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三月羅針譚~盾持ちと吸血鬼~  作者: FOXtale
チュートリアル ■持ちと吸血■
1/10

ヒーロー&イレギュラー

どうも、FOXtaleと申します。一話です。

これからも、投稿していこうと思うのでお願いします。

手を差し伸べる。あの時も、今も、きっとこれからも変わらない。俺とこいつの関係性はきっと変わらないんだろうと、死を前にしてものんきに考えていた。


「お主、何考えておるんじゃ。 まぁいい、本当にいいんじゃな?」


「あぁ、もう変える気はない」


そう言うと、少女は呆れ顔でこっちを見たかと思えば、すぐに前を見る。


「はぁ、お主は相変わらず変な奴じゃの」


「お互い様だ」


さて、死なないための反撃といこうか/いこうかの。




暗い空、篝火、明らかに日本にはないであろう西洋風の城と外壁。俺はいつの間にか、そんなところにいた。正直何でこんなことになったかすらわからない。


おかしい、俺は確実に銀行にいた。今月の食費を下ろし終えたところだったはずだ。本当にここはどこなんだ。


体をまさぐる。そもそも、着ている服すら違う。明らかに現代日本では売っていないであろう百パーセント麻の衣服、意外に着心地はいい。そして、家の鍵、手元にあったのはそれだけだった。


あとは、生きていて感じたことのない違和感ぐらいだが、それが何かは確かめる術がない。とにかく、現状で分かるのはそれぐらいだった。


もしかして、これはあれか、流行りというには少し廃れたあのジャンル、異世界転生?転移?というやつではないか?


だとしても、俺が何でここにいるかわからないが。どうして中庭なんだ。せめて城の中とかでスタートするものではないのか?


「貴様、何者だ!」


立ち上がろうとしたら急に話しかけられた。ただの大学生だが? と、そんな返答をしたところで意味はないだろう。


鎧を着た人間、明らかに現代日本にはいないだろう。それに、顔も日本人ぽくない。その割には言語が通じるのが不思議だが。


「すまん、ここはどこだ?」


「ここはレディポートの首都ナヴィガ、その中心だ! ただの平民が入っていい場所ではない!」


ふむ、城の中ではあったらしい。というか、聞いたことがない国と首都の名前。やはり、異世界とみて間違いないだろう。さて、何と説明すれば、


「――やっぱり、ちょ、ちょっと待ってください、兵士さん!」


「あ、あなたは!」



「――すまん、助かった」


「いえ! すぐに気づけて良かったです! 本当に」


星崎 新。俺より先に異世界に転移させられた高校生。と言っても星崎も昼あたりに呼び出されたらしいが。


星崎とは、何となくの顔見知りだった。彼が大学の剣道部に練習に来た時に、迷っていたところを案内して、そこからたまにあったら話す程度だったが。それでも顔見知りがいるというのは安心感が違うものだなと感じた。


そして、彼はどうやら()()であるらしい。為政者たちによって異世界から呼び出され、この世界の危機を解決する転移者。それが彼なのだとか。星崎がいいやつなのは話していて知っている。だから、何となく似合うなと感じた。


「だとしたら、俺は何だ?」


「えと、勇者、ではないそうです。一時代に勇者は一人しかいないそうなので」


勇者ではないらしい。となると、本当に何故転移させられたのかわからん。


「そういえば、普通に言語は通じるんだな」


「あぁ、それは…」


扉が開く。先ほどとは別の兵士が入ってきた。


「勇者様、王の準備が整ったようです」


「は、はい。 泉さん、行きましょう」


「あぁ」


どうやら、勇者を呼び出したのは、その王様で、勇者の同郷、同世界?から来た知り合いの俺にも会いたいとのことだ。


俺は兵士に連れられ、星崎と共に豪華な廊下を歩いていくと、その先の豪勢な扉が開く。


「昼ぶりだな、勇者よ。 して、そちらが件の、転移者か」


「はい、あちらの世界での友人です」


友人、というほどではなかったが、勇者の友人とした方が待遇もよくなるだろうから、考えてくれたんだろうか。


星崎は俺に目配せして、少しだけ後ろに下がる。


「小山 泉です。 よろしくお願いします」


俺は失礼のないように、簡単に挨拶をする。なんというか、この王は妙な威圧感がある気がする。俺を見る目が少しだけ勇者のそれより険しいからだろうか? 別にそれはおかしいことではないが。


「ふむ、イズミか。 ではイズミよ、単刀直入に言おう。 ステータスを見せてくれ」


ステータス? なんだそれは? 唐突にゲームのようなことを言われて困惑する。俺が困惑してると、星崎が近くまでくる。


「小山さん、ここに来てから違和感みたいなのはないですか?」


「あぁ、あるな」


確かにこの世界に来てからずっと妙な違和感みたいなのはあった。


「えっと、その違和感みたいなのに触れる感じで手をかざしてください。 個人的には目をつぶったほうが最初はやりやすいと思います」


俺は言われるままに、目を閉じて、手を体の前に出す。すると確かに違和感に触れられそうだった。それに手をかざしてみる。


「目を開けてみてください」


「ん」


小山 泉 所属:なし 職業:なし 種族:人間

攻:1 防:4 魔:1 耐:3 速:3

スキル 翻訳 再生


本当にステータス画面だ。ゲームでよく見る画面が確かに俺の目の前に浮かび上がっている。この世界、実はゲームの世界なんじゃないかという気がしてくる?


