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悪役放棄、更に自由人へ(仮)  作者: 平泉彼方
第一章 逸般人な悪役令嬢、好き勝手過ごす
114/142

111 おかえり、ただいま。

 読者の皆様今回も遅れてすいません。


 さて、今話も結構長めです。後、視点も前回と変わります。それでは本編をどぞ!




「あぁぁぁぁあああああああああああああああ!!!!!!」



 いつもは何事にも動じない態度を取っている国王は目の前の出来事に狼狽し混乱した。


 恐らく信じられないのだろう。



 やっと本当の意味で息子と和解出来たと思ったら、その息子が目の前でいきなり刺されたのだから。



 音も無く現れた黒を纏う男は彼の心臓へ一突き……それだけで糸が切れたが人形が如くその場に崩れ落ちた。


 深紅の飛沫が宙を舞い、床へ血溜りがあっという間に出来た。


 その中央に浮かぶ若き王子………彼はその純粋な瞳を永遠に閉ざした。



 その近くに居た彼の未来の義父であった公爵は、酷い表情でただただ崩れ落ちた………その顔には後悔と絶望、そして動揺が見て取れた。


 そして公爵は義息予定であった王子と会談前に交わした会話時の表情を思い出す。


 後悔する様な、困った様な…そんな笑み。


 そして社交界で百戦錬磨した公爵だからこそ分かった、彼の見え隠れする誤魔化す様な言動。



「そうは言ってもただ怪我を軽く負うだけですよ……大丈夫、問題無いです。」



 彼の言葉と困った顔から、恐らく重傷くらいはするのだろうと予想を立てていた………そう、彼は“軽い怪我”と言ったからこそ最悪重い怪我をするのだと解釈したのだ。



 だが蓋を開けてみれば、致命傷…



 本当は庇いたかったが何も出来なかった…しなかったのではなく出来なかったのだ。


 それは一瞬の出来事であったから。


 自分が1番近くに居たのに、狙われると事前に事情を知っていたのに………結局何も出来ず目前で死なせてしまった。



“私のせいだ……私が…”



 頭の中はそればかりで、深い悲しみと後悔が彼の精神を蝕んだ。




 そして恐らく1番動揺しているのは事情も何も知らず、蚊帳の外に置かれていた婚約者だろう。



 彼女…公爵令嬢は、血に染まった顔は色を失い身体から力が抜けていた。


 更に紫水晶の目は光りを失っており、美しく妖精の様だと称された銀髪は血紅色のまま…


 身体が小刻みに震え、口からは声無き悲鳴がずっと上がっていた……


 恐らくそれは、彼女の心の悲鳴なのだろう。



 目前の出来事が認められず、彼女は誰かが話し掛けてもその状態であった。



 そして到頭限界に達し、意識が暗転した。



……………(ルーナ)……………



 …ここは何処だろうか?



 気が付くと、虚無の様な真っ暗闇が目前に広がっている……一体私に何が起こったと言うのか…


 落ち着いて身体を動かそうとして気付く…私の身体が無い事に。



 ……手の感覚も足の感覚も無いのだ。



 四肢欠損だろうかと思ったが、それ以外にも鼻も耳も…そして口の感覚も無くなっていた。


 …ああこの分だと恐らく目も見えていないのだろう……だからここは暗いのか。


 そう言えば温度も痛みもここは何も感じないな…



 致命的だな……痛みを感じないのは流石に不味い、生物として。



 唯一まだ残っている感覚は私が存在すると言……いや待って、待ってくれ…













 『私』とは一体誰だろうか。



 もう何も分からない…自分が誰であったのか、果たして5体満足だったのか。


 頑張って何かを感じ取ろうとするが、全てがまるで閉ざされたかの如く無いも感じ取れない。



 本能的にその事へ恐怖を感じた……




 ここは何処で自分は誰であるのか…この状態に至った原因は何か。


 そもそも自分は健康上問題は無かったのか、それと自分がどの様な存在であるのか。



 分からない…怖い……



 だけど泣く事も悲しむ事も出来ない……いや、ここではそれもしなくて済む。


 1人で閉ざされているから何も感じずにここなら居れる。




『そうだね、ここなら君は傷付けられずに済むね。』




 だからずっとここに居れば大丈夫、誰も『私』を傷付けない…貴方自身も他人を傷付けない。


 ずっとここに居れば何も苦しまない。




『もう十分苦しんで来た、だからもう…』


『これ以上壊されたくない。』



『引き裂かれたくない』


『悲しみたくない』


『壊れたくない』


『感じたくない』


『疲れた』












“もう…解放して……”




