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悪役放棄、更に自由人へ(仮)  作者: 平泉彼方
第一章 逸般人な悪役令嬢、好き勝手過ごす
52/142

51 その頃……

 読者の皆様何とか投稿間に合いました……


 さて、今回は王子出てきません。別人の視点から、ルーナが王子の件と同時進行で行っている事を描きました。


 それでは本編をどぞ。

…………………(???)…………………



トントン「遅れて済まない。」


「いやまだ大丈夫だ。それにまだ来ていない奴等もいるからな……それより何か飲み物でも頼んでおけ、話しが長くなりそうだからな。」


「………そうさせてもらう。」



 小柄で子供特有の高い声だが、何処か歴戦の戦士を思わせる程のすごみの有る声………本当に歳不相応な奴だ。



 それに、相変わらずだな。



”全身真っ黒で肌を一切露出させていない仮面の傭兵”



 登録してからそれほど経っていないのにも関わらず、指名以来が大量に舞込んで来ては全てそつ無くこなしている事は知っている。



 超大型新星(スーパールーキー)として注目されている謎の多い子供。



 当然何度も以来後、新人潰しのハイエナ共に狙われていたが、有る時を境にぴたりと止んだ事は記憶に新しい………


 何をしたのか聞くと、クククと笑いながら



「少し丁寧にお話ししただけだよ?皆いい鴨…ではなく、良い人達で、話しもよく分かってくれたけどね?」



 …………………今年で傭兵歴30になるベテランである俺も、奴の出した殺気と言うか威圧には耐えられず、結局聞き出せなかった。



 それにしても今日は運がいい………会議はまだ始まっていなかった様だ。


 こいつが怒るとおっかないからな………子供なのに。




 数ヶ月前、この地方で起こった魔物が1ヶ所で大量発生する事件。幸い『大氾濫』に至らなかったのは、全てコイツのお陰だ。俺達は出遅れたどころか………何も貢献出来なかった。


 当時の俺達は愚かだった………


 開け放たれた扉からギルド受付の有る居酒屋へ入って来た背の低く、声の高い“子供”。そして第一声……



「魔物の氾濫が起きる、至急人を集めて大規模なギルド主催の“狩り”を行う事を薦める……でないと多分ここも被害に遭うだろう。」



 子供の戯れ言だと俺達は判断し、無視した………大体傭兵が出るよりそれは冒険者の仕事だろうと思っていた……


 そうだ、俺達は油断していたのだった………街に避難勧告を伝えるブザーが鳴り響くまで。


 そこで俺達は慌てて準備に取りかかった………



 街が潰されてなるものか!



 そう意気込んで、森へ突撃したものの………何も居ないかの様に、静まり返っていた。



「……誤報か?」



 仲間内の一人がそう言いながら歩いていくと………次の瞬間同じやつが悲鳴を上げた。俺達は警戒しつつそいつの視線へ自分の目を向けて………



『…………………………』



 全員見事に絶句した。


 仕方が無いだろう?何故なら………
















 外傷の少ない奇麗な身体の“大型魔獣”が、樹に括り付けられて血抜きされていたのだから。


 それも種族を見る限り……………少なくともBランク同士で20人のパーティー組んだ上で全員一斉に攻撃をしなければ仕留める事の出来ないやつらだ!!


 これをほぼ無傷…つまり、一撃……………とんでもないバケモノだな。



 敵だったら………………生きて帰れないだろうな。



 我々は増々普段よりも意識を引き締めて森の奥へ向かった。その途中でも大量の魔物の遺体が見付かった……全て血抜きされた状態で。


 そして奥へ辿り着くと………そこに広がる濃厚な“殺気”と“死”。鉄錆の様な血の臭が辺り一面広がっており、よくよく見ると足下の土は全て“紅”に染まっていた。


 慌てて上を見上げると……………吊るされて血抜きされている『イャンバルガルーラ』と呼ばれる大型夜行性猛禽類。



 闇夜に現れ、鋭く毒の有る爪で獲物を一撃必殺する恐怖の暗殺者………更に、自分の口より小さな生き物は全て丸呑みにする習性が有る。


 そんなおっかない生物……そのはずなのだが………



 だが、そんなのはまだまだ序の口だった……



 小型であろうと少なくともSランクの魔物であっていたはずの多くの魔物の遺体………それが、全て無傷だと?!!!?!!


