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天都

天使が多く集う国を天使都市エクスシュトルといい、皆天都と略して口にする。

街は美しく、誠実で穢れを知らない許さない街とその風貌は崩れる事を知らなかった

その城下を一台の馬車が中央広場を通り抜け、城の直ぐ前で足を止め、一人の兵士が降りては馬車の後方に向かい、罪人に声を掛けよ意図した最中


「ふごぉっ?!」


突如中から飛び出した罪人に押し倒され地面に散った


「手加減をしないか」

「喧嘩を売るって言うのは腕に自信があるんだ手加減してどうする…失礼にも程があるんじゃないのか?」


中からはレウとシェーニイの声か聞こえ、異変に気が付いた兵士達が馬車の後方に集まってくる


「貴様はっ!」

「悪いが…そこに転がってる奴が手を出してきたんだからな。私は無実だ」


中を眺め、怒りを顔に出す騎士への言葉であったが


「〜〜知った事か!あの金髪の男を取り押さえろ!もっと強固に拘束をするんだ」


騎士の命令に兵士達歯目の色を変えて中に入り込もうと一歩踏み出すが


「小物の相手をしてる暇はないんだ、つか早くしないとボスが来る…悪いけど拘束ゴッコはこれ以上付き合えない」


するりと後ろ手に縛られた腕がゆっくりとシェーニイの元ある場所に戻った瞬間、馬車の出入口は光に包まれあっと言う間に騎士、兵士一同は目を暗ませ気を失って地面に倒れ落ちた


