アメイ
どうも、作者です。15話です。
「お二人とも、お似合いですよ♪」
「本当にぴったりで、なんというか、キモイのう」
すごいストレートに言ったな。だが、確かにこの装備は馴染む。籠手も鎧もサイズがぴったりだな。何より、
「なんで要望すら言ってないのに、俺の要望通りの装備なんだ……」
身につけている装備は、全体的に軽装だ。通常のタンクが身につけるような全身鎧ではなく、急所の守りにだけ重きを置いた装備だ。それプラス籠手と具足で動きの補助と防御もばっちりの装備だ。しかも、盾の握り具合もちょうどいい。
「わしの方もじゃ……」
クランの方は、いわゆるバトルドレスだ。全体的にシックにまとまっている。元が鈍足であるのを考慮してか、全体的に重装備だ。ただ、前の装備とあまり見た目は変わりはない。
「前々から思ってたが、お前の服って庭とかで手入れする人の服装みたいだよな」
エプロンの様な上と、スカートがくっついた、いわゆるつなぎのような装備だ。ファンタジーとかだと、庭作業をするメイドさんとかが来ていそうな服装だ。
「まぁ、土いじりが趣味じゃし……今は家を持っておらんからできておらんが」
意外な趣味だ。ということはこいつの服装は自分の趣味が反映されたものだったのか。
「とにかく、お気に召されたようで何よりです♪ ま、鍛冶師が見つかるまでのつなぎの装備にはなるでしょうが」
それでも、これなら今すぐダンジョンに行っても問題なさそうだ。それぐらいしっくりくる。
「それで、しっかり装備を固められてどうしたのですか?」
「あぁ、ダンジョンに行くんだ」
それを聞いたマゼランは大げさにうなずき少し目をつぶって少し考える。そして、カッと目を見開き、大きく口を開く。
「そういうことでしたら! 私謹製の道具のあれこれを買っていきませんか!」
そう言いながら、背中に手を伸ばすマゼラン、しかし手は空ぶる。それで驚いて、鍛冶の工房の方を見る。どうやら、バックパックの方を見たらしい。
というか、店員さんがすごい複雑そうな顔をしている。他人の店で商売されるのは普通とがめられるが、店の商品を的確に選ばれてしまったので、注意するか悩んでいるのだろう。
「はっ、今はないんでした……ですが、どうぞダンジョンに行く前は私の商品をお買い求めください! サービスしますので♪」
それを聞いて、クランは疑わしい顔をする。
「しかし、お主......ぼったくるんじゃろう?」
それを聞いて、マゼランはああ、という顔をする。
「それはダンジョンの中だけですよ♪ 困ってる人には、その人にとっての適正価格で売る、それが私のモットーですから♪」
嘘かどうかわからないが、マゼランにはまた世話になったし、見てみるぐらいはいいだろう。それに、今回のことで目利きは信用できると思うしな。
「では、後は会計を済ませてハイカさんのところに戻るだけじゃな」
「そうだな」
「それでは、今度こそ商品を見に来てくださいね~」
なんか、この店の店員みたいだったな、あいつ。
「――ありゃ、誰じゃ?」
俺たちは、受付に戻ってくる。すると、見知らぬ男がハイカと話していた。
「お、戻ってきたな」
俺より少し年上だろうか? どこか、飄々としていて、少しベテランの気を感じさせる。そんな男の人だった。
「えっと、その人は?」
「......ん?」
男の人は、俺の顔をじっと見た後、ハイカさんに目配せする。しかし、二人の間で何か伝わったのか、それで男は納得したのか、俺の方を向く。
「それで俺か......すまんすまん、ちょっと知り合いに似てただけだ。 俺はアメイ、フリーのクイックサポーターやらしてもらってる」
知り合いに似ている。明らかにそんな風ではなかった。何というか、何かに気づいて、隠されたそんな感じだ。
アメイさん、その人が握手を求める。それにクランが先に応じる。
「うむ、よくわからんが、クランじゃ。よろしくなのじゃ」
「お、べっぴんの握手ラッキー」
「ぶっ飛ばすぞ貴様」
「あすんません」
うん、なんか一瞬で力関係ができた気がする。そんなことある? とりあえず、俺もとりあえず手を差し出す。
「泉だ。よろしく」
「泉か、ま、よろしくな。つーかでけぇな」
まぁ、俺の方が10センチくらい大きいが。と、結局この人はどういう用件でここにいるんだろう?
