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「今日って、新しいセレクト・ファイターの任命日だよな。」
「あ、そうだ!忘れてた。」
地球殲滅モンスター、「アース・イーター」。
アース・イーターは、地球と同じような惑星から、地球を滅ぼすために派遣される。
それを食い止めるのが、「セレクト・ファイター」だ。
セレクト・ファイターは一年に一度、世代交代を行いながら、それぞれの国を守るのが使命だ。
国の面積によってセレクトされる人数は変わる。日本は4人だ。ロシアは確か40人くらいだったと思う。
セレクト・ファイターに任命される条件は、
1.高校1年生
2.成績上位者4名
つまり、日本の高校のどこかをランダム指定され、1年生の成績上位者4名がセレクトされるということだ。
私たちは高校1年生。更に、成績は―
「優斗。あんた今回のテスト、2位だよね?」
「だな。そう言うお前は3位だろ?」
「ってことは任命されてもおかしくない?」
「そう言うことになるね。」
いや、まさか。まさかまさかまさか。
私たちの高校がセレクトされる確率なんてものすごく小さい。
「俺なー、なんとなく選ばれる気ぃすんだよなー。」
「はぁ!?まっさかぁ。私、アース・イーターなんてテレビでしか見たことないけど、あんな気持ち悪いモンスターと戦うのは嫌だよ。」
「んー、俺はちょっとやってみたい。」
「うわ〜、あり得ないから。」
私はやれやれと首を振る。
「まぁでも、選ばれないよなぁ。」
「選ばれる確率を考えれば分かるでしょ。」
「だな。」
「うん。」
そうしてお喋りしている間に、清流学園に着いた。乗降口に入ると、1年のロッカーに人だかりができている。なんだか動揺した空気だ。
「なんだ?何があったんだ?」
「ケンカ?」
私たちが近付くと、こちらに気付いた一人の男子が、大声を揚げる。
「おいっ!!この二人って、成績4位以内に入ってんじゃねぇか!?」
人だかりが、全員こちらを振り向く。こ、怖い。
「二人とも!!」
そう言って人だかりの奥から慌てた様子で話しかけてきたのは、焔村真波。165cmの長身に、金髪のショートヘアーがよく似合う。同じクラスだから覚えている。この子確か、順位は4位だったような……。
ん?手に開封済みのピンク色の封筒を持っている。なんだろう?
「早く自分のロッカーを開けて。いいから早く!!」
勢いに押され、私たちはそれぞれのロッカーを開ける。中には、焔村さんがさっき持っていたピンク色の封筒が、存在感を強烈に発しながら入っていた……。
嫌な予感がした。私も馬鹿じゃない。
これが何かはなんとなく分かるんだ。
体が拒絶反応を起こして、封筒を開けられない。
怖い。
人だかりが遠くから息を飲んで見守る中、
いつの間にか隣に優斗が立っていた。
手には開封済みの封筒。
優斗は、険しい顔をしていた。
「優斗……。」
弱々しい声で名前を呼ぶと、優斗は私の肩を抱いた。
そして、私の封筒を手に取り、開封する。
中から白い一枚の紙が出される。優斗はそれを、私に手渡した。
清流学園1年生、雨澤華音。
あなたを、セレクト・ファイターに任命しました。
全員おそろいのようでしたら異空間セレクト・ワールドに転生移動します。
ご活躍を期待しています。
セレクト・ワールド本部
「私が……セレクト・ファイター?」
「選ばれちまったみたいだ。」
「そんな……どうしよう……!!」
優斗は私の体を支えてくれていた。
私が、モンスターと戦う?
地球の平和を、守る?
現実を拒もうとするたび、封筒が目に写った。
「お取り込み中、悪いんだけど。」
そう言って申し訳なさそうに声をかけてきたのは、焔村さんだ。
「これが誰かのイタズラだったらアレなんだけど、とりあえず先生たちにこのことを伝えた方が良いと思わない?」
「ああ、そうだな。華音、大丈夫?」
「うん大丈夫。ありがとう。」
私は、優斗のおかげで落ち着きを取り戻した。
「それなら、俺も一緒に良いかな。」
三人一斉に振り向くと、そこに立っていたのは、学年トップ、吹森誠一。
175cmの長身に眼鏡をかけた、スラッとした風貌だ。学年トップの貫禄を感じる。
焔村さんはニヤリと笑った。
「全員そろったってことね。」
私は便箋にもう一度目を通した。
「ねぇ、ここに、『全員おそろいのようでしたら転生移動します』って書いてあ…」
その瞬間、私たち4人は一瞬にして消えた。
残された生徒たちは呆然としていた。
ある一人の男子生徒は、ポツリと呟いた。
「新生セレクト・ファイターの誕生だ……。」