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セレクト・ファイター  作者: Aica
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6


ヴ…ヴン……。

耳障りな音をたて、私と川越先輩は一瞬で宇宙空間に移動した。

真っ暗闇の中、無数の星が光っている。

真下を見ると、大きな大きな球体が虹色のオブラートに包まれた状態で存在していた。

これが地球であると認識するのに時間がかかった。

「地球がこんな状態だったなんて…。」

「仕方ないさ。これがなかったら、地球は無防備すぎるんだ。」

「あ、そう言えば宇宙に居るのに息ができますね……!」

「ああ、この戦闘服は肌に直接酸素を取り込めるようになってるんだ。」


戦闘服の凄さに改めて感心していると、私たちの周りに次々と青い光りが出現し、セレクト・ファイター達が移動してきた。


「し…柴崎先輩!!息が!息ができますよ!!」

「うっさいわね優斗。当たり前よ。」

「え……?宇宙は普通息ができないんじゃ」「あんたが間違ってんのよ。」

「え……?ちょ、え……?」


優斗が担当の柴崎先輩に軽くあしらわれている。

なんとも面白くて可哀想な光景である。

それを見ていた川越先輩が会話に入っていく。


「おいおい…実流。ちゃんと教えてやらんでどうする…アホか。」

「何よ!あんたこそ美人の担当になって鼻の下伸ばしてんじゃないわよこのクソ拓哉!!」

「伸ばしてねぇし。ってかお前なぁ…。」


あーだこーだと二人は言い合っている。

これなんとかしないとまずいんじゃ……?

すると優斗がそそくさと私の方に来た。

そして小声で囁く。


「お前、戦闘服……」

「それ以上言ったら殺す。」

私は優斗の頬を強くつねった。

「ごめんなさい!離してぇ!でもすごくかわい痛たたたた」

優斗の戦闘服は、ノースリーブの白のジャケットに黒っぽいパンツスタイルだ。

スニーカーはハイカットでカッコいい。

ところどころに青色のポイントがあって、優斗らしくて似合ってる。

ああ、私、戦闘服いっつも馬鹿にされるなぁ……。


「拓哉くん!実流ちゃん!いい加減にしてくださいっ。今日は後輩も居るんだから…。」

「凛…だって、拓哉が悪いのよ!」

「俺じゃねぇし!」

「分かりましたから、はいはい、離れてーっ!」


川越先輩と柴崎先輩のケンカを止めに入ったのは、小さくて可愛らしい赤羽凛先輩。

いつも二人のケンカを止めるのは赤羽先輩なのだろう。私たちと違ってケンカに慣れている。

さっきまでケンカしていた二人もいつのまにか静かになっている。赤羽先輩すごい。


「凛先輩、えっと、あの二人は大丈夫でしょうか……?」

ためらいがちに聞いたのは真波だ。

真波の戦闘服は、黒のレギンスに裾が斜めになっている綺麗な赤色のスカートに、大きなベルトにセクシーなトップス。茶色のブーツもカッコいい。

「あっ、ごめんね真波ちゃん。全然大丈夫だよ!いつものことなの。」

赤羽先輩はニコニコしながら言った。

なんだかあまり嫌そうでもないな。

「あの二人ね、あんなケンカしてばかりだけど、実は……。」

「おい赤羽?何かいらんこと吹き込んでないか?」

「ひぅっ……!全然っ……!」

川越先輩に釘を刺されてビビっている赤羽先輩。

続き聞きたかったなぁ。

「とっとにかくっ!今日はしっかり頑張らなくちゃねっ!」

「私、凛先輩が戦ってる姿見るのすごく楽しみです!」

「真波ちゃんったら、やめてよ!なんだかちょっと恥ずかしいなぁ…。」

「うふふ。」

どうやら真波と赤羽先輩はすごく仲が良いみたいだ。

この5日間でお互いの相性が良いことが分かったのだろう。良い師弟関係だ。


刹那、二つの青い光が出現し、それが二人の人の形を造り出す。

「ごめんごめん!遅れちゃったな悪い!」

全く悪びれた様子もなく言うその人は、吹森くん担当の、凉谷龍雅先輩。

「何やってたんだよ!遅いぞ!」

「龍雅先輩はギリギリまでずっと録画してあったサスペンスドラマ見てました。」

「誠一ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」

「はぁ!?お前ってやつは……。」

「だって続き気になってたんだもん!誠一〜、裏切るなんてひどいぞぅ……。」

「龍雅先輩の悪事を正すべきだと判断しました。」

「くそぅ……。誠一ぃ、帰ったら覚えてろ……。」


「はいはい、じゃあみんな揃ったところで、そろそろ実践するぞ〜。」

川越先輩がパンパン、と手を叩き、みんなをまとめた。

「実は来たときからアース・イーター寄ってこないように酸性の霧飛ばしてたんだけど…みんな、セレクト・ウォッチでアース・イーターの分布確認してみて。」

セレクト・ウォッチを起動してアース・イーターの分布を確認すると、70メートル離れた場所に一体いることが分かった。

「一体しかいないから実に良い環境と見られる。まあ念のため、龍雅は後輩たち全員を守ることに専念してくれ。」

「了解だぜっ!」

「よし……。華音、優斗、真波、誠一。アース・イーターってのは初めて生で見るとかなり怖いかもしれない。でもな、そいつらと戦わなきゃいけないのがセレクト・ファイターなんだ。まずここで一歩を踏み出してほしい。いいな?」

