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36.多くの方々のご支援に感謝して!

「昭和刀の斬れ味」に続いて、ここ数年「日本刀の斬れ味」を拙いなららも書いていると、多くの方々から刀剣や刃物に関する新鮮な情報や思いもしなかった経験談等をお寄せ頂く事がある。

どんな人間でもそうだが、一人の人物が経験できる範囲は想像以上に狭く、未経験の知識はまだふんだんに存在している予感がするのに、実際に入手出来る体験談は非常に少ない。

海外の方とお会いする機会があると「刀剣」の話を極力するようにしているが、日本人もそうだが、外国人でも刀剣好きの人の数は驚くほど少なく、深い議論になることは稀だった。

そんな折り、世界の刀剣やジャングル等で使用する山刀等の最新情報をお知らせ頂いたので、ご紹介したいと思っている。


お知らせ頂いたその方は、『John Doeさん(ペンネームか?)』とおっしゃる20年以上海外在住で、居合・剣術の指導をされて来た方とのことだった。

内容は、その方が長年海外で培った広い交友関係によって経験された「世界の刀剣と刃物」に関する体験談で、その範囲は広く、東南アジア・ヨーロッパ・中東・アフリカに及んでいる。

世界各国の武具で遊ぶ機会に恵まれましたとの内容で、広範囲で詳細な書信を同氏から頂きましたので、以下に箇条書きに改めてご紹介したいと思います。

但し、長文の同氏のコメントを筆者なりに簡略化して整理したものですので、誤りがあるとすれば小生の責任ですので宜しくお願いしたい。

始めに刀剣から順に記述して、ジャングルやブッシュを分け入る為の山刀や雑用のナタの順番で整理してみました。


【John Doeさんからのコメントまとめ】

1)西洋系の叩き切る形状の長剣でも畳表二枚巻き程度ならば良く斬れる。(この様子は、最近のネットの映像でも証明されている)

2)湾刀では、トルコのキリジ(トルコ系の湾刀でシャムシールと良く似た造り込みの刀)はダマスカス鋼で軟らかい刃だったが良く斬れたが、刃先の鋭いインドのタワールの斬れ味は、畳表3/4程度だった。

3)刃先がホローグラインドで造られた長剣は刃筋を通しても良く斬れず、硬い物では折れてしまった。

4)刀の形状に関係なく鋼の良い刀剣は斬れるが、中にはアフリカで使用されるマンベレ(アフリカで雑用に使われるナイフの一種)のように軟鋼で造られていて薄く曲がり易い刃物でも刃筋さえ通れば畳表一枚程度なら良く斬れる。

5)マチェーテ(中南米の山刀)に結構浅い角度(15°程度)を付けたら、畳表一枚ならスパスパ斬ってしまった。

6)ナタでは、フィリピン海兵隊が使用しているギヌンティングは内反りながらもの凄く斬れた。一方、ネパールの職人さんに武器として造って貰った内反りのククリ(ネパールのグルカ族を始めインドで使用されている刃物)は斬れなかった。

7)刃が硬いか軟らかいかという点と斬れ味は余り関係が無いようだ。但し、耐久性による刃持ちの問題は残る。

8)コールドスチール製のサーベルや刀の場合、元の素材や加工工程の影響で利鈍は色々だった。

9)結論として、「総合的な造り」が最終的な斬れ味に深く関係していると思うが、巻藁斬りでの判定は限定的であり、『如何に武具としての持ち味を生かせるかが勝敗に繋がる』


このように、John Doeさんのコメントを整理して見ると従来不明だった無数の事項が明らかにっなってきた気がしている。

                                             

更に、参考のためにこの数年間に刀鍛冶の方や刀職の方々、ナイフ製作者の方に伺ったご意見の中で、記憶に残っているコメントを如何にまとめてみた。


【刀鍛冶及びナイフ製作者からのコメント】

1)ある刀匠の個人的なご意見だが、「古刀は丸鍛えが大半であり」心金の有る無しは斬れ味に関係ないとのことだった。但し、折れ、曲がりには相当利きそうな気が個人的にはしている。

2)素材の鋼の質の良い出発材料を使用すれば、斬れる刀を造るのは極めて簡単である。その点、夾雑物の多い素材では相当苦労して鍛えても良い刀には成らない。

3)新々刀の無地肌のように仕上げた刀は斬れ無い刀が多い。仕上がりの肌は中途半端だが、鍛錬回数の少ない刃金の方が斬れる刀に仕上がる可能性が高い。

4)日本刀の刃先の角度は、30°~38°位が多く、刺身包丁等に比較すると刃先の角度は鈍角で出刃包丁やナタに近い。

5)現代人が好む刃文が華やかで冴え冴えと出来た刀よりも少し焼きの温度が低いような、鈍い焼刃の刀の方が、斬れ味としては好ましい物が多い。

6)同じ現代鍛冶が注文刀を製作する場合、観賞用の刀は鍛錬回数を増やして美観を増すように仕上げ、試斬用の刀は、鍛錬回数を最小減に押さえて斬れ味優先で作刀するという。

7)日本刀の場合、刀身に平肉が付いた、ナイフでいう「コンベックスグラインド」に仕上げるが、切れ味優先のナイフでは、平肉の全く無い「フラットグラインド」か、逆に肉を落した「ホローグラインド」にする人も多い。

8)確かに、ホローグラインドとフラットグラインドの当初の切れ味は良いが、刃物としての耐久力は低く、永切れしないし、キャンプでナタ兼用に使用するナイフの場合、平肉の付いたコンベックスグラインドで仕上げるのが一般的である。


【途中経過のまとめ】

まだ結論を出せるほど資料が集まっていないが、折角、貴重なJohn Doeさんからのコメントも頂いたので、調査の途中ながら、まとめてみた。

 従って十分な推敲と検証を経てはいないが、ご参考までに整理すると次のように成る。


1)世界中には多様な形状の刀剣や山刀やナイフは無数に存在し、一枚巻きの巻藁斬りに最適な形状や材質の刃物も多く存在する可能性は高い。

2)西洋の反りの無い真っ直ぐな長剣の斬れ味は予想以上に良かったがホローグラインドの刃先で造られた長剣は、硬い物に対しての使用で折れてしまった。

3)世界中の刃物での具体的な使用例から推測すると、巻藁用としては刃先の角度が鋭角の15°~30°位の刃物が良く斬れる可能性が高い。

4)反りのある湾刀でも斬れる刀と斬れない刀があり、刀身の素材と鍛錬の影響が大きいと想像される。

5)ナイフの場合の刃先のエッジ処理としては、ナタ兼用で荒っぽい使い方をする場合、平肉の付いた「コンベックスグラインド」に仕上げるのが好ましい。


中間的なまとめとして、斬れ味の基本は素材に負うところが大きいし、John Doeさんがおっしゃるように、「総合的な造り込み」が最終的な斬れ味に深く影響していると思う

但し、巻藁斬りでの判定は限定的であり、『如何に武具としての持ち味を生かせるかが勝敗に繋がる』というJohn Doeさんのご意見はもっともに感じる!


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