表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役放棄、更に自由人へ(仮)  作者: 平泉彼方
第一章 逸般人な悪役令嬢、好き勝手過ごす
47/142

46 有る愚かで優秀な男の後悔。

 読者の皆様どうもこんばんは。何とか投稿舞い合いました……後、感想有難うございます。


 さて、今回は本編未登場だった”有る男”の後悔の話しです。それでは本編をどぞ!


 後悔しても全て遅い事は知っている………だが、その事に私はこれからも悩んで行くのだろうか?


 頭では分かっている……全て自業自得なのだと。


 私が親らしい事を何一つしなかった事が悪かったのは分かっている。


 だけど、それでも………………



“私の唯一愛した女が私と愛し合って生んでくれた子供と二度と遭えなくなる事には耐えられない”



………………………………………………



 息子が家へ帰って来た時、表情を見て安心していた。



“公爵では多くの事を学び、成長している”



 ここに居た頃よりずっと良い顔をしていた……理知的で端正な1人の立派な若者へと成長を遂げていた。


 これからも時々こうして息子の成長を見守る事が出来ると思うととても嬉しかった。


 だが、お飾りの王妃をしている阿婆擦れが、それを粉々にしやがった………



 食事をしていた時、息子…ヴィンセントの様子が可笑しかったのに気付き、一旦食事をこっそり中断させて御付きの者に様子を見させた。



 その結果、毒を盛られていた事が判明した。



“王族であるため、大概の毒への耐性は付ける様な訓練を行うので大丈夫だろう”



 その時はそんな風に軽く考えていた……………正直そんな過去の私を殴り飛ばしてやりたい。


 息子の摂取した毒は『新月』と呼ばれる猛毒。


 解毒不可能な劇薬として知られ、更に周囲へ不幸しか呼ばないので生産自体が厳重に禁止されている。


 だが、一部の暗殺者が持っている事は知っていた………確か自らを『影』と呼ぶ不気味な黒を全身に纏う男だったはずだ。


 私も一度だけ直接有った事が有る………二度と会いたくないと思ったが。


 今でも思い出すのは背筋の凍り付く様な『死』の感覚と、人だとは到底思えない様な威圧感と嫌悪感。あれで巨大な鎌を持てば、早速『死ニ神』にでもなれるだろう。



 ………今回の件は、奴が絡んでいるのだろうか?



 だとしたら、私に出来る事は少ない………私では絶対に奴には太刀打ち出来ないからだ。


 熱に苦しむ息子に出来る事は只1つ……『封印ノ塔』と呼ばれる特殊な魔術結界を張った塔へ幽閉して、解毒方法を探すまで時間稼ぎをする事。同時にそう言う形で奴の目から隠す事。


