簡易魔法
どうも、作者です。八話です。
「うーん、キッツい日差しじゃな!」
「開口一番それか」
このダンジョン街に来て二日目、今日もクエストに挑む。
「――ということで、今更なんじゃが、クエストってどうやって受注するんじゃ?」
俺たちは、今日もギルドに来て七番受付に来た。昨日はハイカさんの方でクエストを発注してくれた。しかし、そもそもクエストは自分たちで選んで受ける形が一般的だそうだ。といっても、そういうゲームは大体そうだし、当たり前と言えば、当たり前だが。
「クエストの受け方は簡単ですよ。 掲示板にあるクエストから、目当てのものを見つけて、受付に持ってきてもらえれば、受注完了です。 昨日の薬草採取のような常駐クエストなどは、直接受付に言えば受けられますし」
なるほど、これもよくあるやつだ。昔友達が持ってきたモン〇ンを思い出す。
「どういう基準で選べばいいんだ?」
「基本的には、自分のランクと同じか、それより一つ上か下の依頼しか受けられません。 ランクは昨日渡したカードに記載されているものですね」
そう言われ、昨日渡されていたカードを見る。ランクはFと書いてある。多分一番下だな。
「出たの、ギルド特有の謎記号」
「謎記号って、ただのローマ字だろ」
「ん? これはろーまじというのか?」
ん? 英語を知らない……いや待て、よくよく考えたらそうか。ここは異世界だ。ローマ字なんてあるはずがない。それどころか日本語だって本当はないはずだ。翻訳スキルで日本語に聞こえるし見えるだけで。だとしたら、どうしてここにローマ字があるんだ?
「......そうですね、この字は、ギルドを創設した一人であるその時代の勇者様が作ったシステムの名残です」
新がそうであるように、やはり勇者は全員異世界人なんだろうか。
「なるほどな」
「他にも基準になるものはありますが、文字が読めるお二人なら、それ以上の説明は依頼書を見た方が速いでしょう」
そこまで聞いて納得したクランが掲示板の方まで歩き出す。
「じゃったら、早速覗きに行こうではないか! 何かいい依頼があるかもしれん!」
「そうだな」
ということで、掲示板の方まで来た。掲示板はいくつかあり、ランクごとにいくつかに分かれているらしい。俺たちはFからEまで依頼が載った掲示板に行く。さすが、冒険者の街と言われているだけはあり、依頼の量はかなりのものだった。
「これは、多いな」
依頼には、成功報酬や、推奨人数やレベル、細かな条件にイラストなどが載っている。さらには、もう一つ記号のようなものが載っている。記号というか、簡易的なイラストだろうか、つるはしの様なものが載っている紙もあれば、牙を持った獣が載ったものもある。
一つの紙にいずれかの記号が一つ載っている。なるほど、これは採取系か討伐系かなどが分かるように載っているのか。そういえば、ほとんどの冒険者は文字が読めないと言っていたし、その配慮か。
「......ちゃんとしてるな」
「お前、ちゃんと探しておるのかの?」
「すまん、感心してた」
クランにそう言うと、いつものように少しわき腹を小突かれる。相変わらず顔に出やすいやつだ。うらやましい、俺もこれくらい表情に出せれば。
「だけど、ちょうどいいのは見つけたぞ」
俺が指さしたものに、クランは少し目を見開いて、不敵に笑う。
「なるほど、これはちょうどいいのう」
俺たちは、見つけた紙をハイカさんのところに持っていき、受注してもらう。
「なるほど、ではご武運を」
「うむ!」「ああ」
さて、昨日のリベンジといこうか。
「――イズミ、ちゃんとセットはできたか?」
俺たちは、昨日来た森にやってきた。クエストによれば、普段はこの森は、あまり魔獣は多くない地域。しかし、最近魔獣の出現報告が相次いでいるそうだ。まぁ、その報告の一つは俺たちだが、今回はそんな森に現れたヴァルガーという狼の討伐のギルドによる依頼だった。
ヴァルガー自体は、この世界のいたるところに生息するありふれた狼らしい。一個体一個体は弱いが群れで連携されると厄介で、初心者には結構な難関、この群れを苦戦することなく倒せるなら、かなり期待されるとのこと。俺たちはそんなのと戦っていたのか、と聞かされた時は思ったが。
