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黄色い丘

作者: 米沢 祥一

 簡易防護服のバイザーを通しても雪ははっきりと見えた。ゆらりゆらりと、灰が積もるように落ちてくる。純白というには程遠くほとんど黒に近いから、オレンジのアクリル板を通すと妙な色に見えた。防護措置なしでは数分で被爆危険域に達する不毛な地上、足元の石を蹴とばすと黄色い砂塵がぶわっと舞い上がる。厭わしいけれど、何だか懐かしくもあった。

 成田宇宙港では最後の旅客船、かんなぎ号が発進準備をしている。今は気密試験中だが、これが地表を離れれば地球人類は文字通り消滅することになる。私は最後の乗り組みという訳だ。我々は青い清純な、青く清純だった星を捨てて月に去く。

 最後に私は街の跡を歩いていた。幸い時間はまだあるのだ。割れた窓、フロントガラスのない車。ビルは焼け焦げてはいたが、遠目には全く健在である。いや、この街そのものが生きているのに死んでいる。振り返れば私の足跡だけがぽつんぽつんと確かに見える。それもすぐに黒い雪に埋もれ、消されるのだろう。背筋が寒くなった。小走りになった。

 かんなぎ号が地響きを発てて加速する。ジェットエンジンの気流が滑走路の砂や灰をひどく巻き上げた。ああ、あれじゃ付近の住人は怒るな、うるさい、埃がひどいって。そんな的外れなことを考えた。

 後ろを見ないように走っていたら、いつの間にか家に着いた。屋根や庭が埋もれてなくなっている以外は特に異常はない。ガラスも少し汚れているがヒビも入っていない。扉には鍵が掛かっていて、少し可笑しかった。打ち破って中に入る。冷蔵庫の中身は腐っているだろう。書斎に行って本を持ち出す。それ以外に用はない。

 暗いな、暗いな。もう青空は見られないんだろうか。

 元来た道を走って戻る。足跡はもう消えかかっていたが、なんとかなる。持ち出した本が汚れないようにしなければ。どうしてこんなに静かなんだ。

 下を見れば、枯葉色の大地が広がっていた。子供のときの記憶では緑だったと思う。雲も薄汚れていて美しいとはとても言えない。だけど海だけは、今観ている地図帳のようにどこまでも青かった。

これはSFなのか? 小説などまともに書いたことのない私の処女作。感想・批判など頂けると大変ありがたいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] SFではあると思います。が、設定にもオチにも、インパクトが欠けるというんか、パンチが弱いかなと思います。
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