11 私の知らない彼の独白
読者の皆様どうもこんばんわ。いや〜びっくりしました…アクセス数とブックマークが昨日の倍以上になっていたので。それから評価と感想有難うございます。滅茶嬉しいです。更新頑張ります!!
さて、前置き長くなりましたがいつもの番宣(笑)です。
前回ウォルターが一身上の都合から原稿上からドロンした結果、有る人物が暴走します。今回ルーナちゃんにロリ○ンが迫ります…逃げろ、全力で!それでは本編をどぞ。
ウォルターが去った後の部屋は、何だか寒い感じがした。
私が記憶を取り戻す前から、即ち2歳前から唯一仕えてくれていた執事。やっぱり私の中では“大事”になっていたのだろう……ああ駄目だなこれでは。極力心配かけたくないのに。
1〜2年位の辛抱だというのに、姿見に写った私の表情は酷いものだった。何とか笑顔を作ろうとしたが、顔全体の筋肉が引き攣って変な顔になってしまう……前世ではできたことだというのに今世は修業不足。実に情けない。
表情筋、鍛え直すか。どのみちポーカーフェイスができなければ今世の人生は確実に詰む。
今はまだ一応肉体年齢7歳の餓鬼だから許されるも、公爵令嬢を一応やっていくには必ず必要になる。それに将来家出して冒険者目指すのならば、最低限貴族社会の荒波を平然と乗り越えられる今世の親父を欺けないと途中で頓挫する。だがそれは今現在も言えることで、ウォルターが離された分私をフォローしてくれる存在がいなくなったことを意味する。
その状態で色々行動するのか……もう既に色々詰んでいないかこれ?
悶々と考えててドツボに嵌っていく。特に、修行不足だったことへ…今世の私はどこか甘えていたのかも知れない。そう考え、何だか落ち込んだ。次いでにこういう時ウォルターがいれば温かいハーブティーを入れてくれていたことを思い出して、改めて我が執事の喪失を強く感じた。何となく心が寒くなる感じだろうか。
気落ちしてため息を吐いたところで、突如温かい腕が私を捕まえた。自分より高い体温と体格。匂いも家族やウォルターとは違う。しかも筋肉質だから恐らく大人の男性。不審者…誘拐犯か?
身体が即座に反応するも、がっちり抱き囲まれた私の身体はどうやら抜けられない様だ。不味いかもしれない…仮にも公爵令嬢。本当に不審者だったら私はこの時点でアウト。社会的にも人生的にも。
フザケンナと自分を叱咤し、咄嗟に相手の足を踏みつけ腕から脱出した。
私に気付かれることなく背後へ回って更に身体を拘束した手腕。腕が鈍っているとはいえ、一般人レベルよりは逸脱していることは事実。一体どんなやつだ…そんな風に思って見上げた、隠しナイフを当てたまま。
目と目が合う。
その瞳が捉えたのは黒髪紅目の成人男性。私を見つめる黒っぽくも紅い夕日の目には、驚いて固まる私が映し出されていた。それを見て、凄く気まずい気分となった。
契…知り合いだと分かったので慌ててナイフを仕舞い敢えて距離を取る。気不味さを払拭する次いでに全身で相手を警戒する姿勢をとった。そしてネタに走った。
「……○リコン?」
私の言った言葉を理解するなり一気に顔を真っ赤にした。
「……?!誰がロリ○ンだ!!」
いつもの調子に戻ったので少し安心するも、力を抜くには早計だった様だ…油断したところで再び抱きつかれた。今度は逃げられない程度に優しく。
「全く、これだから世話のかかる子供は…」
抗議しようとした私を遮り先に子供宣言された…これは喧嘩を売っているのだろうか?などと現実逃避をしていたが徒労に終わった。
「まあなんだ、その…胸、貸してやる。だからその、元気出せ?というか、安心しろ?」
………………え?何?どういうこと?!
