編集者、加護を進化させる
第一階層
荒い呼吸だけが、薄暗い通路に残った。
その瞬間。
頭の奥で、無機質な声が響く。
【レベルが上がりました】
フェンはステータスを確認し、
そして――SPの値に目が止まった。
(……4200)
第一階層でこの消耗。
このまま先へ進むのは、まずい
「……編集するか」
そういい、フェンはステータスのホログラムを指で触り出した。
⸻
【Lv:38】
【HP:1635/1635】
【MP:368/387】
【A:1478(4138)】
【D:1653(2314)】
【MAT:1050(1680)】
【MDF:632(822)】
【S:3020(11929)】
【SP:200】
⸻
数値を一つずつ確認する。
問題ない。
「……これならいいな」
小さく呟き、フェンは大きく頷いた。
そして視界の端に、見慣れない表示が浮かぶ。
⸻
【疾駆の加護 LV5】
→【進化】
【神速の加護 LV1】
⸻
名称が変わっている。
さらに、取得可能スキルの欄に新たな表示。
【分身】
【神速】
フェンの視線が止まる。
(……分身)
(……神速)
効果の詳細を開こうとした瞬間――
地面が、揺れた。
重い足音。
石床に亀裂が走る。
通路の奥から、巨大な影が現れる。
灰褐色の皮膚。
盛り上がった筋肉。
両腕は丸太のように太い。
オーガ種。
⸻
【魔物名:グラトン・オーガ】
【HP:8000】
【MP:1200】
【A:5000】
【D:1500】
【MAT:1000】
【MDF:1000】
【S:4500】
⸻
低い唸り声が通路を震わせる。
「グォォォ……」
フェンは数値を確認し、剣を抜く。
「……こいつで試そう」
意識を切り替える。
「分身」
空気が揺らぐ。
隣に、もう一人のフェンが立つ。
同じ装備。
同じ視線。
二人のフェンが、同時に剣を構えた。
グラトン・オーガが、巨大な金棒を振りかぶる。
空気が裂ける音。
次の瞬間。
「神速」
二人のフェンの姿が、掻き消えた。
金棒が地面を砕く。
衝撃と共に石片が舞う。
だが――そこにフェンはいない。
そして、オーガの背後。
二人のフェンが、すでに剣を振り抜いていた。
時間が、遅れて動き出す。
――ズババババン。
巨大な肉体に、無数の斬撃が走る。
遅れて噴き出す血。
肩。腹。脚。背。
裂け目が一斉に開き、グラトン・オーガの巨体が揺れる。
「グォ……」
金棒が手から滑り落ちる。
膝が崩れ、
そのまま前のめりに倒れた。
轟音。
二人のフェンは同時に消え、一人に戻る。
(……これは強い)
静かに息を吐く。
その時。
頭の奥に、無機質な声が響いた。
【グラトン・オーガを倒しました】
続く