シェーニイが先に馬車から出るとレウも続いて出ては拘束具が既に外れている事に気が付き外し地面に落とし


「いつから外していた」

「外したのはついさっき。外そうと思えば直ぐに外せるよ…大体にしてあんなもん拘束具にもなりゃしない」


最初からわざと

欺くために嘘を演じていた


「どうするんだ…どの道捕まったら罪人になるそ」

「なら、捕まらなければ良い。生憎最終ボスはまだ城内で気が付いてない」


たっと勢いをつけ一歩歩みだし、レウも追って駆け出した


「他の罪人は?」

「同族殺し以外は暫く監禁された後に釈放される。天使は同族には甘いんだ」

「では、同族殺しは?」

「甘い故に殺しとなったら死罪だろう。殺しは許されない」


何度も何度も…

自分が手を掛けた覚えがある


「魔族より徹底しているな」

「魔族の方がよっほど仲間意識がある。ただエグイやり方を好まないだけ、善か悪か。それだけ」


善だけが全て

悪の存在を決して許さない


「ヤバい…な」


城下をひたすら前進し、後半分と言った処での呟き


「動きだしたのか?」

「よりによってパートナー…母と動き出した」

「まずいものなのか?」

「母は宮廷魔導師1だ…2番目はドータの母だった筈」


騎士として魔導師として

テトラの親が国存在し

それを支えるように

ドータの親がいる


今も変わらない立場


「ちなみに聞いておくが…ドータ殿の親の気配は知っているか?」

「いや、あんまり…接点合ったのがドータしかないかな」


テトラの面倒を率先してみていたのはドータであり、ドータの親はそこまでテトラとの面識がない


「………」

「なんで黙る?」


シェーニイの返答に思いの外無言でいるレウ。一瞬顔を顰め舌打ちをすれば


「ドータ殿の親と戦りあって現時点での勝率はどの程度だ」

「武器がないからなぁ…三割出ればいいと…実際そんなに知らないからなんとも」

「なら…その三割に賭けるしかなさそうだな」


レウの最後の覚悟にシェーニイは漸く気が付かざる得なかった、前方に見える二人組に

駆け足を止まるわけにいかずその二人組の前まで行き距離を保ち立ち止まる


「あぁどうやらこの二人組みたいだねぇ…でも、罪人には見えそうにはないなぁ」


背の高い、ラベンダー色の髪色の何処か見覚えのある、だがその人物とは程遠い程雰囲気が似つかわぬ男


「あなたそればっかね。やりたくないからって任務を適当に誤魔化すのは良くないわよ」


銀髪を短く切り揃えた強い瞳の、こちらはよく知る責任感の強い面倒見のよさそうな雰囲気の女


「いやいややるよ?でも奴さん…強そうだし…痛いのは好きじゃないよ」

「貴方騎士でしょう?!」

「名目だけね」


バチンと軽いウィンクをする男に女は呆れ返り、脇腹に一撃


「ぐぉおおぉ…は、ハイン…今のは…今のは…今のはシャレにならない」

「ウォルスが悪いんじゃない!」


打撃を受けた脇腹を押さえ痛がりながらそれでも落ち着いたのか、向けられる微笑み


「冗談に付き合える子は嫌いじゃない…出来るなら剣を抜きたくないんだが…潔く降参しないかい?私はね、平和主義者なんだ」


にこにこと微笑みを絶やす事はないが、それに見合わない威嚇が二人に向けられる


「ドータ殿と似ているのは、顔だけ…か」

「ドータの若い頃は好戦的だったって話」

「この親にと言う訳か」


ふむ。と納得するレウに簡単に、それも単発でしか答えず、どうにかならないものかと案を練り続けるシェーニイだが


「漸く追い付いた…ん?あぁウォルスが足止めをしていてくれていたのか」


背後から届く知った懐かしい声


「今しがた任務から戻られたそうですよ…お疲れのところ申し訳ないと思ったのですが」


忘れかけていた記憶の断片

封をしていた記憶が甦る


「彼に遠慮をするだけ無駄だろう…していたのはきっとハインだろうから」

「まぁ…ヴァシレイそれは酷いと思うわ」

「そうだ、そうだ!エルディア、もっと言ってやれ!!」


レウとシェーニイを間に挟み繰り広げられるやり取り。とても和気藹藹とはしているが間にいる二人にとって計り知れない圧力が課せられていた


「…どうする」

「意見を聞いてる風には聞こえないが」

「前後に勝てるかどうかわからない人物がいるのに何の意見を問えと言う」


手を出されなければ出さない雰囲気ではあるが…それでも、手を出そうものなら叩き伏せられるのも目に見えている


(─────っ、天都までのうのうと来るんじゃなかったこんなの生殺しもいいとこだ。逃げ様にもジュライが魔法使えないんだこっちが不利だし、戦うにも今の時代に剣なんてものはない。かといって大人しく捕まれ?冗談じゃない!!何されるか解ったもんじゃない)


横にレウを置き、出来る限りの最善の方法を導きだすが…どうにもそれすら浮かばない


(どうす…)


困惑を顔に出しめげそうになった矢先ふと顔を上げ思わず振り返り後方にある城を見上げたシェーニイ


「どうした」

「金属音…剣の金属音が城から」


あってはならない事態

どうして今それが聞こえる


「…?なんの話だ…そんな音聞けえる訳がないだろう」

「いや…聞こえる」


耳の中

頭に響く


「シェーニイ…?」

「!謁見の…(どうして謁見の間からそんな音が聞こえるんだ!騎士が控えてるハズなのに)」


頭に直接響く酷い金属音

もっと耳を澄ませ聞き入れば

斬撃の音絶命の声まで届く


(…違う相手が強いんだ…押されてる。今此処に国を誇る四人がいるだから…見計らって手を掛けに来たんだ)


現状それしか考え付かない、もし誰か一人でも城内にいれば誰も仕掛ける事はない。それだけ強く、恐ろしい力を個人が持っているから

でも、今は城にはなく外にいる

苦戦するとされた自分達を追う為に


「…レウ、ごめん」

「?!」


暫く様子を伺いながら俯いていたシェーニイではあったが、そう口にするとおもむろにしゃがみ込み短く何かを唱えると一度カッッ!と強く輝き光の粒子となり飛び散りながら消えていった


それを見送り残された五人


(…何かを感じ取ったのは理解できたが…この状況…仕方ない)


