、顔色が悪いが大丈夫なのか?」



 頬をボリボリと掻きながら、龍は聞いて来た。



「ああ……恐らくもう大丈夫だと思う…尻拭いさせてしまって済まない。」


「………分かっているなら来るなよ……」


「それは出来ぬ……将来共に旅立つなら、慣れねばならぬだろう?」



 嫌そうな表情を露骨に浮かべながら、鋭い眼光を私へ投げかけた……そして、私も負けじとそれに応える。


 数秒後、ハァと溜め息を吐くと同時に仕様がないな、同類かよ等と呟く目前の龍。


 次の瞬間彼の顔から表情が抜け落ち、夕日を思わせる独特な瞳が私を捉えた……それは、まるで何処まで続く奈落の様な、暗く、空虚な目。



「俺はお前の事等認めていない。」


「ッ…………」


「せいぜい足掻け。」



 そう言い残し、いつの間にか居なくなっていた。


 前身から冷や汗が吹き出て、私は思わず地面に座り込んだ………先程浴びた視線は“暗殺者”のソレと同じ、いや、それ以上だった…



“一瞬、自分が彼の鋭い『爪』で喉笛を搔っ切られたと幻視した。”



 それ程凄まじく、だが、同時に今まで感じた事の無い程研ぎ澄まされた“死”そのものを感じさせる様な『殺気』だった。



…………………………………………



 ルーナ殿が路地裏へと行く様子だ……中で何かを見付けたらしい。彼女が小鬼数名を引き連れて闇へと消えていく様子が見えた。



“彼女はやはり、凄い。”



 宣言通り小鬼達の戦闘のサポートに回りつつ、無理だと判断した場合は打って出てあっさりと相手の首を跳ねていった。


 使っているのは薙刀………華麗な舞いを見ている様な錯覚を先程から憶えている。


 彼女の美しい刃捌きの後、宙に舞うのは鮮血と首。


 残忍で恐ろしい光景では有るが、何処か『三日月』を思わせる彼女の姿は優美でしなやかで、そして、切り裂く様な危険な美しさが有った。


 ……それはまるで、触れた瞬間斬られてしまうかの如く鋭利で、そして、研ぎ澄まされた。


 クルクルと薙刀が舞う度に紅い血飛沫がアーチを作る…飛び散る血は彼女の周囲に薔薇の花弁が舞うかの様にパラパラと降っていた。



 訓練の時の彼女とはひと味違う……まるで物語に出て来る『氷の精霊王女』を彷彿とさせた。



 彼女の一瞬消えた戦場は……遮断の結界が無ければ既に我々が全滅していたかも知れない。


 次々と出て来る異形の“遺体”は、激しく暴れ回ると皆一様に血を前身から噴き出しながら文字通り爆散する。


 そして、周囲へと広がった血肉は風に舞い上げられて、周囲へと広がる。


 アレを吸い込めば、我々もあの遺体の様になる事は、ルーナ殿の説明で何となく理解している……いや、ルナライト出版の『感染症対策—初級編—』で出て来た内容だったので分かった。


 確か………空気感染と言ったのだろうか?


 戦闘は無理そうだったので、私は私に出来る事をしていた…即ち、膨大な魔力にものを言わせて周囲に爆散する『感染源』を片端から燃やしていった。


 使うのは当然800℃を越える高音の炎…結界越しでも此方までその熱の一部は伝わって来る。


 そうして私が作業している時だった………



「GYAOOOOOOOOOO!!!!!!!」


「クッ!?」



 苦戦している小鬼と、その隣には負傷した小鬼が居た。対するは元人虎だと思われる“遺体”………巨大な身体が更に醜く膨れ上がり、恐らく変色して紫色になった様で、よく見えない。


 最悪な事に、それが3体も居たのだった。


 思わず私は駆け出し、今にも仕留められそうになっていた小鬼達の前で刀を構えていた。


 そして、私は刀を振るった………ルーナ殿にならった型通りに。



“上段から斜め、そのまま横薙ぎ、そして最後に返し”



 目の前でピクリと遺体が一瞬した後、首が宙を舞う。同時に鮮血が舞い、完全に動きを止めた遺体はパタリと音を立てて地面に倒れた。


 そして……私は見てしまった。


 遺体の首元から粘ついた液体が流れ、下からは内蔵が飛び出て…そこには蠢く“ナニカ”が居る。


 それは蟲ではない……大きさが違い過ぎる。それに、内蔵の色は変わらない。


 では一体何か?


 その答えは次の瞬間内蔵が破裂し、先程空中で散布されていた紅色をした塵状の“ナニカ”に似ていた。



“アレは血液ではなかったのか……”



 風飛ばされ舞い散るソレは、どんどん黒色に変色していく……そして、ソレの降った場所では地面に生えていた植物でさえ枯れた。


 結界越しに目を凝らすと………何故だが蠢く細かい生物の様に見えた。


 途端、私は吐き気を催しその場で戻してしまった。



「おい、大丈夫か?!」



 龍の声が聞こえたが、私はそれどころではない。



“何なのだ、あの醜悪なモノは……”



 赤い液体同士が互いを引き合うかの如く1ヶ所へと集まると、それが一気に拡散していく様子が見えたのだ…そして宙へ浮いたソレは、迷い無く結界に遮られた我々へと向かっていた。



「うぅぅ……ガハッ?!」



 アレが体内に入る事は、幼少期毎晩見ていた“悪夢”よりも悍ましく、恐ろしい様子だった。


 正直嫌悪感しか湧かない……



 戦場とは、これほどまでに過酷な場所なのかとここで私は初めて知った。


 だが、今後この光景に耐えられないと言う事は多分無い……胃の内容物が全て出終わる頃には、既にこの状況に対して“慣れ”ていた。


 気色悪くは有るが、それでも“次”な固まったり吐いたりする事は、無いだろう。


 何となくそんな気がした。


 粗筋:ルーナちゃん演説後、街へ突入 → グロい遺体を前に王子は幼少期のトラウマ発動!間一髪でジャンクリに救われる → ルーナちゃんの様子に頑張って戦場で働く → 戦闘 → 嘔吐 → 復活?


 大体こんな感じです。


 それでは次回も宜しく御願い致します。

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