混乱する私へジャンクリもとい、ジャンはその言葉や表情とは裏腹に優しい手つきで背中と頭を何度も撫でた。何故だがそれが落ち着く様な、懐かしい様な…そしてほろ苦い、切ない気がした。そんなことされた記憶は少なくとも今世はないというのに。
こんな…こんな恋人にする様な抱擁とそれから眼差し。
従魔契約を交わしただけの関係だというのに可笑しい。これはあれか………ツンデレのデレってやつか?などとリアルから脱線しようと努力するも、状況は変わらない。
優しく私を抱き締める力強くも温かな腕。
耳元ではどこか聞いたことのあるテノールの穏やかな声。
その威力は大人で渋いウォルターの声と同等…やばい、これだけでもう既に限界を迎えそうになる。
だが、何とかプライドと気合で色々我慢した。具体的には体内魔力を操作して血流や心拍数を一定に保ち、体温もこれ以上上がらない様に。次いでにその操作方法を頭で思い浮かべながら。
しかし、今日の許容範囲を既に天元突破していたせいかあっさり限界が来た。
しょうがない、これで我慢してやるよ……などと少し上から目線で遠慮なく彼の胸を借りた。そうでもしないと何となく負けた気になったので。
そして、不貞寝する事にした。
こういう日も悪くはない。特にストレスが溜まった時には寝るのが1番。そんな分けで、皆様おやすみなさい。
…………………(???)…………………
俺へ完全に身を任せる様にして、無防備に寝ている少女。あどけない顔で幸せそうに俺の胸元に頭を押しつけ、匂いを嗅いで時々ニヘラと笑みを浮かべていた。
契約者?そだけではない。
眠ったまま動かない少女のフニフニとした頰をつまむと少しだけ不愉快そうに凛とした眉毛を寄せる。離して頭を撫でると、嬉しそうな表情になった。こういう所、本当に変わってないな…
我が婚約者殿は本当に変わらないな。
意識してか無意識か(恐らく後者)、彼女が俺に掛けた契約はその類の亜種だった。魂にまで浸透するものだから、多分解除するのは難しいだろう。まだ仮の状態では有るので本人同士の合意さえあれば可能ではあっても俺が許さん。
『婚約の契約』にすり替えた下手人は俺。魔術式を契約直前咄嗟に書き換えてそんな内容にした。誰も気付いていなかったし今後も不可能だろうが。
そして俺は龍でも魔獣でも無い…もっと悍ましいナニカだ。
今は言えない。言って嫌われたら何を仕出かすか自分でも見当がつかない。だが、いつか全て話す時が来るだろう…執事の方は既に気付いているようだったが。
元暗殺屋、ウォルター・O・クレセント……『黒銀の死ニ神』等と、何とも厨二的な渾名を付けられて。腕は確かな様だが何ともかわいそうにな…そういえばこっちには厨二病等と言った概念は無いんだった。前世にはあったんだがな。
モゾモゾと腕の中に眠る少女がすり寄って来たので露出した自身の胸を向ける。すると、記憶の通りに彼女は抱きつく様に身体を押し付けた。その様子に懐かしさと安堵を感じる自分が何となく滑稽に思えた。
未練がましくも、ここまで来ちまったなぁ……………俺の腕にしっかりと捕まえられている少女の『前』の姿を思い浮かべ、段々と鮮明になって来ていた自分の当時取っていた言動をはっきり思い出す。そして軽く悶えた。
だけどお前も本当に変わってないな…ユキ、同時に俺たちの関係も。
『本郷由樹』
互いにじゃれ合うことはあっても軽いスキンシップがっても、決してはっきり思いを告げたり男女を意識して接触したりすることはなかった。それがずっと、俺の後悔していたこと。未練に思い再び巡り会うことになった原因。
そうだ、そうだった。
ずっと俺達は、友達以上恋人未満の甘酸っぱい関係だった…永遠に、結ばれることもなく。
…………………………………………
彼女と遭うのはいつも戦場……中東の紛争地帯へ武具の取引役の護衛や、時には紛争を諫める交渉役。
太陽の元歩いて大丈夫だとは思えない絹の様に滑らかで乳白色な肌。凛とした大人っぽい佇まいをしていても明らな、10未満から10代前半の幼い外見の少女。強いていうなら少し背伸びしている微笑ましい絵図だった…人のことは言えなかったが。
当初、初対面では『場違いな少女』などと愚かにも思っていた。実際、そう思われ俺以外にも初対面でよく絡まれていた。
決めつけがよくないのは事実。だが、彼女に原因が一切ないとは言い難いのもまた事実。戦場・修羅場で遭う彼女は、いつも決まって服装が何というか変だった。動きにくそうなスカートやコスプレ。あれは油断させるためだったのかもしれないと、当時彼女の実力を知ったばかりの頃は警戒していた。
鮮明な当時の記憶が再生され、気づく…意外と色合いは落ち着いた目立たないものが多かったと。
最初に仕事をした時は驚いたものだ。
あんな動きにくそうな姿で戦闘行為をする少女。呼吸をするかの様に護衛対象を庇いつつ、ガーターからダガーと銃を抜いて参戦。瞬く間もなく敵方をあっさりと殲滅していた。
一瞬で片付いた様子を唖然と眺めていると、3歳年下(だと後で分かったのだが)の彼女は俺の顔を見るなりニヤリと笑う。
「怪我は有りませんね?ビビリ君」
某狐忍者漫画に出て来る台詞を言われて、一瞬唖然とした。無償に腹が立った事は言うまでも無い。
その後休憩時に斥候として彼女と俺が送り出された時、模擬戦をこっちから頼んでしてもらったのだが…圧倒的な実力差で破れたのは苦い記憶だ。その後も何度も遭った訳だが、その度に勝負を挑み、惨敗する事を繰り返した。
