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悪役放棄、更に自由人へ(仮)  作者: 平泉彼方
第一章 逸般人な悪役令嬢、好き勝手過ごす
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102 行き先は王宮

 読者の皆様先週は予告したのに投稿出来ず、本当に申し訳御座いませんでした……リアルでの外せない急用でどうして打てなくなってしまったので無理でした。今週も怪しいですが…何とか頑張りたいと思います。


 後、ミスのご指摘有難う御座います。


 さて、今回……少し卑猥(15禁程度)の表現が出て来るのできらいな方はその辺スルーして下さい。それでは本編をどぞ!



……………(ジルヴァ)……………



 一定に保たれた室温と湿度、揺れ等の無い車内。


 加えてここには分身体だが僕に取って掛け替えの無い存在が隣に居る。



 なのに、何故か僕の心はざわついている。



 現在、僕は鉄馬車…魔動車に乗って王都へと向かっている…というのも偏に唐突に王宮へと出向く事となったからだ。



 ……いや唐突でもないか。


 『僕』、ではなくこの場合『私』の身に起きた事を考えれば…腐っても私はこの国の王族であった訳だから。



 正直此の度の件、相当多くの方々に迷惑をかけた自覚がある。



 私と俺が周囲へ何の説明もせず考え無しに行動した結果、今現在様々な問題が発生している…根回しが済んでいなかった分事後処理が大変な事になっている事は確実だろう。


 今になって冷静になっても遅いが、色々とやらかしてしまった事だけは自覚している。



 ……後悔は無いが、反省はある。


 責めてルーナか公爵殿(義父)に一言相談しておけば良かった……そうしておけば、多分今こうして王宮へと向かう必要も無かったはずだ。


 昨日公爵殿に1発殴られた……自業自得だ。


 そして公爵殿の発する猛吹雪の如き冷たい冷気に晒されて3時間程正座しつつ説教を受けた。



 彼の説教はルーナ程ではないが、かなり堪える……静な怒り程怖いものは無いと改めて知る事となった。



 ルーナとは違って言葉で心を折ったりしないが、物凄く追求して来る……反省を促す前に自分が何を仕出かしたか何度も問い詰められた。


 それこそまるで、尋問を受けているかの様に…いや、あれはまさに尋問だろう。



「自分の何が一体悪かったのか説明出来る?」


「今回何を反省しているの?」


「何故私がこれ程怒っているの理解している?」










 もう一度昨日の遣り取りを思い出してしまった…瞬間情けなくもブルリと身体が震えた。



 ……正直トラウマである。



 あの冷たい貼付けた様な笑顔で3時間程顔を近づけられた上で、寒々しい声と冷気そのものを発する公爵殿から追及されるのだ…途中で痺れた足をツンツンする事も忘れずに。


 確かに『悪辣公爵』と言われるだけは有ると実感した……同時に物凄くドSで有る事も。



 一度Mになり掛けた『私』も恐怖と悪寒しか感じなかった…



 そして次の瞬間私は背中辺りから温もりを感じた…同時に自分の体温が相当冷えていた事も知った。



「ジルヴァ大丈夫?」



「……問題無い。」



「いやいや、問題しか無いと思うんだけど…」




 心配そうに背中を摩ってくれているのはルーナ…僕の婚約者であり、正式に先日恋人となった(ヒト)だ。


 俺の持つ記憶を頼りに典型のボケをした後、僕は彼女の手をそっと取るとそのまま自分へと引き寄せた。



 ポスンと僕の胸に収まるルーナ……柔らかで温かな身体をゆったり抱き寄せると、少し困った様な起こった様な顔をした。



