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まだ、現役を退かないと豪語していた父が原因不明の病気に伏せ、人生半ばにして僕に【王座】を譲った。元々受け継ぐモノとして【覚悟】も決めていた。

でも…所詮は子供の【覚悟】だと言う事を思い知ったんだ

父は何事にも恐れず、前を見て、国の為、民の為へと自分の事さえ顧みず必死に【国王】として誇り高く生きていた



例えどんなに怨まれても



僕はそこ迄の【覚悟】を持ち合わせていない

引き継いだ【王位】としての立場、座らされた【王座】皆が僕を見て言葉を、僕が皆に感謝をする謁見の間で血が流れた


目の前でヒトが無残に死んで逝く


反乱軍かどうかはわからない。

でも、その人達は僕に殺意を向けていて今の国が嫌いな事ぐらいは理解は出来た


「〜〜っ!!!貴様の様な青二才が王になるだと?!ふざけるな!!」


王座にいる僕を見上げ一人が声を張り上げた

理解できる。

僕はまだ、貴方達の様に様々な人生を歩んでいない。そんな若者の何処に資格があるんだ


近寄る姿に思うのは終焉が近付いている事だけ


「貴様に怨みはない!だがなぁあ!」


涙に震える身体

あぁ…

この【覚悟】に勝てる訳がない

僕が最初からしていたものは

ただ死ぬ為の【覚悟】なんだ


目を見て最後に笑い掛ける

僕に出来るのはそれしかないから

そうして目を閉じ首を差し出す


父様…

貴方の意志を受け継げずに散る

僕をお許し下さい


「貴様!王位に剣を向けるとは何事か!!」


覚悟を決めた瞬間、低い唸り声と打撃と共に声が聞こえた。目を開くとさっきまで殺意を剥き出していた男はおらず、あったのは王座の背もたれに掛かる指差しに、白く長い脚があって…この脚が僕を助け…た?


「ぁ…」

「王位ご無事ですか?!」


見上げた先、心配そうに僕を見入るのは優しい目をしたとても美しい人だった


「うん」

「よかった」


その人は僕の返事を聞くと顔を綻ばし僕をゆっくりと力強く抱き締めてはまたちゃんと王座に座らせ前へ一歩踏み出た


「王に劍を向けた無礼…無事で戻れると思うな。騎士達よ!貴様達の誇りはどうした!!王に誓った忠誠を忘れたとは言わせはしない。しっかり前を見据えて刮目せよ!自分の誇り、王への忠義果たすべきだろう」


とても澄んだ綺麗な声

人の心を動かせる

器を持つ、上に立つべき人物


一気に指揮率が跳ね上がり、死にかけていた騎士達に命が灯る。それを目と気迫で感じ取り、振り返る金髪の美しい人


「王位の事は私が命を懸けてお守り致します…故、どうぞ…そう恐怖に震えずにお座りになられていて下さい。一歩足りとも近寄らせは致しません」


にこりと微笑む


僕は…怖かった…の?

【覚悟】をしていたのに

その【覚悟】さえ嘘なのか


急に自分が惨めなった

顔を伏せ身を縮める

こんな自分を許せない

許せる訳が…ない


「顔をお上げ下さい。コレは王位が理解しなければならない現実で、王位自身が変えなければならない事実です…王座にいる。と言う事は覚悟がおありでしょう?現実をしっかり受け入れ、改善なさって下さい…出来るでしょう?王位なら」


伏せた顔

泣きそうになった矢先

頭を撫でた指先に、優しい声色

僕を信用、信頼してくれる

無償の愛情


僕は応えなきゃ…


ぐっと涙を堪えて前を見る

唇を噛み締めて

どんな状況でも受け入れる

どんな事があっても

僕はこれ以上裏切れない


金髪の綺麗な人はまた微笑んで

僕に背を向け仁王立ちをした

護るように、慈しむように


・─・─・─・─・─・─・─


(…状況は最悪だ)


背に王を抱え、それも見たところ20にも満たない若い王であり、剣術の心得もろくに無いに者を抱えながらの戦闘。そしてなによりシェーニイ自身体調が万全ではない事に苦を強いられていた


