体験して慣れろ
どうも、作者です。十八話です。
「最初から数が多いわ!」
ダンジョン突入初戦、初っ端からスケルトン三匹と、インプ二十四匹という数を片付けたクランはそう言う。確かに、初手にしては多かった。苦戦することこそなかったが、ダンジョンの狭い地形の戦いのやりづらさも実感した。結局戦闘中、三回ほど盾をこすってしまったし、クランの方も、最後のスケルトンを片付けようとして、槌を天井にぶつけていた。
「はっはっは、これがダンジョンだ。ま、慣れていくしかないな」
これで今日の目標はクリアできるんだろうか? そんな不安感を持ちつつ、俺たちは奥へと進んだ。
俺たちはダンジョンを進むにあたって、目標を決めていた。それは、一日目の二層までの踏破と、二日目の三層の踏破、そして帰還である。
このダンジョンは、三層にボス部屋がある。つまり、三層構造だ。そして、今回、このダンジョンは初心者が潜るダンジョンとして、完全攻略禁止、つまり原則ボス戦は禁止されているため、目標はこのような形となった。
「おっと、てめぇら、止まれ」
俺たちは戦闘かと身構えるが、アメイは、横の壁へと手を移し、そっと触れる。
『魔なる力よ、流れろ そして、彼のものの中身を写せ』
『解析』
魔法詠唱、確かトラップなどの構造を調べる魔法。クイックサポーターの職業の一つ、ピッカーが習得できるものだ。ピッカーは宝箱の解除のほかにも、こうしたトラップの解除もする。ダンジョン探索においてはいるかいないかで楽さが変わる職業だそうだ。
「うし、解析完了。ま、普通のトラップだな」
「ここにトラップがあるんか?」
クランがアメイに質問する。俺の目から見ても、どこにトラップがあるのか分からない。
「おう、初心者にはわからんわな。ま、これくらいのトラップだったらそのうち気づくようになる」
そう言いながら、ダンジョンに落ちていた適当な石を拾って、少し先に放り込む。すると、石が通過した壁から数本の矢が飛んでくる。
軌道そのものは足元で致命傷にはならないが、足を負傷させる嫌らしいトラップである。怖いな。
「うーむ、全然わからんわい」
「正直慣れだな。ダンジョンの脅威ってのは本当は、体験して慣れる」
地味に恐ろしいことを言ったな。だが、もしアメイがいなかったら俺が受ける羽目になっていただろうな。
そして、また歩き出すことになったが、段々脇道なんかがあらわれてきた。
「どんどん複雑になってくるな」
「まぁな。つっても一層はそんなにだ。それに明らかに人が進めない道とかあるだろ? そういう道は基本価値がねぇ」
人が進めないのは価値がない。つまり人が進める道には価値がある。それではまるで、
「ダンジョンが攻略されるように人を誘導されてる?」
「そうじゃ。ダンジョンは、人に攻略されるためにある」
俺の独り言にクランはそう言う。そこで、会話が途切れたが、この世界ではそれは常識なんだろうか。もしかして、ダンジョンはただの自然現象じゃないのか?
一階層で戦闘を数度やって、ずいぶんと進んだ気がする。トラップ等もアメイが悉く看破してしまうので今のところ問題がない。
アメイが足を止める。
「お前ら、警戒しろ。 避けられそうにない」
道の先に見えるのは、空間。そして、反響して響く骨のカラカラ音。かなりの数のスケルトンがいる。
「数は……十二」
さっきの四倍、流石に多くないか? しかも、ルームとなると確実に囲まれる。俺だけなら、ノーダメージでいけるが、クランを守りながらだと流石にきつい。
だが、ここは通路だ。誘い込めば個別に処理できるだろうか。
「誘い込むか?」
「まぁ、それが安牌だが……慣れてみるか?」
アメイは、明らかに悪い笑みをしている。嫌な予感しかしない。
「――ほんとにやるのか?」
「アメイがもうあっちに行ってる」
スカウトの魔法『ステルス』。短時間だけなら、魔獣相手に完全に姿を隠す魔法である。基本逃げ専用の魔法らしいが、アメイはその魔法でルームのあっち側に行っている。一切スケルトンに当たらずあっちに行く姿には、熟練の技を思わせた。
クランはため息をつき、槌を構え、全力疾走。俺は追い越さないように後ろを走る。
