18 強くても体調不良には敵わない。
読者の皆様どうもこんばんわ。そして感想有難うございます(_ _)
さて、今回でルーナが何故領内をこれ程発展させつつ自分の修業も出来たか明らかになります。それでは本編をどぞ。
……………(王宮から家に帰って数時間)……………
ああだるい………全身激痛が走り、酷い目眩と吐き気がする。そして熱も有ります。
”完全に風邪引いたね”
そう言えたらどんなに楽だったか………
この一見風邪に似ている症状だが、実は全然違う…だって『普通の風邪』は全身に変な黒い紋様とか浮かびますか?それと、魔力枯渇症状みたいな事が続くか?
そしてこれらの症状に私は多いに心当たりが御座います……何故なら舞踏会の時に食べたものが『それ』を正に引き起こす原因となる物質を多く含んでいたのだ。
……………………………あ、あの時は美味しかったから爆食いしていて気付かなかっただけだよ?本当に……べ、別に早く帰りたくてやったわけでもないからね?
ゴホンッ
さて、『魔素と病気』と言うタイトルの本に書かれていた一説を今から大まかに引用しようと思いますので、それを詳しく見てくれたまえ。
『魔素過剰摂取症/魔素毒風邪』
魔素濃度の極端に濃い場所に暫く居た、若しくは魔素濃度の濃い食品を短期間に過剰摂した場合に起こる。
症状は様々だが、総じて風邪のそれに近い。その為、勘違いされて間違った治療方法をされて病状を悪化させる事が多い。死に至る場合も多いので注意が必要。
現在何故風邪の様な症状が出るかは、判明していない。だが、治療法は確立している。
1つは、魔素が馴染むまで苦しいのを我慢する事。上手く馴染めば魔力保有量が25歳以上であっても一気に増える。
ただ、この場合激痛に耐えられずに死ぬ事と魔力を体内に保持する器が壊れる事が有る。後者の症状が出た場合、“精霊の泉”に生えているとされる特殊な薬草が無ければ数年後魔素枯渇で死に至る。
もう1つは、魔素を過剰に使う事。
英雄級以上の魔術を使い続ける等、魔力枯渇を意図的に起こせばリスク無しで魔力保有量が一気に増加する。但し、枯渇した暫く眠る事になる。どれ位で目覚めるかは個人差が有り、下手すると目覚め前に餓死する。
まあつまり、どちらにしても死ぬリスクは有るってことだ。
ちなみに風邪みたいな症状の原因は多分日本で高等教育までちゃんと履修した人なら殆ど誰でも分かると思う…特に生物に有る程度明るければ。
まあ簡単に言うなら、こんな感じか?魔素受け入れで全身がダメージするので修復が必要だが、それには体力を消耗する。結果、免疫力が著しく下がって風邪と同じ症状が出る。
ちなみに風邪とは、ウィルスに感染してそれに対抗する為体力が消耗した所で体内に潜んでいる日和見菌(いつも身体に居る弱いカビ)等が暴れるので痰や鼻水が大量に出るらしい。
後者の風邪に関する事は、スラムで闇医者やっていたオッサンに前世教わった事だから正確性は保証出来ないけど、この説明で私は一応納得している。
まあだから、ウィルスの代わりに魔素が毒素として全身にダメージを与えたんだと私は解釈したのだった。
そして私は現在………
「じゃあ頑張ってね、『私』。」
『うん、行って来るよ『私』。だから安心してさっさと魔素を枯渇させなよ?暫く目覚めなくても私達が代わりに色々しておくから。』
「そうするよ。だから後は頼んだ!他の連中の説得も含めて。」
『ら、ラジャー。』
………………某忍者漫画や某ゼロでピンクなチビ魔法使いに出て来る『分身』。又の名を『偏在』と呼ぶ。
それを私は潤沢な魔力と魔術式、等々で実現したのだった。
結果:“影”の付く分身技宜しく経験を全て文字通り『フィードバック』させる事の可能な分身が出来た。
ちなみに怪我等も油断するとフィードバックするという致命的な欠点が有るが、それ以外は特に問題無い。
そんな無駄に無駄の無い無駄に高性能で無駄に魔力を消費しまくる魔術………好都合である。
そこで私は3000人分の『私』を先程作り、内1000人は魔術と勉強、内1000人は武術の修業、そして残りの1000人には別任務を言い渡した。
任務内容は、500が領内を巡回して教育・農業の手伝い、それから自警団の訓練の教官をして貰う事にした。
残りの500は商会と冒険者活動をして貰う事にした。なお、冒険者に関しては保護者が居ないため依頼は受けられないが、売れる魔物等の素材を収集しておいて貰う様に指示した。
そして次に目が覚めた時には………ああ楽しみだ。
一体どれくらい資金が溜まるか、実力が着くか………本当に我ながら寝ていても筋肉とか脳味噌とか衰えないいい方法を考えた物だ。
さて、まだまだ魔力に余裕が……そうだ!
