”盾持ちと吸血鬼”
どうも、作者です。三話です。
連続投稿です(二回目)
「商人殿、乗せてもらって助かったのじゃ!」
「はっはっは! 冒険者志望なんだろ? 乗せるのは願ったりなくらいだぜ!」
俺たちは今、馬車に乗せてもらってダンジョン街と呼ばれる場所に向かっていた。
クラン曰く、そのダンジョン街のギルドであれば、クランのような魔族でも冒険者になれるらしい。
「それで、そこのギルドとナヴィガのギルドは何が違うんだ?」
「ん? あんちゃん、ギルドについて何も知らんのかい?」
「ええ」
実際、この世界の事情は何一つ知らない。魔族や他の種族との違いや、この世界での扱い。それにステータスなど、この世界でのことは来て三日、一向に分からないことだらけだ。
「ま、わしが教えてやろう」
「まずこの世界には、いくつかのギルドがいくつかあるが、主に二種類じゃ、一つは国営ギルド、そしてもう一つは冒険者連合、通称”セントラルフラッグ”じゃ」
そして、今向かっているのは、セントラルフラッグだと、クランは説明する。冒険者連合、名前の通りの冒険者による冒険者のためのギルドらしい。そこでは、ある決められたルールさえ守れば、誰でも冒険者になれるらしい。
「なるほど、それがメリットなのか」
「確かにそれもあるが、国営ギルドと違って世界中に拠点があるのが特徴でのう。 遠征なんかで遠くに行っても、セントラルフラッグの拠点さえあれば、依頼と支援が受けられるという訳じゃ」
確かにそれは大きなメリットだろう。つまり、世界中を冒険するなら圧倒的にセントラルフラッグという訳か。
「じゃあ逆に、国営ギルドのメリットってなんだ?」
「やはり、報酬金の高いことじゃろう。 そしてまぁ、依頼を独占してることじゃな」
国営ギルド、文字通り国が運営しているギルド。それが故に、その国の中の依頼はすべて国営ギルドが独占できるらしい。
その上、セントラルフラッグは拠点を設置している国から税金を取られるが、国営ギルドなら税金を取られないためその分報酬金が上乗せされるらしい。
「それなら、どこの国も国営ギルドを作ってそうなものだが」
「実際、それができたら一番なんだろうが、とにかくギルド運営は金がかかる。 だから、そこら辺の中規模以下の国じゃ、採算がとれねぇってわけだな」
「それで代わりにセントラルフラッグがギルドを建ててるのか」
「それに、セントラルフラッグはいいぞ! 商売も自由! 依頼も多少審査はあるが自由だ。 俺たち商人的には大助かりだぜ。冒険者がいないとまともに動けないからな。 ま、この道は整備されてて安全だが」
「?そうなのか」
「どうして、冒険者が必要なのか? という顔じゃな」
クランが小声でそんなことを言う。その通りだ。別に移動するだけなら、冒険者じゃなくてもいいだろう。まぁある種の傭兵のようなものだから、使いやすいという理由はありそうだが。
「この世界には魔獣という存在がおってのう」
魔獣、厳密には獣以外の魚みたいなのもいるらしいが、人間を襲う存在の総称らしい。要はモンスターだ。
「じゃが、奴らは基本的に普通の攻撃が効きづらいんじゃ」
まさしく人間の天敵、というわけだ。
「そこで冒険者の存在じゃ」
冒険者、厳密には冒険者とは総称で、そう言った職業群のことらしい。
「冒険者職は基本的にステータスが伸びやすい。あの、ステータス欄の攻とか書かれておる部分じゃな。 魔獣相手にはこのステータスによる攻撃力、逆に魔獣からの攻撃には防御力が有効、という訳じゃ」
あのステータスにはそんな意味があったのか。
「ちなみに、逆に人間にはステータスの効果が薄い。 じゃから、兵士職なんかはステータスが伸びにくいが、素の筋力や技術なんかが伸びやすかったりするわけじゃな」
人間相手には、兵士職が戦う。魔獣相手には、冒険者が戦う、か。なら、基本的に衛兵職の方が冒険者に対して有利だが、逆に魔獣には不利。 ようは冒険者、兵士、魔獣で三すくみになっているわけか。
