31 狐と通る移転門。
読者の皆様どうもこんばんは。そして誤字脱字……本当に申し訳有りません(_ _)皆様にご指摘頂いて本当に助かっております。有難うございます。ただ、リアルが忙しいため修正に今後少し時間がかかると思います……でも必ず訂正はします。
さて、今回は前回の流れでちょっと厄介なニオイが漂っております。これは……事件の香りだな!ルーナ達はコレに対してどう対処するのか?後、後半にグロ注意報が発令致しておりますのでご注意を。それでは本編をどぞ。
拠点に戻ると……既に出発の準備をしてくれていた。
え?誰がって?
………ゴンが1人で全部やっていました。会議では先方が警戒すると行けないから拠点に置いていったんですよ。
そして、連絡しておいたのでここに来ているはずのジャンクリの姿は無かった……
「…………………駄竜は?」
「…確か“もうその国には絶対行かないからな?!”って言っていなかったっけ?」
「ん?………そう言えばそうだったな……まあ仕方が無いか…国王に崇められていたからな〜……」
そう言えばそうだった……『ヴラド君』は家系的にキリスト教から『竜騎士』とされていたから竜には何か思い入れが有るんだった…
それが嫌で以前ジャンクリはあそこには絶対行きたくないと言っていた様な気がする……記憶違いでなければ。
まあそれ以外は彼、“名君”だと思うのだけどね…
彼は中々に出来た人物だったよ…『主君』としてはね……人の噂や伝承とは全く当てに成らないものだ、本当に。
織田信長の人物像然り……勝てば官軍だから勝者が勝手に書き換える事は良く有る事。非常に残念な事だけど。
彼が地球でかつて『串刺し公』と呼ばれて、更に『ドラキュラ』等と教会から今も(ある意味)異端認定されている人物と同一だとは、本当に信じ難い。
誰がどう見ても爽やかで穏やかな気品の有る中年…いや、今は青年の若々しい姿をしているか。
……まあ、ちょっと調子に乗ると予想外な行動起こす所が玉に傷だけど。その辺はご愛嬌とも言える。
彼は元々敬虔なキリスト教徒だったそうだ……裏切られて後ろからグサッとされた時の絶望感と虚無感は半端無かったと和やかに笑いながら語っていたよ。
今は特に恨んでいないし、あの当時だったから仕方が無いと悲しげに語っていた。ただ、過去の反省を活かして今の国をより良い状態にして行くのだと爽やかに語っていた。
それを見た時、創作物にされている『彼』のあのドロッとした部分に少しだけ萌えた過去の自分を殴りたくなった。
それと、『串刺しの刑』や『火炙りの刑』は、あくまでも国の対面を保つために必要な時しか行っていないと本人は言っていた。
…………どうも、彼の出来損ないの弟が色々有る事無い事後で言っていたみたいだね。
当時、民を大事にせず搾取をする典型的な『御貴族サマ』への“見せしめ”として大々的に行った公開処刑の様子が尾鰭腹鰭背鰭胸鰭に浮き袋まで付いた状態で語れているのだと知った彼は、苦笑していた。
“それであそこの国とその地に住むワラキアの民が救われたのなら、寧ろ本望だ。”
爽やかな表情でそう言っていた。
………まあ、そうは言いつつもルーマニアの現状(私の死んだ時点の…)を毎回顔会わせする度に聞いて来るんだよね……
もう政治体制とか色々変わっているし、オスマン帝国も当時の様に戦争を吹っかけたりしていないからそこまで心配する必要も無いと思うけどね……
まあいいや。
「なら、ジャンクリにはここで待っていて貰うか。ゴンは一緒に来てくれる?」
「……面白可笑しい事が有るなら何処だって行く。」
「なら行こうか………御貴族サマと王サマをからかいに。」
さてと。今回の移動は“空間属性”を使うので、『空狐』を目指しており“空間属性”の必要なゴンの為にもこの属性の魔術式がどうやって展開されるか少し見せながら行きますかね……
ああ解説はしないよ?
