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編集者と消えた影

二十階層・ボス部屋。


黒い霧が床を這い、

重たい空気が満ちていた。


その中心で――

グラウルフが、二人を睨みつけている。


低く構えた体躯。

闇を吸い込んだような黒い毛並み。

黄金色の眼だけが、静かに光っていた。


フェンは、腕の中のルシアを抱えたまま、

ゆっくりと視線を逸らさない。


「……大丈夫?」


小さく、問いかける。


「うん」


短く頷き、

ルシアはフェンの腕から離れると、すぐに構えを取った。


二人の視線が、再びグラウルフに向く。


「僕が、あいつの気を引く」


フェンは言う。


「隙ができたら、攻撃して」


「……分かった」


ルシアは一度だけ頷いた。


その瞬間。


フェンは、地を蹴った。


一気に距離を詰め、

グラウルフの巨体よりも高く飛んだ。


「――こっちだ!」


グラウルフが顔を上げる。


その隙を逃さず、

フェンは身体をひねり、滑空する。


刃が、首元を狙った。


だが――


グラウルフは、半歩だけ後退した。


刃は空を切る。


(……避けた!?)


着地と同時に、

フェンは踏み込む。


剣を振る。


鋭い爪が、それを弾いた。


一合。


二合。


刃と爪が弾き合い、

火花が散る。


速い。


互いに、ほとんど止まらない。


フェンが踏み込み、

グラウルフが躱し、

次の瞬間には、爪が迫る。


剣で受ける。


衝撃が、腕に走る。


血が飛ぶ。


だが――


(……っ)


痛みは、

フェンの方が重かった。


離れた位置で、

ルシアは構えたまま動けずにいた。


(……入る隙が、ない)


フェンは一歩、後退する。


このままじゃ――

やられる。


即座に、魔力を流し込んだ。


「――ヒール」


淡い光が身体を包み、

裂けた傷が塞がっていく。


だが、息は整わない。


疲労が、確実に溜まっている。


(……延命にしかならない)


正面では、

グラウルフも荒く息を吐いていた。


だが、

その身体に刻まれた傷は浅い。


黄金色の眼が、

再びフェンを捉える。


「……グルルル……」


フェンは、視界の端に浮かぶ表示を見た。


S。


その欄を、じっと見据える。


(……ここだ)


数値に、指を伸ばした。


視界の端で、数値が切り替わった。


S

158 → 185


同時に、

SPの表示が僅かに減る。


100 → 80


「……よし」


フェンは小さく息を吐き、

顔を上げた。


――その瞬間。


いない。


(……!?)


反射的に、視線を走らせる。


前。

右。

左。


どこにもいない。


「……っ」


背筋が、ぞくりと冷えた。


次の瞬間。


視界いっぱいに――

鋭い爪が迫った。


――ドンッ!!


凄まじい衝撃音が、ボス部屋に響く。


壁が軋み、

石が砕け散った。


粉塵が舞い、

壁面に――大きな穴が穿たれる。



「フェン!!」


ルシアの叫びが、

黒い霧の中に響いた。


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