30 祭り、そしてその裏。
読者の皆様何とか更新間に合いました……最近話しのストックが切れて来てしまったので、そろそろ不定期連載になるかもしれないです。でも頑張ります!
後、前回後書きで”V's”と書こうとした所を無意識に”ブイゼル”にしていた件に関してご指摘頂きました。本当にミスが多くて申し訳御座いません……何とか改善しようと目下努力中です。温かな目でご指摘頂ければ幸いです。
さて、少し長くなってしまったので、今回の番宣は無しで!それでは本編をどぞ。
「今度は私が行きます!!ソレッ!!!」
ドドンッ『おお〜!!!!!』
夜空に次々と咲いては散る、大輪の華。艶やかで明るい赤や金。儚く優美な紫や白。そして力強く躍動感の有る蒼や銀色や緑の光達。
次々と大空を舞っては観衆を沸かせた。
少し寒々しい秋空を飾るのは、私の連れて来た固有属性の精霊達の一部。
幻影を見せる特殊技能を持つ彼らは、今や江戸の花火職人を彷彿とさせる様な頑固で拘りを持つ立派な職人だ。故に彼らを『玉屋』『鍵屋』と私は呼んでいる。
ただ、彼らが普段している事は花火だけでは当然無い………
−我らの見せる夢は『幻である』事を悟らせない。
−一度夢に魅入った者は、我らが解かなければ永久に捕われる。
−そして、我らの見せる『夢』を只の幻と侮るなかれ……『夢』は印象が強ければ『現実』と成り得るのだから。
彼らの使う『幻術』は非常に高度かつ精密で有り、殆ど『現実』だと言っても過言ではないのだ。
それこそ破損をした臓器がそこに有ると言う『幻』を身体に見せれば、身体が騙されて正常に働く程だ。
そしてそれは当然『世界』をも欺く属性である。
それ故数は少なく他の精霊達から特に『迫害』された……ほぼ追放されたと言った方が正確だろうか?
兎も角そのようなこの世の理から外れた存在である事は間違いが無い。故に彼らには私の存在を世界から『騙す』術を研究してもらっている。
騙すのが得意でありながら職人気質で精霊の中でも特に信頼の置ける部族の1つだと言えよう。故に私の事情も有る程度知っているし、それに対する対応策も現在開発してくれているのだ。
だが、彼らの本業はやはりこの様な『魅せる夢幻』。
前世に有った花火やCG映像等の話しをした時の食いつきようは………今思い出しても恐ろしくも楽しいものだった。
私の件が片付いて冒険を本格的に行える様になった暁には、共に世界を巡って『花火職人』として様々な人々に彼らの実力を見せたいものだ。
”ドンドンドン、あ、ドドンガドンッ”
”祭りだ、祭りだ、わっしょい、わっしょい!!”
鬼族の様子を見て、思わず教えた日本の『祭り』の様子……その結果こちらでも祭りが実現するとは思わなかった。
全く……本当に嬉しい誤算だ。
鬼達は騒いで飲み明かすのが好きで、特に理性の薄い者達は粗暴な振る舞いをする事が多い為“野蛮”との評価を受け易い。
確かに理性の無い連中等はただただ略奪と破壊しかしないが、それは“ニンゲン”でも同じだ。一方的に“鬼全体”を差して“粗暴で野蛮”と決めつけるのは如何なものかと常々思う。
だが実際、時折騒げる場を作らなければ“ニンゲン”より暴走し易く更に暴れたら被害が大きい事は紛れも無い事実であった。
故に四季折々に『祭り』を開催してはどうか?そう以前提案したのだった。
現在では巨大で力強い大鬼族や地鬼族が大太鼓を担当し、屋台では手先が器用で鬼種では1番賢くなれる素質を持つ小鬼族が次々と料理や酒を作っており、さらに所々百々目鬼族が自慢の目玉を用いて怪しげな占い師の様な事をしている。
見目の良い人鬼族や色鬼族は盆踊りや剣舞い、更にはアクロバティックなパフォーマンスをしている。
そして、酔いに任せて喧嘩をしている大人の鬼達を取り締ったり救護したりしている吸血鬼族と1つ目族。
賑やかで何とも懐かしい様子に、いつも幼少期楽しみにしていた『秋祭り』を思い出す。
子供用の甚兵衛羽織を身につけ、私は家庭教師の先生に連れて行って貰ったものだ。
両親は共に忙しく、私の相手等している余裕が無かった……だが、愛情が無かった訳でもなし、日に一度は遭う様にしてくれていたので別に寂しくもなかったが。
そこでは屋台にて綿飴や水飴を買い食いし、ヨーヨー釣りや射的等をして遊んだものだ。
そしてトウモロコシと焼きそばを片手に神社仏閣の階段から見る花火。
