編集者、ギルド公認の調査任務へ
ギルドの応接室。
重厚な机を挟み、
ガルドたちCランクパーティとフェンたちが向かい合って座っている。
ドアが開いた。
「失礼します」
受付嬢が一礼し、その後ろから現れたのは――
長身の男。
銀混じりの黒髪。
鋭いが理知的な目。
その瞬間。
フェンの視界に数値が浮かぶ。
⸻
レオンハルト
HP 12000
MP 8000
A 14000
D 9000
MAT 5000
MDF 6000
S 8500
⸻
(……強い)
フェンは息を飲む。
男はゆっくりと椅子に腰掛けた。
「ガルド君。相談とは、どういうことかね?」
穏やかな声。だが、場の空気が締まる。
ガルドは立ち上がり、懐から布に包んだものを取り出す。
「これを見てください」
机の上に置かれたのは――黒く歪んだ巨大な角。
レオンハルトの目が見開かれる。
「……これは」
手に取り、静かに呟く。
「《断罪角のグラズ》の角……?」
受付嬢も思わず息を呑む。
「どこで、これを?」
「リンドベルク近郊――《フォルナ草原》です」
室内の空気が凍る。
「……フォルナ草原は、出てもDランクが限界のはずだ」
レオンハルトの声が低くなる。
「Bランクが現れたというのか……」
静寂。
そして彼はゆっくりと頷いた。
「報告、感謝する。こちらで詳細な調査を進めよう」
その瞬間。
ガルドが拳を握る。
「待ってください」
レオンハルトと受付嬢が同時に顔を上げる。
「この調査……俺たちに任せてもらえませんか?」
「……何?」
「俺たちが遭遇しました。なら、最後まで責任を持ちたい」
強い視線。
「無茶はしません。危険域までは踏み込みません。ですが――やらせてください」
ミリィが静かに頷く。
ルークも。
バルトも。
レオンハルトは腕を組み、目を閉じた。
数秒の沈黙。
「……本来なら、止めるところだ」
ゆっくり目を開く。
「だが、その覚悟は買おう」
ガルドの顔が明るくなる。
「ただし条件がある」
視線が、フェンへ向く。
「君たち――エルナの英雄と共に行動してもらう」
ガルドたちが一斉に振り返る。
フェンは目を瞬かせた。
「えっ? なんで僕たちを知ってるんですか?」
レオンハルトが豪快に笑う。
「はっはっは。ギルド内では有名な話だよ」
「Aランク魔物――ケルベロス討伐」
「しかも二人で、だ」
ガルドが固まる。
「A……ランク……?」
バルトがごくりと唾を飲む。
「そ、そんなにすごいやつだったのか……」
「確かに《断罪角のグラズ》を一瞬で……」
ルークが苦笑する。
フェンは頭をかく。
「いや……たまたまですよ」
レオンハルトが静かに告げる。
「実力は隠せない。君たちは既にこの街の戦力だ」
「協力してくれるな?」
フェンはガルドを見る。
ガルドは、真っ直ぐ頭を下げた。
「フェン!頼む……俺たちに協力してほしい」
フェンは一瞬だけ目を伏せる。
そして、ゆっくりと顔を上げ、
「……分かりました」
ガルドの目が見開く。
「僕たちも協力します」
ルシアが隣で小さく頷いた。
「フェンが行くなら、私も」
短く、だが迷いはない。
ガルドの表情が緩む。
「……ありがとう」
レオンハルトが静かに笑う。
「決まりだな」
椅子からわずかに身を乗り出す。
「では、フォルナ草原の異常発生調査は、ガルド君たちCランクパーティと――」
視線がフェンへ向く。
「エルナの英雄、フェン殿に任せよう」
受付嬢が慌てて書類を取り出す。
「すぐに正式依頼として手続きを行います」
レオンハルトは続ける。
「無理はするな。異常の兆候を確認した時点で即報告」
「命を優先しろ。それが条件だ」
「はい!」
ガルドたちが力強く返事をする。
フェンも頷いた。
新たな任務が、静かに動き出した。
続く