「「「「はい!!!!」」」」

川越先輩の真剣な訴えに、四人は反射的に返事をしていた。

平然を努めるようにしていたが、胸の高鳴りを抑えることはできなかった。

私たちが今後、どんな風に戦っていくか今からここで目の当たりにするんだ……。


「酸性の霧、ストップ!」

川越先輩は、手を前方にかざし叫んだ。

「おりゃぁっ、全開!!」

突然、私たち四人の周りを透明な渦が取り巻いた。

龍雅先輩はドヤ顔をしながら説明してくる。

「これは俺の産み出した風魔術、『ウインドバリア』。密度の高い微量の風をうまく送って、バリアを作ってるのさ!」

「技は素晴らしいのに…」

「あん?誠一、なんか言ったか?」

「いえ何も。」

三人、苦笑……。

この二人もなかなか味のあるコンビネーションだと思った。


「きたぞ!」

「アレは……見たことないわね、龍属性かしら?」

「相性は悪くないですね!」


前方25メートルに、羽をバサバサと羽ばたかせながら、竜が近付いてくる。

大きさは、人間三人分くらい。青く光る体に、刺々しい皮膚。長い尻尾。

目をぎらつかせ、涎を垂らしながら、凄い勢いで近付いてくる。

怖い。

やっぱり覚悟していたとはいえ、みんな恐怖を感じている。

風の中の世界は、アース・イーターの登場により一瞬で凍りついた。


川越先輩が、剣をセレクト・ウォッチから召喚し、アース・イーター目掛けて降り下ろす。

「グワァァァァァ!!!!!」

アース・イーターが大きな悲鳴をあげた。

「まだまだぁ!」

柴崎先輩は、なんとセレクト・ウォッチを変形させ、右腕全体を覆うように装着した。その腕をアース・イーターに向けると、手の甲から無数の光る葉を強く発射した。

アース・イーターの体に切り傷が次々にできていく。目に当たらないように、アース・イーターは目を閉じた。

「凛が決めます!」

赤羽先輩は剣を召喚し、炎を灯した。

そのまま目を閉じているアース・イーター向かって渾身の力をふり絞り、真上から一気に斬る!

ザシュッ……!!!!!


「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」

大量の血を吹き、体をのけ反らせて痛みを堪えている。


「凛が封印します!」

「任せた赤羽!」


赤羽先輩は、右の手の平をアース・イーターに向け、大きな声で叫ぶ。


「我が体内へ……SEAL!!!!」


その瞬間、アース・イーターがグチャグチャの液体のような状態になり、赤羽先輩の手の平に吸収されていく。


「いやぁ、やっぱ封印は見てて気持ち良いなぁ。」

のんきに私たちの前で風を送り続けている凉谷先輩が言う。












瞬間。

辺り一面を大きな大きな光が照らした。

眩しくて何も見えないが、一瞬、吸収中のアース・イーターから光が放出されていたのを私は見た。


「なんだよコレ!?」

「眩しくて何も見えないわよ!」

「こんなの初めてだ!」

「ふ……封印が解かれていきます!!」

「何!?」

























光が収まり、私たちが目にしたのは。

目の前で風を送り続けている凉谷先輩。


の、後ろで口を大きく開けて中で青い炎を蓄積している、


あり得ないほど大きい、アース・イーター。









「……え?」

「龍雅ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ危なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!!!!!」




アース・イーターが炎を吹く寸前。

赤羽先輩が凉谷先輩をかばうように立った。

そして右手を真っ直ぐ突きだし…





「我が体内へ……SEAL!!!!」

「凛やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」

アース・イーターが液体状になり、赤羽先輩の手に吸収されていく。


「あ……あああ……ああああああああああああああああああああああああ!!!!」

「凛!!凛!!凛ーーーーーーーっ!!」


赤羽先輩が絶叫する。

凉谷先輩は、赤羽先輩の右手を後ろから強く握っていた。

それでも赤羽先輩は封印をやめない。

いつの間にか、凉谷先輩はウインドバリアを解除していた。




川越先輩はそんな様子を呆然と眺め、その後ろに柴崎先輩が小さくなってガタガタ震えていた。


「体力を…減らさずに…封印した場合…」


川越先輩が唇から言葉を漏らす。


「封印者は1分後…アース・イーターに…捕食され…」








「自らが…アース・イーターとなってしまう」





「……っ、間に合え!間に合え!間に合え!間に合え!間に合え!」

川越先輩は、剣を召喚し、液体状のアース・イーター目掛けて何度も何度も攻撃した。

それを見た柴崎先輩も、剣を必死で降り下ろす。







私たち四人はそんな中、何もできずに

ただ立ち尽くしていた。







そして、完全に封印が終わり、液体状のアース・イーターが消えた。


「「凛!!!!」」

「赤羽!!!!」


「み……んな…早く…逃げて……。」

「馬鹿!そんな……」

「1分後には…もう私も捕食…されてしまう………」

「凛……、もう手が…青い。」

「は……や…く。ほら…後輩が…待ってる…ぐ、ガハァッ……!」

「凛っ!!!!!!」

「くそっ……ちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉうわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

「は……や……………く」

「赤羽……!くっ…………ごめん!……みんなっ!撤退だ!!」


川越先輩は、セレクト・ウォッチを操作し、勢いよくウインドウを押した。


ヴ……ヴン。

私たちは、赤羽先輩をひとり宇宙に残し、セレクト・ワールドに移動した。


四人は最後まで、何もできずに立ち尽くしていた。


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