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悪役放棄、更に自由人へ(仮)  作者: 平泉彼方
第二章 自由気ままな冒険譚⑴
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16 暗い、そして仄黒い

 読者の皆様どうもこんばんは、今日は珍しく投稿が間に合いました。ですが行の調節は明日以降行います…申し訳ないです。


 さて、今回はウォルター視点でお送りします。それでは本編をどぞ!





―――地上、同刻。



 ああ全く、お嬢様もお嬢様だがそのストーゲフン、一応“候補(暫定)”も結局は同類だ…そう慌てなくともルーナ様がこの辺りで負ける様な事はまずあり得ない。だから心配せずどっしり構えていれば良いのに。

 ここは『霊山』と比べて随分温い場所だ。

 …それより構い過ぎて嫌われる可能性だってあるのに早計な行動をよくもああ取れるものだ。それとも嫌われる事自体が無いと思って甘えているか…流石にそれは……

 何となくあの自信満々な龍のドヤ顔を思い出し、あり得なく無いと思えて来た。同時にその時の事が頭に過って嫌な事を思い出したなと、深い溜め息が出ていた。

 本当、あの時の自分の対応は間違っていなかったか今でも思い悩む事が有る。幾ら『次期公爵家当主』を仕立てる為にあの元ゴミク…ゲフン、失礼。残念な頭脳を授かったあの2人の兄弟を相手に指導をみっちりする為とはいえ、離れる時お嬢様の相手を頼むのは私の犯した重大な失態だったのではないかと。

 それが結果的にお嬢様の活動範囲を広げる事となった訳だが夜中ナニをしていたのか私が把握していなかったとでも?お嬢様が止めていなければ今頃トキョウ湾(ラウツェンスタイン領に存在する湾)にコンクリ詰めで沈んでいただろうに。

 ○リコンは死ねばいいと思う(同感、)

 それにしても奴が本当に永き刻を彷徨った記憶を保有しているのか怪しいものだ…何と言うか行動や言動が些か、いや、ここははっきり断言しよう。

 余りに稚拙で無謀過ぎる。

 ここへ来る前も、たかが『従魔』の地位に甘んじて獣として甘えているあの連中に敵意を振り撒くは、お嬢様の側から強引に引き剥がそうと何度もしていた。その度にお嬢様に宥められていたが…あの呆れた表情に気付かないとは。

 或いは本当に変態であり、気付いていたとしても喜んでいたか……シャドウとしての面を思い出すとあり得なく無いと思えてしまうのが何とも悲しい。それならまだ弟子である『ジルヴァ』の方が純朴で数倍もマシだ…弱かったのでお嬢様の伴侶候補として認めてはいなかったが。

 ルーナ様の仰有った“冒険”に同伴するとなると、あの程度では足手纏いになっていたに違いない。最悪人質に取られてルーナ様が揺れる前に私がさっくり気付かれない様始末していたかも知れない。

 …とまあ、話しが逸れたが幾ら常識や倫理観がずれていたとしても私では想像もつかない程生きているならば、もう少しどっしり構える事も出来る筈である。何より元は暗殺者や龍であるならば、契約の意味合いとその縛りについて知らないとは言わせない…書き換えられたあの『契約』がどれ程威力や縛りを持っているか。

 それにお嬢様も別に優柔不断で浮気性である訳でなく、何かしらまだ事情が有る……それも恐らく魂の関係で。お嬢様の仰有っていた『前世』の縁かもしれないし、それ以外かもしれない。

 何せ、契約して暫くしてからあれ程あの獣達は可笑しくなったのだから……それ程執着していた様子はなかったのに。動物の本能?剛の者に惹かれる性質?そんな生易しいものでは無い。

 目に狂気が混じっているのあの状態はそれ以上に何か有る…何せあの龍やシャドウが目の奥に映していたあの色と酷似しているのだから。そして彼らは『前世』絡み。

 大体アレが本能でそうなっているとしたら、その前に桁違いの実力とお嬢様との関係(非常に癪だが)を持つ『ジルヴァ』に怖れを成して撤退しているはずである。


 …まあ、この辺りは考え出したら切りが無いから一旦切ろう。さて、軽い現実逃避から現在直面している嫌な現実に戻るか。

 ハァ…それにしてもこちらにこうも多大なる迷惑をかけるとは…『シャドウ』として活動していた記憶は迷子中か?それともお嬢様の言った通り『ジルヴァ』としての人格が主体となった影響か…


 目の前に座る人相の悪い“如何にも”と言わんばかりの若い男(推定30代)の薄ら笑いを見ながら、内心悪口大会を開催していた。



「おいおいおい、裏ギルドの掟あいつ忘れたのか?活動するなら誰であってもその街の頭領に挨拶するのが常識だろ?」



 褐色の酒瓶へ頬擦りをしながら答えたら、その悪人面も効果半減だな…最初から私へ効力が発揮する事は無いが。寧ろ威圧された受けて立ちましょうかね、それこそあり得ないでしょうけど。

 それにしても裏ギルドの顔としてはいいのでしょうかね?これだけ緩んだ顔をしていたら付け入られてさっくり逝きそうですけど…まあ普段は大丈夫、だと思っておきましょう。

 ああでも人生分からないもだ…ルナライト社の開発した“大吟醸”を手土産に若造へ御機嫌取りを“この歳”で行う事になるとは…まあこれもまた一興。人生とは誠に面白きものだな、本当に。



「すいませんね……後で私の“研修”に付き合わせますからそれで勘弁してやってくれませんか?アレでも一応は私の“弟子”なのでね…」



 その一言で、何かを思い出したのか顔を歪めた裏ギルド『ダイスウォールズ支部』の代表…ギルドマスター以上の地位と言えば分かり易いでしょうか?