(結界を無理矢理抉じ開けて謁見の間まで飛んだのに魔力つーもん全部注ぎ込んで…なをかつ足り無い分内臓に負担掛けたからな…正直視界が定まらない)


強固に張り巡らされた結界をただ一人、自分の力のみで切り開いたシェーニイの躰は必要以上に朽ちており、視界はぼんやりと靄が掛かっている状態である


(武器もない状況でどう戦う?魔法はもう使えない…相手は50…いるかいないか…味方は10前後)


見渡しても辺りは皆敵ばかり

殺意を剥き出し、いつ斬り掛かろうかと様子さえ伺える


(勝算はどうでもいい…今は…とにかく今だけは乗り切らないと…失ったらいけない)


背にある幼い命

前にいる懸命に生き続けようと

必死に縋りつく命を


繋ぎ留めなくてはならない


・─・─・─・─・─・─・─


城下から真っ直ぐに城に向かい城内から向かうは謁見の間。そこへ足早に向かう五人の姿


「こりゃまた不思議なもんだ」

「あったまクるわね」


駆け足のまま苦笑うウォルスにその前をあからさまな不機嫌オーラをかもちだし口にしたのはハインである


「慌てているのは我々だけか」

「謁見の間での今現在の状況を誰一人とて知らないなんて有り得ない事です」


二人の側やはり苦笑うヴァシレイと困惑するエルディア


城内、今謁見の間で行われている事態を城内にいる人間は誰一人とて理解している者がおらず、すれ違う者すれ違う者何事かと目で五人を追うばかりなのだ


「こりゃ一体どんな魔法を使ってるんだ?俺には計り知れない感じだよハイン」

「知らない!それ以前に城内城下共に魔法なんか使えないんだから不可解な事としか説明つかないわよ!」

「では…何故誰もわからない?」

「とても深刻な事態です…誰も知らない、わからないなんて事普通なら有り得ない事」


軽く言い放つウォルスへのハインの八つ当り、ヴァシレイはそっとエルディアへと意見を伺うが返ってくるのは左右に振られる首だけだった


「…【仲間】を信用、信頼するのは勝手だが…【仲間】が決して味方とは限らないだろう」


その中小さく呟きを漏らしたのはレウで、一瞬皆の躰が震えた事も見逃しはしなかった


「見ているもの、信じている事が…今ある全てが正しいとは限らない」

「じゃあ!」


続けたレウに急に脚を止め、振り返り睨み付けるハイン


「誰かが王を陥れようとしている訳?!なんの為に?!」

「俺が知る訳が無い」

「王は…つい先日…まだ受け継がなくてもいい筈なのに…まだ遊びたい盛りの子なのに…そうなのに…王に任命されたばかりの…任命式すらしてないのよ!公にされてないのになんで陥れられなきゃなんないのよ!!」