だってね……やっぱりその辺は自分の目で盗まないとね?それでも一応経験させる訳だから、多分術式の40%は分かるんではないだろうか?
兎も角今回はどんな感じか分かってもらえればオッケーだからね……
では行きましょうか。
………“拠点”の座標軸から“宮殿”内部に私が設置した目印目掛けて『移転』の術式を展開……
同時に術式『ゲートウェイ』を展開………
正確に位置を特定する為『高速演算』、『思考加速』の術式を自分に展開……
最後に『防御』の術式を5重に術者と従者に掛けてから、『光速移動』と『立体移動』を展開……
『ゲートウェイ』移動開始予定時刻5秒前、4、3、2、1、出発……
………………………(ゴン)………………………
……主の魔術は本当に大概だ。
俺達は現在“次元と次元の狭間”を移動している……ルナライト出版の『次元の科学』と『ゼロと無限』と言う専門書に目を通していなければ多分彼女のしている事の一端も理解出来なかっただろう。
でも……正直この暗闇の中で何故目的の場所が分かるのか謎だ。
次元の狭間に入るために『世界』に切り込みを入れ、それを固定したのが“ゲート”と呼ばれる魔術で有る事は分かる。
だけど、その先の“異次元空間”に関しては理解していないので何が起こっているのか分からない。
いや、俺自身が本能的に回避しているだけかも知れない……知ってしまったら、恐らくもう後戻りは出来なくなる………そんな気がしてならない。
もしかしたらそれが原因で周囲が暗く見えるのかも知れないが。
ちなみに主は俺の手をしっかり掴んだまま、物凄く高速で移動している………時折来る嫌な感じの何かを華麗に避けながら。
俺は彼女に付いて行くのがやっとだ……主の掛けてくれた術式が無ければ既に死んでいただろう。
俺もまだまだだ………主の実力を越えて護る側になるには相当時間が掛かりそうだ。
………………………(end)………………………
ふう。無事に着いてよかった………って、無事でもないか?
「ウゥ〜……」
「大丈夫か、ゴン?」
私の横でぐったりしているゴンは、どうやら次元酔いをしてしまった様だ………おお、目がリアルにグルグルなっておる……
時々居るんだよね〜…移動する時に周囲を見てしまう奴が……そしてそんな事をすれば高速で移動している訳だから必ず酔ってしまうんだよ。
ちなみに移動中は周囲を見ると余りに我々の移動が華過ぎるので周囲のものが全部残像っぽくなる。その結果、色々な色が混じって我々の目に入って来るのは“闇”。
……そして見詰め過ぎれば『高速演算』と『思考加速』をしていない場合は脳が無理矢理“像”を捉えようとするので頭に負担がかかり……乗り物酔いの悪いバージョンになる。
………………こればかりは事前に警告しなかった私が悪いかな?
亜空間を開き、私はルナライト製薬の最近開発した『トラベルン』と言う船酔い特効薬を取り出した。
これを飲めば、取り敢えず1時間で回復するだろう。
原料は、標高約8,000mの『ハッコーダー山』と呼ばれる山の丁度7,500m付近に有る断崖絶壁の中腹に生えている薬草。そして、発見出来た理由は野生の魔鳥が酔い止めとして使っている事を特定したため。
最近やっと地上での栽培方法が確立したので量産している。
ちなみにラウツェンスタイン領の漁師や航海士達には早速売り出してみた所大好評で、今度ルナライト商会と幾つかの薬品を専門に扱っている所へ少し流してみる事になった。
「ウ……苦い…」
涙目になりながら全て飲み干すゴン……仕様がないだろう?