 意識がフワフワする……


 もう何も感じない様な、存在自体薄くなって行く様な…



 そう、全てが消え失せる………





 そしたらこんな声が聞こえた。




『ならさ、無に還る?』




 次の瞬間冷や水を急に浴びせられたかの如き感覚に襲われる。


 そして体中を羽虫が這い回る様な…脂汗が止まらなくなったかの様な、そんな嫌な感覚が急にしたのだった。



 これは恐らく本能的な『警告』だ。



 確かにこの消え逝く感覚に身を任せれ楽になれるのだろう……苦しみも悲しみも何も感じない『完全』な状態へと戻る事が出来る、そう言う事だ。


 それは全ての『理想』であり、『憧れ』だ。



 けれどそれに対して強い嫌悪感を何故か抱いた……いや、これは何方かと言えば恐怖だろうか。


 そうだ……これは…



 そして知っているが知らない声が急に自分の中へ響いた。



 「無へ還っては駄目ですよ。」



 突然闇の中に美少女が現れた。



 その美少女は見事な銀髪と純粋な紫水晶の目をしていた。


 何方かと言えば穏やかではなく凛とした美が彼女にはあり、だがそこには色彩故か何処か幻を思わせる儚さも見られた。



 声はよく響く鈴の音の様な優しいソプラノ。



 堂々とした佇まいと優美な雰囲気は、正に貴族そのものを代表するかの如し。


 そして何より魅力的なのは彼女から感じ取れる圧倒的なカリスマだろうか。


 人を惹き付ける、そんな何かが彼女から感じられた…



「今の『私』からその様な評価を頂けて光栄ですわ」



 軽やかに笑い、令嬢らしく優雅な礼を一つされた。


 洗練されたその仕草には気品が感じられ、思わず見蕩れていた……失礼と思いつつじっと見詰めていると彼女は赤面した。


 嬉しさ半分、恥ずかしさ半分といったところだろうか。



 しかし彼女の発言は謎だ……彼女の言っている『私』とは一体誰だろうか。



 そう考えていると、彼女は一瞬儚く悲しげな笑みを浮かべた……だがそれを今度は隠すように頭を軽く降ると、再び凛とした笑みに戻った。


 視線が合うと、彼女はこう答えた。



「貴方は『私』であり私は『貴方』である、しかし貴方と私は互いに違う存在でもある。


 どうか思い出して…私達の愛おしい記憶を。


 古く愛おしい、そして何よりも得難い…そんな、忘れてしまったら悲しい記憶達をどうか。


 どうか忘れないであげて下さい…


 辛くて苦しい記憶でもあるけれど、きっと貴方や私にとって大切な儚く優しい記憶だから。


 消してしまってはいけない記憶だから。」



 そして彼女は表情を崩して必死に叫んだ。



「生きて、生きて沢山のことを感じて下さい!


 今度こそ彼と互いに愛し合って!!


 そして私と違って沢山学んで経験して、セカイを見て!」




“好き勝手気のままに何処までも…




 彼女の姿が到頭ポリゴン状に崩れ出した……キラキラ光る粒子となって段々足下から消えて行く…



 それでも彼女は最期まで…最期の一欠片になるまで私へ伝え切った。










…貴方は自由に羽ばたいて!!”




