ダンジョン街へようこそ!
どうも、FOXtaleと申します。四話です。
今回から一章です。よろしくお願いします。
「本当にありがとうございました!」
何処かの制服を着た少女は、全力で頭を下げている。とにかく、小さな擦り傷などはあるようだが、すぐ直りそうな傷でよかった。
「いやいや、無事そうで良かったのじゃ!」
「本当に大丈夫そうだな」
少女は頭を上げると、涙目で笑っている。本当に怖かったんだろう。解放されたようで何よりだ。
「てめーら! 無事か!」
商人さんが、俺たちの方に駆け寄ってきた。しまった、
「あ、商人殿。 すまんのう、勝手に武器を使ってしまって」
クランの言う通り、勝手に盾と槌を使ってしまった。
「いやいや! その武器で人を助けたってんなら、武器冥利に尽きるってもんよ。 それに、お得意様を救ったみたいだしな!」
「――お二人は冒険者になるために、このシゲンにやってきたんですね!」
彼女の名前はアイカ。何でもギルドの受付嬢で、たまにこうして冒険者についていって、魔獣の生態調査などもしているらしい。まぁ、冒険者においていかれて魔獣に襲われたのが今回らしいが。
アイカも乗せた馬車は、心地よい揺れのままダンジョン街の外壁まで迫っていた。
「お二人なら絶対いい冒険者になりますよ! 私が保証します!」
「ははは! そうかそうか! ギルドの受付嬢が言うなら違いあるまい!」
クランとアイカは楽しそうに会話している。少しにぎやかになったおかげで、町へのワクワク感は少しばかり大きくなっただろうか。
「本当にさっきのはすごかったです。 冒険者でもないのに、魔獣の攻撃を受け止めた泉さんと、倒したクランさん、どっちもすごい」
「まあのう! しかし、先ほどのお前はすさまじい反応速度と防御じゃったのう」
「はい、泉さんの防御、とってもかっこよかったですよ! 冒険者になったらやはり防御職でしょうか!」
ふむ、タンク。確かにいいかもしれない。俺も攻撃するより誰かを守る方が性に合う。
「それもいいかもな」
「てめーら、ついたぞ! ダンジョン街に!」
馬車は門を越え、ついに町へと轍をつけた。
門の先に広がっていたのは、どこか雑多で適当な街だった。ナヴィカの町のように景観に対するこだわりなんか一切ないように、各々が好きなように建物を建てている。
しかし、その割には道は整っている。適当で計画性はない、しかし最低限のまとまりがある街。それが、この街の景観で、雰囲気だった。
アイカは、橙色の長い髪をまとめたポニーテールを大きく揺らして、馬車を降りる。何がしたいのか察知した商人さんは、馬車を止めて俺たちの方を向いて大きく笑った。
「ようこそ、冒険者の卵たち! 冒険者のためのダンジョン街、『シゲン』へ!」
俺たちの始まりの土地、『シゲン』へと足を踏み入れたのだと、実感した。
「っと、すまねえな。 商人は色々と手続きがあるから、ここでお別れだ」
「む、そうか。 世話になったのう商人殿」
「ああ、助かった。 恩返しはいつか」
商人さんには、随分世話になってしまった。
「はっはっは! いいってことよ! ま、いつかなんか買ってくれや、商人相手なら、それが一番だぜ!」
俺たちは馬車を降りる。どうやらここから先はアイカが案内すると張り切っていたので、俺たちもそれに甘んじる。最後にあいさつしようと振り向くと、
「あ、そうだ、てめーら、ほい」
何かが俺たちの前に置かれる。
「これは、わしらが使った大楯と槌か」
「おう、せっかくだ! もっていきな!」
これはもらっていいんだろうか。
「馴染んでおったし構わんが、いいのか?」
「いいってことよ、後で請求書はギルドに送るし、それに…」
え? という顔をアイカがしている。急にそんなことを言われたら驚くのも無理はない、
「「それに?」」
「大楯と槌は、売れ残りやすいからな!!」
売れ残りやすいのか...。というか、この人はなぜその情報で、こんなに自信満々に親指を建てられるんだろうか…。
「がっはっは! じゃあな、嬢ちゃん、ギルドに武器の件、よろしくなー!」
俺たち三人は、呆れ顔で商人と別れることになった。
「――初心者用の武器を卸している商人さんでしたか、それならまぁ、って良くないですよ!」
アイカは、ぷんすかと怒りながらも、歩きなれない俺たちに合わせて道案内をしてくれた。
「まぁまぁ、どのみち支給してくれる武器なのじゃろう? それならよいではないか」
「でも、最終的にお二方に請求がくるんですよ?」
「良いわ、この槌は中々馴染むからのう」
実際、俺もこの大楯は手になじむ。
「それに、ここまで運んでくれた恩があるからな」
「もう、それならいいですけど…」
道を進んで約五分。ずいぶんと武装した人間が増えてきた。というか武装した人間だらけだ。ここにいるのはみんな冒険者なんだろうか?