溜まる涙

向けられる言葉の刄


「俺がそれを答えられれば満足か?そうではないだろう…それに王と言う役職は怨まれるモノだ」

「!」


向けられた言葉の刄

それは例え用の無い八つ当り

それをあえて避けず

真っ向から向き合い

じっと見据え続ける


「誰からも愛される人間がいたとしよう…だが…それでも知らぬ間に怨みを買う。王が父なら子は父の代からの怨みも受け継ぐ…それは理屈ではない」

「それでも王子が命を狙われるのはおかしいじゃない!王宮にいる人間しか引き継がれたのは知らないのよ!」


正論に言い返す言葉などない。だからこそ、知りたい事があると、レウのマントを必死で掴み答えを請うハイン


「つまりそういう事だろう」

「あぁ、成る程関係者か」


短調に答えたレウ。察する事に長けていたウォルスは直ぐに理解を示してはハインの手を解き、そのまま落ち着くようにと頭を撫ででみせた


「関係者?!そんなっっ!」

「一理はあるだろうな」

「でも…どうして王子なのでしょうか?」


関係者にショックを受けてはウォルスを見上げたハインに、困惑したヴァシレイとエルディアが続けレウを眺め、レウはそれに微塵の遠慮もせず


「信用も信頼もないからだろう…忠誠を誰に誓える?任命式もまだのヒヨッコに」

「我々はいるが?」

「所詮貴方方は前王からの引継ぎだろう?今の王のお抱えではない…くだらん」


ヴァシレイの目線と言葉に吐き捨てるかのように言い放つ先を歩き出す


「くだらない、まで言われた…」

「でも…その通りではあります」


そこ迄言い放たれるとは思っても見なかった事に肩を竦めたヴァシレイに苦笑うエルディア


「……ちょっと待って!なら、一番怪しいのはあんた達じゃないの!」


ウォルスを押し退け先を歩くレウを指差すハイン、レウはぴたりと脚を止め振り返る


「…どうしてそうなる」

「ちゃんと助けに行った。なんて誰が信じられるの?それに仮に助けに行っていたとしても瀕死の筈よ?何の役に立つの?!」

「瀕死…?それがどうした。あいつはいつも何かを守る時は瀕死だ…自らの命などいとも簡単に投げ捨てるぞ?」


それと対峙した事がある

意志の強い

誰よりも誇り高い

雄々しく、心身共に美しい人


「でも…王子とは…」

「現時点で王座にいるなら王だろう?なら、シェーニイは間違いなく王を守るだろう…あれは理屈では動かない、証拠さえ、王座にいればそれだけで守る。それが何よりもあいつを突き動かすものなんだ」


理由は知らない

ただ、それだけは理解が出来る

それだけで十分だろう


レウの最後の言葉に追撃をしようとしハインではあったが、それ以上口にする事は出来ずしゅんと肩を落とした。レウはそれに漸く静かになったと安心し、油断をした瞬間だ


「あの…このタイミングで言うのも難だとは思うのですが…一つ聞いてもいいでしょうか?」

「…?」


エルディアが申し訳なさそうに挙手した事に目線を向ける


「レウさんとシェーニイさんは…夫婦なんでしょうか?」


キョトンとしたエルディアにその場に居た全員、それこそレウまですっ転んだ


「「エルディアぁああぁああ!!!!」」


おもわず声を合わせ名前を叫んだハインとウォルス


「ぅ、うん…エルディア…今のタイミングで流石にソレはないと私も思うよ?」

「え、そうかしら??」


浮かぶ笑顔が若干引きつるヴァシレイに、やっぱりキョトンとしたままのエルディア


「だって…お話を伺っていて私…レウさんがシェーニイさんを信じているし、シェーニイさん自身もレウさんの事信用してると思いましたから」

「だからってエルディア?!夫婦はないだろう!俺凄いびっくりしたよ?!」

「でも、側にいらっしゃる時…パートナーと言うより夫婦の様な寄り添っていらしたし」

「エルディア起きて?!あいつ等男、男だからね!!」

「問題でもありますか?」

「「大問題!」」


ぽやぽやしたエルディアにウォルス、ハイン共に全力の突っ込み


(夫婦…まぁテト殿と闘神が夫婦だからなそれと同じ空間にいればそうなるか…信用なぁ…)


己の立場上見られてもおかしくない事に多少の違和感を覚えつつ佇むレウ


「…で?」


するとヴァシレイが真意はどうなのかと目線を向け、それをレウは受け取れば


「(説明が面倒だ)あぁ、シェーニイは俺の妻(?)になる(事にしておこう。後はなんとかするだろう…あっちが)」


とまぁなんとも無責任にそうだと言ったもんだからエルディア以外、ヴァシレイはそうでもないが、ウォルスとハインは大層絶叫したそうな


「ぜっっっったい、世の中間違ってる!間違いまくってる!!」

「あぁ〜…そんな気はしていたけど…気だけでいたかった」


ショック


「…そんな事より謁見の間は?」

「もう直ぐだ…やはり心配なのかい?」

「当たり前でしょう!奥方様(?)なんですよ?」



締まりのコレっぽっちの無いまま謁見の間へ向かうのだ…





2010/04/15 ЯR

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