夜戦
どうも、作者です。10話です。
このダンジョン街に来て早一週間、俺たちは毎日のように、クエストをこなしていた。エナジードレインによる空腹問題も、食糧を持っていくことで解決した。今のところは問題ない。
名前 小山 泉 所属:セントラルフラッグ 職業:シールダーLv.14/サブ:エヴィターLv.14 種族:人間
攻:7 防:88 魔:14 耐:67 速:52
スキル 翻訳/再生/盾使いLv.1
名前 クラン 所属:セントラルフラッグ 職業:ヒーラーLv.15/サブ:バスターLv.15 種族:人間
攻:51 防:9 魔:82 耐:23 速:10
スキル 夜行Lv.1/速読Lv.44/治癒師Lv.1/槌使いLv.1
「お二人とも、伸びがすごいですね......」
そろいもそろって一番高いステータスは80を超えている。正直これが高いのかどうかは、俺には判断がつかんが、ハイカさんの表情を見る限り、高いんだろう。
「クランさんの魔力の伸びもすさまじいですが、メインヒーラーでこの攻撃力もおかしいですね...…」
「ま、わしじゃからのう!」
クランは自慢げに鼻を伸ばしている。実際、俺の才能がないせいだろうが、圧倒的に負けている。
「ただ......喜べるかこれ?」
確かに、すさまじい長所はあるが、その分、短所があまりに短所である。一番低いところは、未だに一桁だ。俺は攻撃力が低すぎるし、クランは防御が弱すぎる。とはいえ、俺の攻撃力でも弱いヴァルガーなら普通に一発で倒せるくらいにはなったが。
「それは、まぁそうですね。 ですが、ものの見事にステータスがかみ合っているのが面白いですね」
確かに、互いの低いステータスが、互いの高いステータスになっている。そういう意味では、相性はいいのかもしれない。
「逆を言えば、片方が崩れた終わりだな」
「そう悲観的なことばかり言うではないわ」
それもそうだな。ここまで順調だし。しかし、それもハイカさんがちゃんと俺たちの成長に合わせたクエストをおすすめしてくれているおかげな気がする。
ただ討伐依頼を出すだけではなく、ここまで初心者として必要な技術を覚えられるクエストなども出してくれるおかげで、ここまでうまくいっている。何というか、うまいこと冒険者として経験値を稼げるように誘導されている。
「ハイカさんって、人に教えるの上手いですよね」
「どういたしまして、まぁ、昔から人に教えるのが上手い人に鍛えられたおかげですね。 その人には良く、『人に教えられるようになって一人前』と言われてきたので、それのおかげです」
「謙虚じゃのう」
実際、ハイカさんは言語化が上手い。純粋に俺たちが疑問に思ったことに対して、かなり正確に答えてくれる。そういう意味でも、ハイカさんに会えたのは幸運だった。
「ま、とにかく今日もハイカ殿に感謝して、クエストを発注するとするかのう!」
ということで、今日もクエストを始めよう。ここに来て一週間、俺たちはいつの間にか、ランクがFからEに上がっていた。この速度もやはりなかなかのものらしい。
「そうですね......ですが、今日は軽めのものにしましょう」
ハイカさんは、真面目な顔で言う。
「別に全然元気はあり余っておるぞ?」
確かに、俺もあんまり動けない感じはしない。おそらくだが、『再生』でスタミナも回復しているせいではあろうが。まぁ元々人よりは頑丈な方だったが。
「私も失念しておりましたが、お二人のやり方はハイペースです。 今のやり方では、大丈夫と思っても、どこかでがたが来ます。 何より、”適切に休む”というのも、冒険者には必要なスキルですから」
ハイカさんの言葉にはかなりの実感がこもっているように思う。確かに、このまま突き進んで、いざという時に休み方が分からない、となったら目も当てられない。
実際俺は、『再生』、クランは吸血鬼という種族上、補給線さえあればほぼ無限に動けるとはいえ、体力の温存法は分かっていた方がいいか。
「むう、言い返せんな」
「そうだな、それじゃあ今日は、軽いものにするとして……」
ハイカさんはその判断は正しいとばかりにうなずいて、続きを言ってくれる。
「明日も休まれるといいでしょう。 何せ、明日はせっかくのお祭りですしね」
ハイカさんは、優しい笑みで言う。
「む、そうか、もうそんな季節じゃったか」
どうやら、明日は祭りがあるらしい。
「――ふ!」
