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編集者、居候が決まる

本日よりお試しで投稿時間変更いたします。


時間は6時、12時、21時に投稿しますので、お楽しみください。

白鋼の刃が、一直線に振り下ろされる。


「――ブレイクスラッシュ!!」


ためられていた力が一気に解放され、

剣閃が空気を切り裂いた。


次の瞬間――

バキンッ!!


鈍く、嫌な音が広間に響く。


ストーンゴーレムの胸部に、

大きな亀裂が走った。


石の装甲が、まるで割れた岩のように崩れ落ちる。


「……っ」


ルシアが息を詰め、剣を握り締めたまま着地する。


その場に、重たい沈黙が落ちた。


ゴーレムは、まだ立っている。


ひび割れた胸部から、砂のような破片が零れ落ち――


(……頼む)


フェンは、無意識に拳を握り締めていた。


(……動かないでくれ)


次の瞬間。


ゴーレムの巨体が、大きく揺れ――

そのまま、前のめりに崩れ落ちた。


ドォン……と低い音が広間に響き、

砕石が床を転がる。


「……はぁ……っ」


ルシアが、その場に膝をつき、大きく息を吐いた。


「……や、った……?」


崩れ落ちたゴーレムの身体は、

数秒そのまま動かず――


やがて、光の粒子となって、静かに消えていった。


その瞬間。


フェンの視界に、文字が浮かび上がる。


――――――

ストーンゴーレムを討伐しました。

――――――


「……」


一拍。


そして――


「……やった!!」


フェンは思わず声を上げた。


「倒した! 本当に倒した!!」


振り返ると、ルシアも息を切らしながら顔を上げる。


「……っ、やったね……!」


二人は顔を見合わせ、

次の瞬間――


「「やったぁ!!」」


ぱんっ、と乾いた音が響き、

二人の手が勢いよく打ち合わされた。


しばらくして。


落ち着いたところで、フェンは改めて視界を確認する。


――レベルアップ。


能力値の変化が、簡潔に表示された。


フェン

Lv8

HP:57

MP:32

A:35

D:24

MAT:19

MDF:21

S:64


ルシア

Lv8

HP:76

MP:10

A:65

D:44

S:22


「……ちゃんと、上がってるね」


「うん」


フェンは小さく頷いた。


その直後。


カラン、カラン――


乾いた音と共に、

二つの宝箱が、広間の中央に現れた。


「……二つ?」


ルシアが目を瞬かせる。


「早速、効果出たね」


フェンが言うと、

ルシアはにっと笑った。


「ドロップ率、だっけ?」


「うん」


二人は並んで、宝箱の前に立つ。


まずは、一つ目。


フェンが蓋に手をかけ、ゆっくりと開いた。


中にあったのは――

石で作られた、分厚い盾だった。


――――――

ゴーレムの盾

防御力+10

――――――


「……これ」


フェンは少し考えてから、ルシアを見る。


「君の方が、必要じゃない?」


ルシアは一瞬驚いた顔をして、

それから、少し照れたように笑った。


「……いいの?」


「うん。前に立つの、君だし」


「ありがとう」


ルシアは盾を受け取り、大事そうに抱えた。


次に、二つ目の宝箱。


今度は、フェンが開ける。


中に入っていたのは――

小さな、石の欠片だった。


だが、それはただの石じゃない。


――――――

ゴーレムの欠片(激レア)

使用時:ゴーレムの加護を得る


HP+10%

A+10%

D+20%

S-5%


付与スキル:ランドクラッシュ

――――――


「……これは……」


フェンは、目を見開いた。


「加護……?」


(HPと攻撃、防御が上がる……これはルシアに持たせた方が良さそうだな)


フェンは欠片を見つめたまま、静かに言った。


「……ルシア」


「たぶん、君に使った方がいい」


ルシアが首を傾げる。


「え? なにそれ」


「よく分かんないけど……強いの?」


フェンは小さく頷いた。


「前に立つ人向けの、加護だ」


「耐久と火力が上がる」


「君なら、ちゃんと使いこなせる」


一瞬の沈黙のあと、

ルシアは小さく笑った。


「……フェンがそう言うなら」


「使うよ」


彼女は欠片を受け取り、ぎゅっと握り締めた。


次の瞬間。


カッ――


眩い光が、ルシアの手の中から溢れ出した。


「……っ!」


強い輝きが広間を満たし、

二人の影が床に長く伸びる。


やがて、光は一点に収束し――

欠片は、音もなく消えた。


同時に。


淡い光が、ルシアの腕から胸へ、

そして全身へと染み込むように広がっていく。


「……あ……」


ルシアが、思わず息を漏らした。


「なんか……」


「体の奥が、ずしっとして……」


彼女は、拳を握る。


指先に、確かな力が宿っているのが分かる。


そしてフェンの方を見て、


「……ありがとう、フェン」


フェンは一瞬だけ目を瞬かせてから、

少し照れたように視線を逸らした。


「うん」


その表情は、どこか満足そうだった。


しばらくして。


フェンは大きく息を吐く。


「……今日は、さすがに疲れたね」


「もう帰ろうか」


ルシアはすぐに頷いた。


「うん。さすがに限界」


気づけば、外はすっかり夜になっていた。



冒険者ギルド。


二人は受付の前に立ち、

討伐の報告とともに、素材を差し出す。


ストーンゴーレムの石。


それを見た瞬間、

受付嬢の動きがぴたりと止まった。


「……え?」


「ちょ、ちょっとお待ちください」


周囲の視線が、一斉に集まる。


「それ……本当に、ストーンゴーレムの?」


フェンは落ち着いた様子で頷いた。


「はい。十階層の大広間で倒しました」


一瞬の沈黙。


「……二人で?」


「はい」


ざわ、と空気が揺れた。


受付嬢は慌てて素材を確認し、

何度も何度も視線を行き来させる。


「……確認、取れました」


「討伐、成立です」


「……お疲れさまでした」


明らかに、信じられないものを見る目だった。


フェンは小さく会釈し、

ルシアと並んでギルドを後にした。



夜の街。


灯りに照らされた通りを、二人で歩く。


しばらく沈黙が続いたあと、

フェンがふと思い出したように口を開く。


「……そういえば、ルシア」


「この時間なら、そろそろ帰らないとだよね」


「家の人、心配するんじゃ……」


ルシアの足が、止まった。


「……嫌よ」


低い声。


「あんなところ」


フェンは言葉に詰まり、

しばらく、何も言えずにいた。


沈黙。


街の喧騒だけが、二人の間を流れる。


やがて――


「……ねぇ、フェン」


「ん?」


ルシアは一度、深く息を吸い込んだ。


そして、まっすぐにフェンを見る。


「あたし」


「フェンの家に、居候するわ」


「…………」


「……えっ?」


フェンは、完全に固まった。


「え?」


「え、え――?」


「えええっ!?」


夜の街に、

フェンの素っ頓狂な声が響いた。


          ――続く

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