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悪役放棄、更に自由人へ(仮)  作者: 平泉彼方
第一章 逸般人な悪役令嬢、好き勝手過ごす
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64 戦場数秒前。

 読者の皆様、投稿遅れた上予告詐欺ですいません……


 まず前者に関しては、リアルが冗談じゃない程多忙で忙殺されそうになっていたので物理的に投稿できませんでした。そして、後者に関してはよくよく考えたら戦場?と言うかパンデミック起こっている場所に行く割に無防備だったので、感染対策をしっかりさせたと言いますか……


 はい、そんな分けで今回は八甲田山の悲劇の様な事を繰り返さぬ為にも行く場所の環境に沿ってある程度の対策をさせたました。それでは本編をどぞ!



 う〜ん……どうしよう…



 さっき統合した『分身体』によると、この先ちょっと皆さんには危険な状況が待ち受けていそうだからな……


 ま、対策のしようは無きにしも非ずって感じだけどね。



 でもな〜………



「ルーナ様、何か御悩みのようですね。」


「うお?!……ウォルターか…びっくりした。」


「それは申し訳ないです。」



 渋い笑みを浮かべて背後から音も無く近寄る武装執事。格好はあくまで“執事”の一般的に着用している漆黒の燕尾服だが、その裏側にはどれ程の暗器が隠れているかは知れない。


 当然特殊グローブとワイヤーは何時でも出せる様になっている。先程も急に飛び出て来た魔獣の首を真顔でスパーンと跳ねていたからね……



「ああそれでね………」



 私は他の連中にばれない様口唇術で用件を伝えた……暗殺稼業を一時でも行っていた者の中でもプロなら大抵出来る事だ。


 勿論私やウォルターにとっては出来て当然。傭兵としての任務中は大抵この方法で会話している…機密事項を扱う時は特に。



「そうでございますか……それは…」



 そして相談してみたはいいものの、ウォルターも困惑したようだった……それもそうか。



 まさか今回撒かれた病原体があれ程厄介なものでなければ……



…………………………………………



「?!これは……あの、ルーナ様…」


「ん?どうしたの、ホウ先生?」



 東方の大陸から一族郎党追放されて流民としてここに辿り着いた『玄鳳翠ゲンホウスイ医師』………いや、現在は、『ルナライト薬品』薬品開発部の『ホウ部長』だと言うべきだろうか?


 元は食脱医師(病に侵された血肉を喰い、自身の血肉を薬とする者達…)の一族で有り、その名残として病には滅法強い。その為、感染力の有る病原菌を相手にいつも奮闘している者達だ。



