29 霊山での挨拶回り。
読者の皆様どうもこんばんは。
さて、今回はルーナが暴れます……ネタ技を使って。それでは本編をどぞ!
明け方目を覚ますと……私は銀色の身体に囲まれていた。
「おはよう、ゴン。」
「ルーナおはよう……良い寝顔だったぞ。」
なぬっ?!まさか………
「……写真撮っていたりしないよね?」
「ああコレか?」
そこには……私が間抜け面を晒している様子が写っていた………ってやばい。コイツがこういうものを持っているのは兎も角不味い。
「…消してはくれないのか?」
「消して欲しいの?条件を呑んでくれるのなら別に良いが?」
ニヤリと喰えない笑みを浮かべた人型のゴンは、からかう様に私の頭をポンポンと撫でた。
ムッとして見上げれば、更に余裕な表情で笑みを深めた。
「……それで条件は?」
「一日俺の女「却下」…最後まで言わせろよ。」
この狐……油断も隙もあったものじゃない。何しろ前科が有るからな………
秋口になると特に密着して来る事が増えるのだが、四六時中それをされるのは面倒なので“襟巻き”という形でならば一緒に居ると以前伝えた。それからは大体襟巻きに変身して首に巻かれている……
以来、時折セクハラをしてくるが、頻度は以前と比べて減った……
でもな〜………セクハラの内容がやばいんだよね……………
どのくらいやばいかと言うと………18禁を時々越えそうになるんじゃないかって程にやばい。
………ロリ○ン何だろうか?いや、ロ○コン何だろうね………………
しかし何故私の周囲は変態が多いのだろうか?……謎だ。
本当にコイツの条件に無条件で『Yes』何て答えた日には性的な意味合いで喰われそうな気がする………気を付けないとな。
「……条件はそれ以外無いの?」
「逆に聞くが、それ以外俺の望んでいるものは何だと思うか?」
割と真剣に聞かれたけど………知らん。
溜め息を吐きながら空を見上げると、黒い竜の影が見えた。
「ゴン、もうそろそろ…」
「分かっている、今変わるから。」
銀色のフカフカな襟巻きへと瞬時に変化し、私の首に巻かれたゴン。その直後に空から降って来たジャンクリ………朝食も持って来てくれた様だ。
「おはよう。」
「おう、早めに起きて香草とって来ておいたからスープ作ってくれ。」
…………良く見ると、ジャンクリは少し顔色が悪かった…珍しい。まあでも、昨日の晩アレだけしこたま肉ばかり食べれば腹も壊すか……
「………今準備するから座っていなよ。」
「……………悪い。」
気不味そうに顔を伏せるジャンクリ。何か可哀想な感じがしたので、何となく頭を撫でてみた。
相変わらず奇麗な黒髪だな……サラサラしていて力強くて、艶がある。そしてやっぱり安心する。
私は霊山の空気のお陰か、或いは1ヶ月経ったからか、少しだけ魔力過剰が落ち着いて来た様で灰色の近い色を現在はしている。
後もう少しで戻るか……何とも複雑な気分だ。
ジャンクリは顔を上げて驚いた表情で私を見た………
「まあ、何だ……元気出せよ。」
「お、おう。」
………ここに親父が居なくてよかった…間違いなく
「ツンデレ乙」
何て空気読まずに突っ込んで来るからな、あの人は………つか、突っ込まれた事は何度も有るから。
でも別にツンでもデレでも無いのだが……
まあいいや。私のその辺よく分からないし。
さてと、今日の朝食作りますかね。
…………………………………………………
「「ごちそうさまでした。」」
メニュー変更で山菜とサラミの粥を食べた後、私達は早速霊山に来たら必ず行う『恒例の行事』をする事にした。
まあ簡単に言うなら、霊山への『挨拶』だな……正確には『住民への』と言う言葉が付くけど。
そしてその内容は………
「現地に着いてからのお楽しみ☆」
「…誰に話しているんだよ?」
相変わらずボケるとちゃんと突っ込んでくれてルーナちゃん嬉しいぞ!