翻訳スキル。もしかしてこれがあるから言葉を通じるのだろうか? これがないと言葉が通じなさそうだから、星崎も持っているんだろう。


だが、このステータスは強いのだろうか?あまり強そうには見えない。そう思って王様の顔を伺ってみると、あまり表情には出さないよう努めてはいるようだが、それでも苦い顔が隠しきれていない。ひどくないか。


「これは…どうなんでしょうか?」


「うむ…普通、だな」


普通、らしい。こう、こういうのはあるのだと思っていた。いわゆる、転移者特典のようなものがあるのではないか。


「ちなみになんだが、星崎はどうだった?」


「えっと…」


明らかに、気まずい表情をしている。これは、あるのか。”特典”というやつが。


星崎 新 所属:なし 職業:勇者Lv1 種族:人間

攻:5 防:3 魔:6 耐:4 速:3

スキル 翻訳 未成熟の勇者 成長 剣士Lv1


…違いすぎるなこれは。ステータスはそれほど差がないが、スキルの量が違いすぎる。しかも、何か強そうなスキルまでもっている。これが勇者か。


なるほど、これを見た後に俺のステータスを見ると、普通としか言いようがない。同じ転移者なのに、どこで差がついてしまったのだろうか。


「この程度か...いや、二人とも今日のところは休むがいい。 勇者としての使命などはまた改めて明日話そうではないか」


そう言われ、俺たちは、先ほどと同じ部屋に通された。どうやら今日のところは二人で寝るところになりそうだ。


「ベッド、どっち使う?」


「いやいや、大きい方使ってください! 小山さんの方が大きいんですから」


確かに俺の方が一回りぐらい大きいか。ならありがたく使わせてもらおう。


「泉でいい、そんなにかしこまらなくてもいい」


「そ、それなら俺も(あらた)でいいです。 それにしても、泉さんまで、こっちの世界に来ているなんて思いませんでした」


流石に敬語までは抜けないか。


「ああ、俺もだよ。 というか、なんで俺たち二人だけなんだ?」


どうして、俺たち二人なんだろうか? 同じ銀行にいたとしても、他にも人はいただろうに。


「え...覚えて、ないんですね」


「ん? 何がだ」


一瞬顔を伏せたかと思えば、すぐに笑顔をこちらに向けてくる。


「俺たち、銀行で会って話していたんですよ。 その時急に光って気がついたら、こっちの世界に来てました。 うーん、転移した反動で記憶抜けたのかな?」


なるほど、そうだったのか。 なら近くにいた俺も転移してきたとしてもおかしくはないか。 だが、なんで俺だけ記憶が抜けているんだろうか?


「にしても、唐突に転移させられるなんて、戸惑っていませんか?」


流石に戸惑いは隠せない。あまりに唐突すぎる。大学生活や、将来のことは、まぁいいか。生きていれば、今に合う生き方をすればいいだけだ。だが、家族に会えないのは少し、辛いだろうか。


「多少はな。 そういうお前はどうなんだ?」


「俺も、流石に。 でも、少しだけワクワクしている気も、します」


それなら、きっとそっちの方がいいだろう。 きっと家族や友人に会えない寂しさや、唐突に連れてこられた恐怖はあるだろう。 それらに支配されるよりはずっといい。


「そうか、そうだな。 せっかく異世界なんてものに来れたんだ。 楽しんでしまえばいい」


「ははは、そうですね」


知り合いとはいえ、そう親しくもない仲なのだ。 これで少しでも距離を縮められたらいいのだが。


「俺たち、明日から、どんな冒険をするんでしょうね?」


どんな冒険をする、か。 分からないが、こういう異世界には大抵危険がつきものだろう。油断はしてはいけない。


「わからん、俺にも、星崎にも、きっといろんなことが待ってる」


窓からのぞく星の方に彼は振り返る。 この世界にも星はあるらしい。 よく見たら、月もある。と言ってもこの世界の月は青く光っているから、多分月ではないこの星の衛星だろうか。


「...そうですね。 きっと、いろんなことが起こる」


やはり、不安はあるのだろう。 俺だってそうなのだ。 三歳差とはいえ、彼の方が年下だ。怖いものは怖いだろう。


「...そろそろ寝るか。 多分、勇者の仕事は大変だぞ」


「はい、頑張らなくちゃですね」


俺たちはベッドに入る。 明日からどうなるかわからないが、少しでもいい日になるように頑張ろう。


「泉さん…俺と」


「どうした?」


少し声が聞こえて、そちらを振り返る。


「いえ、なんでもありません。 おやすみなさい」


「? ああ、おやすみ」


明日は一体どんなことがあるんだろうか。そんなことを思いながら目を閉じた。



「――そなたを勇者パーティに入れることはできぬ」


朝、食事をもらったあと、二人そろって王に呼び出されて言われたのはそんなことだった。つまり俺は、こいつとは一緒に冒険はできないらしい。


「それはやっぱり、俺が弱いからですか?」


「正直に言ってしまえば、お前のあのスキルでは、勇者についていったとしても足手まといになる。 こちらで餞別した者たちと比べても、やはりスキルもステータスも貧弱すぎる」


