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悪役放棄、更に自由人へ(仮)  作者: 平泉彼方
第一章 逸般人な悪役令嬢、好き勝手過ごす
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49 父親の知っていた王子の事情について。

 読者の皆様……なんとか投稿間に合いました。


 さて、今回は番宣無しで。本編をどぞ!


 治療から数日後、ヴィンセント王子の容態がやっと落ち着いた。



 暫くは大変だった……………身体の急激な変化で高熱と激しい痛みに襲われていた。


 そして、眠っている時も悪夢を見ていたのか毎日うなされていた。


 眠りながら涙を流し、夢の中では孤独になっているのか



「私を一人にしないでくれ。」



等と、途切れ途切れに言っていたヴィンセント王子。



 ……幼少期から彼はずっと酷い人達に囲まれて場所で生活していたのだ。


 その時負ったと思われる“心の傷”の量や深さは一体どれ程のものだったのだろうか……正直想像が付かない。



 若いのに眉間に深い皺が寄せられており、苦渋に満ちた表情をしていた。そして時折、何かを求める様に宙へ手を彷徨させた……その手を取ると、離さないと言わんばかりに強く握って来る。


 私はそんな彼の大きくて温かいてを強く握り返した。



“大丈夫、私はここにいるから”



 やっと呼吸の落ち着く王子……相変わらず熱は下がる様子も無く、身体が痛いのか、表情を歪めていた。



“一体どんな辛い夢を見ているの?”



 これ程酷いうなされ方をしていたので、王子が意識無く眠っている間だけ精霊に後を頼んで父親から事情を聞いた。


 正直、私の想像以上に酷い目に遭わされて居たようだった……………それも、生まれた直後から。



…………………………………………



 彼が王宮に入ったのは3歳の時。それまでは、孤児院に入っていたのだと言う。



 彼を生んだ直後に母親は産褥で亡くなり、母親の両親は馬車の事故で既に他界していたため誰も彼を引取る者は居なかった。


 ちなみに母親以外の親族は居ないそうだ。



 彼の入った、いや、入れられた孤児院………それは、酷い場所だったと言う。



 これは後に分かった事だったそうだが、王子が去ってから数年後、孤児院の経営者が横領と人身売買と児童虐待(ペドフィリ)の罪で処刑された様だ。


 それ以外にも館内を調査していった結果、縄痕や撲痕、それ以外にも刃痕が認められる子供の遺体、それから多くの白骨化した幼児が地下から発見されたとも言われている……アンデッド化しなかった理由は未だに謎らしい。


 そこを見ても分かる様に、相当な悪辣環境に王子は置かれていた様だ。同時に、良く生き残って来れたとも言える。



 ……それが、どれ程彼の心へ影を落としたか測り知れない。


 王宮に引取られてからも散々な日々を送った王子。


 継母とその息子達からは言われも無く嫌われ、命を狙われた。食事は碌に与えてもらえず、時折王妃の侍女が持って来る食事には毒が必ず入っていたと言う。


 そして、父親である国王陛下はひたすら彼の苦しむ様子を何も言わず、関わらずに傍観していた………知っていたのに。


 ………王子は当時、それでも必死に生きていた。


 自分が何時見限られて再びあの孤児院(ゴミ溜)へ捨てられるか分からないと怯え、日々『王』になるための厳しい教育を受けていたと言う。


 ただ、周囲に居た人々も彼に対して悪意を持っていたとしか言いようが無い………変態に狙われたり暗殺されかけたり。


 それ以外にも王妃の息のかかった家庭教師に虐待されていたと言う。それも、碌に教育など施さずに……


 そんな中、彼は図書館に通って自力で学んだ。


 だが彼は当時4〜6歳の子供。日本で言えば、まだ保育園か幼稚園に通っている頃だろうか?そんな子供が独学で学習するのには当然限界がある。


 ……彼は私の様に前世の記憶(チート)を持っている訳でもないのだからな。


 そのため、必然的に偏った知識と思想しか身に付かなかった……………それが私と有った当初の『彼』である。


 そして当然、性格…と言うより者の見方が完全に歪んでいた。



幾らでも替えの効く駒(私自身)として認識し、全く此方を見ない”



