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エルディアとハインは王と共にシェーニイを連れ王の部屋に向い、ヴァシレイとウォルスは部下の話に耳を傾けている最中、レウは血溜りの中、人であっただろう肉片に目を向けていた


(殺す事に躊躇が全くないな…どれもこれも綺麗な切り口だ)


転がる肉片を眺め、向ける感情は感心。躊躇いのまるきり見えない思い切ったとても綺麗な、切り口が表を見せては赤黒く変色してゆく


(普段なら殺す事すら躊躇すると言うのに…王が居る手前加減が出来なかったか?いや、そんな生易しい人間ではないか…王を大事にするのなら…殺しなどしないな…こんな血生臭い戦場に置く訳がないな)


出来るなら殺さずに

大事な人には絶対に

血生臭い場所には置かない

徹底して【純潔】を

生死を見せない人間が

それをしなかった現実


(…余裕が無かったか…らしくない)


そうレウは口元を弛ませ哀れな、愚かしい肉片から目を外した。

ふと、背後に気配を感じ見返すとそこには相変わらず笑みを絶やさないウォルスと少しばかり何か考えている様なヴァシレイが控えておりレウの目線に気が付き傍に歩み寄る


「…なんだ?」

「事情が事情なので…少しお話して頂いても宜しいでしょうか?」

「何を話せと言う。我々はただの【罪人】なんだろう」


先程の大臣とのやり取り。あれはどう考えてもレウやシェーニイに対しても【殺せ】と命を下していた言い方だ


「まっさか!勘弁してよ。王子助けて貰って今更罪人とかないから…知りたいのは身の上ね」


睨むようなレウに陽気に返すのはウォルスだ、にこやかに手を左右に振っては違うと示しにっこりと笑いヴァシレイへ


「身の上話を少しでも聞かせて頂ければ後は我々が話を付けておけますから」

「それでさっきの男が納得するとは思わないがな」

「信用がないのは重々承知していますが…そこはなんとか信用をして頂けませんか?」

「・・・何故信用をしなければならない」

「王子を助けて頂きました、それも彼は命懸けで…私はそれに応えたい…それでは駄目ですか?」


最後まで、気を許そうとしないレウに真っ直ぐ率直な素直な気持ちを口にしたヴァシレイ。レウはそれにふぅと深いそれも長い溜息を吐き出し、警戒を解き


「聞いてもつまらない話ばかりだぞ」

「…ありがとうごいます。いえ、男同士で夫婦とおっしゃる間柄なんですから十分楽しいと思っています」

「つーか、お宅だってモテるだろうになんで野郎を嫁にしたの?!そらあんだけ綺麗なら気の迷いも生まれるだろうけど」


警戒を解いたレウの傍により小さく微笑み喜びを顕に、それに同調し眉間に皺を寄せたウォルスの疑問


「綺麗だけなら見飽きている」

「?!…躯なの、躯なの?!ヤだ、ヴァシレイ…このオジ様渋い顔してムッツリだ!」

「ウォルス…違うと…思うんだけど」

「だって他なくない?!」


本心からの一言


「お前…なかなか面倒臭い奴と組んでいるな」

「はは…頼もしいですよ」


なんとも引きつった笑みに溜息を漏らしたレウ。そのまま三人は話をしながら王の部屋と向っていった


─・─・─・─・─・─・─・


本当なら

劍を奮うつもりは無かった

あんな酷い惨劇を見せる

体感させるなんて絶対に

絶対に嫌だった

でも

それが無理な事も直ぐに知った

向けられた殺意と憎悪

アレを振り払うすでが

自分には無かった

どんな状況か、戦況すら

全くわからない状況で

選択肢は【戦うしか】

それしか見出だせなかった

傍で知らない者が死ぬ

あたしに劍を託して

【どうぞ…お守り下さい】と

腑甲斐ないと自分を呪いたくなった

力が足りない

愚かな自分を殺したくなった

王だけが健在すればいいと

そう思っていた自分を


守るべきモノは一つじゃない

王が大事なモノを守るのが

あたしの仕事じゃないか


どうして、どうして…

いつも手が届かない?


