始まりは薬草採取から
どうも、作者です。六話です。
「イズミ、右!」
クランに突っ込んでくる狼型の魔獣。俺はクランと魔獣の間に割り込む。獣の牙は大楯にぶつかって、金属音が響く。アイカを助けた時より、多少踏ん張りがきく。これがステータスの力か。
「ふん!」
盾にぶつかって、ひるんだ獣にクランが一発叩き込む。獣の頭部は一発で粉砕された。
「うむ、いい感じじゃな!」
クランの言う通り、冒険者職にジョブチェンジしたことの恩恵を感じる。一匹にすらかなり苦戦していたのに、今のはぐれ狼には苦労することなく倒すことができた。
「ん、今度は群れじゃのう」
「はぁ、ただの薬草採取のはずなんだがなぁ」
俺たちは武器を構える。これ、普通に薬草採取できるのか――?
「――では、こちらの紙を確認してください」
転職魔法紙、そう書かれた紙をハイカさんが二枚持ってくる。
「泉さんは細かい職業の割り当ては、お任せでいいとのことでしたので、私の方で決めさせていただきました」
「本当によかったのか?」
正直、細かい職業を聞いても何もわからないため、経験豊富そうなハイカさんに決めてもらった方がいいだろうと、選んでもらった。
「ああ、お前に決めてもらうより、ハイカさんに決めてもらった方がよさそうだからな」
「なんじゃと!?」
「まぁまぁ、とにかく転職しましょう」
頬を膨らむクランを無視して、小山 泉と書かれた紙を手に取る。
「どうすればいいんだ?」
「こうじゃ! ふん!」
クランはストレスを発散するかのように紙を豪快に真っ二つに破いた。すると、クランの周りが一瞬光り、すぐに収まる。
「これで終わりじゃ」
クランはすがすがしい表情で自慢げに言った。紙破っただけなのに。
名前 クラン所属:なし 職業:ヒーラーLv.1 サブ職業:バスターLv.1 種族:人間
攻:3 防:1 魔:5 耐:2 速:1
スキル 夜行Lv.1 速読Lv.44
「おお、ステータスが伸びてる」
「冒険者職はステータスがのびやすいですから」
少しだけだが、ステータスが伸びてる。平民の時はLV.2だったはずだから、それより伸びているというのはそれだけ冒険職の強さがわかる。
さて、今度は俺の番か。転職、中々にワクワクするな。いや、俺は無職だったから就職か。つまり、ニート卒業である。
俺は、目の前の紙を持って、力を入れる。
「ふん!!」
「あ、いや別に豪快な破き方まで再現する必要ないですよ」
「お前がやると迫力あるのう――」
――獣からの一撃を大楯でガードする。そのまま、吹っ飛ばす。しかし、あまりダメージはない。本当に物理法則に則った攻撃は効きづらいらしい。面倒だな。
だがしかし、職に就いた後、すぐに終わるクエストだし、ルーキーはここからだと言われて、薬草採取のクエストに来たはずなんだが、何でこうなってるんだ?
