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三月羅針譚~盾持ちと吸血鬼~  作者: FOXtale
一章 始まりの■■
12/16

アイドル商人マゼランちゃん

どうも、作者です。12話です。

「あいつ、どこいった?」


祭りの最中、話しかけられて立ち止まったら、横を歩いていたクランがいない。これは、俺が迷子というべきか、あいつが迷子というべきか判断に迷うな。


「あんちゃん?」


うーん、まぁ問題ないだろう。エナジードレインは消えていないし、財布は分散している。街中から出る理由もない。最悪、宿かギルドで合流できるだろう。こういう時、文明の利器がほしくなるな。


「すいません、手伝いますよ」


「お! 助かるぜ!」



――片付けの手伝いをしていたら、いつの間にか日が暮れ始めていた。相変わらず腹が減っているので、クランの方も活発に動いているのは間違いない。合流するより前に、先に食事にしよう。


しかし、相も変わらず祭りが終わるムードは感じない。むしろ、夜が近づいてより活発になっている気がする。さすがに人混みに酔いそうだ。それに、ここまで人が多いと、手伝いの礼にもらった食事にありつけそうにない。


確かハイカさんに、人が多くて大変だったら少なめの道もあると言っていたな。そっちにいってみるか。



人通りの少ない道に出る。とはいえ、ここも多少は明るいムードなのは変わりない。恐らく、純粋に道の役割の問題だろう。ここにあるのは、主に冒険者が使わない店や、祭りの時では逆に売れない鍛冶工房。そしてそんな鍛冶師が使う宿屋といった具合だった。


そのためか、純粋に落ち着いて静かな場所だ。結構心地がいい。


人は少ないが、決して治安は悪くない、いい感じの場所だ。今度散歩のときにでもまた来てみようか。


「――そこなお方、少し人助けなどしてくれませんか?」


そんな声が聞こえる。これ、俺に対してか、この感じ、クランの時を思い出すな。


声が聞こえた方を振り返ると、そこにはバックパックを背負った眼鏡を掛けた女性、少女? がいた。彼女は杖をついて、明らかに弱っている、いや、ふりをしているだけな気もするが。


「あの~、できれば食べるものくださぁい!」


うーん、なんというか、ハイテンションだ。



「――ありがとうございます! ありがとうございます!」


その少女は、すごくおいしそうに飯を食っている。一体いつから飯食ってなかったんだ?


「あ~、えと名前は?」


「おっと、そうでしたね!」


少女は、食糧を食べ終えると、立ち上がって俺の方を向く。今から何かすごいことをするかのように自信満々の顔をしている。そして、深く深呼吸し、眼鏡を掛け直すと満面の笑みを向けてくる。


「わたくし! 皆のアイドル商人、マゼランちゃんです! 末永くよろしくお願いしますね♪」


何というか、クランより濃いのが来たな?


「それで、貴方は?」


「ああ、俺は泉だ」


それを聞いたマゼランは、大げさにうなずいた。


「泉様でございますね! ――お名前、覚えました♪」


一瞬妖しい笑みに変わった気がしたが、すぐにさっきの満面の笑み、いや営業? アイドル? スマイルに戻る。なんというか、侮ったらいけない雰囲気があるな。


「そう警戒なさらずともよいですよ? 少なくとも恩義のあるあなたに何かすることはないですから♪」


本当か? だが正直嘘をついているのか判断はつかない。それに、ただの商人、いやアイドル商人らしいからな……


「おっと、喋っている間に月が出始めてきましたね。 今年の青月も見納めですねぇ」


青い月が、静かに輝いてる。祭りの雰囲気など無視するかのように、ただ淡々とこの世界を見ている。


この世界の月は、108日で変わる。それをさらに三等分して、それぞれを始月、中月、終月と呼ぶ。つまりこの世界は九か月あるということだ。そして、祭りは終月の終わりにあるのだとか。