「3000人の『私』、一瞬ストップ!!」
『?!』
「いまから私は自分の魔力全て使って全員に色々魔術を付与して行きます。だから暫く気配を消したまま待機ね!」
そうして私は色々とオリジナルも含めた魔術式を重ね掛けして行った。
……これで私が解くまでは大体生き残るだろうな………
「では終わったので、全員出発!ああでも、1人残って私を運んで……ってもう行ったか……………」
あ、やばい……猛烈な睡魔が襲って来た……………
そしていきなり背後からバサリと羽の音がした。
辛うじて開いている目で見ると、黒い髪を振り乱したジャンが降り立っていた。焦った様子で私を抱き上げた。
「……あんまり無茶しないでくれ、そして俺を少しや頼れよな、相棒。」
「……………なら今頼むわ…眠くてもう、一歩も動けない。身体、ヨロ………」
私の意識は完全にログアウトした。
皆さんおやすみなさい。
………………………(ジャン)………………………
目をつぶり、動く様子の無いルーナ。
顔色は蒼白で唇も真っ白だ。そして身体には一切力が入っておらず、その上何だか先程から冷たくなって来た。
………………端から見れば死んでいる様に見えるかも知れない。
だが違う。
『契約』して以来、俺と彼女は互いの生存を知る事が出来る様になったので、死んでいれば俺も一緒に死ぬ事に成る。
そして今特に注目するべき所は彼女の顔以外の露出している皮膚に見られる紋様。
……全て俺が“種族”として持っている紋様。
これはつまり、身体がやっと契約に馴染んで来た証だ。
俺の改造した契約は、『互いの存在を“番”として魂に刻み込む』と言う内容だ……そしてその中には『番の寿命や種族を長い方、そしてより強い方へと合わせる』と言う事も含まれている。
つまり、彼女は年々契約が進むと同時に、俺へと近付くと言う事だ。
ただ残念ながら今の所彼女は精神的に俺を“番”として受け入れていないため、まだ最終段階までは行かない。この契約の唯一の欠点であり良点で有る部分が原因だろう。
“互いに認めていなければ成立せずに何れ破棄される。”
そして一度破棄されれば、同一人物へ次に契約出来るのは破棄されてから10年後。
そんなに俺は待てないからな……
子供らしく小さく軽い彼女の身体を抱えて移動しようとしたが……思わぬ伏兵が居た。
「何か用か……………………………ポワンセ?」
「ん……彼女暫く寝る、食事駄目。だから俺、食事、代わり。彼女、入る、栄養、渡す。」
たどたどしい説明だったが……何となく何がしたいのかは分かった…分かったのだが、“彼女の中に入る”と言う行為が気に入らない…それが例え消化器限定でも。
だが、奴はその空虚な白金色の目で俺を睨みながら、こう言った。
「ルーナ、好き、俺も、皆も………独り占め、駄目。魂、知っている。けど、お前、だけじゃ、無い。俺も。」
そう言った後……………来ていたモスグリーン色のセーターを捲し上げ、腹を見せて来た。
見ると………俺の紋様と一緒に俺の知らない紋様が幾つも有った。
そして奴と目が合うと、ニッコリと笑いながら…
「知らない、彼女だけ。従魔契約、違う。人、勘違い。アレ、強いの、俺達、番、使う。俺達、ルーナ、強い。ただ、それだけ。」
そう言い終えると、スライム形態になってさっさと彼女の身体に入って行った。
…………………成る程。従魔全員が彼女を未来の番として狙っていたか………
だがはっきり言おう…負ける気がしない。
大体彼らの持つ契約と俺の改造された契約ではそもそも強度が違うのだから、今この瞬間も俺が契約場所に干渉して消し飛ばす事も出来るのだ。
しかし……………何なのだろうか、この、言いようも無い不安は。
何か重大な事を見落としている気がして成らない……後で何か影響が出なければ良いが……
さて。ルーナをベッド寝かせたら俺はウォルターを呼び、共に結界を張ろう………責めて本体が無事で居られる様に。
………………………(end、そして3週間後)………………………
目が覚めると………何か頭に割れる様な痛みが走った。
そして一瞬で全て納得した……………
−流石に3000人分の別々の記憶を一気に流せば酷い頭痛も起こるか……
全く、以前(具体的には2歳)の時の経験を活かせていないな…情けない。
さてと……両親並びに兄弟や家の人々……………私の従魔達。そしてジャン。
皆に心配かけたみたいだな。
『私』の記録によると、私の本体をジャンクリがウォルターと交代で外敵から守る結界を張ってくれていたらしい……
後、食事の出来ない私の為にポワンセが、消化した栄養物を私に流してくれていたそうだ……
これは私の『分身魔術』の欠点−本体の防御力低下と栄養摂取不可能で有る事−を解決してくれた様だ。
…………………………本当に有り難い………………
そして、3000人分の疲労や怪我等も一気に吸収した私は再度寝込む事になったが、今は別にそんな事はどうでもいい。
今回私は流石に学んだ。
……………多分もう二度と再びこの魔術をこんな使い方しない。暫く便利だけど封印しようか迷ったくらいだ。
正直記憶の消化が1番きつかった……頑張った甲斐有って前世では出来ていた“並列思考”が再びしよう可能になったが。
だけど、脳に掛かった負担は半端無かった様で……高熱で今、真面目に死にそうです。
何とか魔術で冷やしているけどそれが無かったら………
自分の迂闊さを呪いつつ、私は再びベッドに潜った。
今回、私の体調を家族が気遣ってくれた様で何と……ウォルターが看病してくれているのだ!
そしてウォルターは、私の次に和食作りが公爵家の中では上手い…専属コックよりも。
今は大人しく彼特製のお粥を持って来てくれるのを待とう………煮込むのにこちらでは炊飯器が無いから時間掛かるんだよ。
その間、私はちゃんと大人しくベッドに居ますよ?勿論身体が辛いからね…今回ばかりは私もダウンしたよ………
それでは皆さん、お休みなさい。
そんな分けで、ジャンクリのライバルは従魔達でした!
森の中ではぐれになる固体は雄だった事もあって(雌はまず強い雄に囲われる為集団から離れる事は無い)ルーナちゃんの従魔は大体雄。その上魔物は本能的に強い固体を番として求めるので、彼女を求める訳です。
さて彼女の争奪戦は水面下、本人の預かり知らぬ所で行われておりますが…一体どうなる事やら。
次回も宜しく御願い致します。