それはそうだろう。同じ転移者の新と比べても、俺のステータスは弱い。


「で、でも泉さんは、まだこれから…!」


反論したのは、新の方だった。


「それならば、一つ聞こう。 この者を、其方の危険な冒険に巻き込みたいか」


「それは…!」


彼はそれ以上、言葉を紡げず、下を向いた。


今のは、言い方が悪いだろう。 俺は少しだけ苛立ちを覚える。 誰だって危険な旅に知り合いを巻き込みたくはないだろう。


知り合いであれど、あまり仲がいいわけではなかった。 しかし、こいつの人がいいのは何となく知っている。だからこそ、こいつなら信用できる。 だから選ぶべきは、新の方だ。


「...新、俺はどっちでもいい。 危険な旅でもお前がその気なら、ついていくよ。弱くても、お前を()()ぐらいはできる。 巻き込みたくないなら、それでいい」


「守…る…。 それは、いえ…! 俺はやっぱり、貴方を巻き込みたくない!」


新は、俺の目をまっすぐ見据える。 それは、決意の目だった。 本当に危険なことに巻き込みたくはないんだろう。でも、これだけ強い目をできるのなら、大丈夫だろう。


「そうか、なら大丈夫そうだな」


「あ! え、えと、決して泉さんが」


「わかってるさ」


分かっている。 だが、俺も何もしないで生きれる性分ではないのだが。


「王よ、一つ聞かせてくれませんか? 俺はどうなりますか?」


「...まがりなりにも、勇者の友だ。 ある程度は融通しよう。 ここに留まるというのであれば、それ相応の地位はくれてやる」


「もし、ここを離れると言ったら?」


「...好きにするがいい」


本当に心底どうでもよさそうにその言葉を吐き出す。だが俺としても、事故で転移してここに来ただけだ。俺も、それでいい。


「あぁ、感謝します」


「え!? い、泉さんも結局冒険に出るつもりなんですか!?」


「あぁ、せっかく異世界に来たんだ。 おとなしくするつもりもないさ。 安心しろ、そんな危ないことをやるつもりはない。 のんびりやるさ」


「それなら…いいのかな?」


「お前がピンチの場面にでも出くわしたら、その時は守ってやるさ」


「そうならないよう、努力します」


「あぁ、そうしろ」


随分、世話を焼きすぎてしまったのだろうか。同郷で、年下の友人だ。問題はないだろう。


「さて、であれば、貴様はいつ出発するのだ?」


そう決めたのであれば、あまり恩を売ってまで長居する気はない。幸い時間はまだ早朝だ。


「今すぐにでも」


「え、ちょ、ちょっと待ってください! 準備もなしでですか!」


「まぁ、そうなるな」


「王様、できれば何か彼に与えてくれませんか! 勇者としての務めはしっかり果たしますので、泉さんに何か」


「良いだろう。 多少の物は用意させよう。 その代わり、勇者の顔に泥を塗るような行為はやめてもらおうか」


元よりそんなことをするつもりはないが。しかし、もらえるものはもらおう。新がせっかくお願いしてくれたことだしな。


「助かる、助かります。 この恩はいつか」


「ふん、行くなら行くがいい」


「新、すま…いや、お前が決めたことか。 頑張れよ、応援している」


「はい、泉さんも、頑張ってください」


「ああ」




――という訳で、俺は最低限の金と旅装だけをもらい、城下町まで下りてきたわけだが、何の情報もないまま出ていったのはまずかったな。もう少しこの世界の情報を聞いてから、出ればよかった。


あの王が妙に俺に対して嫌悪感を出してくるものだから、つい焦ってしまったが、早計だったか。


ファンタジーと言えば、大抵はギルドのようなものがあるはずだ。そこを探してみようか。人に聞くのが早いが、せっかく異世界の城下町だ。 もう少し歩いてみよう。


出店が並んでいる方面に来てみた。城下町だからかはわからないが、随分とにぎわっている。 だが、時々見える路地のような裏道からは、あまりいい雰囲気を感じない。表と裏はずいぶんとはっきりしているらしい。


今も、浮浪者のような少女が裏路地でうなだれていた。それを誰も助けない。誰もかれも笑っていて、気づくことすら忘れているらしい。それは、あんまりだろう。


「大丈夫か?」


赤い目の少女は、こちらを見据えた。 その少女は、どこか、人らしくないように見えた。


「変なやつじゃの、貴様」


――少女との出会いが、俺の異世界での本当の始まりだったように思う。初めてあいつに手を差し伸べてからが。

読んでいただき、ありがとうございます。誤字脱字報告・コメントお気軽にどうぞ。

前日譚である三月裏道譚もありますので、少しでも興味を持っていただけたらそちらもどうぞお願いします。

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