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編集者、装備を更新する

隣町セルト。


エルナの影に隠れるように存在するその街の中でも、

ひときわ目を引く豪邸があった。


高い塀。

手入れの行き届いた庭園。

そして――街の規模に不釣り合いなほど、威圧的な屋敷。


鑑定士グラウスの住まいだった。



広間の中央。


重厚な椅子に深く腰掛けた男が、

片手でワイングラスを揺らしている。


赤い液体が、ゆっくりと回った。


その前に、ヴァルドたちが立っていた。


「……グラウス」


ヴァルドが、一歩前に出る。


「俺と……俺たちと、組んでくれ」

「一緒に、上を目指したい」


一瞬の沈黙。


グラウスは答えず、

グラスを傾けたまま視線を向ける。


――鑑定。


ヴァルドの前に、無機質な表示が浮かび上がった。



ヴァルド


HP:1300(1600)

MP:500


A:950(1250)

D:800(1000)

MAT:400

MDF:600(760)

S:750



グラウスの口元が、歪む。


「……は?」


低く、鼻で笑った。


「お前……」

「そのクソみたいな能力値で」

「俺と組めるとでも思ったのか?」


ヴァルドの拳が、ぎゅっと握られる。


次の瞬間。


「――はっ! ふざけるな!!」


グラウスが、ワイングラスを投げつけた。


砕けた音。


赤い液体とガラス片が、ヴァルドの頬をかすめる。


「ヴァルド!!」


後ろで、魔法使いのセリスが叫んだ。


だが、グラウスは興味もなさそうに続ける。


「そうだなぁ……」


顎に手を当て、考える素振り。


「じゃあ、こうしよう」

「Aランクダンジョンを一つ」

「攻略できたら――考えてやってもいいぜ?」


「なっ……!」


ロルフが声を荒げる。


「そんな無茶な……!」


グラウスが、ゆっくりと睨み返した。


「あ?」

「できねえってのか?」


空気が、張り詰める。


ヴァルドは、しばらく黙っていたが――

やがて、顔を上げた。


「……本当に」

「クリアできたら、仲間になってくれるんだな?」


グラウスは、ニヤリと笑う。


「あぁ……」

「なってやるとも」


その目には、嘲りしかなかった。


ヴァルドは短く息を吐き、


「……分かった」


そう言って、背を向ける。


「お前ら、行くぞ」


「おい! ヴァルド!」


ロルフが慌てて追いかける。


パーティは、そのまま屋敷を後にした。


扉が閉まる。


静寂。


グラウスの背後に控えていた側近が、淡々と言った。


「あのパーティ……」

「壊滅しますね」


グラウスは、肩をすくめる。


「あぁ……」

「別に、どうでもいいけどな」


そして。


彼の前に、数値が表示された。



グラウス

(鑑定士/Sランク冒険者)


HP:12000(35000)

MP:6500(15000)


A:10000(24000)

D:8000(20000)

MAT:8000(17000)

MDF:7000(14000)

S:9000(18000)





《風穿ちの裂谷》――十階層。


重い風が、静かに渦を巻いていた。


フェンとルシアは、その場に立ち尽くしたまま、荒い息を吐く。


「……終わった、ね」


ルシアが、かすれた声で言う。


フェンは答えず、視界の中央に浮かぶ表示を見つめていた。



【10階層ボス

 嵐喰らいのロックロック 討伐完了】



次の瞬間。


二人の前の空間が歪み、

鈍い音を立てて宝箱が現れた。


「……出た」


フェンが歩み寄り、躊躇なく蓋に手をかける。


開く。


中に収められていたのは――

岩色の羽殻を編み込んだ、軽装の鎧だった。


厚みはあるが、無駄がない。

重装のような圧迫感もない。


「これ……鎧?」


ルシアが覗き込み、目を瞬かせる。


フェンの視界に、装備情報が浮かび上がった。



岩翼軽装ロックフェザー


D+250

MDF+150

(補正:D+40% MDF+30% S20% )


「……軽いな」


フェンは手に取った瞬間、そう呟いた。


肩に当て、軽く身を捻る。

動きに、引っ掛かりがない。


「フェン向きじゃない?」


ルシアが言う。


「動き、全然邪魔してないし」


フェンは一度だけ頷いた。


「うん……たぶん、僕が着た方がいい」


そのまま装備する。


鎧は身体に自然に馴染み、

裂谷を吹き抜ける風を受け止めた。


防御が上がった感触はある。

それでいて、脚は軽い。


「いいじゃん、それ」


ルシアが、少し笑った。


「じゃあ……」


フェンは視線を、奥へ向ける。


裂谷のさらに上。

階段が、闇の向こうへと続いていた。


「次の階層、行こう」


「うん」


二人は並び、

静かに、上へと足を踏み出した。



          続く

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