クランの一撃が敵に叩きこまれる。敵は、トレント。今回は、そのトレント討伐、薪集めのクエストだ。Dランク冒険者が戦う相手としては標準的で、実際会敵するのも、今日で二回目、それゆえ戦い方も知っている。しかし、一つだけ違うところはある。それは、
「イズミ、後ろじゃ!」
クランに言われるがまま、その位置に移動する。敵の蔓による一撃が、見えないところから飛んでくる。
「ぐ!」
反応が遅れる。なんとかクランには当たらなかったが、盾の割り込みまでは間に合わなかった。前は軽々対処できたが、この環境では難しい。何せ今は、夜だ。
蔓の一撃は中々重く、『再生』では即回復とはいかない。一度目で分かっていたので、食らわないようにしていたが、やはり夜という見えにくい環境では完璧とはいかない。とはいえ、そろそろ終わりだろう。
『陽なる波動よ、この者を癒せ』
『治癒』
クランの回復魔法。俺の傷を回復すると同時に、かすかではあるが光が出る。タイミングはドンピシャで、トレントの一撃が捉えられる。俺は一歩踏み込んで、ガード。
そのタイミングで、クランは前に出る。もう戻ろうとした一本の蔓がクランの後ろにせまる。視界不良でそれに気づいたのは、当たる寸前。しかし、不安は一瞬にして消し去られた。クランはやすやすと避けてしまった。
トレントの弱点は、炎魔法か、顔のようなところが浮き出ているところ。クランは、この暗がりの中で、一切ためらいなく一撃を浴びせる。
「終い、じゃあ!」
次の攻撃を繰り出そうとしていたトレントの蔓は、だらりと垂れさがる。討伐、完了だ。
「やはり夜はいいのう!」
「俺は正直、あんまりやりたくないな」
昼よりずいぶんと視界が悪い。それだけでこんなにやりにくいものか。とはいえ、いつかダンジョンを攻略するなら、こういった視界不良にも慣れておくべきか。それに、俺の性能が少しばかり落ちたところで、こいつのスキルの性能は中々だった。
『夜行』、スキルそのものにレベルがついているタイプのスキルだが、初期状態でも中々の性能を発揮する。主な能力は、夜の時間における速度のステータスの強化と、五感の強化。夜の時間であれど、昼と大差ない、いやそれどころか、昼の時間以上の視野を手に入れられる便利スキルらしい。しかも、夜ほどでないにしろ、暗いところでも効果を発揮する。
「うーむ、やはりもう一匹行くかのう?」
「ハイカさんとの約束破るのか?」
その顔に苦い顔をする。ハイカさんと約束した通り、今日は軽めにクエストをこなす約束だ。そこで、クランがせっかくだから夜戦をやってみないかと提案されたので、やってみた。
実際、吸血鬼としての本領を見られたのは良かった。それに、夜であれば、日光がないため、エナジードレインをされる必要がない。その分多少は動きがましになっている、気がする。何より、腹が減らない。
「仕方ないのう……」
俺たちは、ダンジョン街の門まで戻ってくる。あまりに遅いと宿屋の店主にどやされかねないので、少し急ぎ目に。
門のところには、アイカが待っていた。
「む、アイカではないか? どうしたのじゃ?」
「お二人が夜に出ると聞いて少し心配で……でも問題なさそうですね!」
どうやら、俺たちのことを心配してくれてたらしい。ハイカさんにも夜の方が魔獣が活発だから気を付けてと言われていたぐらいだ。やはり危険なのだろう。
「ふふ、この愛い奴め!」
クランがアイカを撫でまわす。ここ数日で、随分と仲良くなってしまったな。だが、アイカの挙動に、心配だけではない何かが見える。この感じは、弟を思い出すな。
「明日、俺たちは休みだ」
「? そうじゃのう」
その言葉を聞いて、アイカはもしやという顔をする。多分ハイカさんから聞いてるだろうに。
「それで明日は祭りなんだろう。 ダンジョン街のことを知り尽くしているアイカに案内してもらいたい、いいか?」
アイカは目を輝かせて、目いっぱいうれしさを表現するように声を弾ませる。
「! はい、はい! もちろんです! お二人に楽しいところ、たくさん案内しますね!」
「おお、それは良いのう!」
アイカは明日が待ち遠しいのか、クランに対してたくさんを要望を聞いている。それに、少し困りながらも、楽しそうに答えている。
明日を想って笑う彼女たちが、とても輝いている。いい休日になりそうだ。
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