表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役放棄、更に自由人へ(仮)  作者: 平泉彼方
第一章 逸般人な悪役令嬢、好き勝手過ごす
56/142

55 皆さんどうもお疲れ様です。

 読者の皆様本日も大変御待たせ致しました……現在ギリギリで投稿している平泉彼方です。感想への返信……もう暫く御待ち下さい。本当に申し訳ないです。


 さて、今回は治療回と……到頭王子が有るモノと接触致します!それでは本編をどぞ。



「………術式発動。」



 医師達が魔道具で心拍を測り、人工呼吸器についた酸素濃度を調節している横で、私は次々と魔術を王子に掛けていった。



 今回の術式は身体全身を『騙す』事が目的。



 身体全身を騙す為には恒常性の維持を行う器官全てに対して幻術を掛けていかなければならない………特に、最終的に騙す相手が人間の『脳』であるならば特に。



 それ程までに、人の身体…特に脳は繊細かつ複雑なのである。



 故に、現在結構苦労している……正直私一人だったら何度も失敗していただろう。



—どこのどの器官のどの細胞がどんな物質を出すのか。


—この器官にどんな幻影を見せればどの様な影響が出るか。



 打ち合わせではちゃんと聞いていたし、計画も練った。


 だが、人の身体もまた個人差があり、それを見付ける度に何度も軌道修正をしていた……だけど、それはまだいい。


 ………一言だけ言わせてくれ。



 細胞レベルでの治療はもう金輪際行わない!



 これ程細かく術式を組む羽目になるとは……予想外も良い所だ。


 先程から何がそれほど大変か?


 皆さんは想像出来るだろうか………細胞1つ1つにちまちまと幻術を掛けていく作業。細胞1つ1つもまた人と同様同じものは1つとして存在せず、一々それに見合った術式を掛けていかなければならない……



“これ、私じゃなかったら多分魔力枯渇で死んでいるだろうな…”



 まあそれは特に問題にはならないから別にいい…いや、良くはないが、それは置いておく。



 問題は、これ程細かい作業を今までで…大体6時間は続けているのだ。



“終わらない……”



 そう、細胞の数は数多に有り、終わりが見えないのだ。


 1つ1つの細胞に掛ける時間はそれ程長くない…3秒で終わる。だけど、塵も積もれば山と成すという言葉通りだ。



“もう疲れた〜……”



 頭では王子の人生が掛かっている事は分かっているし、真剣に今だって取り組んでいる。


 ……だけど、流石にもう限界が近い………



「御嬢!頑張れ〜!!」


「……おい、騒ぐな………」


「センセー、ピノいわれたものもってきた!」



「成る程…今回はこの術式を使用して………今度応用術式を私の患者にも使います。勉強になります。」


「そうだな…俺もこれ使って今度ガキ共を治療するか。」



 ………そして、そんな私の様子に構わず医師の皆さんはこの機会に色々と学んでいるそうです…



 果たして私から学ぶべき事があるのだろうかと疑問に思うのは私だけだろうか?



…………………………………………



「…………………もう限界……」


「お疲れ様です、お嬢様。」



 あれから更に8時間…………もう一歩も身体が動かない。


 疲れ過ぎ…と言うより眼精疲労と極度の緊張のせいでもうね、腰が抜けたと言うか、力が入らないと言うべきか……



「だけど助かったよ………まさかウォルターが助手として入ってくれるとは思わなかったから。」


「いえいえ。ルーナ様の執事たるもの、この程度の事が出来ずにどう致しますか。」


「いや、今回はマジで助かったよ、ありがとうね。」


「我が主の御役に立てた事、私としましては光栄に御座います。」



 穏やかかつ和やかに答えるウォルター……相変わらず渋くてセクシーな声をしてらっしゃる。



 御陰様で、現在ウォルターにお姫様抱っこで運ばれている私は滅茶苦茶心音が五月蝿い状態になっているでしょうね……



 ……正直今はそれどこでなく、疲れて死にそうだけど………



「お嬢様、湯浴みは如何致しますか?」


「………御願いします。後、ちょっと今日は溺れそうなのでハンナ付けてくれる?」


「了解致しました。直ぐに手配致します。」



 そう言うと、私発案の『式神術式』を使ってメッセージを送った。



…………………(???)…………………



 あ、やっと来た様だね。



「誰?」



 私か?私はそうだな………『咎人』とでも言っておこう。そう言う君は、私の生まれ変わりかな?



「つまり貴方は私のご先祖様か?」



 違う…まああながち完全には否定出来ないけどね。だけどそうだな…君の元となった存在だと言っておくよ。



「……ここは?」



 ここは君の中の“溝”かな?ほら、君って魂が抜けているだろう?だから魂と魂の間にこんな風に亀裂が入っているんだよね。



「え…それって不味いのでは……」



 大丈夫だとは言えないけど、今後君へ魂が統合されれば特に問題は起こらないと思うよ?ただそれを実際に実行出来るかは私には分からないし、その時君がどう変化するかが完全に未知数だね。



 だってそうでしょ?



 君を含めて今まで“3人”に別れていた意識が唐突に1つへ統合されたとしよう。その時君が……いや、君だった存在は確実に“3人分”の感情を持つ事になるってことだからね。


 勿論嬉しいとか正の感情ならいいと思うよ?それこそ人3倍人生を楽しめるだろうからね。



 だけど……それが負の感情だった場合は?



「…………………。」



 そうだな、例えば君が有る人に“愛憎”を向けたとしよう。それが3倍になるってことだから……どんな事になるか今の『君』になら容易に想像がつくでしょう?



