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編集という力

洞窟の奥は、思っていたよりも静かだった。

水滴の落ちる音と、どこかで何かが蠢く気配だけが、薄暗い空間に満ちている。


苔に覆われた地面に、淡い光が滲んでいた。


フェンは、それを見下ろす。


地面に投影されたかのような、半透明の表示。

自分のステータスだった。


数字は、さっきまで確かに存在していたもの。

そして――自分の手で、触れたもの。


「……見るだけ、じゃない」


呟きながら、フェンはゆっくりと思考を整理する。


自分のスキルは、

ステータスを“確認する”能力ではなかった。


消せる。

書ける。

そして――反映される。


「……編集、か」


世界に書かれた数値を、

人為的に書き換える力。


それが、フェンのスキル。


視線を、SPの表示へ移す。


数字は小さい。

減れば戻らない。

だが――魔物を倒せば、増える。


「無限じゃない……でも、使い道はある」


そう結論づけた、その時だった。


ぬるり、と音がした。


視線を上げると、

少し離れた場所で、淡い緑色の塊がゆっくりと動いている。


別のスライムだ。


フェンは、自然と短剣に手を伸ばしていた。


「……試してみよう」


低く呟き、足を踏み出す。


さっきと同じ距離。

同じ角度。

だが――身体の感覚が、わずかに違った。


踏み込みが、軽い。


短剣を振る。


刃は、先ほどよりも深く、確かに手応えを残してスライムの体を裂いた。


「……通る」


攻撃が、効いている。


スライムの反撃はあったが、動きは鈍い。

フェンは無理に踏み込まず、距離を取りながら刃を走らせる。


数度の攻防の末――

淡い緑色の塊は、あっさりと形を失った。


肩で息をしながら、フェンはその場に立ち尽くす。


すぐに、視界の端に表示が浮かび上がった。


――――――

SP:4

――――――


「……増えてる」


さっきまで、1だったはずだ。


一体倒しただけで、3も増えている。


「……やっぱり、そうか」


魔物を倒せば、SPが増える。

書き換えた分は、消費される。

だが――取り戻せる。


フェンの胸に、じわりと熱が灯る。


「……もう少し、試せるな」


短剣を握り直し、洞窟の奥を見る。


フェンは、小さく息を吸い込み、

再び歩き出した。


数時間後。


フェンは、洞窟の壁にもたれながら、静かに息を整えていた。

さっきまでの緊張は抜け、耳に入るのは水滴の音だけだ。


視線を落とすと、

地面に淡く投影された半透明の表示が揺れている。


――――――

LV:3

HP:20

MP:6

A:8

D:4

MAT:3

MDF:4

S:16

SP:16

EXP:20/150

――――――


「だいぶ強くなったな」


小さく呟き、数値を眺める。


SPは、十分に溜まっていた。


フェンは腰の袋に手を伸ばす。

中には、粘ついた感触のあるスライムのジェルが、いくつも詰め込まれていた。


「これだけあれば……」


換金すれば、まとまった金になる。

妹の薬代の足しには、十分だろう。


「……今日は、ここまででいいか」


洞窟の奥を一度だけ見やり、フェンは短剣を収める。


編集の力は、まだ未知数だ。

勢いで弄るより、落ち着いて考えた方がいい。


「家に帰ってから、ゆっくりだな」


そう決めると、フェンは踵を返した。


薄暗い洞窟の出口へ向かって、

静かな足取りで歩き出した。


本日は2話同時投稿となります5話は21時に投稿しますので、引き続きお楽しみください

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