「良薬口に苦。これは特に効果を高めたモノだから、味の調整は出来なかった。代わりに通常のやつより効果が即行で現れる。」
「ウゲェ〜…この味は何の罰ゲームだよ………」
顔を増々歪めたゴンへ、口直しに“おいしい水”を渡した。すると一気に飲み干して……咽た。
「ゲホッ、ゴホッ………最悪……」
「まあ元気出せ。何せ………ここから暫くは悪戯し放題何だから。」
その言葉で三日月型に口角が上がり、目も何か企んでいる様なニヤリとした表情となった。
さてと、ヴラド君の自宅を頑張って探索していきますかね……今はどんなダンジョンと化しているのか……
……………………(???)……………………
鉄や血肉が燃える異様な臭いがする。
そう思って足下を見ると……………脳髄と眼球をぶちまけた少女の遺体が彼女を抱えようとする手と共に燃えていた。
そして一緒に燃えながらも彼らの肉を喰らう、小型の魔蟲が集まっていた。
「ヒッ」
俺の足にも群がって来る蟲を払い除けて後退る……ここで俺は喰われる訳には行かない。
そしてそのまま走り去った。
背後から強烈な殺気を感じ、慌てて飛び退く。同時に家屋の影に隠れた……
「ギャオオオオオオオオオオ!!!!!!」
大型魔獣の声がついさっき離れた場所から聞こえた。
「イヤアァァァァァァァァァ!!!!!!!!助けて!!!!!」
「ウワァァァァァ!!!ママ〜!!!!!!」
女の切り裂く様な悲鳴と子供の母親を求めてなく声。そして次の瞬間には爆発音と弾ける様な音………そして、骨を噛み砕く嫌な音が聞こえた。
−助けられただろうに……見殺しにしたな。
−仕方が無かったんだ…任務を遂行するためにこの現状を俺は伝えなくてはならないのだから。
だから、俺は何としてでも生きて返らなければならない……
街の外へと急いで出て、待機している”相棒”の元へ走った………この街は何処もかしこも魔獣だらけで、正直門の外側は大丈夫か心配だった。
「クエエェェェ!?!!」
案の定、他は喰われていた。だが、俺の相棒は賢いので難を逃れていた……俺が近付いて一瞬警戒をしたが、姿を確認した瞬間脱力した表情をした。
本当はこんな状況で疲れているだろうから休ませたい………だけど、そうも言っていられない。
………いつここも大型魔獣に蹂躙されるか。
「チロロ、悪いが急いでくれ。」
「クェッ!!!」
俺は飛劣竜である我が相棒チロロに乗り、急いでその街を離れた。チロロも分かっている様で、いつもより速く飛んでいる。
今や理性無き魔物の戦場と化した都市『ヴェネチモール』。
商業と興業でつい1週間前まで栄えていたその街は、全てが嘘や幻だったかの様に“血”と“黒煙”に染まっていた……
かつて俺達が苦労して築き上げた街が無かった事にされそうだ…いや、数時間の後、される事は既に確定した。
だけどまだあそこには家族や友人達も居る………
だからこそ、一刻も早くこの事を……
「ク、クェェ?!!!?!?!」
「どうした?!………何、だ…何が一体……」
突然空が割れ、そこから黒い“ナニカ”が街へと降り注いだ………それは禍々しく、見ている此方が発狂しそうなナニカ……
ふと割れ目を見てみると………巨大な目玉がギョロリと此方を見た。
その瞬間、俺は『死』をはっきりと感じた。
だが何故か俺は生きていた………目玉が私等路傍の石を見る様な表情をしていた。
慌ててチロロへ指示を出して、俺は『王都』へと向かった……助けを呼びに。
−頼む、皆生きていてくれ。
−国は我々を見捨てない。必ず軍は動いてくれる。
だからもう少しの辛抱だ……何とか耐えてくれ、皆。
俺は涙を拭い、覚悟を決めた。
俺はチロロと共に爆煙で赤黒くなった不気味な空を飛んで行った、後ろを振り向かない様に。
狐さんドンマイw
さて、次回は狐とルーナが暴走します。巻き込まれない様にご注意下さいw
それでは宜しく御願い致します。