未だにあの美しい光景は鮮明に残っている…恐らくそれは永久に残るだろう。
もう二度と見る事の出来ない光景だが、何の因果かここで再び『祭り』を楽しんでいる。
甚兵衛羽織を着る鬼の子供達が楽しそうに駆け回り、浴衣姿の若い鬼達が仲睦まし気に連れ添っている光景………時折本当にここは地球じゃないのかと疑いそうになる。
−本当に楽しい……だから、ここも出来得る限り守りたい。
…………………………………………………
山頂付近に有る大きな湖。そこに私達は屋形船を一隻浮かべ、密談していた………この世界のこの国でこれから起こり得る案件について。
「……と言う事がラウツェンスタイン領で確認されております。さて、魔王に関する報告と霊山に置ける『発散』の状況の報告をして下さい、小鬼族長老、カミュラ爺様。」
「では最近の事柄から行くか………最近霊山で魔王元素を発散する連中が軒並み増えた。以前から増加傾向に有ったが、今月に入って既に30件を越えた。幸い霊山の浄化能力は特に問題は起きていないが、もしかすると他の場所ではそう言った現象が起こっている可能性が有る。」
「成る程……だから昼間『挨拶』していた時にも禍々しい魔素溜まりを幾つか感じたのか………一応破壊をメインとする魔術式で散らしておいたが。」
領を出る前に物質Xに対して効果が”破壊”である魔術を片っ端から試した所、某最強な魔女っ子の桃色光線と肩書き過多なシスコンの使っていた分解する魔術が有効だと分かったため、殺傷力を押さえたそれを今回使って次いでにチライしておいたのだった。
「?!……そうか。それは有り難い……だが、浄化が間に合わぬ程に邪な魔素が溜まっていたと言う事か………」
「カミュラ様、発言宜しいでしょうか?」
「……グレンデルか?」
ちなみに今回鬼種側で参加しているメンバーは、小鬼族長老兼百鬼会総帥のカミュラ・ファウスティス・ゴブリヌサス、人鬼族首領のグレンデル・レウス・オーガリウス。そして大鬼族頭領のレオルド・ハーマライデン・トロルティウス。
名字に必ず種族名が入っているのが特徴だったりする。
「はい。実は先程『天空湖』周辺で調査に当たっていたクレア殿から連絡が入りましたので……その、中継を繋げても宜しいでしょうか?」
「構わんよ、緊急の知らせなのだろう?なら急いで繋げよ。」
「は、今直ぐ行います。…おい、巨大な紙を壁に貼付けろ、急げ。」
「かしこまりました。」
今回調査の為外界に出ていおり、会合に直接参加出来ていない鬼族は『一つ目鬼族』、『三つ目鬼族』、『百々目鬼族』、『色鬼族』、『吸血鬼族』そして『地鬼族』だ。
しかし、会合に直接参加出来ずとも魔術を応用させれば映像と音声を遠くから送る事も可能である……つまり、テレビ電話等を駆使して会合に参加する事は可能と言う事だ。
そして、先程グレンデルが中継を繋ぐ許可を取ったのは、『吸血鬼族』のクレア・ドラキュリウス。現在別の所に住む吸血鬼族へ異変調査の以来をする為に派遣されている部隊の隊長であり、現『吸血鬼族』の女当主で有る。
「グレンデル様、準備が整いました。」
「なら今から繋げる………“魔術式展開”」
複雑な記号と数字の羅列が現れ、それが茶色の壁に急遽貼付けられた白紙へと流入して行った。
すると……まるでプロジェクターが有るかの様に、紙へ何処かの部屋の映像が写った。
「クレア殿、繋がりました。」
映像の中の部屋は豪華であった……品の有る紅紫色の絨毯に黒色の壁と蝋燭立て。そして紅色を基調とした天蓋付きの立派なベッドと黒檀で出来ている事が予想されるテーブル。
どれも一級品………何処の“貴族屋敷”に置いてあっても可笑しく無いものばかりだった。
だが、映像に映し出された女性の美貌に全て霞んでいる事は言うまでも無いだろう。
−白金色の髪留めで1つにまとめられた神秘的な印象を与える薄紫の長い髪。
−“戦乙女”を思わせる立派な黒魔銀の鎧に囲まれた芸術作品の様に均等の取れた、豊満でメリハリの有る身体。
−鋭く研ぎ澄まされた紅茶色の瞳と雪を彷彿とさせる真っ白な肌が印象的な、上品で奇麗な造形の顔。
神の創った最高傑作だと言われても納得してしまいそうな美貌を持つ、吸血鬼族の頭をしている“女傑”。
珍しく、いつもは不敵な笑みを浮かべているその顔に、今は思い悩んだ様な表情が浮かんでいた。
