41 一方的な蹂躙後。それからクエスト完了。
読者の皆様どうもこんばんは。
さて今回は戦闘回。御待たせ致しました。ルーナちゃん、今回は冷静にヒャッハーします。自重は致しません。それでは本編をどぞ!
物体Xが降り注ぐと同時に、周囲の魔物達の目の色が変わった………
—これは濃厚な殺気?
やはりこの黒い物質が今回の『氾濫』を発生させた事には違い無い様だな。
サブクエスト:災害原因の調査、終了。
報酬は……………事が事だけに、少し多目に分捕れそうだな。
さてと。
後やる事と言えば、運び屋の真似事をしながら道々素材と原因物質の回収位か………久々半分くらいの“本気”で暴れられる。
—腕が鳴るな。
自然と自分の口角が上がるのが分かった……あっちでは普通程度にしかなかったのに、今の『私』には戦闘への強い渇望が有る。
—ま、ここにはウォルター程の相手は居ないけど。
現在強さで言えば、私と“本気”、つまり殺し合う覚悟で切り合う事が出来るのは、元々最強種であるジャンクリを除けばウォルターだけ。
—だからこそ、父も彼に私の指導を任せていたのでしょうね。
現在ウォルターは兄達、それから……不本意ながら、王子の教育を今は行っている様だ。
こうした情報も分身が逐一大事流してくれるので、家の状態や商業の様子等も同時進行かつ現在進行形で色々と処理をしている。
流石に戦闘中は全て“遮断”しているけどね。
ちなみにそんな分けで分身体は順調にその数を減らしており、残機は300体弱程…まだ一応大丈夫そうだな。これで200切っていたら、一旦帰宅しないとならなかった。
話しを戻す。
ウォルターとの訓練で本気を割と出せていたが、私の専属から外れた後暫く手合わせ出来ていないのだった。
だからこそ……………色々と今まで押さえていたのだ。
ゴンと一緒に来ていたため、また私が“本気”を出せば周囲への被害が酷い事になる。だから今まで自重して来た。
霊山に有る『百鬼会』の縄張りや、領内等を始めとする私に取って大事な存在が居る場所でも相当自重して来た………
今まで私は“本気”の20%も出せないでいた……
だが今回は……………本気、出して良いかな?
街は壊すなって言われているから50%にしておくかな?あくまでリミットの話しだけど……
それ以上は……大地ごと消し飛ばしちゃったら不味いから自重するしかない。
だが、それでも………………たまにこういうのも悪くないな。
—血が滾る…意識は相変わらず冷静だが。
シーンと静まり返り、まるで嵐の前の静けさの様な状態の街。
軍隊の様な規律は無いが、私を包囲して今からでも突撃しようとして来る魔物の群。
目は正気を失い、今にも暴れ出しそうな興奮を何とか押さえている状態………何かの拍子に直ぐ爆発しそうな雰囲気だ。
だが、それは私も人の事を言えない……………この胸にいつも仕舞っている興奮が今か今かと解放を待っている。
—正にここは戦場。紛う事無き戦場。
オオオォォォと唸り声を上げて一際強い北風がボロボロな街を駆け抜けた。そして灰や塵が舞い上がり、視界が悪くなる。
押し流す様に再び風が通った。
そして、痺れを切らしたらしい1匹の大型爬虫類擬が私目掛けて突進して来た………
—戦闘開始………さあ殺し合おう。
魔力を乗せた薙刀で一振り。それだけでいとも容易く魔物の首が宙を舞った……そして、唖然としてまだ自分が切られた事さえ認識していない様子の魔物。
だが、視界の高さが変わった事でどうやら自分の状況を正しく理解出来た様だな……
その証拠に、私の事を怯えて表情で見上げていた……………まるで私を“バケモノ”とでも称したいかの様に。
—フーン……感情は残されているのか。それとも…
その恐れた顔に、相変わらず私は何の感情も起こらなかった。弱肉強食なのだから、コレくらいは当たり前だ。
—最初から勝負にもなっていない。
その後、血柱が勢い良く上がった。
それを皮切りに、一斉に襲いかかって来る邪な雰囲気を纏う異形の魔物達………