「ああ、試運転もした」
「それにしても、あれでよかったんか? お前、才能がなくて、一つしかつけれんかったのに」
俺はその言葉にうなずく。才能がないは余計だが、どうせ変に攻撃手段を増やすより、こっちの方がいいだろう。特に、こいつの弱点を補うならそれが一番だ。
「それならいいが…む、来たな」
目の前に狼の群れ、昨日の奴らと違う奴らだろうか。正直、違いが分からんが。
「さて、やるか、目標は?」
「全部じゃ」
警戒して、近づかない獣どもにクランが、先頭の獣に槌をたたきつける。しかし、大振りの一撃は当たらない。だが、これで戦闘開始だ。
クランの一撃の隙をついて、獣の数匹が飛んでくる。俺は駆けつけ、盾を構える。敵は二方向からの攻撃。俺は、遅い方の攻撃をガードする。早い方は、クランが対処できる。
『燃やせ』
『火炎』
クランの魔法。一瞬の詠唱によって生まれた炎は、狼の体を燃やす。火の威力はさして強くないが、ひるませるには十分だった。悶えている狼にクランが一撃入れる。これで一匹。
盾に牙をたてた獣をそのまま盾を振って引き離す。そして次の一撃に備え、敵の数を確認する。残り七匹。クランはさっきと同じ要領で、獣どもに一撃入れ、三匹倒す。しかし獣どももいい加減学習したのか、そこで、先ほどより数をそろえて飛び込んでくる。炎を恐れてか、少し蛇行気味に移動してくる。
だが、その程度は想定通り、俺は相変わらず、クランの正面以外の獣たちの攻撃を、一体は吹き飛ばして対処。もう一体はガード。
『照らせ』
『照光』
背中から、大きな光ができたのが伝わる、次に聞こえるは獣の悲鳴と衝撃音。
「イズミ!」
その言葉に、俺は横跳びで対処、盾にぶつかってひるんだ獣にクランが一撃。俺も負けてられんな、俺はその勢いのまま、もう一匹の獣の方を向き、上から盾を下ろして獣を拘束する。だが、ステータスの低い俺の攻撃では死なない。相変わらず、盾の重みで死なないのは違和感があるな。
「クラン!」
その獣にクランが一発。これで、あと一匹。
「む、逃げられる!」
それはさせない。
『縛れ』
『魔鎖』
俺の手元あたりから鎖が飛び出る、その鎖が獣のあたりまで行ったのを確認し、鎖を操り、獣を拘束。獣はもがくが、終わりだ。
「ふん!」
その間に追い付いたクランの一撃で、この場は沈黙した。
「目標達成、だな」
「うむ!」
「――お前ほんと、こんな便利な魔法、何で忘れてたんだ…」
「すまんすまん、昨日は冒険者になれたのがうれしくてはしゃいでおったんじゃ」
クランは気分が良さそうに大笑いしながら、倒した魔獣の素材を集めている。
だが、こんな魔法があったとは。ステータス画面を開けるだけで習得できる魔法。通称、『簡易魔法』。 たった一単語で発動できるうえ、誰でも使える画期的な魔法。その分威力は低かったりするが、それもレベルが高い人間が使えばかなりの威力になるらしい。
簡易魔法の種類は七つあり、どれでも習得できるが、ステータス画面で設定する必要がある。設定できる数は才能によって最大三つ、俺は残念ながら最低の一つだったが。
俺はその中でも『魔鎖』という、鎖を射出して、相手を拘束する魔法を選んだ。これであれば、クランの攻撃の隙をつくれるし、こいつの足の遅さも多少は補える。実際大成功だったので良かった。
「こんな便利な魔法があるなら、昨日も楽だったな」
「そんなことはなかろう、使いこなすにもセンスがいる。 そういう意味では、お前戦闘の才能があると言っていいと思うぞ」
なるほど、そう言われて悪い気はしないな。
そんなこんなしてるうちに、素材を集め終える。
「お前、体の方は大丈夫か?」
昨日と変わったところはもう一つ、こいつからのエナジードレインだ。吸血鬼のこいつのダメージに対処するため、常時俺はエナジードレインされている。確かに、多少昨日よりだるい気はするが、あまり変わらない。
「ああ、問題ない。 このままいこう」
こいつも、昨日の薬草採取の時より調子がいいのか、元気にうなずく。
「そうじゃな、もうひと踏ん張り行くとするか!」
さて、今日はどれくらい狩れるだろうか?
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