「まあ兎も角、楽しみだね〜今度は何が来るかな?」
「…スルーかよ……」
テヘ☆ミ
……………………(ナレーター)…………………
この世界には、様々な怪奇が存在する。科学では到底説明出来ず、更に魔術・魔法等の“この世界の理”でも説明出来ない事も、古来より多く存在する。
その代表格として『霊山』は存在する。
霊山とは地球で言う所の『パワースポット』に分類される。そして、彼方では『観光客』や『修行人』が集っていたが……此方では主に“霊”の字の入る魑魅魍魎が集う場所となっている。
そう、この地は強者が力を求めて拠点として日々主権争いを繰り広げている“箱庭”の1つだと言えるだろう。
その中には古より生きる者達も多く存在し、その代表格として『百獣連合』、『百鬼会』、『霊炎ファミリア』等が挙げられる。他にも多数のコミュニティーが存在するが、今は割愛させて頂く。
そしてそこに最近加入したのが冒険者『anonymous』兼、傭兵『月虹夜』と呼ばれる者達………ルーナを代表、ウォルターを補佐とする最弱種であるはずの“ニンゲン”がトップの集団である。
そして、彼らは拠点を持つのだが普段は別の地で暮らしている。そのため、元から仲の良かったコミュニティーへその場所を貸し出しているのだった。
故に、霊山に来ると毎回そのコミュニティーと“祭り”をする事が恒例となっていた。
ルーナ代表は、この一種の祭りを『霊山への挨拶回り』と称していた。実に上手い例えなので、解説をしている私も舌を巻いたものだ……
それではもうそろそろどの様な行事か気になるだろうか?それとも人に寄っては気付いているかも知れない。
どちらにせよ、これからその様子をゴンのカメラとマイクで持って実況中継する予定である。
さて、こうやって解説している内に彼らも『会場』に着いた様だ。
『祭り』は毎回開催される場所が異なる。理由は行う内容が毎度違うからだ。
そして今回のテーマは………宝探し。
子供が隠されたモノを探し当てて景品を貰うあの遊びとルールは同じだが……只の宝探しと侮るなかれ。
命までは保証されるにしろ、大怪我をする可能性もある上精神的に大きなダメージ負う可能性が高い。いや、“普通”ならば怪我では済まないし、最悪廃人と化すだろう。
過酷な条件下で行われる箱庭に置ける遊戯の1つなのだから、当然だ。
ルールは力技・不意打ち等含めた何でも有りの状態。そして、ゲストはホストの隠す“財宝”の位置を特定し、守護する人達を搔潜って財宝まで制限時間内に辿り着く事が勝利条件。ホストの勝利条件は“財宝”を制限時間内まで守り通す事。
単純なルールだが、文字通り“何でもあり”だと言う事に注目するべきだろう。
つまり、どんなにえげつない行為を行っても黙認されると言う事だ。
そして現在、目前にはそんな光景が広がっていたのだった……まあ、私が解説するより音声を聞いた方が早いと思うのでそのまま中継を繋ぐとしよう。
映像が無いのは勘弁して下さると有り難い……
「じゃあ取り敢えず、『|収束砲撃《スターラ○ト・ブ○イカー》』どうだ〜!!!」
『ノ〜〜!!!?!!?!』
「…………俺の出番…」
「次はえっと…?!おっと危ない!『術式解析』からの〜『分解』、次いでに『倍返しだ!!』」
『ギャ〜!!?!!?!!』
「…………俺要らない子?………グスン…」
まあ二言で現すなら『ルーナ無双』と『ジャンクリ&敵ドンマイw』だろう。
ちなみにルーナは某リリカルで魔法少女な攻撃(但し、殺傷力は無効にした)を放ってからこれまた某劣等生を騙るシスコン高校生の技で相手を封じた上で、相手の攻撃をドラマの如く倍返ししていた。
彼女の前方に広がるのは……死屍累々。
その横では、先程何らかの原因で口論になって精神的にポッキリ折られた軟弱ドラゴンが、背中に縦線と影を背負って地面にノの字をエンドレスに書いていた……
既に宝探し等忘れられて、何処かの戦場と化していた。
それから数分後………
「コレくらいで勘弁してやってくれんかのう、ルーナちゃんや?」
ルーナの背後から音も無く現れた影……良く見ると、緑色で小柄な体と皺の寄った穏やかそうな老人の顔。
所詮『小鬼』と呼ばれる最弱の怪物で有るが、侮るなかれ。
この方こそが『百鬼会』の最高責任者で有る、『最強の小鬼』、『鬼の賢者』『ご隠居様』等の異名を持ち、外界でも未だに恐れられている“生ける伝説”の一角である。
「長老の頼みですし、今日はこの辺にしておきますかね……」
ルーナは亜空間の1つから凍ったタオルを取り出して、自分の顔や身体を軽く拭いた。そして汚れたタオルを魔術で奇麗にしてから再び亜空間に戻した。
