編集者、森を調査する
ミルディアの森――奥へ。
倒れ伏した魔物の死体が、いくつも転がっていた。
裂けた皮膚、砕けた角、切り落とされた爪。
フェンは一体の傍にしゃがみ込み、短く息を吐く。
「……数、多かったな」
剣を収めながら、視界の端に数値を確認する。
【SP:1500 → 2600】
特別な感慨はない。
単純に、倒した数が多かった。それだけだ。
フェンは魔物の身体に視線を戻す。
「……やっぱり、おかしい」
ルシアが隣に立つ。
「なにが?」
「この魔物、本来ならEランク帯だ」
「動きも、力も……普通なら、ここまでじゃない」
フェンは、爪の痕を指でなぞる。
「でも――」
「さっきのは、Dランク並の力があった」
ルシアが、眉をひそめた。
「……それって」
「何かが影響して、凶暴化したってこと?」
「うん……そうだと思う」
フェンは立ち上がり、周囲を見渡す。
木々は生い茂っている。
だが、どこか息苦しい。
「……確かに」
ルシアが、周囲を見回しながら言った。
「魔素が多い」
「濃度も……おかしい」
空気が、重い。
深呼吸をすると、肺の奥がじんと痺れる感覚がある。
「この辺り一帯が、もう影響を受けてる」
ルシアが、小さく息を吐いた。
「……じゃあ」
フェンは、短く頷く。
「原因を探すなら」
「中心まで行くしかないな」
森の奥――
そこに、何かがある。
二人は言葉を交わさず、歩き出した。
ミルディアの森――中心部付近。
フェンは一歩踏み込み、迷いなく剣を振るった。
一閃。
オオカミの魔物は悲鳴を上げる間もなく、地面に崩れ落ちる。
フェンは剣を収めながら、無意識に数値を確認した。
【SP:2600 → 4000】
「……ここも、多いな」
「いや……多すぎる」
ルシアが首を傾げる。
「魔物って、確か……」
「魔素から作られてるんだっけ?」
「うん、そうだよ」
フェンは、倒れた魔物を見下ろしながら答える。
「ダンジョンもね」
「実は、魔素から魔物が生まれてるって言われてる」
少し間を置いて続けた。
「ただ……地上ほど、はっきり分かってない」
「ダンジョンは特殊すぎるから」
ルシアは、周囲を見回す。
「じゃあ……」
「この森の魔素が多いから、こんなに魔物が出てくるの?」
「……そうなるね」
フェンは、短く頷いた。
そのまま、倒れた魔物をじっと眺める。
何かを考え込むように――
「フェン!!」
鋭い声。
反射的に、フェンは地面を蹴った。
次の瞬間――
ドガァァン!!
轟音とともに、地面が抉れる。
衝撃で土と木片が宙を舞い、亀裂が走った。
「……っ」
フェンは着地し、すぐに振り返る。
そこにいたのは――
人の胴に似た幹。
枝が、腕のように垂れ下がる。
節が歪み、まるで人形の顔のように見える木の魔物。
足元から、黒い瘴気が立ち上っていた。
「……あれ、なに」
ルシアの声が、わずかに震える。
フェンは、無言で視界を開いた。
⸻
【魔物名:瘴樹人】
HP:12000
MP:5000
A:7000
D:2000
MAT:4000
MDF:5000
S:300
⸻
「……な……」
喉が、わずかに鳴る。
「……なんだ、こいつ……」
瘴気が、脈打つように周囲へ広がっていく。
ミルディアの森は、
この存在を中心に――歪んでいた。
続く