 それが国王陛下へヴィンセント王子が抱いていた印象だったと私の父親は言っていた。



 父は幼少期よく王宮へ出向いていたが、その当時はよくヴィンセント王子を見かけては気に掛けていたと言う。


 王宮とは思えない程ボロボロな服を纏い、頬がこけ、青白い顔をし、目が死んでおり、体中に痣が出来ている男児………1人柱の影で震えていたと言う。


 王子を初めて見かけた時は、王宮に迷い込んだ孤児かと思ったそうだ。


 何度か見かけ、怪しんだ親父は本人を自分の職場へ呼んで何度か接触した様だ。そこで必死に事情を聞き出した親父……ナイス。


 そこで明らかに虐待されていたと分かり、父は自分に出来るフォローをなるべくしていたと言う……国王陛下は当時隣国との冷戦関連で家族を顧みる余裕が無かったそうだ。故に王子のそんな様子は知らなかったらしい。


 正直不幸に不幸が重なっていたとしか言いようが無い……


 そして後に、この事を国王陛下が耳にした……その結果、私の父を王子の後ろ盾にする為に私と婚約させたのだと聞いた。



 正直その頃には虐待等も減った上、見目が良かったため侍女達や他の貴族の女児に人気がでて来た様だ。本人からしてみれば、身勝手な話しだったはずだ。



 そら、異性……と言うより婚約とかしたくないはずだよ。もう放っておいて等とでも思っていたのかも知れない。



 だけど、どう言う訳か………私は気に入られた。


 余談だが、こんな事が一度有った様だ。


 私と婚約した後、隣国の姫との婚約話が出た為破棄する案も一瞬出たらしい。だが、本人が全力で断ったと言う……


 公爵家と関係を持っていた方がいい事と隣国の姫を第1王妃にすれば、国が乗っ取られる可能性が高くなる事を主軸に国王陛下を説得していた様だ。


 この時ばかりは国王陛下も王妃までもどん引きする程鬼気迫る勢いだった様だ………それこそその後、国王が縁談を勝手に持ち込まない事を自分自身に誓う程に……


 ………正直何処から突っ込んでいいのか分からない、何と言うか大人びていると言うか…ませていると言うべきか……………


 まあ確かに孤児院とは名ばかりの場所に居たから最初から達観してはいた事は事実なのだろうけど。


 つか……………その時点で既に私がロックオンされていた理由が謎過ぎる。


 だって考えてみ?


 見合い的な席では多分一言くらいしか言葉は交わさなかったし、互いの事を知る様な機会は極力儲けていなかったはずだからね………


 うん、好きになる要素がやっぱり分からない……………謎だ。


 確かに自分を陰ながら助けてくれていた公爵の一人娘だけど、対して他の所の令嬢と変わらないと思うし、それに見た目もまあ……美少女では有るけどこの世界って美形率多いから珍しくもないしね……