「!?ちょ、いきなりって…」



「いいだろ?前世(まえ)は俺と普通にしていたじゃん。」



 不機嫌そうにほおを膨らませているが、逆にその顔はそそるものがある……ぷっくりとしたまだ幼さの残る頬を突くと途端空気が抜ける。


 そして、ジト目で見上げられた。


 僕は無視して彼女の柔な髪を撫でる…すると何故か機嫌が良くなる彼女。


 ヘニャリと笑みを浮かべて僕の胸へ身体を預けて来た……そして彼女の身体があちこち身体へ当たる。


 体温を更に間近で感じる……あ、ヤバいかも。



 そして案の定、アソコへ血が大量に集まっていた…



 当然ながらソレは密着しているルーナの腹部へ当たる…すると、彼女は何とも微妙な表情を浮かべた。


 少し頬が紅いのは気のせいではないのだろう…



「………すまん。」



「いいよ、生理現象だし仕方無いから…ただ、そう言った行為はまだしないから。」



「……婚前交渉はしないと誓うから、そう警戒しないでくれ。」



 少し警戒した様に膝から降りようとした彼女を引き寄せ、もう一度、今度は背中から抱き締めた。



 そして、気持ちを落ち着ける。



 …正直は気持ち、王宮(あそこ)へは行きたくない。


 あまりいい思い出が無い事も理由として挙げられるが、何より怖い事が今回ある……



国王(親父)に会いたくない。”



 正直別に縁を切られたりしてもいいし、王位継承権等別にどうでもいい……それこそ廃嫡されて国外追放されたとしてもルーナが絶対着いて来てくれると言っている今、そこまで慌てたりしない。


 だけど、面と向かってお前は自分の息子等ではないと告げられるのは堪えると思う……



 今も想像するだけで身体の芯が凍えそうになる。



 私の母は既に亡く、その家族も居ない……つまり実質私と直接血縁関係が証明されているのは現国王しかいない。


 そんな相手に直接告げられたら正直辛い…


 それが、今まで相手がどれ程自分に無関心であっても、そして、どれ程相手が私にとってどうでもいい存在であっても、だ。



 それに、私と俺が統合されて出来た『僕』の存在をまだ確立出来ていない。


 アイデンティティが喪失され、再構築している最中…つまりとても不安定な状態だと言えるだろう。



“………僕は一体何なのだろうか?”



 そんな疑問が常に浮かび、その度に僕は自分が誰なのか分からずこうして何かに怯えている……


 本当に女々しい限りだ………



「ジルヴァ……」



 ほら、こうして愛しい相手にも心配を掛ける……今は僕を落ち着かせる様にトントンと一定のリズムで背中を軽く叩いている。


 僕は彼女へ一層しがみつき、離れない様に、相手の存在を確かめる様に彼女をギュッと強く抱き締めた。



 一瞬驚いた様に身体をびくつかせた彼女は、そっと僕を抱き締めた。



 彼女の心音が聞こえ、更に少し高まった体温を肌に感じた……きっと彼女にも僕の心音が聞こえ、体温の高まりを感じているのだろう。


 ドクドクと密室で心音が響いた……




 そして次の瞬間ゴホンと咳をする声が静寂を破る。



 慌ててそちらへ目を向けると、公爵殿がやや引き攣った顔で此方を見ていた……私へ恨めしい様な目を向けるのは止めて欲しいのだが…


 だが、目語っている…



ー私の娘へ何晒すんじゃおんどれが!



 故に、敢えて僕も睨み返す…



——彼女の許可があったからしているのですが何か?



 バチバチと火花が散った様な音が聞こえた気がするが、まあ気のせいか…それより何故この車に突如現れた?


 確か別の車に居ましたよね?