 光る粒子は消えず、煌めく大河となった。


 その激流は瞬く間に私を呑み込む……粒子が当たると火花が散ったかの如く周囲が煌めき、私へ全てが吸い込まれる。



 ここは最早暗闇では無い…まるで銀河だ。



 銀河の光りが私へ集まると、段々私自身の身体が構築されて行く……感覚が徐々に戻って来る。


 『私』が誰なのか、どんな存在かが分かる。



 だがその事に安堵を覚えている暇等無い。



 ああ…一気に情報の波が押し寄せて来た。


 同時に古いフィルムの映画の様に、脳内へ直接映像が流れた……膨大な情報量に頭が沸くが、耐える。


 曖昧で要領を得ない記憶、鮮明ではっきりとした記憶…そこにはでも、様々な思い出がつまっている事が分かる。


 感情の濁流に押されつつも、意識をしっかり持つ。



 そうしてどれくらい時間が経ったのだろうか……



 暗闇が徐々に明け、暁を彷彿とさせる色が周囲へ広がる……上下左右、まるでパノラマ写真の中に入り込んだがごとき映像だ。


 その中に一点、『私』が在る。



 切なく愛おしい『彼』との記憶を抱き、私は目を開いた。




 ああそうだったね……私は確かに貴方ではないけれど、貴方と私は同じ存在。


 そりゃそうなるよ。



 だって今の私は『私』が元になったのだし…彼が同じ『彼』から生じた違う存在であるようにね。




 けど、結局私達は『その頃』から変わらない事がある…それはきっとこれからも形は変われど不変なのだろう。













 私は何事にも囚われない…拘束を喰いちぎって大空へ往く




“だって私は『自由人』だから”







 だから私が誰を愛すかだって自由。


 だから私が何処に旅するかも自由。



 誰からも指図を受けない。


 誰からも制圧されない。


 誰からも邪魔させない。





 悪役?死亡フラグ?


 勝手に言っていろ!!


 そんなもの私が好き勝手やっていつの間にか放棄してやる!!!





 そして今度こそ彼と結ばれてやる!!


 そして今度こそ彼と旅立ってやる!!




 異論は認めない。






「ならやる事も決まったし起きようかね。」



 『彼』の記憶(データ)を大量に持つ彼が何の策も無く殺されるなんて事はあり得ない……よくよく考えてみたらだけど。


 きっとアレは何かの策だ。


 そうだな…そんなヤツだったよ。



 少しだけ遠い目をして『彼』の腹黒さとかブラックさ(あ、同じだった…)を思い出して溜め息を吐いた。


 ……次いでに『彼』の所々病んだ言動を思い出す。



 そして以前の『私』の余りの鈍さ、余りの無頓着さに溜め息をもう一つ吐いた。


 けどよくよく考えてみると、案外自分も同じだった様な気がしてガックリ項垂れる……



 うっかり自爆とかマジで洒落にならんよ自分…



 まあいいか、今後なるべく気をつけてみよう…無駄な決意になりそうだけど。


 そんな風に切り替えて、私は身体の感覚を呼び戻す。



 手足……ちゃんと動くな。


 嗅覚も味覚も聴覚も正常、何の問題も無く働いている…何故か飛び散ったはずの血の臭がしないが。



 そうして最後に目を開いた。





 最初に目に入ったのは黒い渦……何故か紅、青と緑、そして暗銀の筋が入っている。


 不思議なソレへ何故か私は惹かれた。



 原因は分かる……『私』の記憶が教えてくれるのだ、これは『彼』だと。



 同時に流れて来る『彼』の追憶。




 別次元の別の『フォーレンタール』に生まれ相まみえた『私』と『彼』。


 これは必然か、偶然か。


 何方にせよ『私』は『彼』と出会えた事をとても嬉しく楽しく思っていた事は紛れも無い事実。



 出会ってから互いを思い合っていた事は変わらないな……その思いは成長と共に変化したけれど、それはとても心地が良かった。



 親愛、尊敬や憧れ、そしてそれが段々恋愛へ。


 幼い頃のぼんやりした感情から思春期の鮮やか思いへと徐々に花開く様は、形状し難い程美しい。



 そうして互いを思って、けれど擦れ違って……



 『私』は自由を知る……変わりゆく事が恐ろしけれど、同時に何故か新鮮で爽やかに感じた。


 そして日々の変化する周囲や未知な出来事は、とても眩しく鮮明に私の脳裏へ写っていた。



 そう言えば『彼』は何故か私の『自由』へ嫉妬していたな……結局それが『私』の死因になったっけ?