「うーむ、すさまじい人じゃのう」
「この時間はどうしてもこうなりがちですね」
ついた時間は昼下がり、どうやら冒険者の出入りが激しい時間らしい。この人混みの中だと。元の幼女体型のクランだと見失ってしまいそうだ。
「そういえば、この街には関門がないんじゃのう」
「はい、冒険者である人、冒険者になりたい人は、どんな方でも歓迎されますから。といっても、そもそも、身分がはっきりしない方なんかは、まずこの国にはじかれちゃいますから」
「な、なるほどのう」
そう言われ、クランは少し気まずそうな顔をした。まさしく身分がはっきりしない、というか魔族は本来この国に入れないと本人が言っていたしな。それで気まずそうなんだろう。
それにしても、この街は賑やかだ。それぞれが、思うままに歩き喋っている。値切り交渉する声や、今日の冒険の成果を自慢する声まで様々だ。
「おお、アイカちゃん仕事帰りかい!」
「はい! 今からギルドに戻るところです!」
「アイカちゃんお昼食べたかい!」
「あ! 後で食べに行きますね!」
そんな中でも、アイカはよく人に話しかけられる。出店をやっている人、冒険者と思しき人、様々な人間に声をかけられている。
流石はギルドの受付嬢、といった感じだろうか。アイカに話しかけている人はみんな笑顔で、まるでアイドルみたいだな。
「中々人気者じゃのう、アイカは」
「へへへ、皆さんがよくしてくれるだけですよ! あ! つきましたよ、ここがギルドです!」
俺たちはその建物を見上げる。イメージは、最低限の装飾が施された箱といった感じの建物だった。ただでかく、その上、間口は広い。これだけ人が出入りしているのに、出入りに苦労はしなさそうだ。
「さぁさぁ、どうぞ中へお入りくださいませ新米冒険者様!」
「いくぞ、イズミよ!」
「ああ」
俺たちは扉を踏み越える。中も人がたくさんいて、誰もかれも忙しそうだ。
「うーむ、これはどうすれば」
人が多くて何をすればいいか分からない中、アイカが口を開こうとした瞬間
「おーいアイカ、調査記録出して早く手伝ってくれー!」
「あ、でも」
アイカは、申し訳なさそうにこっちを見てくる。
「大丈夫だ、仕事大変だろ、こっちはこっちで何とかするさ」
「はい…あ、でしたら人があまりいない受付に行ってみてください! いえ、行ってください! では!」
申し訳なさそうだったアイカはそう言い終わると、俺たちに手を振りながら慣れた足でギルドの奥へと入っていく。俺たちも手を振る。
「それにしても…人がいない受付なんてあるのかのう?」
どの受付も、長蛇の列だ。正直そんな受付なさそうだが。
「とりあえず、奥まで行ってみるかのう」
「そうだな」
…あった。あからさまに人が並んでいない受付があった。七番受付。そう書いてあった一番奥の受付だけは、人が並んでいない。
「あれだな」
「あれじゃのう、まぁ行ってみるとするか」
正直、少し怖いが、行ってみるしかない。
俺たちは、受付まで近づく。受付に立っていたのは、百五十センチもなさそうな女性、しかし、クランに感じたような、幼さは一切感じさせない、そんな女性だった。
「ようこそ、新米冒険者様。 私の名前はハイカ、この七番受付で受付をしている、ただの受付嬢です。 以後、お見知りおきを」
蒼銀の髪を揺らし、彼女は礼をする。これから随分と世話になる、ハイカさんとの出会いだった。
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