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悪役放棄、更に自由人へ(仮)  作者: 平泉彼方
第一章 逸般人な悪役令嬢、好き勝手過ごす
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39 監視されている事に気付いていない件。

 読者の皆様どうもこんばんは。


 さて、今回は……おや?ゴン君の様子が………(ネタバレ防止の為、犯行予告はここまで)


 それでは本編をどぞ! 

……………………(???)……………………



 目を覚ますと、俺はベッドの中だった。


 白い天井に白いベッド。それから右手の血管に繋がれた点滴…………異世界にも点滴が出来ていたんだな。


 そして………椅子に座ったまま眠っている俺の愛しい女(ユキ)


 いや、今世ではルーナと名乗っているのだったな。


 と言うか、俺はこっちに来ても親には恵まれなかったのか………彼女に拾ってもらわなかったら一体どうなっていたのやら。


 でも俺はちゃんと彼女を見付けられたからいいよ………他の連中もいるようだが。


 ある意味こうやって記憶を取り戻したのだから俺の方が有利だろう。


 彼女は多分、少し切掛けを与えなければ思い出してくれるはず……だって俺とアイツの仲だからな。


 さて、そろそろ起きるとするか……


「ん?ゴン?」


「ああ、今起きたよ………クッ…迷惑を掛けたな………………」


「私こそゴメン……さっさと起きてゴンが苦しむ前に処置出来れば良かったのに……………」


 起き抜けに沈む彼女………相変わらずだ。


 誘拐されて暗殺術とか諸々仕込まれて戦場引っ掻き回す様になっても一切変わらなかったからな………


 日本に帰って来てくれた時は嬉しかったよ……クリスの件が無ければな。


 俺だけのものだったのに……お前は俺に夢中だったのに。


 本当にいつの間にか邪魔な連中が増えたものだよ…知らないうちに俺を更に惹き付けてさ。


 それにあのまま義父さんと義母さんが生きていたとしたら、政略結婚としてお前を手に入れられていたのに……正直色々な意味で悲しかった。


 俺は複雑な感情を抱きながら、彼女の頭を昔みたいに撫でた。


 すると、彼女は少し驚いた顔をした。直後、思案する様な顔つきをしていた。


「………あ〜…考え中の所悪いんだが、何か食い物無いのか?」


「あ、ご、ごめん……ちょっと待っていてくれ。」


 彼女は立ち上がり、そのまま出て行こうとした。


 何となく言いようの無い不安がその瞬間襲った……また彼女は俺を居て何処か知らない場所に行ってしまう様な気がしたのだ。


 そして気付いたら彼女の手を握っていた……


「「…………………………。」」


 何とも言えない気不味い空気が流れる……どうしよう。


 あ、そうだ………


 俺はいつもの様に口角を少しだけ上げながら、こう言った。


「お前の作る雑炊が随分久しぶりだが、食べたくなった。作ってくれないか、ユキン子?」


 すると、彼女の目は大きく開かれ………涙が流れていた。


「………………馬鹿。」


 そう言うと、彼女は小さな身体で俺を包み込む様に抱き締めた。


「大泉蓮君………何で言ってくれなかったの!!!」


「仕様がないだろう……ついさっきまで俺自身記憶喪失だったんだから。」


「!!………それで、今は何て呼べばいい?いや、聞くまでもないか……」


「2人きりの時は蓮、それ以外はゴン。それでいいだろう?」


「分かった。ちなみに私は“由樹”では無く“ルーナ”だから。」


「……ああ、分かっているよ。ルーナ。」


 今の彼女の容姿に関して言うなら、前世の面影の欠片も無い。だけど、雰囲気と目つきだけは同じだ。


—時々見せる髪を搔上げる仕草


—きりりと結ばれ時折口角の上がる唇


—知性的で有ると同時に猛禽類を彷彿とさせる鋭い目


 それらは全然変わらない。


 こっちに来てからの俺は………相変わらず前世と同様彼女に甘え倒していた様だ。


 全く………反省したはずなのに。


 俺は彼女が頼れる男になりたかった……結局両親が殺された後そのまま墓守の為に日本に住み着き、自活していたからな……


 確かにもう直ぐ30だったからなのだろうけど、少しは近所に居た俺の事を頼って欲しかった。でもそれが彼女から下された評価である事も、紛れの無い事実。


“お前は頼り甲斐が無いから頼らない”


 直接言われていないが、何より彼女の態度がそれを物語っていた。


 彼女を交通事後で失い、俺は色々と後悔した。


”この人なら寄りかかってもいいと思える人になっていたら彼女は死なずに済んだ”


