編集者と蒼双剣《アズール》
澄んだ音が、フェンの頭の中で鳴り続けていた。
フェンは意識を向ける。
視界に、見慣れた表示が展開された。
フェン ステータス
•HP:75
•MP:53
•A:52(71)
•D:39(44)
•MAT:36
•MDF:34
•S:85(102)
•SP:350
ルシア ステータス
•HP:116(128)
•MP:20
•A:105(137)
•D:76(99)
•MAT:21
•MDF:19
•S:45(43)
(レベルが上がってる……)
フェンがステ-タスをチェックをしていると、
「フェン!もう次の階層行こうよ!」
とルシアが道の方向に指差しながら言った。
「そうだね」
とフェンはステ-タスをしまい、歩き出した。
《砕石の迷坑》十五階層。
二人は並んで通路を進んでいた。
その時、フェンは足を止める。
(……ん?)
意識の端で、探索マップを確認する。
現在地の少し先、右端の行き止まり付近。
淡い青色の光が、マップ上に点灯していた。
「……なあ」
「なに?」
「マップに、青い反応が出てる」
フェンが示した先を、ルシアが覗き込む。
「右の奥?」
「ああ。少し距離はあるけど……」
ルシアは一瞬だけ考えてから、にっと笑った。
「行ってみようよ」
「お、おい――」
言い終わる前に、ルシアは走り出していた。
フェンは小さく息を吐き、後を追う。
行き止まりに見える壁際。
近づくと、そこにひとつの宝箱が置かれていた。
「ほら、当たり!」
「……待て、警戒――」
ルシアは気にする様子もなく、宝箱を開ける。
「ん? なんか入ってる」
取り出されたのは、二振りの剣。
軽量そうな双剣だった。
ルシアが取り出した双剣は、淡い青色の刃をしていた。
光を受けて、わずかに揺れる。
「……軽いね」
フェンは、視線を双剣に向けたまま、意識を切り替える。
探索スキルとは別の感覚。
編集者としての機能が、対象を捉える。
視界の端に、簡易的な情報が浮かび上がった。
⸻
蒼双剣
•攻撃補正:A+10%
•速度補正:S+5%
⸻
(……なるほど)
フェンは内心で頷いた。
自分に噛み合う。
間違いなく、今の立ち回り向けの装備だ。
だが、その考えを口にする前に――
「これさ」
ルシアが、双剣を眺めながら言った。
「フェンに向いてそうだよね」
フェンは一瞬、言葉を失った。
「え……?」
「速いし、軽いし。フェンの動きに合いそう」
そう言って、ルシアは双剣を差し出す。
「これ、フェンにあげる」
「……いいの?」
「うん」
迷いはなかった。
フェンは、少しだけ間を置いてから、双剣を受け取る。
「ありがとう。……大事にするよ」
その瞬間。
ルシアは、ふいっと顔を逸らした。
「べ、別に……深い意味はないから」
頬が、わずかに赤くなっていた。
◆
通路は細く、二人は並んで歩いていた。
フェンが歩きながら、探索マップを確認する、
その時、赤い光が沸いてるのを確認した。
通路の先、天井付近。
ざり、と岩を擦る音がした。
次の瞬間、影が落ちてくる。
脚が、八本。
青白い体表を持つ巨大な蜘蛛が、通路に姿を現した。
一体、二体……五体。
「……うわぁ……」
ルシアが、思わず声を漏らす。
「なにあれ。気持ち悪い……」
ペイル・スパイダー
フェンは一歩前に出たまま、意識を切り替える。
視界の端に、簡易的な数値が浮かび上がった。
ペイル・スパイダー
HP:56
MP:10
A:50
D:30
MAT:15
MDF:20
S:60
(速い……でも、硬くはない)
動きは素早い。
だが、防御は低め。
数で押されなければ、十分対処できる。
フェンは、手にした双剣へ視線を落とす。
蒼双剣。
「……ちょうどいいな」
低く呟く。
「この剣、試す時が来たみたいだ」
ペイル・スパイダーたちが、同時に距離を詰め始めた。
続く