ルームに入る瞬間、クランは槌を振り上げ、一番近くのスケルトンに槌を叩きつける。粉砕、他のスケルトンたちは、味方の死に目もくれずクランに殺到する。タイミングは今、地面を本気で蹴り上げる。
俺は、クランの首あたりをつかむ。
「ぐえ!」
すまんが耐えてくれ。全力疾走の勢いのまま、目の前のスケルトンたちを押しのけ目の前の通路に突っ込む。通路にいたアメイの元までスケルトンをデリバリーする。
「うおおおおお!」
「クラン」
吹っ飛ばされたスケルトン達は、目の前にいたアメイを襲おうとする。しかし、あっさりクランによって粉砕される。
他のスケルトンたちも唐突に現れた俺たちに襲い掛かろうとするが、
「てめぇら、一応俺だって準備してたんだぜ?」
「これくらいで文句を言うでない!」
悪びれずにそう言ったアメイは、仕掛けておいたトラップを作動する。小さな爆発。最前線にいたスケルトンたちは粉々に砕ける。
「全部倒しきれてないではないか!」
「ありゃ」
思ったよりスケルトンたちの到達が遅かったか、それとも咄嗟に後ろに避けたのか、後ろ側のスケルトン数体は残っている。仕方ないな。
俺は、『魔鎖』を発動し、スケルトン一体の足に巻き付け転ばせる。それに巻き込まれて他のスケルトンたちもボウリングのごとく転んでいく。
それを流れ作業でクランが片づける。案外うまくいくものだな。
厳密には、クランが喰らうはずだった攻撃をいくらか俺が肩代わりしたが、まぁほとんどダメージになってないし、『再生』で回復する。
「お前、もう少し優しくもてぇ!」
「すまん、だが恨むならあっちを恨んでくれ」
そう言うと、クランはアメイに噛みつきに行く。あっちからバタバタ音は聞こえるが、アメイが踏んだ場所以外は踏んでいないあたり、理性はあるな。なら問題ない。
「すまん、すまんって! ここ通ればもう二階層つくんです!」
その言葉で、クランは攻撃を止める。ただし、すぐに再開した。
「なんでぇ!」
そりゃまぁ、腹いせだろう。俺はクランの行動で留飲が下がっているので、俺の分はなしでいいか。
「にしても、お主、よく覚えてるのう」
最後の一階層の通路を通るっていると、クランはそう切り出す。アメイはここまで、一切道に迷うことなく、一階層最深部まで到達してしまった。
「ま、これでもそれなりにやってきたもんで……つーのもあるが、このダンジョン自体、もう何度も来てるからな」
なるほど、それでこんなにすいすい進めるのか。
「そうなのか。それでマップも買わずに来たのか」
ここに来る前、マップなども売られているということで買おうとしたが、別にいらないと止められた。
「あーいや、それは普通に俺が書いたからだ」
「ほう、そうなのか」
意外な事実だった。しかし、
「一介の冒険者がそんなことするんだな」
「普通はやらんが、まぁハイカやらギルマスやらに手伝わされんだよ。マッパー自体貴重だしな」
俺たちの時もそうだったが、ハイカさんに色々と押し付けられてるんだな。というか、ギルマスとも知り合いなのか。しかもかなり気安そうだ。
「というか、お主、メインはスカウト、サブがピッカーではなかったか?」
「前はサブがマッパーだったんだよ。今はピッカー」
マッパー、名前の通りのマッピングがメインの職業。ピッカーほどダンジョンメインではない。ダンジョン探索がメインではなかったのだろうか?
「ま、つってもトラップの配置やらが変わったりするから、気は抜かないけど。ま、三層奥まで行って戻るだけなら、半日もかからんがな。 俺一人だけならだけど」
それでも、中々すさまじいことではないだろうか。そんなことを話しているうちに、二階への階段にたどり着く。
「一層だけでも、かなりの魔獣の数だったが、二層はどれだけいるんだ?」
正直、思ってる数倍魔獣に遭遇した。おかげさまで、ドロップ品がかなりの数になっている。
「流石に今日は運が悪いな、数が多かった。ま、てめぇらなら余裕だろ」
「では、行くか!」
俺たちは、二階層の階段を下ろうとした、その瞬間。
「うわあああぁぁぁぁ!」
誰かの叫び声が響く。クランは、アメイの前を通り抜け全力で下って行った。
読んでいただき、ありがとうございます。誤字脱字報告・コメントお気軽にどうぞ。




