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拾われてから、5日がたってようやく熱も下りスープを飲まされている。
「はぁ、生き返る。ここは何処?」
「※※※※※※※、※※※※※※。※※※※※※※※。」
言葉が通じないのね。でも、自分が誰かも覚えていない。何歳で、何処に住んでいたかも。ここが知らない場所で周りの人も知らない人で、どうしてここに居るのか何も判らない。
何処からか連れて来られた気がする。それだけ。私はここに居ていいのか?
「※※※、※※※※※※※※※※。※※※ローズ。※※※※※※※。」私に向って頬に手を宛てて優しくつぶやく。
優しい笑顔でもう一度。お上品なおばあちゃんが私に囁く
「マリアローズ※※※※※※※※。」
やっと行き倒れの女の子?の熱が引いてスープが飲める様になった。と言ってもまだ上澄み薄味。
「※※、※※※※※。※※※※※?」
何か呟いたが、知らない聞いたことのない言語。
熱にうなされている間も何か言っていた様だけど…知らない言語だった。近辺の国にはそんな言語が無かった様に思う。
「名前も無いのでは、とても不便ね。どうしようかしら。」
昔に、産まれて3歳ぐらいに亡くなった女の子を思い出す。あの子も空のような髪だったわね。
「そうね、私の弟子にでもなる?名前はローズ。うちの子になりなさい。」優しく女の子の頬をさわる。女の子もほっとした笑顔を返してくれる。
「アリアローズこれからよろしくね。」
安心した様子で寝てしまった。
あれからずっと手厚く看病してもらい、自分で起き上がりベットに座って何かを食べれる様になるまでが長かった……。
もういったい何日経ったのか、トイレに行くときも抱き上げて貰い自分で出来ない事はとても精神的にキツかった。しかし、何故か幼児の様な自分なら仕方無いと思えるようになったが、そうなると…いったい自分の年も解らず、自分の本当の姿はもっと年上で、今の自分に違和感ばかりを覚える。
言葉も解らず、ローズと呼ばれて自分という個を確定されてほっとはしたものの何も解らず、自分に向けられる言葉を真似し、意味を探り、覚える事。必死な思いで言葉を発音を覚える。
私の居るベットのあるこの部屋だけが私の世界であり、逢う人は限られていて、お祖母様、メイドのアンナとマリー、執事のセバスティアン、後は夜にたまに来る大人の男性…お父様かな?私はどういう立場なのか?
お祖母様は、医者なのだと思う。でもここは病院ではない。
どちらかというと、お祖母様のお屋敷の1室でお医者様のお祖母様が私の診察をして、メイドさん二人が私の世話をしてくれている。執事さんがお祖母様を呼びに来るので病院では無いと思うけど…たまに急患が運ばれて来るのでやっぱり病院かも知れない。でも自宅も兼ねていそうな感じ。部屋から出たことが無いので詳しく判らないな。
アンナやマリーに言葉を教えて貰い、最近は少し話せる様になってきた。二人共が他愛もない事しか話さない様にしている気がする。今はどんな花が咲いている。庭に綺麗な鳥が飛んできた。食べ物は好きな味があったか?そんなふうに私の過去も未来も触れず。壊れそうな硝子の箱をそっと柔らかな布で包む様なそんな感じ。
ある日お祖母様が私に言った。
「そろそ少しずつ歩く練習をしましょう。長く寝込んでいたので足の筋肉も落ちているから、マッサージをしていたとはいえゆっくり練習すれば直に外に出られる様になるでしょう。」
私は恐怖した。この部屋の優しい世界から、知らない言語の世界に出る。それは私にとって未知の世界。