 だから私はそれを実行しようとした………本人には何も事情を話さずに。


 私の決断を聞いた時の息子の表情を見た時、流石の私も同様のあまり固まりそうになった。



 一瞬絶望した表情をした後、完全に“感情の抜けた”顔をしていた。



 …………………そこで私は実質的に息子を『捨てた』と明言している様な発言をしたと言う事に、ようやく気が付いた。


 だが、一度発言した言葉は撤回出来ない……王の発言とはそれ程重いものなのだ。



 このまま絶望の中息子は塔へ幽閉されて生涯を過ごすのだろうか………



 私に逆らう様な家臣は居ない。それに、一部の信頼出来る部下には事情を話していた……当然公爵であるセヴェンにも、宰相であるデュランにも。


 彼らは渋い表情をしていた……………何故今まで阿婆擦れを止めなかったのかと。


 或いは何故アレをさっさと『罪人』として処罰しなかったのかと………不貞を働き“王子”と偽った二児を抱える馬鹿な女を何故消さないのかと。



 そうしたかった………と言うか、本来ならそう出来ていたはずだった。



 だけど、出来なかったのだ……………隣国との関係をこれ以上悪化させる事が出来なかったから。



 ヴィンセント以外に後継者は探せば居る………最悪ライツェンスタイン公爵家から養子を取れば良いのだ。



 だけど、ヴィンセントを見た時に“名君”になれる才覚を私は見てしまったのだ。



 だから、息子は甘やかさずに厳しく育てて来た……当然危険な目に遭ったとしても最低限度のフォローしかして来なかった。


 そうしなければ学べぬ事も多く有るからだ…特に暗殺させそうな時の気配等、慣れていなければ分かるまい。


 その感覚の恩恵で私自身何度も危険を避ける事が出来た。



 だけど、その結果がこれだ………………阿婆擦れに好きな様にされてしまい、今正に私の愛しているものが壊れ掛けている。



 ………私は無力だ…………………



 何が王だ。何か『名君』だ………息子一人、護る事の出来ない。それ程私には、力も何も無い……………



「あの、発言宜しいでしょうか?」



 友人の声がした……唯一貴族の中で直接ヴィンセント、我が息子を助けて来た存在だ。


 同時に……………息子の溺愛する婚約者の”父親”、つまり、自分の愛しい1人娘を取られる事に対し息子を1番憎んでいるはずの相手でもある。


 それなのに…何故かこの様にフォロー役をいつも自らかって出ている。


 私は許可を直ぐさま出した。



「我が領には“医療特区”と呼ぶ区域が御座いまして、そこでは主に医術を日々研究して病人の治療を行っております。あそこの技術なら、もしかしたらヴィンセント殿下の摂取された毒も解毒可能かも知れないです。正直確証は持てませんが……どう致しますか?」



 …………息子の今1番必要としてる事を、瞬時に理解していつもこうやって助ける事が出来るセヴェン……私ではなく彼が本当の”父親”みたいだ………


 いや、実際父親なのだろう……私以上に彼の事を見守って来たのはセヴェンだった……


 思わず嫉妬心が出て来るが、今はそれどころではない。



「ラウツェンスタイン公爵………頼んで良いだろうか?」


「勿論でございます。」



 その直後、息子はラウツェンスタイン公爵領へ向かった。そしてそれ以来、息子の顔を見ていない………


 いや、見られるはずも無いか……



“私自身、合わせる顔が無い”



 息子へ毒を盛った王妃は直ぐさま幽閉した。その息子達も廃嫡した………元々私の息子ではないのだし、今まで好き勝手やってくれていたのでな。


 当然王妃は騒いだし、家臣の中でも彼女と繋がりの有る連中は色々屁理屈を並べて来た。だが全員今まで溜めていた証拠等を明るみにして潰してやった。



“始めからこうしておけば……”



 後悔しても遅いことは分かっている。


 恐らくこれから隣国と対立する事になるのだろう……分かっているが、そうなった時の被害を考えると頭が痛い。


 だが、それ以上に彼女の行った事が許せなかったのだ。



「済まんな………これからこの国は荒れるだろう……」



 私はデュランに頭を下げた。こいつには今まで何度も迷惑を掛けて来た。暗殺者をいつも未然に防ぐ様に密かに軍部へ指示を出してくれていたのもこいつだった……


 済まない……私がもう少し注意深く有れば、もう少し辛抱強ければ、これ程迷惑をこれから掛けずに済むと言うのに………


 だが、奴は逆に不思議な表情で予想外な事を言った。



「陛下、その件ですが………
















 ルナライト社と言う組織をご存知でしょうか?彼らが居る限り今の所戦争は起こらないと思われますよ?」



 ルナライト社………確か様々な分野に手を出しては成功を治めている組織であり、現在市場のシェアを殆ど握っているはずだった……その上で商会のバックには屈強な警備兵が着いているため下手に手出しが出来ない所だった気がするな。


 だが………



「……彼らが我が国とどの様な関係があるというのだ?」



 私がそう言うと、驚いた顔をするデュラン……


「ああご存じなかったのですか……意外です。と言いつつ、私も残念ながらヴィンセント王子経由で知ったのですが。」


「?!」



 息子が?!!