 これは私の予想だけど、恐らく『玄一族』の人達は免疫力が異様に強いんだと思う。だからこそ、この地まで生きながらえてこられたんだろうな……


 そしてそんな彼らの特殊技能を信頼して、今回『百獣連合』に持ち込まれたと思われる病原菌について研究してもらっていた。



 そして、その結果を見せてもらったのだが……それが余りにも予想外だったため、私もホウ氏と同様呆気にとられていた。






 ここで1つ質問だが、シダ類の発生方法はご存知だろうか?恐らく高等学校レベルの生物で履修しているはずだが……



 今回問題となっている病原菌は、人に感染する部分を覗けばコケ類のソレと余りにも似ている性質を持っていたのだった…いや、もうそのものだと言っても過言ではない。


 順を追って説明していこう。



 まずコケ植物の発生だが、簡単に説明するなら彼らは雌雄に別れる時と無性別になる時が交互に存在する。これを一般に『世代交代』と言うのだが、詳細を今は省く。


 さて、今回散撒かれた病原菌の発生方法は上述したコケとほぼ同じ方法で行われている事が今回分かった。その手順は次の通りだ。



①雌雄に別れた病原体株が人体へと侵入。感染する。


②感染者は感染時の体調や個人の持つ免疫力にもよるが、感染して暫くは酷い風邪をひいた様な状態となる。その間、病原菌は脳を含む前身へ潜り込んで潜伏する。


③風邪の症状が引くと、潜伏中の病原菌は乗っ取りを開始する。


④主導権掌握後前身のリミッターを外した上で、感染した病原体とは違う性別の病原体の潜り込んでいる固体が現れるまで暴れ回る。


⑤異なる性別の病原体が感染している固体を見付けると、感染者を殺して身体を変形させた上で暴れさせ、周囲へ体液を撒き散らせながら移動させる。


⑥最終的に身体を爆発させて体液を周囲へ撒き散らせる。


⑦薪散った体液内に存在する病原体は雌雄で接合して胞子体を形成する。


⑧胞子体は生命力が強く、空中に霧状になって散る。


⑨胞子体の含まれた空気を生物が吸うと、肺に感染される。


⑩肺から前身に循環して主導権を乗っ取り、感染者を同族へと向かわせてそこで感染者の身体は爆ぜる。体液を通じて周囲へ配偶子を撒く。



 コケ植物の場合、他へと感染する必要も無ければ湿気と少量の栄養さえ有れば生きて行く平和な生物だと言える。



 だが、コイツは違う………他生物の体液を通じてしか行えない。



“正に『生命体』を絶滅させるためだけに作られた病原体”



「これは何と言うか……私も見た事無い位醜悪な生物ネ。後、感染対策万全?」


「………?!」



 彼の一言のお陰で、私は気付く事が出来た……事前に打った感染予防だけでは到底太刀打ち出来ないと。


 慌てて今までの内容を『本体』へと送ったのだった。


 ちなみに研究施設に残っている分身達には開発中の超強力でpm2.5も通さない様なマスクの試作品を次々と『亜空間倉庫』へ入れてもらっている。


 既に開発研究所の工場は急ピッチで稼働させているが……間に合わないだろうな。


 ま、でも出来る限り頑張るだろう。



……………………………………………



 あんな悪趣味でグロい病原体を作り上げる『シャドウ』の事は一生理解出来ない(したくもない…)と思うが、それは今一旦隅においておくとして……



 私が1番危惧しているのは、感染者が破裂した後空気中に散布される“胞子体”への対策だ。



 幸い人数分ルナライト社の出している最新のマスクは有るが、気休め程度にしかならないだろうな……


 正直前身をそれこそ保護する様な装いをしないと恐らく感染する事になるだろうな……現地で暴れるなら尚更格好の餌食となるだろう。


 だが、私の契約している『遮断』の精霊の力を用いれば確かに全員防ぐ事は出来るだろう。



 そこで問題が生じる………カミュ爺との約束で連れて来た若い小鬼達。彼らの数が多いのだ。


 その上種族的にも小鬼は免疫力が低く、感染し易い上に死亡率も高い……薬師鬼へ進化する個体が多い背景にはそんな所にあるのだ。



 一応言っておくが、カミュ爺は例外。あんな強い奴は幾ら鬼多しと言え恐らく他に見ないだろうな………



 それは兎も角として、現在小鬼の免疫力はそこまで問題ではない……なら何がやばいか。それは、”防御”する手段が足らない事だ。


 まず『分身』からの情報でも分かっている事だが、最新型の超防御マスクの製造は間に合わない……今必死に作っているだろうけど、恐らく全員分を完成させるのに少なくとも2日は掛かる。


 そして、マスクだけでは当然あれを防ぐ事は不可能と言える……何せ、生物は一般的に皮膚でも呼吸しておりそこから感染する可能性もある訳なのだから…特にああいった微細な生物にとっては難しくもないはずだ。


 そこで問題になっている事は…全員に『遮断』の精霊を付ける事が出来ない事だ。


 『遮断』の精霊は数が少なく、1人に1匹付けるとなると圧倒的に足らない……今もあの部族は一家総出+24時間態勢で私の従魔達や従業員をそれで無くても『物体X』の脅威から護ってくれている。



 故に、これ以上負担はかけられない……


 長のネロならまだしも、固有の精霊はここに技能が幾ら優れていようと個人の持つ力自体はそこまで強力ではない。同族同士が共同で力を使う事で初めて膨大な影響をもたらす事が可能になるのだ。


