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三月羅針譚~盾持ちと吸血鬼~  作者: FOXtale
一章 始まりの■■
13/14

冒険の条件

どうも、作者です。13話です。

「――もう! 二人ともどこ行ってたんですか!」


「すまんのう、こいつが迷子になってしまって」


二人とも、「え、そっちが迷子なの? 逆じゃない?」という顔をしているが、俺もどっちが迷子になったかよくわからん。


「まぁ、半分あってる」


「「本当に!?」」


クランは何故か、仕方ないやつじゃのうという顔をしているが、割とお前も迷子側だったぞ。だがこいつにいちいち突っかかると面倒なのでスルーすることにしよう。


ハイカさんは俺の顔を見て何かを察したのか、完全にスルーする姿勢に入っている。ハイカさん、クランの扱いにも慣れてきたな。逆に信じ切っているアイカは疑うことを覚えた方がいい。


「それで、もう夜だが、どうするんだ?」


「ふふふ、ギルドの一室を借りたのでそこでパーティといきましょう!」


ほう、パーティ。それは楽しそうだ。


「いいのう! 酒はあるのか?」


「えぇ、ありますよ」


そういえばこいつ、たまに俺が寝て後に酒を飲んでるときあるな。俺が起きているときがあるとも知らずに。まぁ、俺も一応飲めるんだが。


「ちなみにギルマスも来ますよ!」


「ほう、あの人もか」



「では、カンパーイ!」


俺たちはその声に合わせて、グラスを掲げる。場にいたのは、俺とクラン、受付嬢の姉妹、そしてギルドマスターの五人だった。


「三人は、俺たちと一緒でよかったんですか?」


ハイカさんたちは、きっとギルドのパーティなんかもあったのではないだろうか。特にギルドマスターのソテルさんは色々と顔を出せねばならないところがあったのではないだろうか。


しかし、ハイカさんは優しい笑顔でうなずく。


「ええ、ギルドは今日、完全休暇ですから。 こういう日くらいしか、休めないですからね......それに、お二人はランクが上がったことですし、そのお祝いもかねて、ということで」


一瞬、ギルド関係者の闇が見えた気がしたが、突っ込むのも野暮だな。そういうことなら、甘えさせてもらうか。というか、もうクランがもう飲んでるし。


「泉君、今日は楽しかったかい?」


「ソテルさん」


もう酒を少し飲んでいるソテルさんが話しかけてきた。楽しかったか、後半、変なことが多かった気がするが、楽しかったな。というか、未だにあの変な自己紹介が離れない。


「はい、まぁマゼランっていう変な商人に会ったりなんかしたけど、それも含めて楽しかったです」


「ああ、マゼランちゃんと会ったのね......」


何ともいえない顔をしているソテルさん。というか、ちゃん付けって、知り合いなのか。


「あれ、マゼランちゃんに会ったんですか?」


まさかのアイカまで反応した。よく見たらハイカさんもあの人か、という顔をしている。全員知り合いなのか。


「何じゃ、有名人なのか?」


「まぁ、そうですね。本当に、よくわからない人なんですよ。とにかく、神出鬼没なんですよね、どこでも当たり前のように、出てくるんですよ。ダンジョンにすら出没するんですから」


……ダンジョンにも? 普通に商人が出るような場所じゃないと思うが。いったい何者なんだ?


「しかも。すごいぼったくり価格で売ったりしてるんだけど、大抵ピンチの場面で出てくるから、商品を買うしかないんだよな~、とは冒険者の皆さん談ですね」


本当にどういうことなんだ。


「だから儲けてると思うんだけど、マゼランちゃん、何故かいつも貧乏なんだよね~」


確かに、今日会ったあいつも飯食ってないと言ってたな。


「なんというか、聞けば聞くほど変な奴じゃのう」


「まぁ、何より......」


「「「あの挨拶が記憶に残るんだよなぁ/ねぇ/ですよ」」」


あぁ、全員あの挨拶されてるのか……。何故か、あのメガネの先の満面の笑みが、脳内に出てきて離れなかった。



――パーティもいつの間にか、佳境に入る。クランは、程よく酔っているのか、アイカにここまでの冒険話を聞かせている。うっかり吸血鬼周りの話もしそうだなと思ったが、案外そんなことはしなかった。


こっちはこっちで、ソテルさんの愚痴をハイカさんと二人で聞いていた。案外ここで一番酒癖が悪いのはソテルさんだった。割と泣き上戸。というか、本当にギルド関連の仕事、大変なんだな。


と、そんなこんなしてるうちに、酔いが回ったソテルさんが眠り、アイカは疲れて眠ってしまった。


「うーむ、二人とも眠ってしまったのう」


「そうですね」


いつの間にか起きているのはハイカさんと俺たち二人だけ。クランも多少は酔っているようだが、酒には強いようだ。


「そうじゃ、ちょうどいいわ。二人に相談したいことがあったんじゃ」


相談したいこと、ハイカさんも含めてだから、冒険者関連だろう。一体何なのか。


「そろそろ行きたいんじゃ、ダンジョンに!!」


ダンジョンか。正直、今の俺たちに行けるかどうか、俺では判断がつかない。そういう意味ではハイカさんがいるのは確かにちょうどいい。


そう思って、ハイカさんの方を見る。ハイカさんは困ったような、ついに来たかと言わんばかりにため息をこぼす。


「はぁ、そんなに急ぐことはないんじゃないですか?」


「なーにを言う! せっかく冒険者になったんじゃ! やはりダンジョン探索をしたいじゃろう!」


確かに、せっかくダンジョン街にいるんだ。俺もしてみたくないかと言われれば、嘘にはなるな。俺は、クランの言葉に同調するようにハイカさんの方を見る。


「やはり、そうなりますか……。いえ、そうですね、冒険者様がそう言うなら、私が止める権利はありませんね」


「おお!」


意外にも、ハイカさんはすぐに折れた。


「ただし、いくつか条件があります」


「「条件?」」


条件、なるほどこの感じ、前々からこうなることを予想していたのか。まぁ、確かにクランならいいそうだしな。


「はい、一つ目は、レベルを20まで上げること。正直、お二人ならあと一週間くらいで達成できると思います」


20まで、それなら確かに無理なレベルではない。


「他の条件は、この条件を達成したら教えます。こっちも少し準備をするので」


どうやら、他の条件は準備が必要なのか教えてくれない。だが、ハイカさんのことだ。無茶な条件は出さないだろう。


「うーむ、すぐに行きたいところじゃが、仕方ない。ま、どの道、準備費用は必要か」


「そうだな、ダンジョンに行くなら知識も欲しい」


ハイカさんはそれを聞いてうなずく。


「では、今日のところはしっかり休んでください。明日から、頑張っていきましょう」


「なら、何じゃったか? あの最初にやった……えっと、乾杯というやつじゃ。もう一度やろうではないか! イズミ、お前がやれ!」


ダンジョンに行くための、か。というかなんで俺なんだ。別に、お前でもいいだろう。しかし、ハイカさんも、もうする気満々だ。仕方ないか。


「はぁ、仕方ない。そうだな、俺たちの冒険が上手くいくのを願って、乾杯」


「乾杯じゃあ!」


「乾杯」


その声に寝ているアイカがうなる。大きい声を出すと、起こしてしまうな。俺たち三人は、ダンジョンに向けて、思いを新たにしたのだった。

読んでいただき、ありがとうございます。誤字脱字報告・コメントお気軽にどうぞ。

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