 まあでもコイツもまだまだ小童だな。

 折角()が現役時代わざわざ育ててやったというのに、基礎の基礎が未だにこうもずさんだとは…正直もし今の地位にいなければさっさとOSHIOKI★しているところである。



「お前がそう言うなら仕様がないな…今回だけ許してやるよ。だがそれは俺様だからって話しだ、ウォルター。」


 ブチンと何だか不穏な音が聞こえた気がしますね……おっと、この音の発生源は主に『俺』の中か。まあ当然と言えば当然か。こっち方面はなるべく普段出さない様にしているんだがな…若者達に中てられたかな?

 まあいい…それにいい機会だ。

 すっと目が細まるのを感じると同時に、完全制御下の濃厚な殺気を一点へと向ける感覚がした。この辺りの制御はまだまだジルヴァもお嬢様も甘い、今度修行つけてやっか。

 それは兎も角。



「良い身分だな『ジョン・スミス』……いつから師匠を呼び捨てる礼儀を学んだか、怒らないから言ってみな?」



 その場に固まったまま、震える事はおろか呼吸する事も侭ならない状況へ陥った元弟子…だが元弟子として一人前として扱うには些か未熟であった相手。

 それは単に私が娘を無くし、この業界から足を洗った為修行が中途になってしまったから…


 だがそれでも相手は『俺』に基礎を仕込まれたからこそ今の今まで生きて、更には今現在のギルマス以上の地位へと就けたのだろう。



「ヒュッ…カヒュッ…」



 おっと、危うく(窒息)してしまう所でしたね…それにこれでは話しが出来ませんか。しかし、我が元弟子ながらみっともない。此れくらいの威圧なら、お嬢様は勿論、ラウツェンスタイン領の領民達(老人〜子供)でさえ耐えられますよ?

 ……今更ながらあの領は一体どうなっていたのでしょうね?一流の暗殺者の殺気を受けながら落語を聞いて爆笑出来る神経とは一体どうなっているのでしょうね。きっと『英雄病』とか『ストロングウィルス』とかに掛かっていたのでしょう、そう違いない(遠い目をしながら草臥れた様に溜め息を吐く)


 目の前の相手を忘れて一瞬あの地に思いを馳せましたが、今更ながら本当にお嬢様の言う通りあれ以上の介入は必要無いですね。我々が庇護しなくても多分強く生きられる事でしょう。

 さて、いい加減現実に戻りますか。



「グ……ハァ、ハァ…ッ、衰えなく…いや、前以上に…グッ、威力を発揮し…ゼェ、ているとか、反則…だ……」



 崩れ落ち、息を整える暇も与えず奴の胸座を掴んだ。



「さて、覚悟は出来ているかな?」


「…ヒィ」



 短い悲鳴を聞き流し、尋問をする……勿論容赦などしませんよ。と思っていたら相手は直ぐに降参した。



「…成る程、ね。」



 どうやら何かしら言いがかりをつけて厄介な仕事を旋回する予定で有った様だ、というのも奴の下っ端が最近妙な事件に巻き込まれて困った事になっているとか。解決の糸口が見えないから俺と弟子達に押し付けようと、ね。

 後はフォーレンタール王国へ“借し”を作るためにも私達を足止めしようとしていたと。正直で宜しい。だが畳むかどうかは、話が別だが。



「しかし、予想以上にここまで追っ手が来るのが早い……ラマルク侯爵辺りでしょうかね。」


「流石ですね師匠…あの、本格的に戻って来る「あり得ませんね」…即答ですか、ハイ」



 悪人面がすっかり腑抜け面になり、昔の情け無さそうな少年の面影が見え隠れしますね……少し懐かしい。

 誰が一体想像出来よう。

 今ではすっかり裏世界で有名になっているが、昔私に拾われた頃はそれこそ世界に絶望して心を折られて無抵抗になっていた…あの情けなかった少年が裏ギルドの代表、か。時が経つのは早いものだ。



「さて、私はそろそろ所用が出来たのでここから立ち去りますが…宜しいですね?」


「…命が惜しいので、部下には伝えておきます。」



 なら暴走したら此方で始末するのは容認されたという事で宜しいのでしょうね。早速2人、いや、3人。



「部下の躾はちゃんとしておくと寿命が延びますよ?」


「有難うございます…次回までに善処します。」



 ハンドサイン…既に屋根裏と壁側に有る肉塊は回収されましたね。一応ちゃんと育てていた様で。



「ま、元気な顔が見れて良かったです。今後も頑張って下さいね。」


「はい、頑張って生きます!」



 その辺、昔と変わっていませんね。ならばもう心配せずとも大丈夫でしょう…最も大事な基本事項は『生き汚い』事ですからね。闇に、裏に1人で生きるなら大事な事です。


 さて、お嬢様の元へ向かいますか……もうそろそろあのストー、ゲフン…裏ギルドのカードを忘れた阿呆弟子の説教も終わっているでしょうからね。



 皆大好き色々薄暗い執事のウォルターさん。その溜め息や仕草は一々渋い!そして痺れる!!


 老獪そうな笑みを浮かべ、立場無視して脅すウォルター。元大事な弟子であっても、キレイな笑顔で〆るウォルター……私的には作中お気に入りのキャラですね。


 ただ今までは色々と万能過ぎてルーナちゃん他の戦闘を含めた言動をカットする事になりそうで、ストーリーの関係も相まって予想していた以上に出せませんでした。ですが、これから積極的に出す予定です。


 さて、次回もどうぞ宜しく御願い致します。

 

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