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ミキミキに案内され、私たちはエレベーターに乗り込んだ。
このエレベーターにはドア開閉のボタンと10階までのボタンしか付いていない。10階以上は階数を入力するシステムになっているようだ。
ミキミキは、「12」と入力した。
12階に行くと、4つの部屋があった。それぞれの部屋のドアには、それぞれの名前のプレートが取り付けられている。
ドアは、カラフルな4色。私は青色。優斗は緑。焔村さんは赤。吹森くんは水色。
「これからそれぞれ、部屋で教本を読むようにしてください。では、皆さんに腕時計を渡します。この腕時計は、自分の部屋の鍵となります。その他にも沢山の機能が付いていますが、それは教本で。」
一人一人、ミキミキに腕時計を渡される。
先ほどセレクト・ファイターが付けていたものと同じものだ。やたら大きくてゴツくて、でも驚くほど軽かった。
「ドアに付いている丸い鏡に、腕時計をかざしてください。」
ミキミキに言われ、腕時計をかざすと、ポーンと音が鳴り響いた。
「それで鍵を開けられます。オートロックなので腕時計は必ず身につけておいてください。それでは。」
ミキミキは、エレベーターに乗り込んだ。
残された私たちは、とりあえず部屋に入ってみることにした。
中には、豪華なベッドに、豪華な勉強机、大きなテレビにフカフカなソファー、タンス、お風呂が備えられていた。
タンスを開けてみると、なんと可愛らしい服が沢山入っていた。水色のワンピース、ブラウス、デニムスカート、レースの靴下まで。ジャージや下着も沢山入っていた。
それらは全て、私のサイズぴったり。
しばらくタンスの中身を物色していると、腕時計が赤色に光り、ピロピロと音が鳴った。
画面には「焔村真波」と表示されており、「応答」というボタンが光っていた。
私は応答ボタンを押した。
「あ、もしもし?聞こえてる?」
聞こえてきたのは焔村さんの声。
「あ、うん!聞こえてるよ。」
「今ね、教本を読んでいて、腕時計で通話ができるって知ったから、試してみたんだけど……。」
「そうだったんだ。ところで焔村さん、タンスの中は見た?」
「真波で良いよ。私も華音って呼ぶね。ああ、タンスの中なら見たよ。なんか服が大量に入ってた。しかも私好みのボーイッシュなのが沢山。」
「え!!私は、可愛らしい服が沢山入っていたんだけど……」
「華音は可愛い服が好きなの?」
「うん。」
「……好みを調べられているってことなのかな…」
「……私、怖くなってきた。」
「私も。でも仕方ないかもね。セレクト・ファイターに選ばれた以上。……華音、改めてだけど、これからよろしくね。」
「うん、真波、よろしく。」
それから少し話してから通話を切った。
時計は午前9時を表示している。
私は、勉強机に座って教本を読み始めた。
セレクト・ワールドは、オゾン層全体を取り巻く世界である。オゾン層からは1キロ離れており、宇宙に位置する人工的な世界である。アース・イーターを地球に入らせないために、虹色のバリアを貼ってある。
セレクト・ファイターは、アース・イーターを自分の体(主に手)にいったん封印して、セレクト・ワールドで封印を解き、アース・イーターを解放する。解放されたアース・イーターを、研究室で解析するためだ。
にわかには信じられない話だ。
セレクト・ワールドでは時間の経過が地球より遅くなる。地球で1日経つと、セレクト・ワールドでは7日経っていることになる。
例えば、地球上が6月12日であるとき、セレクト・ワールドの腕時計には、「6月12日(1)午前10時」というように表示される。かっこの中の数字が、セレクト・ワールドでの地球の日付の中で何日目かの表示である。
時間感覚は普通なはずなのに、地球の7倍の速さでこの世界は動いている。なんとも不思議だ……。
読み進めていくうち、この世界のだいたいのことは頭に入った。
ちょうどお昼の時間に腕時計が虹色に光り、ミキミキの声が聞こえてくる。
「お食事の時間です。」
この世界では、朝は自分の部屋で朝食をとり、昼は国ごとに専用ルームで食べ、夜は地球全ての国が大広間に集まって食べるらしい。
今は昼なので、専用ルームだ。専用ルームは同じ階にある。
タンスの中の服は、自由に使って良いらしい。ドアの横の戸棚を開けると、10足以上の靴が揃えられていた。これらもまた、私の足のサイズにぴったりで、好みのデザインばかりであった。
とりあえず、水色のワンピースに白のパンプスで部屋を出た。
専用ルームへ急ごう。