つまり、この青い月は今日で変わるのだ。明日からは、赤い月になるのだとか。


「さて、あの女神は、次は何をするのでしょうねぇ?」


「女神?」


女神、聞きなれない単語が出てきた。


「おや、知らないですか? まぁ、そういう方もいますか。女神は名の通り、この世界を見守る女神です。三柱いるのですが」


見守る、三柱、そして、三つの月。


「それぞれの月に一柱ずついる?」


「その通りです。あの三つの月は、それぞれの女神の端末です。つまり交代で見守っているわけですね」


なるほど、あそこには女神がいるのか。異世界転移ものでは、大抵、俺たちを呼ぶのは女神だ。俺たち異世界人に関係あるのだろうか。


「なるほどな」


「そういうことです。まぁ、我々市井の人間には、あまり関係ないことかもしれませんね」


まぁ、そうだろうな。俺が勇者であれば、何かあったかもしれないが、今のところただの冒険者だ。だが、どこかで関わるかもしれない。脳の片隅にでも入れておこう。


「それで、泉様はこの後どこに行かれるのですか?」


俺はこの後どうしようかと考える。まて、そうだった、あいつのこと忘れてた。


「人探しだな」


「おや人探し、そういうことならお手伝いしましょうか、言い値でいいですよ♪」


まぁ、別にどっちでも……いや、人手は多い方が助かるか。金取られるのか。


「恩でどうにかならんか?」


「温存しておくのもありですよ? 恩はどんな時でも使えますからね♪」


恩だけに......じゃない。なら、温存しとくか。確かに、何かもっと重要な手伝いなどをしてもらう時が来るかもしれない。


「わかった、頼んだ」


「まいどありでございます」



「――それで、お探しの方はどんな感じでございますか?」


マゼランを伴ってとりあえずギルド方向に向かいながら、周囲を見回す。うるさそうなのじゃ口調のロリはいないな。


「20代ぐらいの女で、基本やかましくて、茶髪、身長はお前よりちょっと大きめ。顔はまぁ、美人寄りか?」


クランの顔を思い出すが、確かに落ち着いてたら美人な顔立ち、なんというか、吸血鬼って感じだが、普段があのあほ面だからそんな感じが一切しないんだよな。あと中身はあの幼女姿だし。


「ふむふむ、どういったご関係で?」


「仲間だ。あいつがヒーラーで、俺がタンク。今は二人だけどな」


それを聞いたマゼランは顎に手を置く。


「ふむ、二人パーティでタンクとヒーラーとは、中々珍しい構成ですね......どうして、泉様はタンクにおなりになったんですか?」


至極当然の疑問だろう。普通、二人パーティでそんな構成にはならないし。普通は片方がヒーラーをやるなら、片方は攻撃に回るものだろう。


「攻撃の才能がなかったのと、防御の才能があったからだな。まぁ、成り行きみたいなもんだ」


それを聞いたマゼランは、目を細めて薄く笑う。まるで、何かを見透かすかのように。


「なるほど。ですが、一般的にステータスにおける素質は、その人間の欲求がそのまま出るところがあるのだと言います。誰かを傷つけるのが嫌なら、攻撃の才能は低く、誰かを守りたいと切に願うなら防御の才能が強くなる」


つまり、俺は誰かを守りたいと思っている、か。だが、攻撃はどうだろうか。別に、ゲームなんかではアタッカー系を使うのはあまり嫌いではなかったが。


「確かに、そうなのかもな。俺は多分、誰かを守りたいんだろう」


それを聞いたマゼランは立ち止まり能面のような笑みのまま、口を開く。


「貴方は根っからの守護者なのですね。ですが、それはどうしてでしょう? そして、どうしてあなたはそのヒーラーと組んでいるのですか? タンクとヒーラーというのは、案外人気がない職です。だったら別々になってでも、他のアタッカーがいるパーティに入ったほうがよかったのではないですか、どうして、二人なのでしょう? どうして、もう一人の彼女もヒーラーという立場に固執するのでしょう?」


どうして、どうしてか。確かに、考えたことはない。俺がなぜ人を守りたいと思うのか。クランが何故ヒーラーに固執するのか。案外聞いたことがなかったな。だが、その一つだけは、何となくわかる気がする。


「多分、俺はあいつがほっとけないんだ。一度守ってやりたいと、そう思っただけなんだと思う。ものごとなんて、案外そんなもんじゃないか?」


「――そうですね、結局、”  ”も”  ”もそれで成り立つのでしょう」


「今、なんて言ったんだ?」


マゼランは、今度は学者のような笑顔で、俺を見つめて、すぐに前を向く。


「おっと、貴方の探し人はあちらでは?」


そういわれて、指さされた方を見てみると、必死の形相であちこちを見回す、残念美人が見える。うん、クランだな。


「――うおおおお!見つけたぞイズミよ! どこ行ってたんじゃ!?」


こいつがいると、すぐに騒がしくなるな。まぁ、今回は目を離した俺も悪いな。


「すまんな、人助けしてたらはぐれた」


「ふっ、そういうことなら仕方ないわい。世話が焼けるのう」


こいつ……まあいいか。


「っと、そいつは誰じゃ?」


それを聞いたマゼランは、目を輝かせて、待ってましたと言わんばかりに呼吸をする。まさか、


「わたくし! 皆のアイドル商人、マゼランちゃんです! 末永くよろしくお願いしますね!」


こんな人がいるところにもやるのか……いや、なんか周りも反応してないな。もしかして、こいつ、色んな所でやってるんか?


「なんか濃い奴じゃのう。 あ、わしはクランじゃ」


お前にだけは言われたくない。


「さて、ではお連れのクラン様も見つかったことですし、今日のところは退散させていただきますね♪」


「ああ、すまん、世話になったな」


俺たちは互いに軽く会釈して、別れようとする。しかし、何かを思い出したかのようにマゼランは、俺の方を向く。今度は、尊いものを見つめるような笑みで。


「ああ、いつか聞けるといいですね、それとも見つけるでしょうか? どちらにせよ、答えを見つけるのを祈っていますね♪」


きっと、それはさっきのどうしてのことだろう。それを言い終えると、目を閉じて営業スマイルに戻って、


「それでは、またお会いしましょう♪ ”クラン”様、”泉”様!」


結局、彼女のことはなにも、分からないままだった。

読んでいただき、ありがとうございます。誤字脱字報告・コメントお気軽にどうぞ。

少し、三月裏道譚から設定を変えました。 ※初月→始月

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