だが、有る時彼女は戦場から姿を消した。
信じられず、俺の出来る範囲全力でもって探し回った。それなのに、痕跡が一切見付からなかった。そうなってくると彼女の死亡説が己の中で濃厚となった。
彼女が死んでしまったのか…もう逢えないのか。
物凄くショックを受けた。
それから約10年。再び彼女を見かけたとの情報が入り、当然情報を元に彼女を捜索した。再会して直ぐ気付いたことは、彼女を未練がましくも好いているということ。
その頃には女性に色々手を出していた最低な屑野郎な俺。
即行でその関係とは縁を切ったことはいうまでもない。あれだけ派手だったのに…等と仲間内には驚かれ、心配もされた。だけど仕様がない。当時から惚れていたのだから。
戦場で美しく靡く黒髪、獲物を捕らえる獰猛な獣の目。そして華麗な舞いを踊るかの如く戦場を駆ける姿……正直一目惚れだったのかもしれない。ガッチリと心を離さない、『運命』と言える程の。
そして彼女を知れば知る程、その隣に並び立ちたいと強く思った。
背中を互いに任せて共に戦局を決める事。そして勝鬨を上げて一緒に帰り、身を任せ合い貪り合う。英気を養ったら再び戦場へ……彼女とならば、一緒にそんな未来を実行出来ると思えたのだ。
暫くは、彼女も合意の上で良く仕事を組む事が多かった…彼女曰く、“ツー・カー”の関係だから心地がよかったらしい。彼女の上司が話していた事だから、多分嘘ではないだろう。
そしてそんなスリルが有るも、楽しく甘酸っぱい時間が暫く続いた。
だが何事にも終わりが有る。
彼女と俺の時間の終わり………それは、俺の死だった。
本当に偶然、流れ弾に当たった場所が悪かっただけだのだが、血が止まらなくなった。戦場から帰って来るまでは何とか意識を保っていられたが……病院に搬送された後、死んだらしい。
そして俺の死なのだが……どうも世界のシステム?みたいなものに生じたバグの余波でもって、俺は死んだらしい。少なくとも“管理人”“調律プログラム”を名乗る餓鬼がそう言っていた。
だが俺は知っている。
戦場において、常に死と隣り合わせなのだから別に誰のせいでも無い事を……ただ俺に生き残るだけの運がなかっただけだ。だが、心では一切納得などしなかった。
悔しい……悲しい。
未練がましくも彼女を想う。まだ正式に愛していると告げないまま逝った、そのことが兎に角悲しくて、悔しくて、そして苦しくて。
その話しをした直後、そいつは『また遭えるといいね』と愉快そうに言うと同時にいい笑顔で俺を送り出した。嫌な予感がするも、暫く俺自身が目覚めることはなかった。
その数年後、俺は記憶を取り戻し………自殺しようとしたが出来なかった。
理由だが、いつの間にか『不死属性』と言う謎の性質を持っていたからだ。固有能力の『閲覧』で自分の現時点に置ける技能を確認したら出て来たのだった……当然俺は絶望し、世界を呪った。
その結果白いのと戦闘になり………2人諸共油断している所を封印されたのだった。
それから何年経っただろうか。
やっと封印が解けた時、彼女の幻影を見た。慌てて追いかけると、そこには美味しそうな皿うどんが有った。
ここ地球じゃないのに皿うどん有るのかよ…内心突込みつつ、食べようとした。自分が長年封印されていた影響で“竜”の姿で居る事を完全に失念していた。大失態である。案の定、用意されていた皿うどんと周囲に有った食品が容器から落ちた。
あ〜、やっちまった………
後悔して溜め息を着こうとした時だった………幼女と言えなくない少女が突然現れると、思い切りアッパーカットを決めた。
「飯の敵。」
その言葉に一瞬途絶えかけた意識が一気に浮上した。それは奇しくも『本郷由樹』と始めてあった時に言われた事と全く同じ言葉だったから。
その瞬間悟った……………俺は再び彼女に遭えたのだと。
忘却の彼方にあったはずのあの意味深な『システム少年』の愉快そうな笑みと言葉が蘇った。
その後軽く戦闘をした結果、俺は全力全快で無かったにしても惨敗してしまった……異世界に転生しても、相変わらずな様で安心したと同時に複雑な気分になった事は言うまでも無い。
彼女は契約を強請って来たのでこっそり契約を書き換えて俺の『魂の婚約者』にしたのだった。
”やっと遭えたね”
”今度は前の時みたいに絶対逃がさない……外堀埋めて雁字搦めにして、俺だけを見る様に”
少なくとも今の俺ならば、そんな立場になれる。これでも一応、『世界最強』の一角だった過去がある。自殺しても死なない程頑丈さにも定評がある。君を遺して逝く事も、もう無い。
だからまあ、覚悟しておいてくれ。
元『夜神・クリストファー・ジャンクリフ』、現『ジャン・クリストファー・ナイトロード』は、本気でお前を心から我が嫁、そして最高の相棒にして見せる。そして今世こそ、最期の瞬間まで一緒にずっといるから。
何も知らず、無垢な顔で静かに寝息を立てているユキ、いや、今はルーナか……俺はそっと、額に接吻した。
いつかちゃんと話す。だから今は眠れ。
念のためジャン君の名誉のために記しておきますが、彼は一応今のルーナちゃんには欲情していないのでロリコンでは無いです……多分。ただ、中の人が自分の思い人だったので、他の男に取られまいと竜宜しく財宝を守る様に守っております。
それでは次回も宜しく御願い致します。
10/25: 仮の状態であは有るがな → では有るがな 訂正致しました、ご指摘有難うございます。