一方的な殺戮劇の幕開けだ。
…………………………………………………
行きよりもその数と種族が増していた魔物………その一匹一匹は弱いが一度に多方面から来るバラバラな攻撃を一人で捌くのはきつい者が有る。多勢に無勢、数の暴力とは良く言ったものだ。
だが、相対するのは『一騎当千』を地で行った経験を持つ私。
何分割にも思考を割いた上で、思考を加速させているので処理が追付かなくなる事はこと戦闘においてはまずあり得ない。
そんな訓練を私は実践の中で行い成長して来た………生き残りを掛けて。
—背後から鎌状の手の気配が3つ。
——前方からこう圧縮された水玉が7つ。
———左右からそれぞれ寄生型の蟲と肉食の蟲の鋭い牙。
全て避けると同時に鎌は根元から切り落として回収。水玉は反射させると同時に生物なら大概心臓発作で死に至る程度の電圧を纏わせた。
スタンされて死んだ魔物は奇麗な死体が残るので、刻んで殺した魔物とは別の亜空間へ入れておいた。
蟲に関しては空中で致命傷を入れると同時に解体、既に素材として亜空間に入れていった……後で薬の材料になるので内科医のホウ先生に渡しておこう。最近新薬の開発をしていたから必要だろうからな。
……っと、今は戦闘中。気を取られたら駄目だ。
今度は地面が盛り上がり、中から巨大なワームが顔を覗かせる。同時に上空から猛禽類に似て非なる歪なキメラが降りて来た。
—ああもう………これでは埒が明かない。
私は攻撃を全て躱し、地面に降り立った。
—どうせもう街は修復不能。一から建て直す訳だし潰しても構わないよね?
隙有りだとでも言いたげな表情で迫って来る、邪な雰囲気を纏った魔物に対して………私は自分の本気30%位に加減しながら“殺気”を放った。
同時に自分の魔力を空中に散らせ、その一部は殺気を乗せ、一部は精霊達に魔素へと早急に分解して貰った。
空気に存在する魔力の量に偏りが生じ、その場に掛かる気圧が変わった。
—『オオオォォォ』と唸り声を上げて、吹き荒れる強風。
—私を震源地に、周囲へと広がって行く“死”の気配。
—そして全体へ掛かる、押し潰される様な『威圧』。
行った事は至って単純………精神・肉体の両方面に『圧力』を掛けただけ。
気圧を変え、その上で濃厚な殺気を散撒く……それだけで私よりも『格下』で有れば、大抵の相手は沈める事が出来るのだ。
軍勢に立ち向かう時は重宝する技だ。
周囲を見渡すと………文字通り全てが“潰れ”、紅蓮にも見える血肉の花火を散らしていた。
先程まで我が物顔で襲ったり共食いをしたりしていた、操られた愚で憐れな魔物達。彼らは誰一匹として私の放った“死気”の重圧に耐えられなかった様だ………まあ無理も無い。
そもそも君達と私では、背負っている『死』の数が違い過ぎる………
今回が始めての戦闘だった君達。そして前世と今世合わせて既に少なくとも20年は戦場に居る私。
—差が出るのは当然の事だ。
そうだな………今回は自分の運の無さを呪うがいい。
私の敵にさえ回らなければ、私の視界に入っていなければ、恐らく互いに不干渉だったのだろう。
だが安心していい、その死は無駄にはせん。
私は君達の亡き後、その肉体は有効活用してやる……私の血肉となって共に“黒幕”へヤキを入れに行こう。
君達の代行として私が一矢報いる事を誓う。
“だから、心だけはやすらかに眠れ。”
周囲に散った血液と共に、全てを“亜空間”へ入れた。
……………選別に関しては、邪を抜いた後手伝って貰おう。一人ではどの道捌ききれまい。
一瞬だけ空っぽになった荒廃とした元街だった場所を、私は1人正門目掛けて掛けた。
……………………………………………
「お疲れ様……今回は助かった。」
「いいよ、こっちも色々と収穫出来たし。」
「そうか………」
あの後ヴラド君のお家へ“飛んだ”。そして、今回の依頼に関して色々と文句を言ってやった。
そのお陰で報酬が倍になった。やったね!