「有難うございます、グレンデル殿。」
「して、何が有った?」
「大方交渉する以前に先方と敵対してしまった感じかな?」
何となく女騎士を思わせる格好からそう言って見ると……
「?!…ルーナ様、ご無沙汰しております。ですが、何故我々の事情を?」
驚愕・困惑・蒼白等と表情をころころ変えるのに忙しそうなクレアさん。そんな彼女へ私は更に推論を述べた。
「クレアさん、その地域に居る吸血鬼族は基本的に自分達の事を『貴族』として見ています。故に、多分『霊山』に居る吸血鬼族が交渉してもまともに対応してもらえないと思っていたのですよ。そして……大方仲間の何でも血の気の多い者が先方に手を上げてしまった所、でしょうかね?」
「………全くその通りです。」
彼女の現在居る地域は吸血鬼の建国した『国』。
そこには太古、保護していた『教会』に裏切られた王族達と貴族達が処刑された地。
『恨み』と『生への渇望』を抱えたまま斬首の刑に処された彼ら………
伝承に寄ると、殺された直後に“鬼”として復活を遂げたそうだ。
その後は逆らう“ニンゲン”を1人残さず駆逐して行く……彼らの亡き後『教会』に迫害され、惨殺されていた国民は全員“鬼”として配下に置いて復活させた。
そして、『天空湖』と呼ばれる場所の、丁度中央に位置する島で『国』を築いたとされる。
その王国の名は『ワルハラ』。
そして、そこの王は『不死の王』と国民から敬畏する意味も込めて呼ばれていると言う。
王国を共に築いた彼の忠実な部下達は『貴族』となり、現在のその勢力図に変化は無い様だ。
「………それで状況はどうなっておるのだ?」
「……………私を嫁にしたいとのたまった貴族の三男坊に怪我を負わせた事を機に交渉が決裂、現在はその馬鹿な三男坊の実家を脅して何とか篭城しております。」
「それはまた……何と言うか………」
私はこめかみを押さえ、長老は溜め息を吐いて頭を振った………
ちなみにグレンデルは、クレアが出だしされそうになった事へ怒り狂っているレオルドを押さえるのに現在必死である…まあ頑張ってくれ。
しかし……………あ〜…簡単に想像出来ちゃう自分が何か嫌だ。
『君主制の欠点』………それは中央集権化により一部の権力者が多くの権力を握る事で“独裁的”な支配となる事による危険性が生じる事。
権力を握る人物が賢ければ良いが……愚鈍で腐敗した様な人物だった場合は国が保てなくなる。
だが、何処にでも権力を持った途腐る者達は居るのだ。
権力を使えるだけ使い、その権力に伴う『責任と義務』を果たさない。それでいて許されると勘違いしている連中。
恐らくそんな貴族の一部が暴走したのだろう………私も分身がそんな経験をしているので知っている。
だけど今回の目的はあくまで国に対する『調査』の依頼。
相手が調子に乗ってくれるならそれだけ後で交渉の場に於いては有効な手札と成り得るのに………これでは交渉決裂だな…交渉自体が始まる前に。
その上恐らく国の対面を守る為にも彼らは良くて投獄、最悪処刑された上でさらし者にされるだろう。
……………仕様がない。
「………仕方が有りませんね。私が出ましょう。長老、貸し三つです。しかも今回は分身ではなく私自身が動きますので大きな貸しですからね?」
割と真剣に言うと、長老は苦笑しながら
「ルーナちゃんが家帰る時に、今回は『鬼殺し』シリーズを渡すので、取り敢えずそれで今は勘弁しといてくれ。」
と言った。
よし!お土産ゲット!!
さてと……久しぶりに“こっち”に来ていた『ヴラド君』本人に遭いに行くか…面倒だけど。
またルーマニアの様子を聞かれるのかな……別に良いけど。
そうと決まれば今夜中に発たないと。
「悪いのだけど、ジャンクリに伝えてくれる?」
「御意。」
私は移転の得意な固有の精霊に伝言を頼み、屋形船から直接外に出て拠点まで飛んで行くのだった。
イヤ〜到頭入れちゃいました…異世界に渡っていも『花火』と『和太鼓の音』は絶対忘れられないと思うので。食品と風呂がまず第一ですけど、その次は『温泉』と『祭り』だと思います!そこに出されるB級グルメや出店等も欠かせないです!!
そして、今回のポイントはそれを”鬼”にやらせている事ですw
批判は受け付けますが、『祭り』を本編で登場させた事に反省も後悔も無いです(キリッ
それでは次回も宜しく御願い致します(_ _)