レウはふぅと体全体で溜息を吐くと直ぐに胸元の宝石を触る。その行動に対し咄嗟に構えた四人だが


「警戒をされなくとも…この通り丸腰だ」


マントは直接地面へと流れ落ち、胸元で小さく上げられた両手。四人はそれに直ぐにレウの側へ


「丸腰は予想外だったけど…別に手を出さなきゃ最初から戦り合うつもりはなかったよ?」

「どーだかね」


にこりとウォルスが笑う横、冷たい態度を示すハインにう゛っと唸ってみせた


「何より貴方とは出来るだけ戦いたくない」

「…お互い様だとは思いますが」

「違います。どう見ても悪い方には見えませんから」


ヴァシレイと言う男は一言で言うならば【金獅子】。金の美しい鬣に似た髪が肩まで伸び、一見優しそうに見える瞳は鋭く意志の強さを象徴しているかのようだ。

エルディアもまた美しい長い金の髪を携え。優しい、慈愛に満ちあふれた、女神そのものを見ている錯覚まで覚える程の美しい女だった。そのエルディアはレウのマントを拾い上げては丁寧に埃を払い手渡す


「(まるで闘神の生き写しだな)ご迷惑を掛けて申し訳ない」

「構わない。スリリングな生活には慣れているからね」

「それもそうだ!」


レウはマントを受け取り元の位置に戻すと二人に詫びを入れるのだが男二人はあっけらかんと笑い捨てた…が


「そんな呑気な事言ってる場合じゃないでしょう?!貴方…レウだったかしら…貴方の連れは何処に消えたの!」


直ぐにハインが活を入れ、レウに向かい睨み付けるのだ


「…謁見の間だと思う」

「謁見…王の元に…どうして?」


レウの呟きに心配そうな顔をするエルディア


「金属音が聞こえたそうだ。剣が弾き合う」


レウの返答に互いに顔を見合わせ困惑をする


「この際細かい事はどうでもいいわ!今は早く王宮に戻らないと…貴方も来て」


はじめに声をあげたのはハイン、それに皆駆け出し、レウも仕方がない。と覚悟を決めては共に駆け出した


「そこ迄急がなくてもアレはそこそこやれる奴だが…」

「大まかに纏めると魔法と言いますが、攻撃を得意する魔力と回復を得意とする法力があります。それは御存じですよね?」


隣を走るエルディアのいきなりの説明に小さく一度だけ頷いてみせるレウ


「この国…天都には私達宮廷魔導師が勢力を上げてかけた結界が張り巡らされていて私達でも天都内では一切魔法は使えないんです」

「だが使って消えたが…」

「あの金髪…無理矢理壊して行ったのよ!それも一部だけ」


先頭を駆けるハインの不機嫌な声


「意味がよく理解出来ないんだが」

「無理矢理抉じ開けた事によってエネルギーの反動を受けているに間違いないんです…だから普通の方なら亡くなって……」


最後の一言に

脚を止めたのはレウ


「それは…本当か?」

「間違いないわよ。そんな下らない事に嘘なんか吐かないわ」

「生きていても…魔力は半分以下、恐らく立っているのもやっとの筈です」


ハインはめんどくさそうに説明を続け、エルディアは止まったレウの手を取りまた、駆け出した


「・・・(自分の命さえ投げ捨てるのか…テト殿が聞いたら泣き喚くだろうに)」


大事な大切な者の為なら

命さえ必要ない

護れるのなら、それでいい


考え方の違いに多少の苛立ちを覚え思わず口から出るのは舌打ち


「…でも驚いた。私は君達二人とも剣士だと思っていたから…彼が魔法を使った時には本当に驚いたよ」


そっと投げ掛けたのはヴァシレイ


「珍しい事だと?」

「いや、そうじゃあないんだが…剣士なのにあんな膨大な魔力を持っていて、隠せるなんて事出来ないよ普通は」

「……」

「それに貴方も隠しているのではないだろうか…?私は…本当に貴方とだけは戦りたくない…正直…勝てる確証がありません」


苦笑うヴァシレイに表情を変えず首を振ってみせたレウ










血筋とは恐ろしいモノだ

初見で全て見抜かれていた


2010/04/06

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