 流石に中には多少は傷のついていた魔物も居たが………よくよく見ると、SSランクのやばい魔物が多かった。


 例えば『大紅瓦カブトミミズク』と呼ばれる魔物……こいつは頑丈な羽と魔術、そして鋭い爪を使って攻撃するフクロウ型の魔物である。


 そして攻撃手段は至って普通なのに、“SS”である理由…それは……


 彼らは他の脳筋共と違って戦略を考えられる程の頭脳を持っており、それが1番厄介なのだと言えるだろう……罠を仕掛けたり、逃げ道を塞いだり……


 兎に角やって来る事がえげつない上大体えぐいため、並の冒険者や傭兵では相手に出来ない程やばい敵なのだ。



 それなのに…………



 ?!



 刃物の音が聞こえ、慌ててそちらに目を向けた。そして、直後に後悔した……



 そこでは……………………我々では到底至る事の無い次元の戦い…いや、”圧倒的な蹂躙”と呼ぶにふさわしい行為が行われていた。



 ギルドで報告が有った様に、確かに魔物の大発生はしていたのだろう…それもSSを軽く越える様なやばい連中が多い事がここからでも十分な程分かった。


 ……中には鱗粉に毒素を含ませており、近寄っただけでも大ダメージを相手に与える魔物も居た。


 勿論周囲に居る俺達にも影響が無い訳でもなく……慌てて解毒剤を飲んでから『ルナライト商会』の発売した“マスク”なるものを口に付けて事無を得ている。



 やがて、魔物の数は後1匹となった………あれは突然変異種の『ロックタートル』か?



ー全身が……………『日緋色金』で出来ている、だと!?!!!


—あんなバケモノを一体どうやって倒すんだよ?!!



 俺達の心が魔物の姿を前に、完全に折れた所だった……



「………仕様がないな…勿体無いけど。よっと。」



 そんな一言をこぼした後、そいつは巨大な“薙刀”を振り下ろし…………亀を両断した。


 シュタッ、と地面に降りて、俺達へ向かって来る小さな“影”……その背後では数秒遅れて亀の断面から大量に血が吹き出ていた。



「皆さん遅かったですね……僕一人で事足りた様で良かったですけど。」



 ハーフマスクから覗かれる口は、皮肉っぽく口角が上がっていた………そして、よくよく見て見ると、そいつは……












「先程振りですね、みなさん。僕はちなみに『イルマ』、最近結成した『月虹夜』のリーダーなどと言うものをしているが、新人なのでよろしく、セ・ン・パ・イ?」



 クククと笑いながら俺達へ迫って来た坊主へ不覚に全員ビビって腰を抜かした事は言うまでも無い…やつから何故か冷気が出ていたのだから。



 そして、道々やつから説教されながら俺達は帰ったのだった。内容は……察してくれ。つか、もう忘れたい………



 それと獲物を撤収する際も、奴は『空間属性』等と言う希少な属性の魔術を駆使して全ての獲物を回収していった。


 森を抜けると我々に獲物を数匹渡して来た。俺達は何も今回していなかったので当然ながら突き返そうとした。だが、やつは



「一応血抜きしたブツの回収を手伝ってくれたからその報酬って事で。」



と言うなり獲物を置いたまま”消えた”。



 その後も何度か接触したが、絶対勝てる気がしない!!歳の差や経験値の違い?そんなの鼻で笑いながら圧倒的蹂躙劇を毎回繰り広げているからな!!俺は参加した事無いけどな……



 ……そんなとんでも坊主がコイツだ。



 そうして回想している内にギルドの主力となっているグループの長が集まり……緊急会議が始まった。



…………………………………………



「さて。皆さんに今日集まって頂いた理由は他でもない………今回遠征に行った時に起きたとある“事件”についての報告だ。」



 カランッ、と音をたてながらグラスを置く『ブルーデイズ』の長。ウィスキーとロックアイスが薄暗いライトに照らされて不思議と温かな金色に輝く。



「ほう………イルマ坊、お前さんをそんな風に焦らせる程の事が起きたのか?」


「ああ、その通りだ。諸君、以前何度も起こっていると思われる魔物の『凶暴化』と『大量発生』についてだが、先日の以来の結果、原因が分かった。」



 ?!!!!!!?!?!!



「………そうか。だがその様子だと、我々には話せない様だな。」



 葉巻を吹かしながら、ウォッカを片手で弄るソロの『フェンネル』。奴はその鋭い目でイルマを見詰めていた。


 そしてイルマは優雅にティーカップを置くなり真剣な目つきで答えた。



「ああ、今回ばかりは駄目だ。皆には危険過ぎるからだ。」


「それは貴様の決める事かい、イル坊?」



 ドライベルモットを机に置き、凄む様にそう発言した『セイレーン』の女傑、『ジュリア・バギンス』。普通ならあの女豹を前にすれば誰でも肝を冷やす………相変わらず美人なのに眼光が鋭からな。


 だが、イルマは至って冷静に答えた。



「ほう、そこまでいいますか。ならばジュリアさん。貴方はコレを聞いてもそれを言えるかな?


