編集者、探索スキルを使う
《砕石の迷坑》十一階層
一歩踏み込んだ瞬間、空気が変わった。
通路は細く、入り組んでいる。
直線はほとんどなく、緩やかな曲がりと分岐が連続し、少し先の様子すら見通せない構造だった。
石壁は近く、圧迫感がある。
ルシアが周囲を見回しながら歩く。
「入り組んでるね」
「そうだね」
フェンは足元と壁の距離を測るように視線を動かしながら答えた。
少し間を置いて、フェンが続ける。
「……こういう時こそ」
「探索スキルだね!」
ルシアが即座に言った。
フェンは小さく頷く。
「じゃあ、使ってみるよ」
足を止め、意識を集中させる。
「……探索」
次の瞬間、フェンの前方に淡い光が走った。
空中に、青白いホログラムが展開される。
現在地を中心に、半径五百メートルほどの範囲。
複雑に入り組んだ通路の構造が、立体的な地図として浮かび上がった。
「……おぉ!!」
ルシアが思わず声を上げる。
「すご……」
「これあれば、だいぶスムーズに行けるんじゃない?」
フェンはホログラムを見つめたまま、わずかに表情を引き締める。
地図の中で、一点。
赤い光が、ゆっくりとこちらへ向かって移動していた。
「……これ、もしかして」
フェンの視線が正面に戻る。
「魔物……?」
次の瞬間、フェンが低く言った。
「来る!」
ルシアが即座に足を止め、剣を構える。
――正面から、重い足音が響いてきた。
正面から姿を現したのは、岩のような鱗に覆われた蜥蜴型の魔物だった。
四肢は低く構えられ、体表は灰色の石質。
壁と同化するような色合いで、曲がり角から這い出るように現れる。
「ロックリザードか」
フェンは即座に意識を切り替え、対象を指定する。
視界に、簡易的な数値が浮かんだ。
ロックリザード
HP:70
MP:10
A:30
D:35
MAT:23
MDF:30
S:40
「あまり強くはないな……」
「これなら戦える」
次の瞬間、ロックリザードが地を蹴った。
低い姿勢のまま、一気に距離を詰めてくる。
二人は左右に分かれて回避した。
石の爪が床を削り、火花が散る。
フェンは踏み込む。
すれ違いざま、低く構えたナイフが閃いた。
――ズン。
刃は正確に、後脚の腱を断つ。
「ぎゃあっ!!」
甲高い悲鳴が通路に響く。
ロックリザードの動きが一瞬止まった。
「ルシア!」
フェンが叫ぶ。
ルシアはすでに走り出していた。
一気に距離を詰め、剣を振り抜く。
岩の鱗ごと、胴体が断ち切られる。
「ぎゃあああああ!!」
断末魔が響き、ロックリザードはそのまま崩れ落ちた。
「……?」
フェンが違和感に眉を寄せる。
「なんだ?」
すぐに視線をホログラムへ戻す。
地図の中で――
さきほどとは比べ物にならないほど大きな赤い光が、こちらへ向かっていた。
しかも、一つではない。
「……これって、もしかして」
ルシアが呟く。
フェンは短く頷いた。
「うん。そのもしかしてだね」
次の瞬間。
通路の奥、壁の影、天井付近――
複数の場所から、岩の鱗を持つ影が次々と姿を現した。
続く
12時と21時の投稿も引き続きお楽しみください