「それでハイカさん、この人は?」
「はい、この人は、ダンジョン挑戦に対する条件です」
条件、まだあったのか。そして、アメイさんそのものが条件ということは。
「その男を連れていけ、ということじゃな?」
まぁ、そういうことだろう。クイックサポーター、戦闘は苦手だが、移動やトラップの解除など、戦闘以外の面で支援するサポーターのことだったはずだ。
「はい、ダンジョンという場所は地形が複雑な上、様々なトラップが潜む場所。初心者に推奨されないのもそれが理由です。そういう面で、この男は有能ですから」
そう言われたアメイさんは、少し面倒というか、不服そうな顔をする。
「ダンジョン探索、それが俺を連れてこられた理由か
」
正直、経験者が入ってくれるのはすごく助かる。ただでさえなれないダンジョン探索だ。いてくれるのは助かる。
「俺は構わんが……」
「うーむ、じゃが」
クランはすこし苦い顔をする。俺たちの素性の問題だろう。俺は異世界人、クランは吸血鬼、ばれるとまずい経歴だ。流石に問題があるだろう。
「はぁ、安心してください。お二人に何か、特別なあれがあるのは何となく気づいていますから、彼はそういう面でも安心ですよ」
それを聞いてクランはすごく驚いている。だが、俺としては、流石にいつかはばれると思っていたのでそんなに驚かない。そもそも、ここまで頑なに二人なのも変な話だ。
しかし、クランはハイカさんの顔を見て、納得したのかため息をつく。
「むぅ、そういうことなら……」
「まてまて、俺の意見を忘れてるんだが?」
それに異を唱えたのはアメイだった。
「俺は別にまだこいつらについていくなんて言ってねーが? まぁ、報酬がもらえるのはまだいいぜ。だが、こいつら二人だけだろ? 聞いておくが、職業は?」
「回復職じゃ」
「防御職だ」
「カスじゃねえか!」
カスはひどくないだろうか?
「流石にその言い分はどうかと思うぞ? のうハイカ殿」
クランの言葉に、ハイカさんを目をそらす。
「ハイカ殿!?」
「いや、よく考えろよ……。回復職に、防御職、行動支援職だぞ……。攻撃役がゼロじゃねえか」
それを言われると反論できない。一応、クランが攻撃職を持っているとはいえ、それもサブだ。確かに普通に考えたら、あり得ない編成ではある。
クランは、それを言われて何も言い返せず歯ぎしりしている。
「くっ! こうなったら、ハイカ殿がアタッカーとして入ってくれ!」
何を言っているんだこいつ。
「はっはっは! それはいいな! めちゃくちゃ心強い!」
ハイカさんは、心底面倒くさそうにため息をつく。当たり前だ、ただの受付嬢だぞ。
「気が向いたらやってみますかね……。そもそも、ギルドの人間は冒険者になれませんが」
ハイカさんに適当にあしらわれる。それにしても、ギルドの人間は冒険者にはなれないんだな。そういえば、強そうなギルドマスターも元冒険者だと言っていたし、そういうルールがあるのか。
「ともかく、アメイ。あなたが入るのは確定事項です」
さっきまで大笑いしていたアメイさんはすぐに険しい顔になる。
「なんでだよ!」
「ふっ、私に呼び出された時点であなたに拒否権はないです。それに、攻撃力ゼロとは言いましたが、この二人、一週間でランクはE、そろそろDになりますよ」
それを聞いたアメイさんは、驚愕の顔をする。それにしても、ハイカさんがこんな強気に言うとは。
「は? マジかよ……」
「そんなにすごいんですか?」
正直、ハイカさんから早いとは言われていたが、どんなものかわからない。
「あ? ああ、普通じゃねえよ、速度としては異常だ。そんなペースで行くやつ普通じゃねえよ、それこそ、Sやそれ以上、SSランクに行けるような奴らのペースだ」
「ふむ、わしらそんなに早かったか」
思ったよりすごいペースだったらしい。それを聞いたアメイさんが考え直す程度には。
「しかも、二人で、か……。わーった、ついていってやるよ、有望株に、恩を売るのも悪かねぇ」
「おお、ありがたい!」
どうやらついていってくれるらしい。どうやら、この、三人パーティで行くことになりそうだ。
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