「………相手を確実に傷付けるな……………」



 そう言う事だ……かく言う私もそんな経験が有るが、今それは置いておくとして。


 これから君に話す事は“今後”君の取るべき選択にきっと役立つだろう。いや、役に立つ事を願っているよ。



 ただ、残念ながらここで語った事を君が憶えて居る事は無い。



「?!」



 まあそれでも印象にぼんやりと残るがな……恐らくその“選択”を迫られた時、的確に自分の決断を行えるだろう。



 その為に私は君に話すのだから……有る男女に起こった『悲劇』の話しを。


 同時に……有る魂達が別れ、再び出会うまでの話しを。
















 ……………そして、時系列は現在へと繋がったと言う訳だ。



「そんな事が………だが、何故貴方は彼女を傷付けたのだ?それさえ無かったら……」



 そうだな………私の話した『男』は既に死んでおり、君の意識の贄とされたのでもう既にその意識は殆ど残っていない…


 だから多くは語れないのだよ。


 こうして君に私の事を話せるのも、一部だけ重要なデータが『男』の執着なのか、奇麗に残っていたからなんだ。



 恐らく……酷く後悔していたのだろう。



 そして君の代まで彼は引き摺った……もう既に呪いだと言われても可笑しくないと思う。だってそうだろう?本当は君も彼とは無関係に幸せになる未来だってあったはずなのだから。



「だが、私は彼…いや、私の前身だった『男』に感謝しなければならないだろう。」



 ………何故?



「そんなことがなければ………………
















 ルーナと出会う事は多分、一生無かっただろうから。」



 ……………………彼を恨まないでくれてありがとう。彼の記憶を元に作られた私も、少しは報われるよ。



 そして、彼女との出会いをそんな風に思ってくれているのを見て、私は安心して逝ける……



「!!いなくなってしまうのか?!」



 元々私は『魂の欠片』の一部………彼の遺したデータの残骸、更にその一粒だった存在だ。何時消えても可笑しくない程不安定な状態だったのだ。



 今もこうして君へ私の持つ全てを語れた事は、奇跡の様に思っている。



 出来ればルーナ…彼女の隣には、君が居て欲しい。何故なら彼女を幸せにしたいと言う意志が君を形成する魂情報を除いても、君は彼女の事を深く愛しているのだから。



 ………それこそ他の2人とは違って、君は彼女の幸せを願う“優しい”形で。



「……………彼女が私を選んでくれたならば、そう致そう。どんなに感情の激流に巻き込まれようと、私は負けずに自分の意志を貫き通す所存だ。」



 なら、私は逝く。さらばだ。



「ありがとう。」



………………(ヴィンセント殿下)………………



 意識が浮上して来ると同時に私は手に温かで優しい感触が伝わった。そして、目の前に誰かが居り、私を心配そうに眺めているのも何故か分かる。


 目を開くと、愛しい人が居た。



「おはようございます、寝坊ですよ?」


「仕方が無かろう………ずっとそうしていたのか?」



 寝不足なのか、目の下には酷い隈が出来ている彼女……手はずっと握られていたのだろうか?



「仕様がないじゃないですか……私が術式を組んでから3日は立っているんですからね!」



 安心したのか、彼女は一瞬で脱力する…そして



「良かった…」



と消え入りそうな小さな声で言った。


 そんな彼女の様子が可愛らしく愛しくて、気が付いたら抱付いていた……ああ、温かくて柔らかい、彼女の感触だ…



 私は……生きているのだな。



「大丈夫、ヴィンセント殿下はちゃんとここに居ますから。」



 安心させる様に、宥めるように私の頭を撫でる彼女の小さな手………この手で私を生きながらえさせたのだな。



 年相応に小さな身体だが、その背か中は父より偉大だな。



 普通はここで嫉妬でもするのだろうか?何故か知らないが、そんな風に一瞬思った。


 だけど、不思議な事に一切そんな感情は湧かない。


 彼女に向けるのは、愛情と尊敬、それから多少の独占欲で十分だ……それ以外に何を一体抱く事が出来よう?


 ただ同時に色々と心配にはなるけどな……


 背負い過ぎていないか、私以外の男を意識していないか……だが何よりも、彼女がちゃんと『幸せ』であるかどうか。



 私は何が有ろうと、彼女の幸せを願おう。



 それは今も、これからも変えるつもりは一切無い……それは彼女を幸せにするのが私ではなかったとしても、だ。


 当然努力はするが、選ぶのは彼女。


 だから、その時は清く身を引く……………それまでは彼女と共に、いや、彼女が疲れた時には何時でも肩を貸せる位置に居たい。


 彼女は何かと背負い過ぎるきらいが有るからな…『昔』から。


 ………………『昔』?何時の事だ?



 分からないが、そんな気がした。



「さて、3日振りに湯浴みしますか?一応ウォルターに命じてお湯の用意は出来ております。それとも食事にしますか?」



「………どちらも頂くが、まずは言わせてくれ……只今戻った。」



 すると、彼女の顔が一瞬驚いて目を見開くと、直ぐ綻んだ。



「お帰りなさい。御待ちしておりました。」



 その言葉だけで何故だが物凄い安心した。


 一皮むけて、ひたすら愚直にルーナを愛する一人の男に王子はなりました。誰よりも多分幸せを願い、ドロドロした感情も押し込める人。そんな人物像です。


 ですが当然これで終わるはずも無く………彼が完全に魂を戻した時、彼は”彼”のままでいられるのでしょうか?


 まだ誰とは言いませんが、彼と統合する予定の魂……それを持つ人達は結構過激です。ですが、王子は頑張ります!自分とルーナの幸せの為に。


 それでは次回も宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