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強くなりたかった。
弱さを脱ぎ捨てられたらどんなに良いだろうと、ずっと考えていた。
変わりたかった。
新しい自分になりたかった。
いつも私の隣に居てくれる、優しい君になりたかった。
君は、どんなときも温かい体温で私を満たしてくれた。
君は強くて、真っ直ぐで、羨ましかった。
だからね。
始めるの。
これは、弱虫な私の、
精一杯の物語。
4月。
桜も散る中旬。
地面には、茶色くなった桜の花びらが散乱していて、私を物悲しい気分にさせる。
清流学園に入学して、まだ間もない。
脇を駆けていく中学生の制服姿が懐かしい。
住宅の窓に写る私の姿は、なんだか自分じゃないようで落ち着かない。でもやっぱり憧れの制服を着られるのは嬉しかった。
「何ニヤニヤしてんだ。気持ち悪。」
そう言って笑うのは、先程から隣を歩いていた、優斗。
「いやぁ、自分、清流学園生なんだなぁって思ったら、嬉しくなっちゃって。」
「まぁ分かるけど、一緒に居て恥ずかしいニヤケ顔だからやめようか?」
「失礼な。」
こんな日常が続いていくだろう。
そう思っていたが、今日、私たちの「日常」は崩れてしまう。
油断大敵。それを人類は胸に刻んで生きるべきだと、皆に伝えたい。
日常が変わる前に、ざっと自己紹介を済ませておこう。
私の名前は雨澤華音。清流学園1年生だ。
桃色のロングヘアーに、毛先カール。
身長は160cmと平均的だ。
ちなみに清流学園の制服はかなり可愛い。
水色を基調としており、胸元にはリボン。白のダブルジャケットに、フリル付きの水色のチェックスカート。黒のニーハイソックス、ローファー。
この制服が着たくて、清流学園を受験したと言っても良いだろう。
私のような考えの女子は多く、倍率が高くなるため、偏差値はかなり高い。
まぁ私は常に学年10位以内に入っていたから余裕で入れたんだけどね。
私の隣で歩いてたのは、緑川優斗。
実は、私の彼氏である。今月で10ケ月になるかな。
優斗とは、中学のときに出会った。
3年生の6月、優斗から告白された。
優斗のことは好きだったし、話しやすい相手だから、即オーケーをした。
優斗は身長170cmだし、顔もなかなか整ってるし、成績も良いしでソコソコモテる。
それと付き合う私もかなりモテたので(ドヤァ)、『美男美女カップル』として有名だった。まあまあ良い気分だ。
自己紹介という名の自慢話はこれぐらいにしておいて、そろそろ話を進めようと思う。