 ……いや、自分で言っていて虚しくなるけどさ………


 でも当時から王子は本気だったらしい………父も当時、あの時の王子の剣幕には驚いたと言っていた。



 そして、婚約してからは公爵領(ウチ)へ良く来ていた。


 今思えば、王宮に入られないからここをシェルター代わりにしていたのかも知れない………それを私は毎回追い出していたと言うか……ぞんざいにしていたと言うか……


 物凄く今更だが、胸が締め付けられる様な思いがした。



 ただ、1つだけ確かな事が有る………今、彼は生きて私の目の前に居る。


 そして、私は彼の事情を有る程度知った。



 精神的な傷痕は身体のそれと違って癒すのには相当時間がかかる。それも、周囲が努力しようと本人が前を進もうとしない限り、過去に捕われている間は何をしても無駄。


 だけど王子は常に前を向いて歩んでいる。


 そして私は彼の側に居る……いや、彼にそうして欲しいと求められた。私と共に居ると心が休まると。



 気付いていながら何もしなかった私をそんな風に……



 だから決めた。彼を支えると。少しでも回復する様に、側に居ると。


 それに………何だか心地いいのだ…何故か物凄く懐かしいし。



 どんな形かは分からないけど、私は彼の事は“好き”だ。



 それが異性に対するものなのか、それとも家族や友人へ向ける感情かは未だ不明………自分の感情程分からないものは無いので仕方が無い。



 そして元気になったら共に世界へ旅立てば良い。



「今は良く眠れ。」



 現在は容態が安定し、静な寝息を立てている王子。握られていない方の手で頭を撫でると、心地良さげに笑顔になった。



 身体や顔は元の11歳の子供相応のものへ有る程度無事に戻った。だが、髪や目の色が濃い色合いになり、顔の感じも変わった。


 髪は金混じりの銀色だったのが、今は全体が薄灰色に近い色となり、その上で何故か濡羽色が混じっている。目の色は明るい青と緑だったのが、濃紺と柚子葉色となった。


 顔は以前の状態から甘さを数割程度引いた感じになり、少し大人びた様な気がした。特に全体的に丸くて“可愛い”と女性が言う様な目元が、引き締まっていた。



“ああ、これで完全に乙女ゲームの人物と違うと認められる”



 絵柄が………今のヴィンセント殿下と乙女ゲームに出ていた奴とは多分違った。


 既にもう此方に来てから数年経っているため忘れ掛けているが、それでも断言出来る………ここにいる人物とあのゲームに出ていた人物では、雲泥の差が有ると。


 詳しい設定等は知らないが、こんな風に現実ではない創作物の世界で王子は苦労していただろうか?心に歪みが有りながらそれ以上に素直で負けず嫌いな性格だったらろうか?


 もしそんな人物だったのなら、あの作品における健気なルーナを殺さなかっただろう。


 今の王子なら私は保証する……………彼ならば、あのルーナをきっと離さないだろう。



「お休み。」



 王子が完全に眠った事を確認してから私は部屋を後にした………これから私はやる事が有る。



 まだまだ眠れない……



 だけど、何となく王子の穏やかな寝顔を見たら少しだけ頑張ろうと思えた………何故だろうか?


 事情を知ったからか。王子に対しての評価が変わったから。


 それとも…………



「ルーナ、お疲れ様。」


「ああ、ジャンクリ………今日も先に寝ていても良かったのに。」



 私にすり寄って来て、心配そうに顔を除く人型ドラゴン………コイツにも、今回は迷惑を掛けた。


 王子の処置をする際の助手は、彼以外に適任が居なかったからな………イッシー達には危険すぎて立ち会わせられなかった……


 何しろ、魔素が暴走して術者に『新月』の影響が来る可能性もあったのだから………実際危なかったし。


 無事成功したからよかったものの、失敗していたら確実に私も王子もろとも死んでいた。


 王子から摘出した毒素は……………“悍まし・おどろおどろしい”意外の言葉では形容し難いナニカであった……


 そして、色合いが『黒』であり………私がゴンから摘出した物体Xに酷似している波長が出ていた。


 ………………この件も、あの黒幕が関わっている可能性が高い。


 つくづくやってくれる………私の周囲をあたかも“狙ったか”の様に攻撃して来るとは……



 よっぽど嫌われている様だな……別に良いが。



 だた、常々思うのは何故“彼ら”であって“私”では無い事かだ……どうせ苦しめるのなら私に攻撃した方が効率で気ではなかろうか?


 正直黒幕は何がしたいのか分からない……


 だけどそんな事はどうでもいいけど…………ここまでの事をされて、殺さないわけにはいかないからね。


 楽には死なせないよ………



 さて、『新月』の詳しい解析を行うか。


 次回………頑張って原稿を書いていますが、間に合うかどうか……頑張ります。

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