邪馬台国近畿説
次は近畿地方に存在していたらバージョンです。
邪馬台国。
近畿地方から中国、四国地方をはさみ、さらに九州の北部まで伸びる超巨大な連合王国。
大王は代々女王で、呪術を得意としていた。
しかし、5代目の女王の子どもが二人いた。
一人は女子、もう一人は男子だった。
女子は魅予。男子は大和と呼ばれていた。
魅予は呪術を得意とし、統率力溢れる次期女王の座に君臨していた。
大和は、武術を得意とする、今までにない人物で、さまざまな人々に尊敬されて、カリスマ性も兼ね備えていた。
「母上…!!」
「何用じゃ、大和」
「熊襲からまた手紙が来ました!!さっさと攻め入るべきです!!」
「熊襲はまだ話し合いにもなっていない小国。もう少し待って様子を見るのです」
「それではなかなか奴ら野蛮族がいうことを聞くはずがない!!」
「こら…。彼らのことを野蛮族などというべきではありません。
あなたのそのような心は、国を変えてしまう…」
「姉上!!国の悪しきところを変えるのは当然にございます!!」
母親と息子は仲がよろしくなく、姉である魅予とも関係は悪くなる一方であった。
「母上も姉上も!国の古きところばかりで、外国、魏や晋のことを何も見ていない」
「また喧嘩なさったのですか…?」
「ああ。このままでは、親魏倭王の位も過去のものになりかねん。
我らは、天から授かった皇の位のもとに天下を治める義務があるのだ!!」
「その立派なお言葉も、姉上と母上からしてみれば、笑いのタネにしかなりませんね…」
「余計なお世話だっ!!
それより、たった今だが、いい案が浮かんだ。
貴様も協力をしろ。一国の支配を授けるから」
「かしこまり」
大和が浮かべた、いい案というのは一体なんだろうか…?
「なにか……不吉な予感が…」
「亀甲にも出てます…」
姉と母は、何かを察知していたが、それが何かを知ることはなかった。
「あなたが、蝦夷たちですか?」
「蝦夷、という呼び方には少しどうか、と違和感を覚えるが、まぁいい。
勝手に呼ばれているだけではあるが、それは私たちに間違いはない」
「我々、邪馬台国は、あなた方と手を組みたいと思いまして」
「手を取る?」
「近々、王族に内戦が起きるでしょう。そんななかで、少しでも兵を連れて行きたい。
そのために、あなた方にも協力していただきたい」
「何…?しかし、邪馬台国は少し前に使者を送りつけて、我々に降伏せよと言ってきた。
あんな失礼な連中が、いるとは信じられなかった」
「我々が戦おうとしているのは、その連中です」
「じゃあ…。今から起こるのは内紛、というわけか…?」
「そうです」
「だったら。我々が協力することじゃない。
国内のことは国内で解決しろ」
「もしも…。このままの場合だと、再び統一されると、今度こそ、蝦夷へ攻め込みます。
国内では、蝦夷は野蛮族だと言われています。
捕虜や奴婢として連れて行かれるのも時間の問題だ」
「だからなんなんだ!!?」
「もし…。我々に協力をしていただければ。蝦夷の独立を認めようと思います」
「それは……。少し考えといてもいいかな…」
「期限は来週。
大和王子の館に使者を送ってください」
「母上………」
「どうしました…?」
「この…甲骨を見てください」
「ん?」
「ないふん……おこる……」
「内紛。つまり、国内で戦が起きようとすると…」
「ええ。そういうことですね…」
さらに不吉な予感がするのだった…。
「使者の意見はなんと?」
「はい。大和王子に加勢し、兵10000人を送るとのことです」
「……これで全てが整ったな」
「大王!!魅予さま!!」
「なんですか」
「大和さまが!!大和さまが…、謀反を!!」
「謀反を…?」
外の様子をうかがう、魅予と大王。
遠くで人家が燃え、万という兵士が押し寄せてくる。
「母上!姉上!聞こえますか!!
我々は、あなた方から見てみれば、謀反だとお思いでしょう!!
ですが!!これは!!大王らへの反乱でも、国内の紛争でも、なんでもありません!!!
これは、我が天上の意思を仰ぎ!!天下を支配する皇として君臨するための宣言です!!
遠い国では!!魏、呉、蜀が激しく争う時代が続き…続いても新たな国が出来た!!
これからは、呪術の時代ではない!!実力、武力の時代だ!!
古きは滅びるのみなのだ!!」
「ああ……。あわれな…」
こうして、邪馬台国は一度衰退し、大和王権という、あらたな国家へと変化したのだ。
これから数十年後。
熊襲を支配し、隼人を降伏させ、日本という国家として歩み、蝦夷を滅ぼし、加羅や百済と交易した。
大王一族は日本の王として、中国にも認められ、五倭王と称される……。
しかしこれは、もう少し後の話だ。