 多分どの道『私』は自由を求めていただろう…そう言う気質が元々あったのだから。


 フラッと森に入ったり迷子になったりする事は結構あった。


 その度に『彼』が探し出して私を連れて帰ってくれていた……だからきっと安心して迷子になっていたのだろう、『彼』だったら見付けてくれるって。


 その度に『彼』から説教されたっけ?…全然反省してなかったけど。


 ま、まあ終わった事だ……駄目な方向にその当時は能天気だったのだろう。


 けど、その説教だって当時の『私』を思っての事だった。毎回最後に撫でてくれるのが嬉しかったし、掌の体温に『私』は安堵したものだ。





 だから別に死んでしまった事は後悔していない、愛しい『彼』の温かな腕の中で『彼』に惜しまれながら逝けたのだから。


 結局『彼』の側へ最期戻れたのだから。




 けど、私はきっと同じ結末を望まない。


 私は今度こそ彼と一緒に自由を謳歌したいのだから。




 ねえ、この世界は広大でずっと変化し続けているよ……とてもそれは美しく、きっと飽きがこない。


 だからこそ、世界生じる光景も人も文化も様々だ。


 私はそれらと出会って、見て経験してまわりたい…それはきっと、とても素敵な事だから。


 きっと楽しいよ、そしてそれは保証しよう。



 私は同行人として誰でもなく、君を求めている。


 君以外に一緒に居て欲しい人は居ない。



 君がいいんだ、共に歩むのは。




 だから、だからこそ……













 早く帰って来い。



……………(3週間後)……………



 今日も私は黒い渦を眺めていた。



 あの日あの時部屋に居た人達曰く、ジルヴァが刺されて事切れた後暫くしたら刺客と共に黒い霧に包まれていつの間にかああなっていたみたいだ。


 そして皆が言うには、あの刺客こそが『シャドウ』であるそうだ……つまり私達の元師匠が黒幕?と言う事。



 後、これは治療に当たった私だからこそ分かった事だがヴィンセントの欠けた魂の破片でもあった。


 多分今は融合しているのだろう。


 その証拠に黒い渦はただひたすら黒いだけではないのだろう……紅と青と緑が混ざっており更に暗銀が時折煌めいて、その様はまるでビー玉だ。



 あれからあまり様子が変わっていない。



 まあそれもそうかもしれない……何せ、何億何兆光年やそれ以上離ればなれになっていた存在が一つに戻ったのだ。


 しかもそれぞれ違う人物としてその間活動していた事もあった。


 互いに譲れない事が当然出て来る訳で、多分今頃擦り合わせとかをしているのではないだろうか。



 喧嘩して互いを削り合っていたら、それは嫌だと思う。



 前世も今世も含めて全員私にとっては大事な人だった……それは今まで私達を狙っていた『師匠』だって含まれている。



 …え、そんなに意外な事?


 無理矢理迫られて気持ち悪かったから前世彼を拒絶したのかって?



 まあ確かに大事にしていた人達を一度に失って呆然としていた所にあの裏切り行為?は正直センス無いとは思った。それにかなり軽蔑したし一時本当に男性不信になった。


 けど、嫌っていたと言うのは多分嘘になる。


 あの当時私は自分の事を案外責めていたんだよ…私のせいで大事な人達が亡くなったって。


 当然道理に反する事だったけど、そう思ってしまったんだよ。



 だって一度でも私が愛した人々が次々亡くなって逝ったから。



 葬儀へ行く度に毎回精神が削られて行く感覚はあった……それに亡くなった人達がそんな事言うはずも無いのに時折夢で『お前のせいだ』と責めて来たのもそんな深層心理のせいだろうね。


