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サンドリヨン城

ピクトラウム大陸の中心に堂々と構えるグロス火山を背景に、その城は佇んでいた。


ロート王国の首都モルゲンにある”サンドリヨン城”だ。


某テーマパークにある城にそっくりな外見をしたその城を見て、ここは遊園地か何かかと錯覚するほど、俺にとって現実離れした外見をしていた。


ヨーロッパとかにいけば、似たようなお城を見れるだろうが、生憎、そんなおしゃれな海外旅行に行ったことが無い。


俺にとって、この国はほとんど馴染みのない景色で広がっていた。


「いいか?イザヨイ。例の力のことは、すでに上層部にも知れ渡っている。だが、その力を持っているからと言って、君が魔女だと断定する要素にはならない。」


隣のシルヴィアは、いつもと変わらぬ様子で俺に言った。


「はい...!本当にありがとうございます。あれだけ迷惑かけて、」


俺はシルヴィアを見上げた後、俺の少し後方にいるギュスターブにも顔を向けた。


「あなたの話は、いずれも信じがたい話ばかりでしたが、あなたがすべきことは、ただただ真実を話すだけです。今日の会議は別に裁判などではありませんが、あなたは魔女ではないことを証明する場です。後押しは私達がしていくので、もう少し気を抜いても大丈夫だと思いますよ。」


「分かりました。」


イザヨイが万物の魔法を持っていることは、すでに上層部に伝わっていた。性質診断を行ってから1週間後。シルヴィアが帰ってきた時に、ギュスターブはこの話をまず、シルヴィアにした。


シルヴィアは俺が万物のことを隠していたことは、特に責めはしなかった。ただ一つだけ、シルヴィアから言われたことが、俺の胸にグサッと刺さった。


『まだ会っても間もない関係だとは思うが、もう少し私のことを信用してもいいんだぞ?』


シルヴィアが俺にこれだけ良くしてくれる理由は、俺が孤児だからだ。シルヴィアも孤児だった経験から、俺と境遇を重ねているのだろう。それは同情だ。


だがその同情心はとても深いものだった。孤児だったから大変というわけではなく、孤児になった境遇が辛いからこそ、シルヴィアは俺のことを気にかけてくれているのだろう。


「まあ、緊張するのは分かりますよ。私は初めてですよ。そもそも国の上層部が全員集まる会合なんて、末端の私には無縁ですから…。」


「ギュスターヴ。君が末端なわけないだろう。分団長をしている君だ。おまけに騎士学校の教師で、今日に関しては当事者でもある。あまり卑下しないでくれ。」


「いや、失礼。恐れ多いだけですよ。今日、会に出席するのは国の上層部でしょう?普段はお目にかかることも難しいような方ばかりだ。」


「国の上層部って一体、どんな人達なんですか?」


「王族に次いで、国の方向性を決める権利を持つ人たちだ。この国には軍務省、法務省、総務省、厚生省の4つの行政機関が存在している。今日、出席されるのは、その4つの機関の長官。および副官だ。」


「それが上層部…。」


「彼らは国防、強いては王族の存続が最優先事項だ。国の危機を守るためなら、人一人を殺すことも造作ないさ。」


「これって脅されてるんですか…?」


俺はぶるっと体を震わせた。


「ははっ、そうじゃない。彼らは私たちとは考え方が違うのさ。最も優先しているのは国という単位。そこに国民一人一人の顔は見えていないんだ。」


シルヴィアは上層部に対する皮肉のつもりで言っているのだろう。そう考えることは、俺にも少しは理解できた。


優先すべきは組織という単位そのもの。それは前世の社会でも似たような考えだった。組織さえ残っていれば、頭だけ変えて、組織は動き続ける。


おそらくこの国の上の人たちも、同じ風に考えているのだろう。人間社会の仕組みは、どの世界でも同じなのかも知れない。


「シルヴィアさんとは、相容れない関係ですね。」


ギュスターヴが口を挟む。


そういえば、ギュスターヴと初めて会った日、シルヴィアのことをそう言っていた。


―――国民一人一人の顔を見ている、と


「そうだな。だから私は団長の座に就いたんだ。少しでもこの国を変えたい。」


シルヴィアの信念が垣間見えた。一見すると平和そうに見えるこの国でも、腐った人間、大人はいるようだ。


堂々と歩くシルヴィアの背を見て、俺は安心感を覚えた。今日の会合はなんとかなるかも知れない。漠然とそんな安心感が俺を満たしていた。


「イザヨイ。君は間違いなく魔女なんかではない。ただの魔術師さ。そう堂々としていればいい。」


モルゲン駐屯地から歩いて数十分。寮の部屋から見るだけでも、大きいと思っていたが、目の前にするとその迫力に呆気にとられる。


「ここがサンドリヨン城…。」


「さあ、覚悟を決めようか。」


城へと続く大きな道を、シルヴィアとギュスターヴに続いて歩き出した。




《サンドリヨン城》


別名を灰被りの城と呼ばれる銀灰色に輝く城。

グロス火山の麓にあるため火山灰が降り注いで、そう呼ばれるようになった。

巨大な7階建てのお城


・1階

 来客を招き入れる場所で、一般市民の往来も可能なエリア。入口からつながる場所には大広間が存在し、ここから各エリアにつながる。一階奥地には法務省の管轄となる法廷ユング・ゲリヒトがある。


・2階

祝祭などで多くの人が入れる巨大な宴会場がある。その他にもキッチンがあり、王族の料理もここで作られる。

2階までが一般市民でも入れるエリア。


・3階

王族直下である各行政機関の主要組織に与えられた事務室が用意されている。入ることはできるのが、各行政機関トップと、許可を得た数名のみ。会議室もあるが、一般市民が入ることはまずない。


・4階

ここからは王室の従事者が住むエリアとなっている。住み込みで働く従事者が寝泊まりするための部屋があり、従事者のランクにより、部屋の大きさなども異なる。また、従事者の中には、家族でここに暮らす人々も存在する。


・5階

王族が暮らすエリア。王族の居住区のため、限られた従事者のみしか入ることが許されていない。


・6階

王の間。玉座などがあり、国最高決定機関となる場所。


・7階

国及び世界の歴史に関する書物やそれに関連した物品が保管されている。

王族しか入ることは許されていない。ピクトラウム王家が持つレガリアもここに保管されている。


・地下1階

謎の地下

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