編集者、切り札を編む
フェンは、瘴樹人を見上げ――
思わず、息を呑んだ。
瘴気が渦を巻き、周囲の空気そのものが歪んでいる。
(……倒す方法は……)
思考を巡らせる、その間にも――
ルシアが一歩、前に出た。
「……ホーリーブレイズ!」
剣先から、聖なる焔が放たれる。
白金の光が、瘴樹人の幹を焼いた。
だが――
「……っ、浅い……!」
確かに、効いている。
瘴気が弾け、樹皮が焦げ落ちる。
だが、致命傷には程遠い。
(MDFが……高すぎる)
フェンは歯を食いしばる。
(でも……完全に無効じゃない)
(聖魔法は、通りやすい……?)
なら――。
「ルシア、少し待って!」
フェンは即座に手を伸ばす。
「《マナ・リジェネ》!」
淡い光がルシアを包み、
枯れかけていたMPが、脈打つように回復していく。
「今、新しいスキルを作る!」
そう言って、フェンは視界を開いた。
ホログラム状のステータス画面。
指を走らせ、項目を引きずり、組み替える。
【SP:4000 → 3500】
(相手の魔素を……)
(魔力として“転流”させる)
新たな項目が、生成される。
⸻
《魔素転流》
周囲の魔素を魔力へ変換し、
攻撃へと利用する補助スキル。
⸻
「……これを」
フェンは、視線を跳ね上げる。
「ホーリーブレイズと、組み合わせる……!」
編集画面が、変形する。
⸻
《聖魔転換焔》 SP3500→1000
⸻
「ルシア、見える?」
編集共有が起動し、
彼女の視界にも、新たなスキル情報が映し出される。
ルシアは、一瞬だけ目を見開き――
すぐに、強く頷いた。
「……分かった」
「やってみる」
深く息を吸い込み、
剣を正面に構える。
その瞬間――
異変が起きた。
瘴樹人の周囲を満たしていた瘴気が、
引き寄せられるように――ルシアへと集まり始める。
「……!?」
黒かった瘴気が、
彼女の周囲で歪み――金色へと変質していく。
魔素が、聖なる魔力へと転換されていく。
「グ……ッ!!」
瘴樹人が、異変を察知したように動いた。
幹をしならせ、ルシアへ叩きつけようとする。
だが――
「遅い」
ルシアの剣が、強く輝いた。
「《聖魔転換焔》!!」
放たれたのは、焔というより――
奔流だった。
金色の聖魔力が、瘴気を喰らい尽くしながら突き進む。
瘴樹人の身体が、
内側から崩れていく。
「――――」
声すら上げられず、
その巨体は、静かに――灰へと変わった。
続く