 本当、馬鹿みたいな思い込みだけど。



 それで、多分師匠が私へ迫った時拒絶したのって多分その事も原因の一つだったんだと思う……本当今更だけど。



 きっと、私が関わったら彼も死んでしまうって勝手にそう思ったから……だから多分心から拒絶したのかな。


 結果的にそれが大きな間違いだったとしてもその時私はそうした。



 どんな意味合いであれ、私にとって『師匠』は大事な存在だった。


 だから師匠までもがいなくなったら耐えられないって本能的に思ったのかもしれない……もう当時の私ではないから何とも行けないけど。


 けど、きっとそうだったのだろう。



 ああでも、それできっと拒絶されたから傷ついたんだね……結構師匠は傷つき易い人だったから。


 誰よりも図太いくせに変な所繊細だったもんね。


 あんな簡単に人の命を奪えるくせに子供に叫ばれて逃げられただけでガックリ項垂れて暫く再起不能になったし、それにホラー映画見ただけでトイレ行けなくなるし。


 親父(ファーザー)にプリンを勝手に食べられて泣いた事もあったし。


 ドラマの再放送で号泣したり、本当は暗闇が苦手だったり。



 ……今考えて見ると子供をそのまま大きくしたみたいな人だった気がする。



 まあそれだけ暗殺者なんてやっているのに純粋な人だったんだ……多分だからあんな風に狂っちゃたのかも知れない。


 まあ幾つか許せないことは後で制裁するとして……けれど彼を完全に嫌って絶交する事は多分出来ないだろう。


 それくらいには大事に思っていたから。



 言いたい事が沢山有るし、さっさと戻って来いよ『******』。もう本当に何時もいつも遅いんだから。


 私以上に勝手で周りを心配させて……



 何故か涙が出そうで私は咄嗟に目を閉じた……すると、彼らとの記憶が瞼の裏側で再生された。


 懐かしさへ私は増々泣きそうになった。



 思わずギュッと更に瞼を引き締める…もう二度と開くものかと言わんばかりに強く瞑った。



 ここ数日耐えていたのに急にどうしたというのだろうか、何故かこれ程までに堪えていても駄目な様だ。


 次々現れる愛おしい記憶達が今は憎らしい。


 だって泣きたくないのにこれだけ泣きたくなるのだから……別に彼が消滅した訳ではないのに、悲しくはないのに。



 何故か今日は駄目みたいだ…













 到頭涙が溢れそうになった時、頭へ大きな手がポンと置かれた…この体温……



 私ははっとして目を開ける…同時にこぼれ出る涙の粒。


 頭を撫でている手と別の手が、頬を伝う塩水をそっと拭い取る……そしてそのまま自分の唇へ持って行った。



「御免、随分またせちゃったね。」



 そう言った声の主を私は目に写す……



「もう全く、遅いよ……遅いよジルヴァ!!!」



 温和な笑みを浮かべる彼は、色彩こそヴィンセントそのものだが容姿は何方かと言えばクリスと師匠を混ぜた感じだろうか?


 だが、幼さや堀の深さ等ヴィンセントの名残もある。



 けど、その魂は明らかに『彼ら』そのもの。



「おかえりなさい、そして初めまして。」


「ただいま、そして初めまして。」



 みっともなくも私は泣き面になっていたが、彼が向ける視線は愛おしげで心地がいい。


 私はそのまま彼の胸へ飛び込んだ。


 彼は師匠の様に大柄になったその身体全部で私を包み込み、互いの体温に生きて再び相まみえた事を実感する。



 そして、私はそのまま力が抜けた……今回は安心して。



「もう、心配したんだから…」


「ゴメン。もう二度と離れない、そして離さないから。」



 ああ生きているって素晴らしいね、こうしてまた会えたんだから。



 やっとだよ。


 凄く長い年月離ればなれだったね。



 凄く寂しかった…それに辛かった。



 けど、これからはずっと一緒だ。






 やっと、やっと結ばれた。





 まだこの章は終わりませんけど一応ここで一区切りですかね。


 ま、でもまだ全ての伏せんが回収された訳ではないのでここで終わるってことはあり得ませんが…


 次回もどうぞ宜しく御願い致します。

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