 今回の首謀者、と言うより黒幕は恐らく……















『シャドウ』と言う暗殺者。」



 ??!?!?!?!??!!


 ………………………………………。



 会議室とは名ばかりの居酒屋の一室………そこへ突如静寂が訪れた。


 誰も、俺も無理だ……………………そんな大物が出てくる何て、想定外も良い所だ!!



 冗談じゃない!


 この件は分かる………関わったら確実に『死ぬ』。



 奴は伝説の殺し屋だ…誰が何処で何をしていようと、確実に依頼された相手を仕留め、報酬もきっちり払わせる。


 払わなければ影の様に付き纏い、いつの間にか身ぐるみ剥がしても足りなかった場合は相手の身体を文字通り“切り売り”等と言った恐ろしい事を行う。


 さらに、契約違反者には『死』などまだ生温く思える様な拷問と屈辱を味わせ、挙げ句、発狂させないギリギリの痛みを伴う殺し方をされると言う。



 そして………いつも“ナニカ”を探している事だけは知られている…本人がそう言っていたので。



「奴か…………………なら、我々は何も出来まい。いつも通り魔物を狩るだけだな。」


「そうだな……こればかりは致し方有るまい。悔しいが、奴に敵う程の実力は持ち合わせていない。」


「ああ、俺もまだ自分の命が惜しいからな……」



 次々と、皆がそう発言した中………俺はふと疑問に思った事を聞いた。



「ところでイルマ……お前はどうする?」



 すると、奴は皮肉っぽく口角を上げて……



「決まっているだろう?
















 奴には僕直々に、引導を渡して来る。」


『……………………』



 当然これには皆絶句する他無い……つか、他にどうやってリアクションしろと?!



「まったく……坊やもあまり逝き急ぐなよ?私らもちょっとは協力するから………今回は。」



 そんな中、ジュリアだけはそう言った。



「な、お、お前?!」


「おいおい、命が惜しくないのかよ……」



 一瞬彼女の危険極まりな発言にざわつく。そしてそれを『百鬼会』所属の人鬼、『レナルド・オーガルデキウス』が制した。



「皆の者、良く聞いて欲しい。我が故郷『霊山』でもその様な兆候が見られている今、一人でも協力者が居た方が俺としては助かる。だが、ここにおわすル…いや、イルマ殿は危険であり、皆を巻込む訳にはいかないと言われた。」


「常識的に考えれば当たり前だろう?」


「ああ、そうだろうな……何も知らなければな。」



 その言葉に皆が再びざわつく。同時にイルマ坊が人鬼へつかみかかった。



「…おい、余計な事は……「おいおい…喧嘩は駄目だろう?それと、レナルド、続きは?」」



 咄嗟にイルマの腕を掴んだため睨まれたが、無視して鬼へ続きを促した。



「ああ、皆に伝えたい事だが………

















 今回の首謀者の狙いは、大規模な『殺戮』だと最近分かった。そしてその真の狙いは、我々の『魂』の回収。」



 再び静まり返った空間で、イルマが溜め息を一つ吐いた。



「正確には街を壊してそこに集まった負の感情に染まった『魂』の回収だな………それを何に一体使うのかは未だに不明だが。」



 …………………全然無関係では居られないと言う事か。ここだって何度狙われた事か……



「だが、この件に関して積極的に動く事はお勧めしない。奴は何処にでも居て何処からでも我々を攻撃出来るのだから。」



……………………(???)……………………



 会議が終わり、私達は散り散りに解散していった。


 私は……………


 兎に角急いで『王』へ事の次第を伝えなければ……この件が明るみに出れば……



「要らぬ混乱を招くと?」



 背後からの気配にゾクリとした。そして振り返ると……予想通りの人物が居た。



「ルーナ御嬢様………」


「今の私はイルマですからね、間違いない様に………宰相殿?」



 …………………そうですか。私の正体をご存知、と……



「それで……私をどう致しますか?」


「ああ、伝言を頼みたい………
















 毒薬の提供者は『シャドウ』ではない。」



 ?!!!?!?!!



「あれは、別に制作者が居ると思う………元王妃周辺の人間関係を洗い直せって『本体』が行っていたので。じゃあさよなら。」



 ポンッ、と音を立てて消えた『分身体』。



 私は慌てて王宮へ事の次第を伝えに帰って行った………………しかし、何故私の事が分かったのだろうか?


 いや、流石『セヴェンの娘』と言うべきか………


 それでは次回も宜しく御願い致します。


9/18:サイレンサー→シャドウ 訂正致しました。

9/20:印籠→引導 訂正致しました。ご指摘有難うございます。

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