良く見ると、彼女の足下には汚れた木箱が1つ置いてあった………今回の景品である『宝箱』だった。
足下に埋まっていたはずであったソレを土属性の有る精霊達がいつの間にか掘り出し、彼女の足下に置いていたのだった。
それを彼女は片手で拾い上げ、軽く側に居た精霊達の頭をもう片方の手で撫でた。そして小鬼の長老へと目を向けた。
「…宝は頂いても?」
「勿論、その為に用意したのだからな……ルーナちゃんは儂らが只であげようとしても受け取らんだろう?」
長老は満足気な顔で頷きながらそう言った……どう見ても、孫に対してお小遣いを過剰にあげたがっている祖父にしか見えない……
まあ不思議な事ではないだろう……種族は違うが、ルーナの事は実際に孫の様に思っているのだから。
「まあ、只より高いものは無いので。」
一方のルーナは若干ジト目で冷静な対応をするのであった。
「カッカッカ、若いのに分かっておるのう。で、儂らの所の若い者はどうじゃ?」
「う〜ん……技術は流石が爺の訓練を搔潜って来ただけ有ると思うよ?でも体力が如何せん、ね…まあコレばかりは仕様がないのかな?他にカバー出来る所を探した方が良いと思う。」
毎回行われる『祭り』は合同軍事演習の様な意味も込められており、主に前世が敏腕な傭兵で今世もウォルター同様変態仕様に成りつつ有るルーナが時折指導する為に行っている側面もあるのだった。
………まあ、ルーナが直接相手にせず彼女の従魔に任せる事も以前は有ったのだが……ルーナの様な手加減が出来ずに負傷させてしまった事が有ったため、最近ではルーナが直々に行っていた……主に“分身”で。
今回の様に“生身”で相手をするのはウォルターと共に修業の為霊山へ来ていた時以来なのであった。
「やはりそこかのう……儂はその辺若い頃に散々修業して何とかしたのだが………最近の若い衆はそこまでやらんからな…」
「まあ今は爺の時代程厳しくないからね?特にこの辺は“ニンゲン”が入って来る事もないし?」
正確には入らないのではなく、知性も力も有る強力な魔物が蔓延る『霊山』と言う場所に入る命知らずな“ニンゲン”が居ないだけである。
そして霊山からはぐれの魔物が出て来た際に対応するため管理を代々任されている一族が居り、彼らの許可無く無断で霊山に侵入した場合は命の保証はされ無いどころか死罪は免れない事になっている。
何しろ、王国としても『霊山』に居る魔物の軍勢を敵には回したくないのだから……正に『君主危うきに近付かず』で有る。
そして、その体勢が保てるのもこの地に住む魔物が未だ人よりも強いからであるのだが……最近では実力が下がって来ている様だ。
「まあそうなのだが……この状況を維持しするには些か役不足と言うべきかの………ルーナちゃんが入ってくれれば1番なのだが…」
「いい加減諦めなよ……大体私は“鬼種”ではないから無理でしょう?」
呆れた様子でルーナは言った。だが、長老は諦めた様子が無く……
「………確か契約しておる連中の中に若い鬼が居なかったか?」
「彼と結婚して一緒に入団するって方法の事?それなら以前お断りしたでしょう?大体私はこの世界を皆と一緒に見て回りたい訳だし、ヘルメスもヘルメスで将来は大商人に成りたいって大きな夢が有るのよ。それを潰すのは私としても本意ではないの!分かってもらえた?」
今度は長老が呆れた様な顔をしてこめかみを押さえた。
「相変わらず鈍いと言うべきか…何と言うか……」
詳しくはここで語らないが、ヘルメスが大商人になって大成したい理由はルーナに無関係では無いと言う事をここに記す。
それにしても………ヘルメスの努力も報われる日は来るのだろうか?
………………………(end)…………………………
ゴブリンはよく雑魚キャラとか性欲の強いゴ○ブリ並の様に大量に居る害獣として描かれる事が多いですが、西洋の伝承とか見ると結構賢い連中も出てきます。ハリー○ッターとかに出て来るゴブリンも実際、銀行員として働く割と賢い生物として描かれていました。
私が描いたゴブリンは、『理性有るものは何処までも賢く、無い者は何処までも本能に忠実』と言った感じです。そして基本的に彼らは”小型の鬼”であり、狩猟兼農耕民族です。つまり、知的生命体の1つだと認識されて構わないと思います。
同時に、ポケットに入る某モンスターで言う所のV'sみたいに多種多様な進化をする為、”可能性の広い種”だと言えます。
それでは次回も宜しく御願い致します。
訂正: ブイ○ル→V’s 申し訳御座いませんでした(_ _)
訂正: スターダ○ト → スターラ○ト (ルビ)訂正致します。ご指摘有難う御座いました。