 当然巨大な結界や動作をする特定の個人に対して結界を張るのは至難の業……同じ場所で対多数の精霊達が集まって行うならギリギリ行けるだろうが、今回はそう言う訳でもない。


 ま、つまり不可能ってことだ。


 確かにネロは私の直ぐ側に控えているし、出来ない事は無いけど……恐らくこの人数相手には無理だろうな。



「………仕様がない。」



 私は一旦行軍を止めた。戸惑った様な顔をしながら皆、私の指示へ素直に従った。



「どうなされましたか?」


「ちょっと皆さんに悪い報告があるの………
















 この先皆には悪いけど、今から進行組と待機組に別れてもらう。先に送った『分身体』がそうしないとちょっと皆さんの命がやばい状態に陥るって報告が有ったからね。」



 不満そうな顔を当然された……だけど…



「そして、待機組にはこの辺で野営の準備をしてもらい、進行組は今日の所戦場へ一緒に行ってもらう。そして明日戦場へ行くのが待機組で進行組は待機してもらう。そんな感じでローテーションにしたいと思う。」



 すると、皆安心した様な表情をした…


 これで一応半分まで減らせる事が出来る………後は…



「そして、進行組も3班に別れてもらう。内1班は戦闘、1班は救護と場所の整備、そしてもう1班は周囲の警戒と同時に戦闘等の見学をしてもらう。それもローテーションで行うから。


 ちなみにこれらの作業は全て戦場では必要な行為だから今の内に身につけておいて欲しいので今回この様な形に致した。不満が有る者は私が直々に叩きのめすので、直接言いに来い。」


『………………………』



 一瞬不満そうな顔をしたが、最後の言葉に全員絶句した………よし。


 反対者は居ない様で何よりだ。



 これで心置きなく私は暴れ回れる……そもそも『遮断』は固有属性として使えない事は無い訳だからな。



 私自身には今回自分で掛けるつもりなので、ネロには“彼ら”を護ってもらう……彼なら1人で複数人遮断結界を張れる実力が有る。


 ま、ネロは遮断の長だから“当然だ!”と言うだろうけどね。



「最後に、ウォルターとジャンクリと私の3人の中から毎回1人抜けてもらって見学している小鬼達の周辺で監視してもらう。これは後で決めようと思う。」


「?!」 「あの、私は?」



 ウォルターは納得した顔、ジャンクリは不満そうな顔をした。


 そして、ヴィンセント殿下は微妙な顔をしながら案の定質問して来た。



「ヴィンセントは今回小鬼同様訓練に来ている訳なので、単独行動はさせないようにしているだけです。」



 納得は……まあしていないんだろうな。だが…



「今回私の想像以上に危険な戦場になっているので、荒事への経験が皆無な人が1人でそんな中に投入されれば確実に命を落とすでしょう。それを阻止するために今回こういう形を取りました。」


「……………私も死にたくはないからな……」



 悔しそうに顔を歪める王子………まあ私もそんな経験は有る。と言うより、誰だって皆それは経験する事だ。誰であっても、最初から戦場での立ち回りが上手い奴はいないよ。


 だけど、最終的に死なないで出来る様になれば良いだけだ。


 今、フォローしてもらえる時に、沢山の事を吸収して自力で対処出来る様に、旅に出ても自身の身を守れる術を得てくれればいい。


 

 さてと、安全第一かつ大胆不敵にいざ戦場へ。



 恐らくこれでは不十分でしょうが、ここはもう…”魔術・魔法、超便利!”で納得頂けたらと思います。


 と言うか、”遮断”て攻防共に最恐の技の1つだと私は個人的に思っております……だって、酸素を相手から遮断させたりすれば攻撃になるでしょうし、防御は宇宙から常に降り注いでいる”宇宙線”等と呼ばれる光線も全て防げるのですから。


 さて次回、日曜日に何とか投稿出来たら投稿します。無理だったら月曜日行こうになると思われます。それでは宜しく御願い致します。

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