なるほど。 この世界の職業にもいろいろあるのだなと納得する。それと同時に、世界中にギルドがあるのもそういう理由という訳か。
「そういえば、商人殿は一体何を運んでおるんじゃ?」
「ん? あぁ、俺は新米用冒険者の武器をギルドに卸しに行くところさ。 さっき言っただろ? 冒険者志望は大歓迎だって!」
なるほど、新米がいればいる程、武器は売れるという訳か。
「ほほう。 見ても構わんか!」
「いいぜ! 俺が選別した自慢の格安武器さ!」
格安なのか...。 クランは、その言葉には目もくれず、箱にかぶせられた布を外して、中にある武器を興味津々に覗いた。
武器の種類は様々、スタンダードな剣や槍から、誰用なのかわからない重そうなハンマーなんかもあった。他にもいろいろだが、とにかく数が多かった。
「ふむ、こっちには大盾もあるのう」
「いいだろ。 選別は適当だがな! がっはっは!」
適当なのか...。
――そんなことを話しながら、早三日。
「ん? あれは…」
道の左側にある森、その木々の間から幾人かの人間が、獣を追いかけるのが一瞬見える。
「お、あれは冒険者だな。 つーことはそろそろだぜ」
「おお! ついにか!」
どうやらもうすぐらしい。ついに冒険者として、一歩を踏み始める時が来たようだ。こういったファンタジーに憧れていたのは、どちらかというと友人の方だったな、と少し思い出す。
俺自身、あまりこういったものに元々詳しいわけではなかったが、中学時代から親しかった友人が、あれこれとラノベやアニメの話をしてくれたおかげで、割とすんなり異世界転移という状況に入り込めた感じがある。人生何が役に立つかわからんものだな。
「何をもの憂げに耽っておるんじゃ。 ダンジョンはすぐそこじゃぞ!」
「最初からダンジョンは厳しいだろ」
こういうのは薬草採取から始めるものだろう。最初からダンジョンというのは流石に厳しいのではないだろうか。
「お前はロマンないのう、ロマンが」
別に俺だって入って見たくはないと言ってしまえば嘘になるが。
「その前に、どんな職業につくかも決まってないだろ」
そもそも、どんな職業があるかも知らないわけだが。そもそも、俺は今のところ職業にすら就いていない。要はニートになってしまうのか。
「ふっふっふ、わしはもうどの職業につくかは決めておる!」
「そうなのか、どの職業にするんだ?」
「聞くがよい、それはヒ」
「「!!」」
森から一人の少女が、飛び出してくる。必死の形相、何かから逃げてきていたのだろう。まだ視線は、森の中にある。
「どうした…魔獣!? ってお前ら!」
商人の声はもう遠い、俺は気づけば横にあった得物をつかんで少女の方へと向かっていた。いや、俺たちが、のようだが。
「ん? イズミ、交換せぇ!」
そう言われて、後ろから投げられた物を、手に持った得物を手放しながらつかむ。四足歩行の獣が草の間から飛び出す。間に合え――!!
あの日のことは未だに思い出せる。あの二人に出会った日のことは。
ただいつも通りの現地調査のはずだったのに、気がつけば、冒険者さんとはぐれてしまった。それだけだった。駆け出しの冒険者さんたちは、逸りがちで調査員を置いていきがちだ。だから、この状況にも慣れていたけれど、まさか、はぐれた魔獣が襲ってくるなんて。
どうにか、道には出られたけど、ダメだと思った。私が通ったことで結界に一瞬ゆらぎができて、その隙に魔獣は道に侵入してしまった。
私は目をつぶろうとした。でも、そこで魔獣の一撃が来ないことが理解できた。だって、大盾をもった泉さんが、獣の一撃を防いで、槌をもったクランちゃんによって魔獣の後頭部に一撃入れられた。
「やはり一撃では無理か!」
そう言って、クランちゃんが数発入れて、魔獣はやっと倒れた。
「うーむ、冒険者に早くならねばな」
「そんなことより」
「「大丈夫か」」
あの日のことはやっぱり感謝しかできないなぁ。ありがとう、盾持ちと吸血鬼さん。
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