どうしてこんなにも

あたしは弱いのだろう…

もっと誇れる強さが欲しい


「貴方は…貴方自身が思う程弱くありませんわ、十分に誇れるモノもあります」

「……?」


微睡む記憶に聞こえた小鳥の囀りの様に優しい声、シェーニイはゆっくりと目を開けると自分の視界にある天井を茫然と見つめ続けた


「よかった…昏睡状態が続いたら危ないところでした…気が付かれて本当によかったわ」

「つか、二時間で回復しちゃうあんたの自己治癒能力にびっくりなんだけど…頑丈に出来てんのね」


左右から聞こえる声に、まだ覚醒しない意識。エルディアがシェーニイの顔に触れ、ハインが不機嫌そうに顔を見つめ頬を膨らませる


「シェーニイさん?」

「頭だいじょーぶ??」


何も発しないシェーニイを見つめ、首を傾げるエルディアと顔の前手を振るハイン


「─────っ王は?!」

「うわぁっ?!」


そのとたん、漸く起きたシェーニイの記憶は目の前で揺れる手を掴み、引っ張りそのままベッドへとハインを押しつけた


「だ、大丈夫!大丈夫ですから!!ハインを離して差し上げて…あぁお願いしますから、あんまり動かないで下さい!色々危ないですからぁ!!」


エルディアはそれに直ぐに立ち上がりシェーニイの腕へと縋り付くと落ち着けようと語り掛けるがなにやらおちつきがない


「…ん?」

「シェーニイさん今お洋服着ていらっしゃらないんです!だ、だから…その、ハインにのしかからないで下さいませ!!」


そこに到達する前に落ち着いてはいたが、自分の下と腕にいる真っ赤な二人組にシェーニイは生まれたままの姿を自分で見つめ


「あぁ…ごめん。記憶が曖昧で動転した」


案外すっぱりさっぱりと現状を理解してはハインから離れ、エルディアも離し寝ていた布団の中へと戻っていった


「〜〜あんた最悪!一体何様よ!!嫁入り前の女ひっ捕まえて組み敷くなんて…信じらんない」

「安易に近寄る方も方じゃないか…」

「命の恩人に向ってそういう事言うわけ?!」


キィ〜!!とヒステリックに怒るハインに対しクールに返すシェーニイ、苛々と顔面に不服を顕にしながらベッドから降りエルディアの真横に控えムッツー


「ハインも悪いわ…ごめんなさいシェーニイさん…それでその…具合はどうかしら?」

「完全とはいかないが…六割程度は回復していると思う」

「六割も?!…まぁ…」


ふわふわと枕に背を預け寄り掛かりながら自分の手を眺めの返答。先程まで動くのもままならない状態からの立派な復活である


「…化け物」

「ハイン!…でも、本当にシェーニイさん自己治癒能力が凄いんですね?普通なら1週間は寝たままだと思うのに」

「…私には加護が付いているから…それが守っている」


最愛の人が付けた

目に見えない愛情


「それは…その、耳飾りのまじないもですか?」


手を見つめ懐かしむシェーニイへ次に問うのは黄金の宝石が光る耳飾り


「あぁ…そうだと思うけど」

「実は…シェーニイさんの治療にあたり装備品や装飾品を総て取らせて頂きました」


耳にある耳飾りに触れ、そこで漸く自分が裸である経由を理解する


「ま、まさか装飾品を取ると…その…裸になってしまうとは思わなかったので…不可抗力でごめんなさい。色々見てしまいました」


おたおたと目線にを泳がせ赤面し頭を下げるエルディアに思い出したように顔を赤くし、シェーニイを見てはべっ!と舌を出すハイン


「別に減るものでもない」

「そ、そう言って頂けるのならよかったです。それで…なんて言えばいいかわからないのですが…シェーニイさんの装備品や、装飾品は…貴方の属性とは見合わない物が多いので回復に邪魔になると思ったんです。だから取り除こうとしたのですがどうしてもその耳飾りだけは取れなくて…だから、六割程度の回復しか出来なかったのかと思うのですけれど…」


見合わない?