 軟弱な俺は彼女の死後、何事にも着手出来なくなった。親や上司に心配されて病院に行った所”鬱”だと診断された。それから暫くカウンセリングに通っていたのだが………


 ある日、気付いたら廃ビルから飛び降りていた。


 結構な高さだったので、風が凄かった。後、地面に着く瞬間は一切覚えていない。


 覚えているのは只、漠然とした安心感。


“これでお前のもとに行ける”


 何となくそんな感じがしたのだった。


 結果まあ、遭えたけどね………こういう形で。勿論彼女に自殺した事は言うつもりも無い。つか、情けなくて言えない……


—あ〜あ…本当に俺は馬鹿だったな。


 さっさと彼女に告白していれば良かったんだ……それに幾らでも結婚まで漕ぎ着けるだけの権力も金も持っていたのに。


 ……そこまでの奴だったって事なんだよな、結局。


 だったら今世で掴め?立場的にも不利だし、その上彼女は俺の事等男としては眼中に無い。


 それに……………はっきり言おう、俺はロリコンでは断じて無い!


 失礼だが、今の彼女に惚れる事は無理だ……精神年齢がどうであれ、10代の子供の身体をした女性にモーション掛けるのは、それは間違っているだろうがどう考えても。


 この世界最強の竜になっている彼女の戦友だったか?何か気が有る様だがアイツはやばい……つか、どう考えてもロリコンだろう?!


 日本だったら通報されて即逮捕されていたね、絶対。つか、俺が近づけなかっただろうな……


—お巡りさん、コイツです!お願いですからさっさと連行して下さい。


 まあいい。


 どう考えても現段階でアプローチ出来ない俺は不利。つか、無理ゲーだろう、どう考えても。


 故に、俺は全力で邪魔する事にした。


 どうせ2人がくっ付くのなら、彼女を護れる奴じゃないと駄目だ。以外と精神的に弱い部分が有ったからな……特に自分の大事な人達が次々と亡くなった時の魂が抜けた様な顔は一生忘れられない。


「雑炊持って来たよ、蓮?」


 そう言って、彼女は蓮華湯気の立つ雑炊を掬うとフウフウと息を掛けて冷ます。


 そして笑顔で


「はい。」


と、差し出した。


 ………………………前言撤回。ロリコンと言う事は断じて認めないが、彼女は幼少であっても女として可愛い。


 つか、俺は幼馴染みだったから尚更何と言うか……懐かしい。


 奴みたいに手は出さないが、俺だってチャンスが有れば成長した彼女と結婚したい。


 あ、俺の今世は魔獣だったから“番になりたい”が正確か?


 まあどうでもいいや……


 兎も角今は奴も居ないし、この幸せを独占しよう。


「……上手いな、相変わらず。」


「いや〜……ここだとどうしても米の質がね………」


「そんな事は無い、お前が頑張って再現しようとしている米だ。」


 思わず彼女を撫でていた。


 すると彼女は頬を染めながら顔を背けて……


「べ、別にそんな事無いし……というか、べ、別にアンタの為に100%作った雑炊って訳でも無いんだから!」


 ツンデレ来た〜!!


 ……………幼馴染みのツンデレとか…俺の事マジでどこまで堕落させれば良いのやら……絶対将来苦しくなるから早々に諦めるべきなのに………


 これじゃあ完全に無理じゃん!


 ああもうこの天然誑し鈍感女が〜!!!…まあそれにコロッと行く俺も俺だけどね。


 つか、本当に何でこんなに放っておけないんだろう……


 そんな感じで俺は一時の幸せを満喫していたのだった。


…………………(narrator)…………………


 カーン、カーン、カーン、カーン、カーン………


「ボクのルーナに触るな汚れる獣が死ねば良いのに爆発しろ今直ぐ離れろそして二度と近寄るなこのヘンタイロリコン屑野郎が餓鬼のくせに名に粋がって居るんだマジで死ね離れろ退け邪魔だ困っているのが分からないのか……」


 只でさえ細い目を更に尖らせ、眉間には皺を寄せて奴は杭を藁人形に打ち付けていた。


 ………もっとも、その行為が異世界でも通用するか知らないが。


 そして、言うまでも無く彼の部下?の様な者達の一部は彼の奇行と呪言に顔面蒼白になっており、微かにアンモニア臭が漂っていた……彼らの名誉の為に何が有ったのかは明言しないでおく。


 ちなみに別の一部は遠い目をしながら


「ついに壊れたか……」


と天を仰いでおり、他は生暖かい目で彼を見ながら


「『シャドウ』兄さんファイト。」


と小声で応援していた。


 正直、こんなのが上司で有る事については深く同情を隠し得ない。皆さん、御愁傷様である(チーン)。


 つか、そもそも人の事が言えないだろうと突っ込みを入れたくなるのは俺だけなのだろうか?


 次回も宜しく御願い致します。


 11/16: 訂正 深く道場を隠し得ない → 深く同情を隠し得ない ご指摘有難うございます

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