「本当にお主は固いのう」
「まぁ、職業による部分もあるがな」
だが、確かに、冒険者職に就いたことによる恩恵はひしひしと感じた。何より、
「むっ!?」
「もう少し、周りを見ろ」
「すまんすまん」
クランの場所まで前より速くいけるようになったのは大きい――。
名前 小山 泉 所属:セントラルフラッグ 職業:シールダーLv.2 サブ職業:エヴィターLv.2 種族:人間
攻:1 防:13 魔:2 耐:10 速:7
スキル 翻訳 再生
「――防御がとても高く、速度も高い、いいステータスですね」
「攻撃は相変わらずじゃがな」
それは言わないでほしい。どうも、元の防御の素質と、職業による補正が相まって、レベル2にして、防御だけやたら伸びがいい。いや、耐魔もか? ハイカさんの目からしても、かなり高い数値のようだ。攻撃は見ないものとして。
「だが、なんでLv.2なんだ?」
「さっき倒した魔獣じゃろう。 お主、職に就いてなかったからのう。 その分の経験値がここに入ったんじゃろう。 あの時も防御しておったからな」
なるほど、それなら納得である。無職でも、成長の余地はあるんだな。
「それで、何でこの職業構成なんですか?」
「はい、まぁ明らか防御寄りのステータスだったので、防御特化のシールダーをメインにしました。 防御と耐魔が伸びやすい職業ですね。 サブに関しては、防御職で固めた方がやりやすいと思ったので、同じ防御職のエヴィターです。攻守両方に優れたヴァンガードより、いっそ速度に優れた回避職のエヴィターの方がいいと思ったので、この構成にしました」
つまり、防御職は、防御特化のシールダー、攻撃もできる防御職のヴァンガード、回避盾のエヴィター、というわけか――。
「――イズミ! そのまま!」
獣の一撃をガードした俺の元に、クランが獣に一撃叩き込もうと駆け寄ってくる。しかし、先ほどより魔獣はひるんでいなかったせいか、魔獣はその一撃を軽々と避け衝撃音だけが響いた。
「うーむ、すばしっこい!」
「しかたない」
俺は逃げた魔獣の方に突っ込む。そのまま盾の重さを利用して、一気に叩きつけ、そのまま挟み込む。正直他の狼が来るまで猶予はないが、しかし
「クラン! 早く!」
「うむ!」
相変わらず足がおっそい。だが、他の獣がいない部分まで追い込んだから、どうにかなれ。
どうにかクランの方が先に来る。クランは槌を大きく上に上げ、下に振るう。それに合わせて俺は体ごと盾を避ける。
「ふん!」
狼の脳天に一撃入る。その一発によって獣の息の根を止めた。流石はバスター、といった具合だ――。
「――そういえば、バスターってどんな職業なんだ?」
ヒーラーは何となくわかるが、バスターはどんな職業なんだろうか?
「バスターは、攻撃力に特化した攻撃手です。 アタッカーは他にも、ヴァンガードの攻撃高い版のウォリアー、速度が高く、技術が伸びやすいハンター、などがあります」
アタッカーは、バスター、ウォリアー、ハンターの三つか。ハンターは一番魔獣狩りっぽい。というか、
「そういえば、何でバスターなんだ?」
「確かに、バスターは攻撃が伸びやすいですし、魔力にも補正がかかるとはいえ、防御面や速度面が伸びにくいので、あまり初心者にはおすすめされていませんが」
ハイカさんから見ても、バスターは中々にピーキーな性能らしい。
「まぁ、どうせ変に防御や速度を伸ばすくらいじゃったら、攻撃を増やした方がよかろう! それに、防御はもうこいつに任せればよいからな!」
俺がいないときどうするつもりなんだ…。
――何とか数匹倒したところで、包囲網を抜けられそうにない。
「このままだと埒が明かんな」
「うーむ、わしにいい案がある」
本当に妙案か疑わしいところだが、だが具体的な解決案があるわけでもない。こいつの自信満々なあほ面は本当に不安だが、任せるしかない。
「ということで、魔獣の方は任せたのじゃ!」
別に構わんが何をするつもりなんだ?
ということで、盾でぶん殴ったりして、クランにヘイトが向かないように立ちまわる。流石に数が多いので、盾で防ぎきれない。まぁ問題ない、多少の傷は再生する。痛いが、クランにヘイトが向くよりはましだ。
それで、クランの方は何をしているんだ? そう思って少しだけクランの方を覗いてみる。普通に、薬草集めてる。
「お前、妙案って…」
「薬草を集めてとっとと帰る! 以上じゃ!」
確かに、俺たちがここに来た理由は薬草採取のクエストのためだ。それは分かっている、分かっているが何でこんな不服なんだ…!?
薬草を集め終わったクランが、俺がヘイトを集めた狼たちに一撃叩き込む。包囲網に穴ができた。
「逃げるぞイズミ!」
そういわれ、俺たちはその場所から逃げる、が
「おっそい」
クランはのそのそと逃げている。ステータスの速度云々に元が遅いのかこいつ! 仕方ない。俺は周囲を確認して、人がいないことを確認する。よし、誰もいない。
「クラン変身解け!」
「ん!」
クランは変身を解き、元の幼女姿に戻る。こっちの方が軽い! 後ろにいたクランを肩に担いで全力でダッシュする。
「うわ!! これは快適じゃ!」
「俺がやったことだが、人を乗り物扱いするな」
どうにかクエストはクリアできそうだ…。 これ、ただの薬草採取のはずなんだがなぁ。
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