編集者VS 獄炎のマンティコア
第十階層。
重い空気が、肌にまとわりつく。
フェンは静かに息を吐き、ホログラムを展開した。
⸻
【Lv:40】
【HP:1968/1968】
【MP:378/(397)】
【A:1785(4998)】
【D:1660(2324)】
【MAT:1060(1696)】
【MDF:640(832)】
【S:3530(13944)】
【SP:900】
⸻
数値を一つずつ確認する。
補正後の値も安定している。
SPは心許ないが、無駄は削った。
フェンは小さく頷いた。
「……よし。できた」
ホログラムを閉じる。
だが。
胸の奥に、わずかなざわめきが残る。
(十階層のボス……)
五階層のグリムトロールですら、あの有様だった。
今の状態で、完全な余裕があるとは言えない。
(このままじゃ、不安だな……)
だが。
立ち止まるわけにはいかない。
リィナの薬の材料。
時間が経てば経つほど、状態は悪化するかもしれない。
そして――
ルシア。
早く伯爵様に認めてもらわないと……
フェンは軽く頬を叩いた。
パチン、と乾いた音が響く。
「……よし」
迷いを切る。
深く息を吸い、吐く。
視線を上げる。
目の前にそびえる、巨大な石扉。
黒ずみ、無数の傷が刻まれている。
この奥が、第十階層の主。
フェンはゆっくりと手をかけた。
軋む音。
重い扉が、開いた。
第十階層・最奥。
重い石扉が完全に開く。
中は、広い。
円形の石造りの空間。
中央。
巨大な影が横たわっている。
黄金に近い褐色の体毛。
鋭い牙。
黒光りする鉤爪。
そして――
ゆっくりと揺れる、蠍の尾。
マンティコア。
フェンの喉が鳴る。
(……でかい)
自分が、まるで子供のように小さく見える。
その瞬間。
赤い瞳が、ゆっくりと開いた。
ギロリ、と。
視線が合う。
次の瞬間。
「グォォォォォォォォッ!」
咆哮。
空気が震え、石壁が軋む。
フェンは思わず一歩下がった。
「……あ……あんなやつと、どうやって戦えってんだ……!」
震えを押し殺し、ステータスを開く。
⸻
【魔物名:獄炎のマンティコア】
【HP:25000】
【MP:1200】
【A:9000】
【D:5000】
【MAT:6500】
【MDF:3000】
【S:8000】
【固有スキル】
・猛毒尾撃
・獄炎ブレス
・炎魔法操作
⸻
(物理だけじゃない……)
炎ブレス。
炎魔法。
そして毒。
近づいても地獄、離れても地獄。
マンティコアがゆっくりと立ち上がる。
石床が軋む。
翼はない。
だが、圧倒的な威圧感。
フェンが剣を握り直す。
(速さは……俺が上だ)
その瞬間。
尾が、しなる。
ヒュッ――
空気を裂く音。
「っ!?」
凄まじい速度。
視認するより速い。
鋭い毒針が、一直線にフェンを貫こうと迫る。
続く