 ルーナと共に視線を送ると、ばつの悪そうな顔をした後公爵は言った。



「やっぱり勝手に改造するんじゃなかった…」



 先日魔動車の試作をルナライト社が完成させた。


 その事を聞きつけた公爵殿は関心を持たれてルナライト社技術部門と交渉した。


 その結果研究費用を『寄付金』と言う形で小遣いから支払う約束の元、試作品を2台程借りたのだった。


 だが…あろうことか公爵殿は勝手に改造を施した……


 いい笑顔で行っていたので正直ルーナも私も止められず……どうも回路を弄くって失敗したらしい。



 そして、途中で壊れたから亜空間に仕舞ったと。



「父様………帰ったら弁償★それから費用、もう少し…そうですね、これくらいは出せますよね?」



「ルーナ……それは…」



「だ・せ・ま・す・よ・ね。」



「くっ………勘弁して下さい…」



 ルーナに真顔+ドスの利いた声で迫られた公爵殿は、結局彼女に押し切られた。



 自業自得……同情はしない。



 涙目で小切手を切る公爵殿は、先程と違って何故か小さく見えた…あ、よくよく見たら何故か二等身になて膝を抱えているのか……



…………………………………



 あの後ルーナは魔力温存のため仮眠した……現在妙に気の抜ける様な漫画的な目のついた目隠しを着けて、後部座席を1人で占拠している。


 つまり、僕と公爵殿は隣…中部座席に並んでいる。


 ちなみに最前列の運転席にはカール殿、助手席にはルナハウンズの護衛が座っている…助手席の方を変わって欲しかったが恐れ多いと言われて無理だった……



 …正直公爵殿と2人の空間は結構辛かったりする、特に先日ルーナと恋人宣言?した為。


 ま、まあ、正式では無いにせよ、説教をされた後好きにすればいいとボソッと言っていたので公認されているのだろう。だが、私へ向けていた殺気は忘れていない……


 視線だけで殺せる様な目で私を睨んでいたな…



 面白くはないのだろう、彼にとって愛娘であるからな。



 そうして黙っていたら、公爵殿がぽつりと喋り出した。



「……国王陛下に会うのは怖いか。」



「…ああ、そうだな……少なくとも僕が王族で亡くなれば公爵家とのえんも切れる。


 それに僕の中の『私』が悲しむ。


 あんなクズでも父親だからな…唯一血の繋がりの有る家族だから。」



「そうか……」



 それだけ言うと、公爵殿は黙り込んだ……暫く沈黙が流れる。


 だが、再び公爵殿が静寂を破った。



「……ま、お前の父、いや、国王陛下(あの阿呆)は私の親友だ…間違った事を言ったら私が何とかする。


 それに公爵家(ウチ)との縁に関しては気にするな。


 私は相手が誰であれ、娘の、ルーナの選んだ相手は認めるつもりだ。それが別に只馬鹿に家を勘当されただけの小童であっても、人外であっても……不定形生命体や不死者であってもだ。


 ただ、私を倒す気概が無い様な者には娘ややらんがな。」



 そうしてニヤリと口角を上げた。



「ま、殿下も私にはまだまだ敵わないでしょうし、娘との仲を完全に認めた訳ではないので……婚礼は少なくとも試合で私に認められない程度だったら全身全霊で邪魔しますよ?


 ま、せいぜい頑張って下さいね。」



 嫌味っぽくそう言うが、公爵は優し気な、どこか見守る様な視線を私へと向けていた……


 それがどこか照れくさくて…



「『俺』と『私』の力を統合した僕に公爵殿こそその内手も足も出なくなりますよ。」



 そんな風に返し、2人で笑い合った。




 先程までの暗雲たる思いはなりをひそめ、王宮へ着くまでどう公爵殿に実力を認めてもらおうかと思考を巡らすのだった。



ジルヴァ殿下、統合される前後で性格面において変わったのはヘタレかどうかって所でしょうね……肉食までは行かなくとも結構積極的になって来たかなと思っています。


 ただ、ジャンクリ視点からも物事が見える様になった為”家族”、とりわけ血縁者への意識はちょっと地球寄りになったかなと言う印象は受けます。


 ……前だったら血縁者である国王に勘当を言い渡されても別に〜とスルー出来る感じでしたが、ジャンクリのお爺さんに関する記憶が薄ら残っているためそうも行かない感じになってしまいましたかね。


 話は変わりますが、希望が有れば公爵のメカ改造について番外編か閑話に載せようかと思っています。


 それでは次回も宜しく御願い致します。


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