「………知っている事は何だ?」


「ええと、そうですね……」



 その後は驚愕の繰り返しだった。



 まず、ルナライト社の根源で有る商会とはここ6・7年で出来た組織であり、発祥地はラウツェンスタイン公爵領だと言う。


 現在の社長?兎も角仕切っている代表者は『アルハザード・カポネ』。元はスラム牛耳っていたゴロツキの長だったと言う。割と有名な話しだったのでそれは知っていた。


 だが実際は別の人物が頭をしており………何と、息子の婚約者である『ルーナ・カーマイン・フォン・ラウツェンスタイン』が真の代表なのだそうだ。



 成る程……………息子があれ程成長する訳だ。



 現在ルナライト社は、この周辺地域の市場を全て牛耳っており、殆どの商会が傘下に居るそうだ。


 故に、ルナライト社を今敵に回せば、取引が出来なくなるので必然的に物資が不足する事になる。


 特に食品に関して彼らは力を入れているため、兵糧攻めに遭う可能性が高いと騒がれている。



「…………………ならば、暫く我が国は安全か………」


「そうですね………ただ、これ程の影響力を持つラウツェンスタイン公爵令嬢……流石は我が友人の娘ですが、少々危険では?」


「……ヴィンセントと婚約しているのから問題は無いだろう?」



 国に縛り付けると言う意味合いでは、もう既に目的は達成されていると言っても過言ではない………あの時強引に婚約させておいた事が功を奏した。


 その判断だけは間違っていなかった様だ……良かった。


 そして一息着いた所だった……セヴェンが急に現れたのは。



「失礼致します………国王陛下、ご報告が御座います。」


「………申してみよ……………」


「は。我が娘、ルーナが帰宅した後殿下の容態を見ております。そして治療可能だと言っていました。」


「!!そうか……」



 ヴィンセントは助かるのだな!!良かった………


 そして次のセヴェンの発言に、私は絶句した。



「只、ルーナは今回の治療に対して対価を要求するようです……国王陛下に何でも1つだけ願いを叶えてもらいたいと言っておりました。」



 ……………………………。



「………して、その要求は?」


「治療が終わり次第伝えるそうです。」


「そうか………御苦労であった。」


「は。」



 ……………………ルナライト社の支配人よ、一体何を企んでおるのだ?



 我が国を欲するのであれば、既に息子を籠絡しているのだから既に達成しておるだろう?


 私も知っているのだ………息子がセヴェンの1人娘にぞっこんだと言う事くらい。母親であり私の愛した女であるフィオナにその辺の性格は似たのだろう……嬉しい様な複雑な様な…。


 兎も角、あの状態の息子ならば国の1つや2つ彼女が求めれば取って来るだろう。



 私は恐ろしい……一度彼女と直接話した時は特に権力や財力に執着する様な者だとは思えなかったのだが………



 私が深刻そうな顔をしていた為か、セヴェンが去り際に咳払いを1つした後こう言った。



「今回、殿下に対して陛下の取られた対応に関して娘に話した所、相当怒っておりました。そして、出来れば陛下へ殿下をもう近づけたくないとも言っていました。


 故に、どんな要求をするか分かりかねますが、恐らく殿下に関する事だと言う事は確かです。


 それと、ルーナの行っている事業に関して随分2人して警戒しているようですが、彼女の求めている事はたった1つ。


 『生活の改善』だそうです。


 今の生活、特に衛生環境と食事に不満が有るらしく、それを改善してゆく次いでに、困っていた住民を助けたり貴族として民に出来る事を出来るだけの事をしようと手を差し伸べたりしていましたよ、実際。まあ詳しい事は分かりませんが。


 ただ彼女の行った事の結果、あれ程人と財力が集まったのでしょう。それを特段意識している様子は無く、逆に“人の嫉妬”へどう対応しようか普段から頭を抱えている様子でした。」



 ………………前言撤回。


 是非、息子と共にこの国を盛り立てて……



「それから娘は将来既に冒険者になる事は決定しております。貴族を続ける事はまずないそうです。陛下は縛り付けたいご様子ですが、無駄ですよ?


 ほら………ヴィンセント殿下の誕生日の舞踏会へ無理矢理出席させた時の事を覚えておいでですか?その時約束したのですよ……彼女の要求に全て応えると。」

















 ………………………ガーン。



「?!陛下?!!お気を確かに!!!おい、誰か今直ぐ医者を呼べ!!!」



 だけど………これで彼女の思考は読めた……………だが、もう既に私にはどうする事も出来ないだろう。



 それに、下手に敵に回すよりは自由にさせた方が良いのかも知れない。



 私に現在出来る事は、やはり傍観しかないようだな………


 ずっと傍観していたツケが来ているだけだ……自業自得。


 去って行くセヴェンの後ろ姿を見ながら、今後の事を考えて頭を抱えるのであった。


 副題……『上げてから落とす。』如何だったでしょうか?


 しかし王子も王子ですが、国王も国王ですよね……王子のヘタレ具合いは間違いなく遺伝ですw


 だってもし肉食系の押せ押せな王子だった場合…ルーナ今頃美味しく食べ(自主規制)。ハイ、すいません…調子こいて申し訳御座いませんでした、だからその物騒なものを私に向けないでオネガイシマス死んじゃうから無理だから!!!


L&V「「問答無用。成敗。」」ヒュン、ドッカーン………


 ”いしきがない、ただのにくのようだ……”


(次回も宜しく御願い致します。)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