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編集者と覚醒個体

毒蛇の尾が――唸りを上げて振り下ろされた。


空気が裂ける。


次の瞬間。


ガチンッ!!


牙が閉じた。


だが。


そこにフェンはいなかった。


残像だけが、噛み砕かれて消える。


フェンはすでに後方へ抜け、地面へ着地していた。


だが、その瞬間。


「……っ」


全身が軋む。


肺が焼ける。


心臓が暴れる。


激しい疲労が、一気に押し寄せた。


フェンは片膝をつき、地面に手を突く。


「はぁ……っ……は……」


息が乱れる。


視界が、わずかに揺れる。


――その隙。


ヒュンッ!!


再び尾が走る。


「……!」


反射で身体が動いた。


横へ跳ぶ。


石床に突き刺さる。


ドゴッ!!


破片が弾けた。


フェンの目が細まる。


「――なら」


低く呟く。


「牙走」


脚に力が満ちる。


「疾牙転化」


全身の感覚が研ぎ澄まされる。


同時発動。


瞬間。


フェンの姿が消えた。


石床を蹴る音すら残さず、一直線に間合いを詰める。


マンティコアの視界から、消失。


次の瞬間。


――斬。


銀光が走った。


体毛が裂ける。


フェンは止まらない。


踏み込む。


斬る。


回り込む。


斬る。


速度が上がる。


さらに上がる。


踏み込みが鋭くなる。


剣筋が洗練される。


斬撃が、加速する。


連撃。


連撃。


連撃。


刃の軌跡だけが空間に残り、フェンの姿はもう輪郭すら掴めない。


そして。


一撃。


今までで最も速く――

最も鋭い斬撃が、振り抜かれた。


刃が、肉を裂いた。


次の瞬間。


「ギャアアアアァッ!!」


マンティコアが絶叫する。


巨体がのけ反り、尾が暴れた。裂けた部位から血が噴き出し、石床を濡らす。


だが。


止まらない。


怒りに染まった瞳が、フェンを捉える。


牙が開いた。


「――ッ」


噛みつき。


空気ごと喰らう速度で顎が閉じる。


ガチン!!


だが、その位置にはもういない。


フェンは横へ跳び、間合いを外していた。


着地。


その瞬間――影が落ちる。


前足。


踏み付け。


ドゴォッ!!


石床が砕け、破片が跳ねる。


「……っ」


フェンは後方へ転がるように回避し、距離を取る。


呼吸が荒い。


胸が上下する。


「はぁ……っ……まだ……」


視線を上げる。


マンティコアは立っている。


致命傷には遠い。


「……四割しか削れてない…….」


低く吐き出す。


「――なら」


足を開く。


構え直す。


「分身。」


次の瞬間。


フェンの輪郭が揺れた。


影が、分離する。


隣に――もう一人。


同じ姿。


同じ構え。


二人のフェンが、同時に地を蹴った。



床を裂く音が二重に走る。


左右。


同時接近。


片方が斬る。


もう片方が潜る。


刃が腹を裂き、次の瞬間には背へ回る。


――斬。


毛皮が舞う。


血が散る。


マンティコアが尾を振るう。


だが、空を切る。


すでに二人とも位置を変えている。


前。


後ろ。


横。


視界が追いつかない。


「ギィッ……!!」


苛立ちの唸り。


だが止まらない。


フェンが踏み込む。


分身が重ねる。


同時斬撃。


交差。


――ザシュッ!!


深く裂けた。


巨体が揺れる。


呼吸が荒くなる。


肉が削れる。


確実に。


確実に。


削れている。


フェンは息を吐いた。


「……六割削れたか?――」


その瞬間。


マンティコアの目が、


カッ――と見開かれた。


赤。


瞳孔が、血の色に染まる。


「……!」


背筋が凍る。


本能が叫ぶ。


離れろ。


フェンは反射で跳んだ。


距離を取る。


だが。


間に合わない。


マンティコアが、口を開いた。


そして――


「があぁぁぁぁッ!!」


咆哮。


空気が震えた。


衝撃が叩きつけられる。


「ぐッ……!」


身体が揺れる。


鼓膜が軋む。


視界が歪む。


横で――


パキン。


分身が砕けた。


光の粒になって消える。


同時に。


胸の奥を殴られたような衝撃が走った。


「……ッ、が……!」


膝が落ちる。


地面に手を突く。


呼吸が乱れる。


肺が痙攣する。


マンティコアが、ゆっくりと頭を上げた。


その身体から――圧が溢れている。


フェンの視界に表示が浮かぶ。


【能力値上昇】


【全ステータス:+30%】


「……まじか……」


掠れた声が漏れる。


フェンは顔を上げた。


赤く染まった瞳と――真正面から、視線がぶつかった。



          続く

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