ちなみにプレハブ住宅は“購入”頂いたのでそのまま城の庭に亜空間
から出してから置いた。材料が只同然の素材だった為、正直ウハウハである。
毎度有り♪
今は詳しい現状を報告している所だ……当然ヴラド君は元気が無い。
そして、宣言通り“軍部”に関してきっちりと報告させて頂いた。後は現地で次いでに寄った旧駐屯地の建物で見付けた機密書類。
『何か』から隠す様に置かれており、他のものと違って全く燃えていなかったのが幸いした………
そしてそこに載っていた『汚職』の証拠の数々…誰が首謀者か確認した所、今回真っ先に逃げた連中と常に中央に居る官僚数名で有る事が判明。
生存が確認出来ている奴に関しては、商人として縁を切らせてもらおうと思う……距離を置きたいので。
放置した場合、正直ウチの可愛い従業員が巻き込まれて泣きを見る未来しか想像出来ない………特に彼らのやって来た人身売買を始めとする悪行を考えると。
だがその許可は念のために王様へ打診する事にした。
「ああそういえば言っておかないと……ルナライト薬品の製造している“人工血液”だけど、“コイツ”と“コイツ”の元へ流さない様に御願いしても良い?」
渋い顔をするヴラド君。
「…………………理由は既に知っているよ…今回は此方側に落ち度があった。部下が色々済まなかった……」
「良いよ、別に。私達の仲だろ?」
「………そう言って頂けると助かる。」
そしてもう一丁。
「それと、軍部の視察………最近さぼっていないか?」
「さぼっては居ないが……………今回の件で流石に騎士団長には引退してもらった。」
「……………………………膿を取り除く作業くらいだったら私も手伝う事はやぶさかでもないが?」
「有り難いが、我が国の事だ。故に、傭兵として必要になり次第連絡を入れるので、その時は真っ先に駆けつけてくれ。」
まあそう言うと思ったよ………君はプライドが高いからね。
「そうか、分かった。そうさせてもらうわ。さてと…それで『百鬼会』との交渉はどうなっている?」
「丁度終わった所だよ……それにしても彼女はカミュラ爺さんが鍛えたのか?」
「ああ、そうだよ……中々の逸材だろう?」
実は私もここ数年彼女の指導をしていたんだよね……
「まあな………………あの残念極まりない性格を除けばだけど………あんなおっかないドラキュリーナは妻としては向かないと思った。」
彼女は一族の“頭”、つまりは会社みたいな組織で言えば社長に相当するからね……『支える側』では無く『支えられる側』に立っている訳だからそれもそうだろう。
つか、『霊山』に存在する組織の幹部をやっている時点で只者では無いと思った方が良い。
「それでも構わずアタックする馬鹿は居る様だけど?」
………正確度返しで、見た目重視の野郎だろうけどな。或いはよっぽどの被虐趣味持ちか|加虐趣味者《気の強い女を屈服させたい奴》か……
どっちにしろ、碌なのが居ない……只の馬鹿か変態か…
ん?何か親近感が……気のせいでな無いよな?あ、そう思ったら今度は何故か涙が……
あれ?マジでどうしてだろう?
「馬鹿じゃネ?いや馬鹿だろう、それは。」
いやいやいや、そこを突っ込んだら駄目だろ……だってさ…
「……………それがお前の所の部下なのだが?」
ヴラド君は思わずこめかみを押さえていた。
それでは次回も宜しく御願い致します。