そんなの決まっている

見合うハズがない

相容れない種族が

製作製造したモノなのだから


「…いや、この耳飾りは関係はないんだ。元々コレ自体なんの効力もない」

「では、何故取れないのですか?」

「助けて頂いてこう言うのは失礼だが…他人の恋路に口を突っ込むのはあまり良い事ではないと…思う」

「!し、失礼致しました」


困った顔を向けたシェーニイに、何度も頭を下げたエルディア。シェーニイはそれに小さく笑みを向け一度大きく息を吸い躰を落ち着かせる


「あ、後」

「?」

「眼帯の下を拝見しました。とてもお綺麗な顔をされているのに…治せませんでした」

「眼帯の下…?」

「自覚ないの?それとも気にしてないの??変な奴ね…眼帯の下、火傷だか呪いだかわかんないけど皮膚が焼け爛れてるのよ再生不可ってやつ」


自覚がない。と言われても仕方がない…今しがた判った事実で、シェーニイ自信知らなかったから


(あたしの設定は呪われているから眼帯なのか…呪いなら自力で治療出来るのに、出来ないって事は末代から呪いか?厄介な身の上だな面倒臭い)


触れた皮膚の嫌な…柔らかい肌でもなんでもない、手に触れるだけでわかる醜い感触


「お力になれなくて申し訳ありません」

「いや…コレは私が背負わないといけない咎だから」

「…なんかすっごい納得いかない。咎とか…あんたにちぃっとも似合わない」


エルディアの横、ツンと不機嫌を曝け出し呟くハイン


「…誰でも何かしらの咎はある…で、それはいい。返して貰えないか?」

「何をですか?」

「装飾品だ…アレがないと着替えもままならない」


暗くなり掛けた雰囲気を一掃し、エルディアに向けて差し出す要求の手


「あぁ…」

「ダメよ」

「は?」


差し出された手を見ては目を泳がせるエルディアに、真横からの駄目、口から出るのは不服の一言


「アレどう見ても最先端技術でしょ?そう簡単に返せないわ、だから私達が研究して解明してから、あんたに返してあげる」

「…そんなに何個も必要ないだろう、着替えだけは返してもらいたい…あぁ、後ベルトに付いてる宝石もだ」

「それ武器関係?」

「あぁ」

「なら駄目」

「何故?」

「いちをあんたを味方とは認識してるけど…それでもまだ信用出来ないもの。いつ国を滅ぼすかわからないでしょう?あんた程の人間なら王ぐらい、国すら消し兼ねないし」


平然と隠す事のない威嚇と疑い、流石にここまで言われると言い返す事が出来ない訳ではないが面倒になるらしく、苦笑いと愛想笑いを浮かべ


「もう…疑うなら好きにしてくれ…でも、着替えの宝石は返して貰えないか?動けない」

「だから断るって言ってるじゃない。こっちは未知なるものと遭遇してるのよ?」

「勘弁してくれ…」


せめてもの願いすら切り捨てられ頭を抱えるシェーニイ、馬鹿ねぇ…と呟くハインに薄ら殺意さえ湧くかもしれない


「おっ、お兄さん起きてんの?なんだもっと寝顔眺めてやろうかと思ってたのに」


と騒がしく部屋に入り込んだのはウォルス、その後を追いゆっくりとレウやヴァシレイの姿もある


「…レウ」

「死に損ないが」


キョトンとレウの姿に気を取られたシェーニイが名を呟くとレウは傍に歩み頬を撫で触れた


「いきなり見せくれてくれるよね、なぁーんか癪」

「まぁ仕方ない夫婦なんだ」


チィッと小さく舌打ちし、ベルトに座るウォルスを宥めるヴァシレイにシェーニイ、はたっと目を白黒させ


「夫婦?」

「ん、君の元旦那様が失踪して、一人で捜している時にレウさんに逢って口説き落とされたんだろう?違うのかい」


掻い摘んでのヴァシレイの説明、ウォルスはケッ!!と吐き捨て、エルディア・ハイン共に女特有の騒ぎ方をしては二人を交互に見入り、レウはじっとシェーニイを見つめシェーニイはそれを見返し


「なんて説明してんだよ(そんな設定聞いてない)」

「隠す必要がないだろう(一から説明をするより簡単だった)」

「だからって…(逆に厄介じゃないか!)」

「言わない方がよかったのか?(任せたのはお前だろう)」

「それは…(合わせろと?)」

「許せ(後はお前が巧く作れ…俺が合わせる)」


そっと額に重なった唇はある意味の合図


「(面倒なの投下しやがって)いえ、違いはないんですか…理解を得られないのであまり口にはしたくなかったんです」


心の中で豪快に舌打ちそれを悟られぬ様に嘘を塗り重ねてゆく



もっともらしい

偽りの関係を作り上げる為に



2010/04/22 ЯR

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